スペインの遺跡で3500年前の織機が、木製の枠組みや植物繊維の紐まで残った状態で発見された。
火災による天井の崩落がこの織機を密閉したことで、本来は腐りやすい有機物が炭化した状態のまま保存されていたのだ。
スペイン・アリカンテ大学によるこの発見は、当時の技術革新である「繊維革命」の実態を証明する極めて貴重な資料となる。
この研究成果は『Antiquity[https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/evidence-of-a-warpweighted-loom-in-the-bronze-age-settlement-of-cabezo-redondo-southeast-spain/D92BF7852BD04416A7943AA87FB87AD6]』(2026年3月16日付)に掲載された。
3500年前の火災による天井の崩落が奇跡の保存につながる
約3500年前、スペインのカベソ・レドンドという集落で大規模な火災が発生した。
この火災は当時の住居を焼き尽くす悲劇だったが、考古学にとっては奇跡的な「タイムカプセル」を作り出した。
激しい火によって建物の天井が崩れ落ち、その下に置かれていた織機が外部の空気から遮断された状態で埋まったのである。
通常、木材や紐などの植物繊維は数千年も経てば腐って消えてしまう。
しかし、今回は火の熱で木材が炭化(蒸し焼きの状態)し、さらに崩れた天井が「ふた」の役割を果たした。その結果、織機の木枠やエスパルトという草で編まれた紐が、当時の配置のまま現代まで残ることになった。
日本では縄文時代、スペインでは青銅器時代
3500年前は日本では縄文時代(後期)にあたる。
当時の日本の人々は、高度な技術で形作られた「縄文土器」を使い、漆(うるし)を塗った美しい装飾品や木製品などを作る優れた加工技術を持っていた。
衣類に関しては、アカソやカラムシといった植物の繊維を編み上げる「編布(あんぷ)」という手作業による生産が行われていた。
一方、地中海沿岸のスペインでは青銅器時代となり、日本とは異なる技術体系が発達していた。
彼らは「青銅」という金属素材を使い、今回発見された「織機」という装置を実用化していた。
これは、乾燥した環境の中、羊毛などの資源から、より効率的に布を生産するための技術的な選択であったと言える。
44個の重りが証明する「垂直式織機」の高度な設計
研究チームが遺跡を調査したところ、粘土で作られた円筒形の重りが44個、固まって見つかった。
これらは一つ約200gで、中央に糸を通す穴が開いている。
この配置から、これが「垂直式の重り付き織機」であることが判明した。
壁に立てかけた木枠の上から縦糸を垂らし、下端に重りをつけてピンと張る仕組みの道具だ。
木材を詳しく調べると、地元のアレッポマツを用途に合わせて使い分けていた。
年輪の解析から、わざわざ大きく育った長寿の木を選んで切り出し、太い柱には長方形、横棒には丸形と、緻密に加工していたことがわかった。
重りの穴には糸の跡まで残っており、当時の人々がどのように糸を張り、布を織っていたのかという具体的な手順を科学的に裏付けることができた。
共同作業を支えた女性たちと「繊維革命」
この織機の発見は、青銅器時代のヨーロッパで起きた「繊維革命」を象徴している。
当時は羊毛の生産が本格化した時期で、より細く、より複雑な「ツイル(綾織り)」などの布を作ることが可能になっていた。
こうした高度な技術は、単一の要因ではなく、家畜の飼育や道具の進化、そして社会の変化が組み合わさって起きたものだ。
織機が見つかったのは複数の家が共有する屋外の広場で、近所の人々が集まって協力して布を織っていた。
さらに、当時の女性たちの遺体を調べると、前歯(門歯)が特徴的な形にすり減っていた。
これは、織物をするときに口を使って繊維を固定したり、糸を噛み切ったりしていた証拠だ。
3500年前のスペインに住んでいた女性たちは、この広場に集まり、語り合いながら一生懸命に布を織っていた。
今回の発見は、古代の技術だけでなく、そこに生きた人々の確かな日常を現代に伝えている。
References: Researchers find 3,500-year-old loom that reveals key aspects of textile revolution in the Bronze Age[https://www.eurekalert.org/news-releases/1121741] / UA researchers find 3,500-year-old loom that reveals key aspects of textile revolution in the Bronze Age[https://web.ua.es/en/actualidad-universitaria/2026/marzo2026/23-31/ua-researchers-find-3-500-year-old-loom-that-reveals-key-aspects-of-textile-revolution-in-the-bronze-age.html] / Evidence of a warp-weighted loom in the Bronze Age settlement of Cabezo Redondo (south-east Spain)[https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/evidence-of-a-warpweighted-loom-in-the-bronze-age-settlement-of-cabezo-redondo-southeast-spain/D92BF7852BD04416A7943AA87FB87AD6]











