イスラエルの謎めいたストーンサークル「幽霊の輪」は1つではない。28の類似遺跡をAIが発見
東方のストーンヘンジ、幽霊の輪「ルジュム・エル・ヒリ」Image credit:M. Birkenfeld

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 イスラエルにある約5000年前の巨石なストーンサークル「幽霊の輪」は、唯一無二の存在ではなかった。

 中東のストーンヘンジとも称されるこの巨大な石の輪には、周囲に28もの類似した遺跡が存在することが最新のAI解析で判明した。

 イスラエルなどの国際研究チームが20年分もの衛星画像を分析して突き止めたこの事実は、これまで単独の謎とされてきた遺跡が、実は広大なネットワークの一部だったことを示している。

 この研究成果は『PLOS One[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0339952]』誌(2026年3月18日付)に掲載された。

「幽霊の輪」をめぐる数千年の謎

 イスラエルのゴラン高原(シリアとの国境付近にある岩だらけの高台)には、約4万トンもの石を積み上げて作られた巨大な円形遺構、ミステリーサークルがある。

 正式名称は「ルジュム・エル・ヒリ」だが、イギリスの巨石遺構になぞらえて「中東のストーンヘンジ」、あるいはヘブライ語で「ギルガル・レファイム」とも呼ばれている。

 この「レファイム」という言葉には、聖書に登場する「「死者の霊(幽霊)」と巨人の種族」という2つの意味があるため、この遺跡は「幽霊の輪」とも「巨人の輪」とも称されてきた。

 この場所を含む地中海東部の沿岸地域は「レバント地方」と呼ばれ、古くから多様な文明が交差してきた土地だ。

 1968年の発見以来、この遺跡は地域に1つしかない特殊なものと考えられており、目的については「儀式の場」「お墓(埋葬塚)」など様々な説が飛び交ってきた。

 「天文台」という説が有力だったが、近年の研究で地殻変動によるズレが判明し、その説は否定されている

 そして今回、この巨大な輪は、1つではなく複数存在することが発見された。

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20年分の衛星画像とAI解析が未発見の円形遺構を特定

 なぜこれまで長い間、他の遺跡が見つからなかったのか。

 その理由は、多くの遺構が激しく風化して崩れており、地上の調査ではただの岩場と区別がつかなかったからだ。

 イスラエルのテルアビブ大学やベン=グリオン大学、イスラエル古物庁(IAA)などからなる国際的な研究チームは、「リモートセンシング(遠隔探査)」という、人工衛星から地上を精密に調べる技術を導入した。

 チームは2004年から2024年までの20年間にわたる衛星画像を収集し、AI(人工知能)による解析を行った。

 AIは、季節によって変わる草木の茂りや、太陽の角度で生じる複雑な影を取り除き、地表の形状を正確に抽出できる。

 この技術により、これまでは見落とされていた28箇所の円形遺構を特定することに成功した。

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半径26km以内に集中。巨大な輪を囲むネットワーク構造

 新しく確認された28箇所の遺構は、すべてルジュム・エル・ヒリから約26km以内の狭い範囲に位置していた。

 これらの遺構はどれも円形で、中心となるルジュム・エル・ヒリと形式上の共通点を持っている。

 ただし、新発見の遺構は本家よりも規模が小さく、作りも簡素で劣化が進んでいた。

 これまでこの遺跡が何のために作られたのか、解釈が分かれてきた理由は「比較対象がなかったから」だ。

 しかし、これほど多くの類似遺構が同じエリアで見つかった事実は、当時の人々がこの地域一帯で共通の文化や儀礼を共有していた可能性を強く示唆している。

 1つの大きな中心施設を、小さなコミュニティが囲むような、広大な社会ネットワークが見えてくる。

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未知の文明が描いた巨大遺構。現地調査による真相解明へ

 これらの構造物を誰が、何の目的で作ったのかという謎はまだ完全には解けていない。

 考古学者の推定では、これらの遺構は3500年から6500年前(平均して約5000年前)に作られたと考えられている。

 しかし、その年代の幅があまりに広いため、現時点では特定の民族やグループを断定するには至っていない。

 今回の解析では、さらに離れたガリラヤ地方やレバノンにも似た遺構がある可能性が示された。

 今後はAIによる分析だけでなく、実際に現地を掘り起こす詳細な発掘調査を進める必要がある。

 それにより、これら28の遺構がすべて同じ文化によって作られたのか、それとも別の人々が作ったのかという、レバント地方の歴史の真実が明らかになるだろう。

References: Reassessing Rujm el-Hiri: Aerial imagery and stone circles in the proto-historic Southern Levant[https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0339952] / Famous 5,000-Year-Old Stone Circle No Longer Unique After Dozens of Similar Discoveries[https://arkeonews.net/famous-5000-year-old-stone-circle-no-longer-unique-after-dozens-of-similar-discoveries/] / Rujm el-Hiri, Israel’s Mysterious “Stonehenge of the East” Is Not Alone, New Research Reveals[https://thedebrief.org/rujm-el-hiri-israels-mysterious-stonehenge-of-the-east-is-not-alone-new-research-reveals/]

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