中東情勢で火葬用の燃料が買えない。葬儀屋が遺体をガソリンスタンドに持ち込む事態に(タイ)

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 タイのチョンブリー県で、火葬のための燃料を売ってもらえなかった葬儀業者が、ガソリンスタンドに遺体の入った棺桶を持ち込むという事案が発生した。

 中東情勢の激化により、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡では航行が大きく制限され、事実上の封鎖状態と報じられている。

 ここを通過する石油に頼っているアジアの多くの地域では、燃料不足への危機感から、

 ため、燃料不足という状況が、タイの一般市民の葬儀にまで影響を及ぼしている現実が明らかになった。

火葬用の燃料を売ってもらえず強硬手段に

 プリーチャー・ンガーンカセームさん(48)は、チョンブリー県バンブン郡にある仏教寺院で、火葬を担当する葬儀業者である。

 仏教国タイの葬儀は仏教寺院で営まれることが多いが、その後の火葬は寺院に所属する葬儀業者が担当する。

 たいていは寺院に火葬場が併設されており、葬儀が終わった後はプリーチャ―さんのような業者が遺体を引き取って、その火葬場で荼毘に付すのである。

 プリーチャーさんは2005年からこの仕事をしていて、当初は木炭を使用していたが、その後ディーゼルを燃料とする電気式の火葬炉に切り替わったという。

 以来、彼は同じガソリンスタンドでディーゼル燃料を購入し続けており、持ち込んだ容器に燃料を入れてもらうのが日常だったという。

 2026年3月29日、彼はショッキングな動画を自身のFacebookに投稿した。この馴染みのガソリンスタンドに、彼は遺体の入った棺桶を持ち込んだのだ。

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 プリーチャーさんによると、彼はいつものようにこのガソリンスタンドを訪れ、燃料を容器に入れてほしいと頼んだが、スタッフはこれを拒否したという。

 その理由は、現在の中東情勢にあった。ホルムズ海峡封鎖に伴う燃料の販売制限を理由に、何度説明しても売ってもらえなかったそうだ。

火葬に使うためだと説明しましたが、許可してもらえませんでした。毎回、火葬のたびにいつもこのガソリンスタンドで燃料を買っているんです。

他のガソリンスタンドに行ったことなんてなかったんですよ

 どうやら、燃料危機を見越した買い溜めを疑われたようなのだ。そこで彼は、自分の主張を証明するため、翌朝もう一度ガソリンスタンドを訪れた。

 トラックの荷台には棺に入った遺体を乗せ、さらに空の燃料容器も3つ用意して行ったという。

 ガソリンスタンドに到着すると、彼はガソリンスタンドの従業員の前で棺の蓋を開け、遺体を見せて火葬のための燃料が緊急で必要であることを説明した。 

 映像の中で、プリーチャ―さんは従業員に向かってこう言っている。

今は、この人を火葬しないといけないんだよ。そのために燃料がどうしても必要なんだ。

店長を呼んでくれ。ほら、実際に持ってきて見せてるだろ。俺は自分の「仕事」そのものを持ってきているんだよ。

いつもここで買ってるんだよ。なのに売ってくれないんだ。

だからこうして、現物をここに持って来るしかなかったんだよ。ほら、ちゃんと見せただろ?

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 突然、こんなものを見せられた従業員は、困惑するしかなかっただろう。彼はこの後その場を離れ、店長と相談しているようだった。

 そして数分後に戻ってきたときには、従業員はプリーチャ―さんの希望通り、燃料を売ると伝えたそうだ。

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タイの葬儀事情とは

こんなことをしなければならなかったのは今回が初めてです。買い溜めを防ごうとしているのは理解していますが、私たちは本当に火葬のために燃料が必要なんです

 タイでは葬儀に数日かけることも多いため、亡骸には通常、伝統的な防腐処理が施されている。

 今回のこのご遺体が、亡くなってからどのくらい経っていたのかはわからないが、すぐにでも火葬しなければならない状況ではあったようだ。

このご遺体はもう、体液がにじみ出てきている状態だったんです。だからすぐに火葬しないといけなかったんです

 プリーチャ―さんによると、このご遺体は遺族の同意のもと火葬されることになっていたという。

 遺族は経済的に困窮しており、さらに病院側も新たな遺体を収容するため早期の引き取りを求めていた。

 また当時は墓地の整理作業が行われており、土葬はすぐには行えない状況だった。そのため、このご遺体は火葬せざるを得なかったという。

 燃料代については善意の寄付によって賄われていたが、何度説明しても燃料の販売を断られたため、やむを得ずこのような事態に至ったのだそうだ。

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旧正月を控えたタイの燃料事情に不安も

 プリーチャー氏の投稿はメディアやSNSで拡散され、ネット上ではさまざまな反応が寄せられていた。

  • あのスタンドの店員、これって絶対トラウマになるだろ
  • タイの人たち、頑張ってくれ。アセアンのみんなで、この馬鹿げた戦争を乗り越えよう
  • ネタニヤフとトランプの戦争だろ? なんでそれが俺たちの問題になるんだ? なんで俺たちが代償を払わなきゃいけないんだよ?
  • どこから燃料を買うかまで外国に決めさせてたら、こういうことになるんだよ。自立するのは簡単じゃない
  • これは亡くなった人に対してあまりにも失礼だ
  • 火葬される遺体を見せるなんて、プロとしてどうなんだ?
    • 仕方なかったんだよ。仕事で必要なのに、ずっと燃料を売ってもらえなかったんだから
    • 店員が彼の話を信じなかったからだよ。必要な許可証まで持ってたのに、それでも拒否されたんだ
  • とりあえず埋葬して、あとで火葬すればよかったのに
    • ここは熱帯で、腐敗がすごく早いんだよ。それに普通は自宅で弔ったあとに火葬に送るから、すぐやらないといけない

 なお、この事件から4日後の4月2日にプリーチャ―さんは、一仕事終えたあとの様子をFacebookに投稿している。

 説明には「いつものガソリンスタンドに立ち寄って、一服してご飯を食べているところ」とあり、笑顔のプリーチャ―さんが写っている。

 なのでおそらくだが、無事に燃料を売ってもらえた後は、ガソリンスタンドとも後腐れなく、良い関係を継続しているのではないだろうか。

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 タイはもうすぐ、ソンクラーンと呼ばれる旧正月を迎える。日本の正月や中国の春節同様、多くの人が故郷に帰省して新年を祝うのだ。

 この時期、燃料需要の急増が懸念されているが、タイ当局は燃料の供給量を増やすと発表しており、ソンクラーン中に必要な燃料は十分確保されるとしている。

 今年のソンクラーンは4月13~15日だが、帰省ラッシュは6日ごろから始まる見込みだという。燃料不足を受けて、今年は移動を控える動きも出ているようだ。

 ソンクラーンといえば、水かけ祭りとしても有名である。タイの人々が大きな混乱なく、お正月を祝えるといいのだが…。

References: Undertaker brings coffin to pump after refused fuel Please credit and share this article with others using this link: https://www.bangkokpost.com/thailand/general/3226489/undertaker-brings-coffin-to-pump-after-refused-fuel. View our policies at http://goo.gl/9HgTd and http://goo.gl/ou6Ip. © Bangkok Post PCL. All rights reserved.[https://www.bangkokpost.com/thailand/general/3226489/undertaker-brings-coffin-to-pump-after-refused-fuel]

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