視界アシストAIにより、認知症で日常に困難を抱える人向けスマートグラスが開発された。このメガネをかけるとAIがユーザーの目の前にあるモノを音声で解説してくれる。
イギリスのAIソフトウェア企業の新製品で、視覚情報からの単純なAI音声ガイドにとどまらず、ユーザー独自のやり方を学び、認知レベルに応じてアドバイスを伝えてくれる。
沸騰中のお湯を「危険」と警告したり、観葉植物の名前や育成状態まで教えてくれるのだ。
自立した生活を続けたいユーザーの「困った」を減らし、自信を取り戻させるスマートグラスは、すでに「QOLが大幅に改善した」との試験報告もあり、2027年までにイギリスの国民保健サービスで利用される段階だ。
認知症のレベルに合わせてガイドするAIスマートグラス
このほど話題のスマートグラスは、ユーザーの視界にある一般的な物体を識別し、音声で解説する。
たとえばマグカップや、ケトルで沸騰中のお湯といったものも認識し、やけどに注意といった警告まで出してくれる。
さらにレンズに表示される、AIコンパニオン「Wispy(ウィスピー)」からの質問に答えていくなどすると、Wispyが初期段階の認知症ユーザーのガイド役として日常生活を助けてくれる。
気が利くWispyが、お部屋の観葉植物の名前や状態なども教えてくれるのだ。
Wispyはユーザー独自のやり方を理解・学習するだけでなく、認知症の進行度に合わせて適応するため、たとえユーザー自身が”いつものやり方”を思い出せなくなった時も、次にすべきことを教えてくれたりする。
”自立した行動”を支えるウェアラブルデバイス
この眼鏡型ウェアラブルデバイスの技術開発を行ったのは、ロンドンを拠点とするAIソフトウェア企業CrossSense[https://crosssense.com/](クロスセンス)。認知症患者の環境も踏まえた本試作とアプリに10年以上もかけたという。
担当者はこの製品を通じてユーザーが”自立した行動”ができるよう望んでいる。
(自立した行動とは)自信をもって自宅にいられること、自分で身の回りを整えたり、一日の計画を立て、それをきちんと成し遂げること、友人や家族を自宅に招くこと、などです(開発者)
そのためAIエンジニアチームは、この製品をさまざまな形で訓練した。着替え、安全な家事、イギリスでは欠かせない紅茶の入れ方や、愛する人との交流など、数十の日常的な活動を学ばせた。
QOLが大幅に改善。ユーザーからも大好評
では実際のところどうなんだろう?結論からいえばユーザーのレビューは上々。4人中3人の患者がWispyのアドバイスで生活の質の大幅な向上を実感している。
お試しユーザーの一人、70歳のキャロル・グリーグさん(70歳)はロンドン在住。
イギリス国民保健サービス(NHS)の認知症研究に貢献する認知症支援グループの設立者であり、自身も認知症を患うグリーグさんは、このスマートグラスが自立の維持に役立つとはっきり感じたそう。
素晴らしいコンセプト。私たちの多くは病状の進行につれ、世界が徐々に狭くなっていきます。
このようなイノベーションは、失われる認知能力を補うものとして、真の希望を与えてくれます。 信頼できるサポートが期待できますし、私自身も状況が変われば、間違いなくこれに頼ることになるでしょう
イギリスで2027年初めに販売予定
このスマートグラスは、基本的に認知症の初期段階(Early-stage dementia)が対象とのことで、記憶力の低下と若干の認知力低下がある人にはとても頼りになるようだ。Wispyとの会話も今までにない刺激になりそう。
ストーブや電気調理器の切り忘れも防げそうだし、植物をお世話するといった認知能力の刺激になりそうなヒントを示してくれることで、進行を遅らせる効果もありそう。
メディアによると、このスマートグラスの重さは3オンス(75グラム)未満。またデザインは今のところ写真のような黒縁のみとのこと。
内蔵バッテリーの持続時間は最長1時間。
また処方レンズの組み込みや補聴器とのリンクにも対応する。
すでに2027年初めまでにイギリスでの販売が予定されており、開発者たちは地方自治体、介護事業者、公立病院の認知症専門外来での使用を視野に入れている。
専門家も高評価。画期的な技術として受賞も
イギリスにおいてこのスマートグラスへの期待と評価は非常に高く、CrossSenseは2026年3月11日、「認知症患者とその家族にとって革命的な可能性を秘めた真のブレークスルーテクノロジー」として、ロンギチュード賞を受賞。賞金100万ドル(1億6千万円)を授与された。
アルツハイマー病協会の主任研究員であるフィオナ・キャラガー教授個人も、直感的なパーソナルサポートという点を高く評価し、このように述べている。
AIの急速な進歩のおかげで、たとえ認知症の初期症状が現れた人も、そのまま安全に充実した生活を送る機会を得られるようになりました。
このスマートグラスは、人間による介護の補完という位置付けであり、直感的なパーソナルサポート技術活用例の手本になります。
進行度に応じるニーズ予測機能が、認知症の人々の毎日の困難を軽減し、その家族にもさらなる安心感を与えるでしょう。
こうした新技術が、慣れ親しんだ家庭環境に身を置いたままでも、より長く自立した生活を送ることを可能にします
このAIメガネに現地メディアも注目。2026年3月21日にはThe Times と The Sunday Timesでも取り上げられている。
人生に恩恵をもたらす英国主導の研究
認知症は進行性の疾患であり、今のところ治療法はない。
現在イギリス(総人口約7000万人)における認知症患者数は約100万人で、2040年には140万人に達すると予測されている。
こうした中、イギリスの科学担当大臣ヴァランス卿(66歳)もこのスマートグラスを讃えている。
認知症は、英国全土で何百万人もの人々とその愛する人々に影響を与える恐ろしい病気。全国の革新者や科学者が、人々が当然受けるべき尊厳、ケア、サポートを提供する画期的な成果を上げていることを誇りに思います。
彼らの研究は、人生に真の意味での恩恵をもたらす英国主導の研究の素晴らしい一例といえるでしょう
初期の認知症に頼りになるスマートグラス
世界規模でいえば、人口約77億人に対し認知症の人は約5700万人(2019年時点)だが、2050年までには世界人口約97億人に対し、1億5000万人を超える見込みだ。
認知症といえば、一般に65歳以上の高齢者に多く見られる、徐々に低下の一途をたどる認知機能障害であり、加齢につれ有病率が上る病気として知られる。
ただし、ごく一部ながら、65歳未満で発症する若年性認知症もあるため、一概に年齢に伴うものとは言い切れない側面もある。
なお近年の医療現場では、認知症の前段階とされるグレーゾーン、軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)の早期発見・早期介入が提唱されており、MCI治療の研究が進められている。
MCIの兆候は、主に記憶の低下とされ、生活習慣の改善などで回復する患者もいるが、その根治はやはり模索の段階で、画期的な治療法が待たれるところだ。
References: Goodnewsnetwork[https://www.goodnewsnetwork.org/ai-glasses-for-dementia-sees-objects-with-labels-projected-on-lenses/] / Octodaydispatch[https://www.octodaydispatch.com/lifestyle/health/new-ai-glasses-can-help-dementia-patients-live-more-independently/article_1ee397d4-a1d1-5f3c-aa22-569f28023bb5.html] / WFMZ[https://www.wfmz.com/health/new-ai-glasses-can-help-dementia-patients-live-more-independently/article_41038a43-1c70-52cf-9d64-14ea1ca76f56.html]











