AIが生成した悪趣味な動画「スロップ」がインターネットを侵食中
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 日本では毎年年末になると、「今年の漢字」が選ばれて話題になるが、アメリカでも「今年の単語」なるものがあるそうな。

 2025年、アメリカの「今年の単語」に選ばれたのは、「スロップ(slop)」という単語だった。

これはもともと泥とか残飯、排泄物を指す言葉だったという。

 だが最近になって、スロップはネット上にあふれかえる悪趣味なゴミコンテンツを指す用語として広く使われるようになったのだ。

 特に生成AIによる量産型の動画は「AIスロップ」と呼ばれ、低品質で意味のないコンテンツの代名詞となっている。

AIスロップの方向性が変わって来た?

 一昔…いや、ほんの3年ほど前までは、AIが生成する画像はそれなりに悲惨なモノだった。動画にいたっては言葉にするまでもないほどホラーな代物だったんだ。

 腕や足や指があり得ない角度や本数になっているなんてのはまだ序の口で、人体の構造…いや、この世のありとあらゆる物理的法則を無視しまくってた。

 もしかしたら当時の生成AIは、三次元じゃなくて四次元とかさらに高次元からの視点で人体を理解していたのかもしれない。

 特に編み物をしている手元だとかスパゲッティとか、そういうモノを描かせると凄まじいクリエイティブさを発揮してくれたものだった。

 2025年あたりになるとAIは劇的な進化を遂げ、一見するとリアルな実写映像やアニメと区別がつかないレベルの動画を生成し始めた。

 そして2026年になった今。AIスロップと呼ばれる動画界隈に、ある変化がみられるようになったという。

 これまでもAIスロップは、奇妙で滑稽なコンテンツとしてネット上に広がっていた。だが最近その傾向が、より「不気味で悪趣味な方向」に傾きつつあるらしい。

 

 さらには、見る者に強い不快感を与えるような画像・映像も現れているという。

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「擬人化された食べ物家族の悲劇」が量産され始める

 例えば2026年2月あたりから、動画投稿サイトには「擬人化された食べ物の家族」が登場するシリーズがたくさん投稿されるようになった。

 ストーリーはほぼ同じで、人間に調理されて家族が一人ひとり減っていくというもの。同じ設定でキャラクターを変えたものが、複数投稿されているらしい。

 例えばこちらは「パスタ家族」。母親と2人の子供たちが「選ばれ」て、鍋で茹でられようとしている。

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 彼らは「熱いよ!」「怖いよ!」と泣き喚きながら、最後には柔らかくなってソースに和えられ、人間に食べられてしまうのだ。

 茹でられながら熱さと恐怖に泣き叫んでいた母子は、今度はトマトソースの中で幸せそうにうっとろりんとほほ笑んで「巨人」つまり人間に別れを告げる。

 そして棚の中では一人残された父親が、家族の行方を思って涙するという、なんともシュールなストーリーである。

 これと同じストーリーが、キャラクターを変えてたくさん投稿されている。下は同じシナリオだが、顔がちょっと可愛くなっているバージョン。 

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 こちらは最後はリアルな人間のようになって、鍋に沈んでいく。父親が登場しないバージョンらしい。

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 パスタだけではない。ポテトチップやスイカ、ニンニクなど、ありとあらゆる食べ物が擬人化されて、このストーリーのバリエーションが量産されているのだ。

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 パスタ家族が話題になった影響か、パスタをネタにした趣味の悪いAIスロップも、続々と投稿されているという。

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 カートゥーン風の子供向けの絵柄で続々と投稿され続けている一連のAIスロップには、目をそむけたくなるようなシーンや残酷な設定なども少なくない。

 本来なら子供には見せたくない内容でも、可愛らしいアニメーションが流れてくると、つい見せても良いと思ってしまいがちだ。

視聴者の反発や拒否反応も立派な「反応」に

 では、いったいなぜこうしたAIスロップが増えているのだろうか。背景にあると考えられているのは、SNSのアルゴリズムとユーザーによる拡散の仕組みだ。

 SNSの世界では、視聴者の感情を揺さぶり、強い反応を生む投稿ほど拡散され、広く表示されやすい。

 単純な共感や好感を示す「いいね!」やコメントの数だけでなく、「嫌だ」「怖い」といったネガティブな反応も、エンゲージメントを押し上げる要因になり得る。

 その結果、より強い刺激を持つ画像が選ばれ、さらに過激なものが優先して量産されるようになり、どんどんエスカレートしていくのだ。

 例えば下はredditで「ひどすぎる動画」として取り上げられた、「スマホに夢中になって子供を挽肉にして食べてしまう猫夫婦」の動画である。

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 AIスロップがネットを侵食していることへの危惧

 一連の食べ物家族シリーズや、こういった悪趣味なAIスロップを見せられた視聴者からは、悲鳴のようなコメントが寄せられている。

  • 泣きそうになった
  • AIやめてくれ、これはやりすぎだ
  • 気持ち悪い、マジでAIなんて大嫌い
  • もう何も食べられないよ。
    気分が悪い。これ本物なんじゃないかって思えてきた
  • これ見てると脳みそが溶けていく気がする
  • だから私は、無生物にも感情があるんじゃないかっていう非合理な恐怖を感じるんだよ
  • これで悲しんでる人がこんなにいるの、ちょっとヤバいな。こういうのに影響されやすい人も多いってことだろ
  • 再生回数のためなら何でもやるんだな。こんな動画を作るなんて恥ずかしくないのかな
  • AIコンテンツに意味を見出そうとするのって、コイン投げて表が出た理由を探すようなもんだよ
  • なんでAIのこういうのって、毎回差別的だったりするんだ?
    • たぶん、ヘイトのある内容のほうが反応を集めやすいからだろうな
  • ヘイトコンテンツは、特定の層に強い感情的反応を引き起こすから、結果的にエンゲージメントが増えるんだ。こうしてここにコメントするとさらに多くの人に広がって、同じようなものがもっと作られる
  • 正直、この手のものに洗脳されて育った子供たちが、大人になって投票するようになったとき、どんな考えを持つのか怖い
  • どれくらいでみんな気づくんだろうな。世の中の結構な数の人間と、このネットっていう場所自体が、人をイラつかせたり混乱させたりするためだけに動いてるってことに

 こういったコンテンツが問題なのは、それらが「人間による創作」ではなく、生成AIによって自動的にほぼ無限に生み出されていくことだ。

 質より量が優先される環境の中で、「嫌悪感」「衝撃」「拒否反応」といったネガティブな反応を強く生み出す映像が、コンテンツとして最適化されていく。

 この現象が「収益化」と結びついたとき、単なる「質の低いコンテンツ」は、ネットの生態系そのものを侵食するモンスターに豹変するかもしれないのだ。

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フェイク情報に惑わされないためのリテラシーとは

 一目でAIとわかる映像はまだましなのかもしれない。今やネット上には、実在しない観光地や、歴史的事実を装った架空の画像・映像が大量に投稿されている。

 その多くは既存の画像などを学習して作られており、どこかで見たような、説得力のある要素が組み合わさったものになる。

 こうした投稿は一見すると本物らしく見えてしまい、「良い情報だ」と思ったユーザーが気軽に共有しがちなため、誤情報の拡散にもつながりやすい。

 かつてSNSは、「誰かが実際に体験したこと」や、それに基づいた「情報の発信」を見る場所だった。

 しかしそれが今や、「AIが量産する、無限に垂れ流されるゴミをただ眺める場所」へと変わりつつあるのかもしれないのだ。

 実は「2026年までにネットコンテンツの90%がAI生成になる」という内容を、2022年9月にここで記事にしたことがあった。

 2026年になった今、確かにAI生成動画は増えまくっている。撮影機材も技術も要らず、プロンプトを書けばAIが映像を作ってくれるお手軽さ。

 物語やシナリオも、プロンプトを打ち込むだけでいくらでも量産できるし、なんならプロンプト自体もAIが量産しているというループである。

 多くのプラットフォームでは、人の手によって撮影・編集された動画のAI判定による収益停止祭りが起こる一方で、AI生成によるこういった動画は増え続けている。

 画面上に、際限なく湧いて来るAIスロップたち。いくら「見る側のリテラシーが」と言われても、これから我々はどうやって見分けていけばいいのだろうか。

References: Disturbing AI Food Slop Is Strangling the Internet[https://futurism.com/artificial-intelligence/ai-food-slop-videos]

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