古代の異常現象がきっかけで、20億年前の天然原子炉の存在が明らかに
容器に入ったウラン。U-235が除去されたU-238 Image credit: <a href="https://www.flickr.com/photos/47445767@N05/54041461134/" target="_blank">James St. John</a>/<a href="https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Uranium_(Element_-_92)_2.jpg" target="_blank">Wikimedia Commons</a> CC BY 2.0

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 1972年、アフリカのガボン共和国オクロ鉱山で採れたウラン鉱石に、自然ではありえないほどウランの量が減っている異常が見つかった。

 フランスの研究者がその原因を詳しく調べた結果、約20億年前に天然の原子炉が動いていた痕跡だとわかった。

 人類が誕生するはるか前に、地球は自然の力だけで核分裂を起こしていたのである。

アフリカで見つかったウラン鉱石の異常

  1972年、アフリカのガボン共和国オクロ近郊の鉱山で採れたウラン鉱石を調べていたフランスの物理学者、フランシス・ペラン博士ら研究チームは、奇妙な異常に気づいた。

 核分裂を起こしやすいウラン235の割合が、自然界で知られている値よりわずかに少なかったのである。

 それまで、天然ウランに含まれるウラン235の割合は、月の試料や隕石を含め、どこで測っても約0.720%で一定だと考えられていた。

 本来変わらないはずの数値がずれていたため、研究チームは驚きを隠せなかった。

 ウラン235が減っているなら、どこかで核分裂が起きて消費されたと考えられるからだ。

 だがここで彼らは大きな疑問にぶつかった。

 人工的な核反応が起きた形跡がないのだ。いったいこの鉱石の中で何が起きたのか?

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天然原子炉の存在を示す証拠

 ペラン博士らは、異常の原因を突き止めるために鉱石を詳しく分析したところ、なんと、鉱石の中から「核分裂生成物」が見つかった。

 核分裂生成物とは、原子が分裂したあとに残る物質であり、核反応が起きた証拠になる。

 つまり、この鉱石では過去に実際に核分裂が起きていたことになる。

 しかも、その核分裂は人工的なものではなかった。自然の中で起きていたのである。

 この事実から博士らは、約20億年前、この場所で天然の原子炉が動いていたと結論づけた。

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20億年前に核分裂が起きていた理由

 では、なぜ20億年も前にそんなことが起きたのか。

 いちばん大きな理由は、約20億年前には天然ウランの中に今より多くのウラン235が含まれていたことにある。

 現在の地球では、天然ウランに含まれるウラン235は少なすぎて、自然のまま連鎖的な核分裂が続くことはない。だが当時は条件が違っていた。

 そこに十分な量のウラン鉱床があり、水が流れ込む環境がそろうと、核分裂が続く条件が整う。

 水は中性子の動きを遅くして、核分裂を起こしやすくする働きを持つ。

 現代の原子炉でも、水は反応を助ける重要な役割を持つが、オクロでもそれに似た仕組みが自然にできあがっていた。

 こうした条件がそろったことで、この場所では自然のまま核分裂が繰り返し起きていたと考えられている。

 研究によれば、この天然原子炉は1日に約8回、約30分間活動し、その後約2.5時間停止する周期を繰り返していた。

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オクロ天然原子炉が示した地球の力

 オクロの発見はその後も研究が続けられ、オーストリアのウィーン自然史博物館で隕石コレクションとインパクタイト標本を担当する地質学者ルドビク・フェリエール氏らは、現地調査や追加の分析によって検証を重ねていった。

 その結果、ウラン235の減少と核分裂生成物という証拠を同時に説明できる現象は、やはり天然の核分裂しかないという結論に至ったことを、2019年、国際原子力機関(IAEA)のプレスリリース[https://www.iaea.org/newscenter/news/meet-oklo-the-earths-two-billion-year-old-only-known-natural-nuclear-reactor]で発表した。

 フェリエール氏は、「すべての可能性を排除しても、天然の核分裂が起きた以外には説明のしようがない」と語っている。 

 フェリエール氏のような地質学者にとって、地球の遠い過去に由来する試料を調べることは、地球の太古の出来事が記された記録を読み解く作業に近い。

 「岩石は本のようなものだ」とフェリエール氏は語っている。「表紙を見れば基本的な情報はわかる。だが、本当の物語がわかるのは、中を開いたときだ」と。

 かつて説明できなかったウランの異常は、いまでは自然が生み出した現象として理解されている。

 人類が原子炉を作るはるか前に、地球はすでに自ら核分裂を起こしていたのである。

References: Meet Oklo, the Earth’s Two-billion-year-old only Known Natural Nuclear Reactor[https://www.iaea.org/newscenter/news/meet-oklo-the-earths-two-billion-year-old-only-known-natural-nuclear-reactor] / “This Cannot Be Possible”: How an Ancient Anomaly Led Scientists to Discover a Two-Billion-Year-Old Nuclear Reactor in Africa[https://thedebrief.org/this-cannot-be-possible-how-an-ancient-anomaly-led-scientists-to-discover-a-two-billion-year-old-nuclear-reactor-in-africa/]

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