NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、太陽系にある彗星「「C/2025 K1」」が太陽の熱によって崩壊し、複数の破片に分裂する決定的な瞬間を偶然撮影することに成功した。
本来は別の天体を観測する予定だったが、技術的な理由で急きょ標的を変更した直後にこの希少な現象に遭遇したという。
アメリカのオーバーン大学の研究チームが発表したこの観測データは、崩壊からわずか数日後という史上最短のタイムラグで記録されており、太陽系誕生の謎を解く鍵として注目されている。
この研究成果は『Icarus[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S001910352600062X?via%3Dihub]』誌(2026年)に掲載された
偶然が重なりハッブル望遠鏡が彗星分裂の瞬間を撮影
NASAのハッブル宇宙望遠鏡が、彗星が複数の破片に分かれていく貴重な瞬間を偶然にも撮影することに成功した。
もともと研究チームは別の天体を調査する予定だったが、観測直前に技術的な制約が発生したため、急きょ標的を変更せざるを得なくなった。
そこで代役として選ばれたのが、今回の主役である彗星「C/2025 K1(ATLAS)」である。
この彗星は、太陽系の外から飛来した「3I/ATLAS」という恒星間天体とは全く別の、私たちの太陽系内に存在する天体だ。
標的を変えて観測を始めたまさにその時、彗星が崩壊を始めるという、天文学的にも極めて低い確率の幸運が重なった。
アラバマ州にあるオーバーン大学のジョン・ヌーナン博士は、「最高の科学は時として偶然に起こる」と、この奇跡的な発見について語っている。
太陽の熱に耐えきれず彗星が分裂
彗星「C/2025 K1」が崩壊した原因は、太陽への極端な接近による熱と負荷にある。
この彗星は、太陽に最も近づく地点である「近日点(きんじてん)」を通過した際、水星の軌道よりもさらに内側、つまり地球と太陽の距離の約3分の1という至近距離まで迫っていた。
氷と塵(ちり)が固まってできている彗星にとって、太陽の強烈な熱は本体を激しく加熱し、構造に大きな負担をかける。
近日点を過ぎた直後の2025年11月、限界を迎えた彗星の核(本体部分)は、少なくとも4つの大きな破片へと分裂した。
それぞれの破片は「コマ」と呼ばれるガスと塵の層に包まれており、ハッブル宇宙望遠鏡の極めて高い解像度は、それらが一つずつ離れていく様子を鮮明に記録した。
崩壊からわずか数日で観測できた天文学的な幸運
今回の観測が画期的なのは、彗星が分裂してからわずか8日後という、観測史上最短とも言えるタイムラグで撮影が行われた点にある。
通常、彗星の崩壊が確認されるのは発生から数週間から1ヶ月後であることが多く、壊れた直後の詳細な姿を捉えることは非常に困難だった。
しかし、ハッブルが偶然その場を観測していたことで、崩壊直後のタイムラインを正確に再現することが可能になった。
地上の望遠鏡では単なる明るい光の塊にしか見えなかったものが、ハッブルの鋭い視力によって、複数の破片へと分かれる物理的なプロセスとして捉えられたのである。
この迅速なデータ収集により、彗星の表面でどのような力が働き、どのような時間経過で壊れていくのかという物理現象の解明が進むと期待されている。
彗星内部の原始的な物質が太陽系の起源を解き明かす
彗星は、約46億年前に太陽系が誕生した当時の材料が凍りついたまま残っている「太陽系の残り物」のような存在だ。
しかし、その表面は長い年月をかけて太陽光や宇宙線(宇宙を飛び交う放射線)を浴び続けてきたため、性質が変化してしまっている。
今回の崩壊によって彗星が「割れた」ことで、表面の劣化していない内部の古い氷や塵が剥き出しになった。
オーバーン大学のデニス・ボーデウィッツ教授は、彗星が裂けることで、加工や変質を受けていない古代の物質を直接観察できるようになったと指摘する。
すでに地上からの分析では、この彗星は他の彗星に比べて炭素が著しく少ないという特徴も見つかっている。
ハッブルが捉えたこの貴重な姿を詳しく分析することで、私たちの太陽系がどのような物質から、どのようにして誕生したのかを探るための重要な手がかりが得られるはずだ。
References: Sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S001910352600062X?via%3Dihub] / NASA's Hubble unexpectedly catches comet breaking up[https://phys.org/news/2026-03-nasa-hubble-unexpectedly-comet.html]











