オーストラリアで暮らす女性と、くちばしが曲がったカササギフエガラスの間に、やさしい友情が芽生えた。
生まれつきのクチバシが曲がっていてエサを獲るのが難しいカササギフエガラスは、3年にわたり自分を支えてくれた女性を親友として認め、毎朝特別な歌を届けているのだ。
厳しい自然の中で親を亡くした鳥が、種を超えて人間と心を通わせる姿は、見る者の心を潤わせてくれる。
引っ越し後、カササギフエガラスと信頼を築いた女性
アイリーン・ダニエルさんが、オーストラリアのクイーンズランド州の現在の住まいに引っ越してきたのは3年前のことだ。
アイリーンさんの家の近くにある木には、カササギフエガラスの一家が巣を作っていた。
カササギフエガラスは、オーストラリア全土に生息する体長40cmほどの鳥だ。
白と黒の鮮やかな羽が特徴で、非常に知能が高いことで知られている。
しかし、繁殖期になると自分の縄張りを守るために、通りかかる人間を空から急降下して攻撃する「スウーピング」という行動をとるため、現地では恐れられることもある。
アイリーンさんは、この鳥たちと争うのではなく、仲良くなりたいと考えた。
彼女は「カササギフエガラスはやさしく接しエサをくれる人間を敵ではないと認識して覚える」という説を耳にし、それを実行してみることにした。
アイリーンさんは玄関先の芝生に、鳥たちが好むミルワームという虫を少しずつ置き始めた。すると、鳥たちはアイリーンさんを一度も攻撃することなく、友人として受け入れたのである。
くちばしの曲がったひな鳥の誕生とカササギ一家を襲った悲劇
アイリーンさんがエサを出し続けてしばらく経つと、親鳥のペアにヒナが誕生し、幼い我が子を連れて、彼女のもとへ食事に訪れるようになった。
カササギフエガラスの子は、巣立った後も数ヶ月から長い場合には1年ほど親鳥と一緒に行動し、エサの獲り方を教わったり、守ってもらったりする習性がある。
その家族の訪問の中で、アイリーンさんは子鳥の異変に気づいた。生まれつきくちばしが大きく曲がっていたのだ。
本来、鳥のくちばしは上下が重なるように閉じるが、この鳥のくちばしはハサミのように左右に食い違っていたのだ。
地面をつついて虫などを探して餌を捕る彼らにとって、くちばしの変形は命に関わる重大なリスクである。
アイリーンさんは、自力で食事を摂るのが難しいこの鳥を心配し、見守り続けた。
しかし、さらなる悲劇が家族を襲う。
父親である鳥が車に轢かれて死んでしまい、その後、母親もどこかへ飛び去って戻ってこなくなったのだ。
家族を失い、障がいを抱えてひとりぼっちになった若い鳥にとって、アイリーンさんは世界で唯一の頼れる存在となったのである。
毎朝届く特別な歌はカササギフエガラスからの感謝のしるし
現在、アイリーンさんが仕事に出ようと家を出ると、このくちばしの曲がった鳥はすぐに彼女を見つけて駆け寄ってくる。
アイリーンさんは、鳥が野生動物としての自立心を失わないように配慮しながらも、彼が自力で獲るのが難しい分の食事を補ってあげている。
この優しさに応えるように、鳥はアイリーンさんに素晴らしい贈り物を届けるようになった。
彼女が外に出ると、いつも同じフレーズの美しい歌を歌って迎えてくれるのだ。
「この子は間違いなく、私を呼ぶための特別な鳴き声で歌ってくれているのです」とアイリーンさんは語る。
カササギフエガラスは、複雑な旋律を操る優れた歌い手として有名だが、人間の顔を個別に識別し、誰が自分に親切にしてくれたかを何年も記憶できる高い認知能力と社会性を持っている。
アイリーンさんへの歌は、彼なりの深い信頼と感謝の表現なのである。
3年の月日が育んだ種を超えた友情が教えてくれること
アイリーンさんが始めた小さな親切から始まったこの交流は、3年という月日を経て、かけがえのない絆へと成長した。
くちばしが不自由なこの鳥にとって、アイリーンさんは、生きるための希望をつなぐ「命綱」にもなっている。
アイリーンさんは、彼が自力で地面をつついてエサを探そうと苦戦している姿をいつも見守っている。
だからこそ、彼が自分を信頼して駆け寄り、歌を歌ってくれる時間は、彼女の日々の中でもっとも輝く瞬間となっている。
オーストラリアの厳しい自然の中で、障がいを抱えながらも懸命に生きる一羽の鳥と、それを支える一人の女性。
二人の間にあるのは、言葉こそ交わせなくても、お互いを大切に想う尊い友情がある。
カササギフエガラスが見せるこうした愛情深い行動は、動物たちが私たちが想像する以上に豊かな心を持っていることを物語っている。











