200点を超える古代のイヌ科動物の骨を最新技術で分析した結果、約1万4200年前のヨーロッパ最古の犬は、地元のオオカミではなくアジア側のオオカミを祖先としていたことが判明した。
イギリスのフランシス・クリック研究所などのチームによると、アジアで人間に飼い慣らされた犬の集団が、最終氷期の終わりにヨーロッパへ移動してきたという。
この古代犬たちの血筋は絶えることなく、現代のヨーロッパ系統の犬たちが持つ遺伝子の約半分を今も占めている。
この研究成果は『Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10112-7]』誌(2026年3月25日付)に掲載された。
骨の形では判別不能な犬とオオカミをDNAで特定
犬とオオカミはもともと同じ仲間だが、野生のオオカミが人間と共生する道を選び、長い時間をかけて人間と暮らせる性質や姿に変化したものが「家畜化」された犬だ。
大昔の犬は今の犬よりもずっとオオカミに近い姿をしていた。
そのため、発掘された骨の形を見るだけでは、専門家でもどちらなのか判断に迷うことがよくあった。
そこでフランシス・クリック研究所などの研究チームは、骨の中に残されたわずかな「DNA(細胞の設計図)」を読み取る最新技術を使った。
スイスやトルコなど、ヨーロッパ各地の遺跡から集めた216個もの古い遺骸を調べた結果、その3分の2について、犬なのかオオカミなのかを正確に見分けることに成功した。
中には「形から犬だと思われていた骨が、実は野生のオオカミだった」というケースもあり、遺伝子を調べることが事実を突き止める唯一の手段となったのである。
1.4万年前のヨーロッパの犬はアジアがルーツ
今回の調査で、スイスのケスラーロッホ洞窟で見つかった約1万4200年前の犬が、遺伝学的に「犬」であると正式に確認された。
これは世界でも最古級の犬の記録だ。
だが、このヨーロッパ最古の犬の遺伝子を詳しく解析すると、当時のヨーロッパにいた地元のオオカミとはつながりがなかったことがわかった。
そこで犬の先祖をたどったところ、当時、東ユーラシア(今のアジア側)にいたオオカミの集団に行き着いた。
このことは、犬はアジアのどこかでオオカミから枝分かれして家畜化され、その後にヨーロッパへと広がってきたことを示している。
さらに興味深いことに、1万4200年前の時点で、この犬の遺伝子にはすでに「ヨーロッパ独自の血筋」といえる特徴が現れていた。
アジアで誕生した犬がヨーロッパへ移動し、そこでアジアの仲間とは別のグループとして枝分かれするまでには、長い年月が必要になる。
この移動と変化にかかった時間を逆算すると、人間がオオカミを飼い慣らして犬へと変えていった歴史は、1万4200年よりもさらに数千年以上前のことだったことがうかがえる。
狩猟から農耕へ変化しても元の犬は生き残った
ヨーロッパの人類の生活が「狩猟」から「農耕」へと大きく変わった時、人と共に生きる犬はさらに増えていく。
約1万年前の新石器時代、西アジアからヨーロッパへと農耕が広まる際、農業を営む人々が自分たちの犬を連れて大規模に移動してきたのである。
研究チームが詳しく分析したところ、もともとヨーロッパにいた「狩りの相棒」としての古い犬たちは、新しくやってきた農耕民の犬に追い出されることはなかった。
地元の犬と新しい犬は混ざり合い、共存していたことがわかった。
人間が生活スタイルを変えても、以前からいた犬たちを自分たちのグループに受け入れ続けた結果、古い血筋は絶えることなく現代まで受け継がれることになったのである。
現代の犬に受け継がれる古代犬の遺伝子
最終氷期の終わりに生きていた古代の犬たちの血筋は、今も絶えていない。
現代のヨーロッパを起源とするレトリバーなどの犬種を調べたところ、彼らが持つ遺伝子の約半分は、農耕が広まる前からヨーロッパにいた「狩猟採集民の犬」に由来することが判明した。
残りは、後から来た農耕民の犬や、その後の長い歴史の中で各地から持ち込まれた犬たちの影響によるものだ。
犬は、人間が農耕を始めるよりも前に家畜化された唯一の動物なのだ。
References: Largest dog ancient DNA study reveals the identity of the earliest dogs in Europe[https://www.eurekalert.org/news-releases/1120699] / Nature[https://www.nature.com/articles/s41586-026-10112-7]











