自分の脳を「新たな体」へ移植して永遠に生きる。そんなSF映画のような計画を、アメリカのスタートアップ企業が進めている。
あらかじめ自分自身のコピーを作り、意識を司る脳のパーツだけが育たないよう遺伝子を操作して「予備の体」として保管しておくという。
クローン技術で作成した若い肉体に、自分の記憶を持つ脳を移植することで実質的に「不死」を実現する。まさに『攻殻機動隊』の電脳化に近い計画だ。
自分の脳を「新品のクローン体」へ移し替える
アメリカの企業「R3 Bio」が進めているのは、自分自身のコピー(クローン)を「予備の体」として作り出す計画だ。
この計画の目的は、古くなった自分の体から「脳」を取り出し、若くて健康なクローンの体へ移し替えることにある。
これは、アニメ『攻殻機動隊』で描かれる、脳という「ゴースト(意識)」を新しい「義体(ぎたい)」へ移し替える世界を、生身の体で実現しようとするものだ。
自分と同じ遺伝子を持つクローンであれば、移植したときに体が拒絶反応を起こす心配もない。
50歳の脳を20歳のクローン体へ移植すれば、経験や記憶はそのままに、身体能力だけを若返らせることができる。
また、事故や病気で体に損傷を負った場合も、新たな人生をやり直すことが可能となる。
乗り物を乗り換えるように新しい肉体を手に入れることで、永遠に生き続けようという発想だ。
意識を持たない肉体だけのクローンをどうやって作るのか
R3 Bioは長年、その活動の多くを秘密にしてきた「ステルス・スタートアップ(秘密裏に活動する企業)」だ。
彼らが情報を限定しているのは、この計画が「生命倫理に対する世間の激しい反発」を招き、研究そのものが中止に追い込まれることを恐れているからだという。
肉体の受け皿となるクローンは、遺伝子操作によって「意識を持たない状態」で誕生させる。
脳という器官をなくすのではなく、人間が物事を考えたり感じたりするために必要な「大脳半球(だいのうはんきゅう)」という脳のメインパーツを作らせない。
一方で、呼吸をしたり心臓を動かしたりといった、生きていくために最低限必要な脳の構造(脳幹など)だけは維持される。
いわば、心や意識が存在しない「生きた肉体だけの状態」だ。
創設者のジョン・シュレンドルン氏は、脳の大部分を欠いて生まれてくる子供の医学スキャンの例を挙げ、「脳がほとんどなくても体は維持できる」という持論を投資家たちに説いている。
人工子宮が未完成の現在は、報酬を支払った代理母にこのクローンを産ませるという手順まで検討されている。
脳が壊れたらどうなる?
ここで一つの疑問が浮かび上がる。もし事故や病気で「自分の脳」そのものがダメージを受けてしまったらどうなるのだろうか。
『攻殻機動隊』の世界では、脳の情報をデジタル化(電脳化)して保存やコピーができるが、今回の計画では、脳そのものを修理したり、記憶をバックアップしたりする技術については触れられていない。
そのため、もし脳自体が致命的なダメージを受けた場合にどうなるかは、現時点では「不明」といえる。
今のところ判明しているのは、あくまで健康な脳を「肉体という受け皿」へ移し替えるところまでだ。
現在、意識のないサルのクローンを開発中
現在、R3 Bioが公に進めている事業は、動物実験の代わりとなる「意識のないサルのクローン」の開発だ。
彼らはこれを「サルの臓器袋」と呼び、従来の動物たちに苦痛を感じさせる動物実験の代替えになると主張している。
そして内部文書によれば、このサルの研究は将来的に「人間」へ応用するためのステップであることがわかっている。
サルの脳から「意識を司る部分」だけを欠損させる技術が確立されれば、それはそのまま「人間の予備の体」を作る技術へとつながる。
R3 Bio側は人間への応用を公には否定しているが、極秘会議では「老化を打ち負かすための全身交換」という言葉が使われていたという。
攻殻機動隊の世界が現実のものとなる日は来るのだろうか?
References: Inside the stealthy startup that pitched brainless human clones[https://www.technologyreview.com/2026/03/30/1134780/r3-bio-brainless-human-clones-full-body-replacement-john-schloendorn-aging-longevity/] / The Founders Behind R3 Bio’s Humane Biotech Bet[https://startupmafia.eu/the-founders-behind-r3-bios-humane-biotech-bet]











