新種の古代サイの化石を北極圏で発見、2300万年前の陸橋を渡り北米へ移動
2300万年前に生息していた古代サイのイメージ図 Image credit: <em>&nbsp;</em>Julius Csotonyi

新種の古代サイの化石を北極圏で発見、2300万年前の陸橋を渡...の画像はこちら >>

 カナダの北極圏で、2300万年前の新種のサイの化石が見つかった。この古代サイは、当時まだ陸続きだった北極を通ってヨーロッパから北米へ移動した可能性が高い。

 これまでは、このルートはもっと大昔に海に沈んで通れなくなったと考えられていたが、カナダ自然博物館などの研究により、北極が想像以上に長く「動物たちの通り道」だったことが判明した。

 この研究成果は『Nature Ecology & Evolution[https://www.nature.com/articles/s41559-025-02872-8]』誌に掲載された。

北極圏で2300万年前の新種のサイの化石を発見

 カナダ自然博物館の研究チームは、北極圏にあるデボン島のホートン・クレーターから、絶滅した新種のサイの化石を特定した。

 約2300万年前の中新世初期にこの地に生息していたこのサイは「エピアケラテリウム・イッチリク(Epiaceratherium itjilik)」と名付けられた。

 特筆すべきは、全身の骨の約75%(4分の3)が揃った状態で見つかったことだ。

 数千万年も前の動物は、バラバラの破片や数本の歯しか残らないのが普通だが、このサイは全身の形がわかるほど「驚異的な完成度」で保存されていた。

 これは、クレーター内にできた湖の底に沈んだことで、外気や他の動物から守られ、タイムカプセルのように密封されたからである。

[画像を見る]

角がなく小柄な古代サイの意外な姿

 この「北極のサイ」は、現代の私たちが知る姿とは大きく異なっていた。

 現代のインドサイと体格は似ているが、サイズはずっと小柄だった。

 肩までの高さは約1m、体重は約450kgと推定されており、現代の大きなサイ(体重2000kg以上)の4分の1ほどの重さしかない。

 また、鼻の上に「角」を持っていなかったのも大きな特徴だ。

 この個体は、奥歯のすり減り具合から、大人になりたての若さで死んだと考えられている。

 種名の「イッチリク」は、現地の先住民イヌイットの言葉で「霜(しも)」を意味する。

 かつて北極圏の厳しい自然の中で生きたこのサイに敬意を表し、イヌイットの長老であるジャーロー・キグクタック氏の助言を得て命名された。

[画像を見る]

陸橋を使って移動していた可能性が高まる

 この発見は、古代の動物たちがどのように世界へ広がったかという「生物地理学[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9C%B0%E7%90%86%E5%AD%A6]」の常識を塗り替えた。

 解析の結果、このサイは数百万年前にヨーロッパに住んでいた種と最も近い親戚であることが判明した。

 このサイの仲間は、ヨーロッパからグリーンランドを経由し、北米へと渡ってきたと考えられる。

 ここで重要なのが、かつて北米とヨーロッパを陸続きにしていた「トゥーレ陸橋」の存在だ。「トゥーレ北大西洋陸橋」とも呼ばれるこの巨大な陸の道は、動物たちが海を越えて別の大陸へ移動するためのルートだった。

 これまでの定説では、この道は約5600万年前までしか機能していなかったと考えられていた。

 しかし、2300万年前の地層からこのサイの化石が見つかったことで、陸橋が想像以上に長く残り、機能していた可能性が浮上した。

 当時の北極圏は、哺乳類が大陸をまたいで移動し、世界中で種類を増やしていくための「重要な中継ルート」だったのである。

[画像を見る]

かつての北極圏は緑豊かな温帯の森

 現在、デボン島は一年中凍土に覆われた寒冷な砂漠のような場所だが、2300万年前は全く異なる「温帯の森」が広がる豊かな環境だった。

 地質学的な証拠により、当時はサイのような大型の哺乳類が十分に暮らしていけるほど、気候が穏やかだったことが分かっている。

 この貴重な化石が私たちの目に触れることになったのは、「クリオタベーション(凍結撹乱)」という自然現象のおかげだ。

 地面の中の水分が凍ったり溶けたりを繰り返すことで、土がかき混ぜられ、深く眠っていた骨が地表へと押し上げられたのだ。

 1986年にこの新種のサイの最初の破片が見つかってから約40年。

その後の粘り強い調査によって全身の約75%もの骨が集まり、凍った大地の下に隠されていた地球の進化の物語が、解き明かされようとしている。

References: Scientists found a rhino in the Arctic and it changes everything[https://www.sciencedaily.com/releases/2026/03/260324024245.htm] / Nature[https://www.nature.com/articles/s41559-025-02872-8] / Museum scientists describe an extinct rhino species from Canada’s High Arctic[https://nature.ca/en/about-the-museum/media-centre/a-rhino-from-the-arctic/]

編集部おすすめ