AIに助言を求めると、専門家のやる気を低下させ信頼関係を損なうとする研究結果
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 AIを使って専門家の意見を確認したり、助言を求める行為は、専門家の仕事に対する意欲を低下させ、信頼関係を損なう恐れがある。

 オーストラリアのモナシュ大学などの研究チームが発表した研究結果によると、専門家は自分の知識がAIと比較されることを「プロとしてのプライドを軽んじられた」と受け取り、相談者に対して否定的な感情を抱く傾向があることがわかった。

 相談者が人間に対してセカンドオピニオンを求めるよりも、AIに助言を求めたときの方が、専門家はより強い不快感を抱くという。

この研究成果は『Computers in Human Behavior[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563226000312]』(2026年)に掲載された。

AIに助言を求める行動が専門家のやる気を低下させる

 オーストラリア・モナシュ大学のジェリ・スパソヴァ博士と、アメリカ・南フロリダ大学のマウリシオ・パルメイラ教授の研究チームは、約1,000人を対象とした4つの実験を行った。

 本物の専門家と、専門家の役割を演じる「ロールプレイング」の手法を組み合わせて、相談者がAIを使用した場合と人間に相談した場合で、アドバイスをした側の心理がどう変わるかを比較調査したものだ。

実験1:本物の専門家が対象 現実世界で実際にアドバイス業務を行っている実務経験者の反応を調査。

実験2:金融アドバイザー(ロールプレイング) 参加者が「投資プランを提案するプロ」の役を演じ、顧客がAIに意見を求めた際の反応を調査。

実験3:旅行プランナー(ロールプレイング) 参加者が「旅行の計画を立てるプロ」の役を演じ、顧客がAIを下調べに使った際の反応を調査。

実験4:栄養士(ロールプレイング) 参加者が「食事指導を行うプロ」の役を演じ、顧客がAIを情報の裏付けに使った際の反応を調査。

 その結果、実際の専門家とロールプレイングの参加者の両方において、顧客がAIを利用したと知ると、その後の仕事への意欲が大きく低下することが判明した。

 この否定的な反応は、顧客が自分以外の「別の人間」にアドバイスを聞いた場合よりも、AIに聞いた場合の方がはるかに顕著に現れた。

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AIと比較されることで「自分たちの価値」が揺らぐと感じる

 アドバイスをする立場の人(専門家や、専門家の役割を演じた人)が、相談者のAI利用を嫌がる理由は、その立場としてのプライドが傷つくからだ。

 長年にわたって勉強し、スキルを身につけてきたプロはもちろん、その役割を任された人も、自分と「プログラムで動くAI」を同じように扱われることは、自分の価値を軽く見られたと感じてしまう。

 アドバイスをする側は、人間が経験から得た知恵には、AIには真似できない特別な価値があると考えている

 そのため、相談者がAIの意見を自分と同じように扱うと、アドバイザーは「自分の存在意義を否定された」ような嫌な気持ちになり、相手を助けようとする熱意が失われてしまうのだ。

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AIを利用する相談者は「能力や温かみが低い」と誤解される

 研究では、AIを利用する相談者に対する評価も悪化することが示された。

 実験の参加者は、AIに相談した人を、人間だけに相談した人と比較して「能力が低く、人間的な温かみに欠ける人物だ」と判断する傾向があった。

 なぜ「情報の裏付け」という知的な行動が、能力が低いと見なされるのか。

 アドバイザーの目には「自分の力で情報を判断できず、機械に頼りきっている」という依存心として映ってしまうからだ。

 また、まだ不完全な部分もあるAIを人間の言葉と同じように信じる姿が、「情報の価値を正しく見極める力が足りない」という評価につながってしまう。

 このように、AIを使って情報を確かめるという行動は、アドバイザーの目には「相手を信頼せず、冷淡な振る舞い」として映ってしまう。

 その結果、二人の間に築かれるべき良好な人間関係が阻害されてしまうのだ。

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補助的なAI利用であっても信頼関係は損なわれる

 この否定的な反応は、AIを最終的な決定手段ではなく、単なる「下調べ」や「補助的なツール」として使用した場合でも同様に発生する。

 アドバイザーにとっては、AIがどの程度関わったかに関わらず、自分の専門領域にAIが持ち込まれたという事実そのものが、相談者への意欲を削ぐ要因となるという。

 スパソヴァ博士らは、相談者がAIへ助言を求めたことを知ると、アドバイザーが相談者に対する態度を変えてしまう可能性があると指摘する。

 もちろんこれは検証実験であり、すべてのアドバイザーがそうであるとは限らない。

 だが、わずかな影響であっても、長期的には専門家との絆を弱め、質の高いサポートを得る機会を失わせる可能性があるかもしれない。

References: Sciencedirect[https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0747563226000312] / Using AI to verify human advice could damage your professional relationships[https://www.psypost.org/using-ai-to-verify-human-advice-could-damage-your-professional-relationships/]

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