最近、中国の小中学校の教師たちが、バーチャルペットを利用した、革新的な「ペット育成プログラム」をクラスで導入しているという。
これは生徒の行動で「ポイント」をゲットし、バーチャル空間で飼っているデジタルペットに「餌を与え」て育てることができるというものだ。
宿題の提出や日頃の親切な行いなど、生徒一人ひとりの行動がポイントとして還元され、ペットを育てるための経験値が上がる。
学習意欲の向上と癒しの両方の効果が期待できるとして、今後も取り入れる学校は増えていきそうだ。
生徒一人ひとりがバーチャルペットを飼う教室
新学期が始まったとき、杭州市の勝藍中学で教える劉倩倩先生は、クラスの生徒一人ひとりに、それぞれ1匹ずつペットを与えた。
ペットと言っても、犬や猫、ハムスターや小鳥や金魚といった、生きているペットではない。仮想空間にのみ存在する、デジタルなバーチャルペットたちなのだ。
種類は実に多彩で、ラグドールやミニブタ、サモエド犬、フクロモモンガなど現実にいる生き物のほか、青龍や白虎といった神獣まで含まれている。
私は生徒一人ひとりが好きなペットを選べる、無料のプラットフォームを利用しています。
学校での行動によってポイントを獲得し、それを使ってペットに餌を与えたり、成長させたりする仕組みです。
これには学習意欲を高めるだけでなく、癒やしの効果もあります。ペットを飼い始めてほぼ1週間で、多くの生徒が実際に勉強への意欲を高めています
ポイント制でペットを育てるシステム
ペットを飼っている生徒たちは、劉先生に宿題や課題などをチェックしてもらい、その都度ポイントをつけてもらう。
ポイントをもらうと、生徒たちは教室の大型スクリーンに表示された画面から自分のペットを探して、ポイントをそれぞれの経験値として加えるのだ。
例えば宿題をちゃんとやって来ると+1ポイント、先生に名指しで褒められると+1ポイントがもらえる。
勉強に関することだけではない。自発的にクラスメートを助けると+2ポイント、落とし物を届けると+5ポイントといった具合である。
もちろん、宿題を忘れたり、何か悪い行いをしたりすると、ポイントは減点されることになる。
生徒たちはこうしてゲットした経験値を使ってペットに餌を与え、進化・成長させていくのだ。
もともと劉先生のクラスでは、バーチャルペット導入前も、ポイント制を採用していたという。もらったポイントは、学期末にお菓子などと交換していたそうだ。
今学期はそれをさらに発展させて、ポイントでバーチャルペットを育てる仕組みにしたのだという。
インタラクティブ性が高くなり、生徒たちもより楽しめるようになりました
46種類のペットそれぞれに8つのレベルが用意されている
現在、このプラットフォームには46種類のペットが用意されているそうだ。それぞれのペットには全部で8段階のレベルがあり、それぞれ見た目も変化する。
レベル1から2に上がるには40ポイントが必要で、導入から1週間の時点で、すでに3人がレベル2に到達。さらに数人があと一歩のところまで来ているという。
算数係の呉くんは、現在46ポイントでクラス1位。彼が育てているミニブタは、目を閉じたレベル1の姿から、哺乳瓶を抱えたレベル2の姿へと「進化」した。
自分の性格がちょっとブタに似てる気がして、すぐこれに決めました
学級委員長の沈くんはフクロモモンガを選んだ。以前、モモンガを飼っていたことがあり、この種の動物が好きだからという。
自分のペットを見るたびにすごくうれしくなるし、みんなに見せたくなります
また、兪くんは伝説上の神獣、狻猊(さんげい)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%BB%E7%8C%8A]をペットにした。
冬休みに『龍生九子』の歌を聴いて、狻猊が龍の五番目の子だって知ったんです。それでこれにしました。
今37ポイントで、あと少しでレベルアップなんですけど、先週うっかり5点減点されちゃって…。あれがなければもうレベル2だったのに
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勉強の意欲向上にも確実につながっている
家で2匹の猫を飼っているという徐さんは、自分のバーチャルペットに敢えてラグドールを選んだ。
うちにはキジトラと三毛がいるので、今回は飼ったことのない種類にしました。目が大きくてすごくかわいいし、バーチャルペットってまるでガチャみたいで、成長したらどんな姿になるのか楽しみなんです
彼女は前の学期はあまり成績が良くなかったのだが、今学期はこのラグドールのために頑張ると決めたという。
青龍をペットにした趙くんは、お昼をすぐに食べ終えると、ノートを持って先生のもとへ行き、課題の確認を受ける。
早く提出したら1ポイント、直したら1ポイント、さらに総合科目で2ポイントゲットです
もともとは数学の直しに時間がかかるタイプだったが、ペット導入後はやる気が一気に上がり、早めに宿題を終えるようになったという。
また、個性を重視する生徒もいる。多肉植物が好きな張さんは、唯一の植物系ペット「多肉精霊」を選択。
陳さんは家でウサギを2匹飼っているが、今回は茶トラの猫を選び、「クラスで選んでいるのは自分だけで特別感がある」と話す。
自分のペットを最高レベルにまで育て上げた生徒は、期末に小さなプレゼントを受け取ることができるそうだ。
家では飼えないペットを飼うことも可能
今のところ、生徒たちの評判は上々だという。学校で堂々と「電子ペット」を飼えることに、特に喜んでいるのは動物好きの生徒たちだそうだ。
家で猫を飼っている子もいれば、飼いたくても時間や環境がなくて難しい子もいます。だからバーチャルペットはとても人気があるんです
犬が好きでも家で飼うことができない生徒も、ボーダーコリーやサモエドなど、大型犬を含めたさまざまな種類から好きな愛犬を選べるのだ。
この取り組みは他教科の教師からも好評で、英語教師の饒璐先生は「新学期ごとに違うタイプを選べるのも新鮮でいいですね」と話している。
劉先生と饒先生は、以前心理教育の授業を見学したことがあり、バーチャルペットには楽しさだけでなく癒やしの効果があり、学習ストレスの軽減にもつながると考えているのだそうだ。
批判や懸念もあるが保護者には好評
もちろん、批判がないわけではない。この方法は、一時的に生徒のやる気を引き出すのは間違いない。
だが、「自分のため」ではなく「ペットを育てるため」に勉強するという、動機づけを外部に求めている点を懸念する声も浮上している。
ペットの育成自体が目的になり、点数やペットの状態ばかりが生徒たちの関心事になると、本来の学びから離れてしまうのではないかという懸念もある。
また、このシステムでは、宿題をきちんと済ませたり、誰かに親切にしたりといった行動が電子ペットの「餌」として還元される。
つまり、自分の行動次第ではペットが空腹になったり、最悪の場合は飢え死にしてしまったりするのである。
この仕組みが罪悪感や不安を生み、子供に心理的な負担を与えることにもなりかねない。
では、保護者はどう考えているのだろうか。バーチャルペットとはいえ、そのお世話をすることが勉強のモチベーションになることを歓迎する声も多いようだ。
- 人は、自分が大切に思うことがある時に最もやる気を出すものですからね
- うちの子は自分の飼っているイルカがクラゲしか食べられないのがかわいそうに思い、一生懸命勉強してレベルアップさせて、今では魚も食べられるようになったんですよ
劉先生は、生徒たちにバーチャルペットを飼育させることについてこう語る。
こうした方法で、生徒が自分自身の内側から学ぶ意欲を見つけてくれたらと思っています。遊びながら学ぶことで、より良い効果が出るかもしれません
中国の学校で広がる、ポイント制のバーチャルペット育成システム。みんなはどう思うだろうか。
References: New China school system rewards diligent pupils with ‘digital pets’ to motivate them[https://www.scmp.com/news/people-culture/trending-china/article/3347866/new-china-school-system-rewards-diligent-pupils-digital-pets-motivate-them?module=top_story&pgtype=section]











