今やスマホひとつで、好きなだけ画像を加工できる時代になった。一瞬で、思い描いていた理想の自分になれてしまう。
趣味でやる分にはいいが、まるで別人のように加工した写真を政治家が選挙活動で使用したら、それはどう考えてもアウトだろう。
オランダのロッテルダムで、選挙の際に使用される候補者写真を、ほぼ別人のように加工してしまったとして、所属政党が候補者を除名する事案が発生した。
別人のように加工した写真を選挙活動に使用した立候補者
ロッテルダムの地域政党「リーフバール・ロッテルダム」は、加工された写真を選挙運動に使用したとして、パトリシア・ライヒマン氏を党から除名する決定をした。
彼女は2026年3月18日に行われた、ロッテルダムのブライドルプ・ベルフポルダー・リスクワルティール地区評議会選挙で771票を獲得。評議会のメンバーに当選した。
だがこの選挙に際し、地元の新聞に掲載された彼女の写真が、実際のライヒマン議員本人とは似ても似つかない別人のように加工されていたというのである。
報道によると、ライヒマン氏自身が地元紙に送った写真が、ロッテルダム市のWebサイト[https://www.rotterdam.nl/kandidaten-wijkraad-blijdorp-bergpolder-liskwartier]に掲載されている写真とまるで別人のように見えるという。
実際のロッテルダム市のサイトを見てみよう。赤で丸を付けたのがライヒマン氏の写真と名前である。
拡大した写真がこちら。彼女は現在59歳だそうで、この写真も年齢相応の見た目の女性だと言えるだろう。
そしてこちらが問題の、ライヒマン氏が選挙の際に用意した、加工済みの写真と言われるものだ。
彼女は選挙時、この写真を地域の新聞『BBL Wijkkrant』紙に送り、紙面に掲載してもらったという。
何となく面影があるような気がしないでもないが、年齢が20歳くらい若返っているとしか思えない。目の色が違うとの指摘もある。
この2枚の写真を比較して見せられた地元の人たちは、こんな感想を漏らしていた。
- これは別人に見えますね
- もし写真だけで投票するとしたら、下の方かな。こっちのほうがきれいに見えるし。でもそれでいいのかはわからないけど
- これはやりすぎ。人はありのままであるべきです
- まあ、男なら見た目がいいほうに流れがちですよね
- 確かにうまくやったとは思います。でも正しいことだとは言えないよ
- でも見た目が良ければ票が入るっていうのが現実ですよね
ライヒマン氏自身は、この写真に写っているのが確かに自分だと主張している。
地元紙に掲載された写真は解像度が低すぎました。だから、インターネットのソフトを使って、解像度を上げたんです
だが、解像度を上げたからといって、若返ったり別人のようになったりするものだろうか。
彼女はまた、持病のための薬を服用しているため、現在の自分の容姿が「少し違って見える」ので、写真によって印象が異なるほか、実年齢より若く見えるとも述べている。
所属政党は彼女の除名を決定し、議席も辞退するよう要請
リーフバール・ロッテルダムはオランダの全国紙『Algemeen Dagblad(AD)[https://www.ad.nl/binnenland/verkiezing-van-wijkraadslid-zorgt-voor-commotie-in-rotterdam-ik-ben-dat-echt~ae60f2e1/]』の報道を根拠に挙げて、次のような声明を発表[https://www.leefbaarrotterdam.nl/nieuws/statement-over-wijkraadsverkiezingen/]した。
この写真は、明らかにAIによって強く加工されており、現実を正確に反映したものではありません。
私たちは、この加工された写真がリーフバール・ロッテルダムの選挙キャンペーン資料や、ロッテルダム市の広報活動には一切使用されていないことを強調しておきます。
この写真は、あくまで彼女自身が個人的な立場で、地区紙に送付したものにすぎません
さらに声明は、ライヒマン氏が住所を偽っていた可能性についても触れている。
選考過程およびこの記事に関するやり取りの中で、この候補者はブライドルプ地区に住んでいると繰り返し主張していました。
しかし、ADの調査ではこれとは異なる結果が示されており、実際には別の地区に住んでいる可能性があるとされています
AD紙は近隣住民の話として、彼女自身はその地域には住んでいないと報じている。その住所には彼女の息子が、彼女名義の家に住んでいるのだそうだ。
オランダでは地区の評議会メンバーに立候補する際、ロッテルダム市内に住民登録があれば、該当の地区に居住している必要は必ずしもないそうだ。
つまり今回事態がこじれている原因は、ライヒマン氏が別人のように加工した写真を使い、虚偽の届け出をしていたという、「信頼の問題」である。
リーフバール・ロッテルダムは、今回の事態を遺憾に思います。我々は候補者(ライヒマン氏)に対し、評議会メンバーの席を放棄して党に返還するよう求めましたが、この要請は聞き入れられませんでした。
そのため理事会としては、この候補者との関係を断たざるを得ない状況となりました
ライヒマン氏自身は今のところ、辞任に応じる意向はないようだ。党からの辞任要請には法的な強制力はない。
そのためリーフバール・ロッテルダムは、あくまでも党内の判断として彼女を除名し、評議会メンバーの辞任を求める流れになったとみられる。
生成AIによる画像加工への規制は今のところない模様
このニュースはSNSでも広く拡散され、ネット上にはさまざまな意見が寄せられていた。
- 59歳でこの顔ってことは、その政党は相当「保守的」だったってことだな
- 出会い系サイトの女性なんてまさに同じことしてるよね。実際に会ったら別人でわからないやつ
- 一番悲しいのは、見た目で投票する人がいるってこと
- これって笑えないよ。政治家なんだから模範になる立場なのに、もっと自覚するべきだろう
- これは多くの人が思ってる以上に引っかかる「罠」だと思う。結局、中身じゃなくて見た目だってことを証明してる
- プロフィールで嘘をつくヤツは、地元の人にも平気で嘘つくに決まってる
- 有権者って結局かなり単純だよな。政策じゃなくて顔で選ぶんだ
- 俺たちは常に騙されてるし、政治家は実際より良く見せようとする。見た目で投票するのはおかしいって言うけど、問題は美人かどうかじゃなくて「信頼できそうに見えるか」なんだよ。犯罪者みたいに見えないかどうか。俺たちの代表なんだから、ある程度見た目で判断されるのは仕方ない
ちなみに日本の場合も、画像の加工に対する法的な規制や決まりなどは今のところないみたいだ。
これまでにも古い写真をポスターに使ったといった例はあったみたいだし、肌の色や影を調整したり、顔のシミを消したりといった程度の加工は行われているんじゃないだろうか。
だが、AIを使って画像自体を別人のように加工するという発想に、法律はまだ追いついていないといったところか。
AIで簡単に画像加工ができるようになってしまった今日、どこからが不正や虚偽に当たるのか、早急にルール作りをする必要があるのかもしれない。
References: Dutch Politician Expelled from Her Party for Editing Her Publicity Photo Too Much[https://www.odditycentral.com/news/dutch-politician-expelled-from-her-party-for-editing-her-publicity-photo-too-much.html]











