泣けば気分が良くなるのは本当か?涙を流す理由によって異なるとする最新研究
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 涙を流すことで気分が落ち着いたりすっきりすると言われているが、本当なのだろうか。オーストラリアの最新研究により、涙の効果は「泣いた理由」によって大きく異なることが判明した。

 孤独による涙は負の感情を長引かせる一方で、感動の涙には時間差で心を落ち着かせる効果があることがわかった。涙を流す理由によって、感情の回復速度が左右されるのだという。

 この研究成果は『Collabra: Psychology[https://online.ucpress.edu/collabra/article/12/1/157541/217562/Effects-of-Crying-on-Affect-An-Event-based]』誌(2026年2月25日付)に掲載された。

涙の効果は泣いた理由で異なる

 「泣けばスッキリする」という通説は、常に正しいわけではない。

 オーストリアのカール・ラントシュタイナー大学(Karl Landsteiner University)のシュテファン・シュティーガー教授らによる最新の研究で、泣いた後の気分の回復は、その涙の「きっかけ」に支配されていることがわかった。

 特に自分自身の孤独感や、手に負えない問題に圧倒されて流した涙は、スッキリするどころか負の感情を増幅させる。

 こうした自分自身の苦悩が原因で泣いた場合、ポジティブな感情は急激に減少し、泣き止んでから1時間が経過しても元の状態に戻らない。

 自分の内面的な悩みが原因の涙は、その日の気分を一日中沈ませてしまう可能性が高いのだ。

 泣くことによる感情への影響は比較的短期間だが、その質は理由によって決定づけられる。

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スマホアプリで106人の日常生活と涙の時間を追跡

 今回の調査は、研究室での実験ではなく、人々のリアルな日常生活に焦点を当てた。

 研究チームはオーストリアとドイツの成人106人を対象に、4週間にわたってスマートフォンアプリで感情の動きを記録する調査を行った。

 これは「経験サンプリング法(Experience Sampling Method)」と呼ばれる手法で、感情が動いた瞬間に回答してもらうことで、後から思い出す際の記憶の曖昧さを排除した。

 参加者は涙を流すたびに、その理由や泣いた時間の長さ、その時の気分の良し悪しをアプリに入力した。

 さらに、アプリは泣いた直後だけでなく15分後、30分後、60分後にも感情の状態を報告するよう自動で促した。

 この緻密な追跡により、合計600回以上の泣いたエピソードを分析。泣き出しから回復までのプロセスをリアルタイムで捉えることに成功した。

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涙を流す頻度や理由は性別によって異なる

 研究の結果、涙を流す頻度や理由には男女で明確な差があることがわかった。

 1ヶ月間に泣く回数は、女性が平均約6回だったのに対し、男性は約3回弱にとどまった。

 また、女性の方が男性よりも泣く時間が長く、その感情もより激しい傾向にあった。

 泣くきっかけにも違いが見られた。

 女性は孤独感や、大切な人との人間関係のトラブルなど、対人関係の悩みで泣くことが多い。

 一方で男性は、自分がどうしようもできない無力感を感じた時や、映画や動画などの「メディア」を視聴した際の反応として泣く傾向が強かった。

 全体で見ると、現代人が最も頻繁に涙を流すきっかけは、映画や動画といったメディアによる刺激が多かった。

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外部刺激からの涙は少し遅れて心を落ち着かせる

 すべての涙が逆効果なわけではない。

 映画や動画などのコンテンツを見て流した涙や、他人の親切に触れて流した「調和の涙には、心をなだめる効果が認められた。

 こうした外部からの刺激による涙は、泣いた直後こそ一時的に気分が沈むものの、15分から1時間ほど経過すると、負の感情が大幅に減少していくことがわかった。

 特に他人の温かさに触れて流す涙は、少し時間が経ってから心の平穏を取り戻す手助けをしてくれる。

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負の感情の涙でも、理由によって回復の度合いが変わる

 また、同じ負の感情であっても、その種類によって回復速度は異なる。

 自分自身の「無力感」で泣いた場合は、一時的に気分が落ち込むものの、15分以内には元の気分の水準まで回復する傾向があった。

 しかし、「孤独感」や「圧倒される感覚」で泣いた場合、1時間経っても気分は晴れず、その日の残りの時間もネガティブな感情が支配してしまうことがわかった。

 今回の研究では「泣く行為」そのものが気分を変えたのか、それとも「出来事の強さ」が影響したのかという課題も残されている。

 だが、泣くことがプラスに働くかどうかは「自分の悩みに閉じこもって泣いているのか、それとも外の世界の出来事に共感して泣いているのか」という因果関係に大きく左右されるといえる。

References: Does crying actually make you feel better? New psychology research shows it depends on a key factor[https://www.psypost.org/does-crying-actually-make-you-feel-better-new-psychology-research-shows-it-depends-on-a-key-factor/] / Effects of Crying on Affect: An Event-based Experience Sampling Study of Adult Emotional Crying[https://online.ucpress.edu/collabra/article/12/1/157541/217562/Effects-of-Crying-on-Affect-An-Event-based]

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