ブラジルの道路で、ある家族がゆっくりと道路を横断中のナマケモノと遭遇した。動きの遅いナマケモノはなかなか進まず、このままでは車に轢かれてしまう危険があった。
家族が助けようと近づいたところ、驚くことに背中には小さな赤ちゃんがしっかりとしがみついていた。
家族はそっと母子を抱き上げると、道路脇の森まで運び、安全な木につかまらせた。
ナマケモノの親子が道路の路肩で発見される
今年の初め、ブラジルに住むクローデシー・アマラルさん一家は、自宅近くをドライブしていた。
すると道路上で、何かがゆっくりと動いているのが目に入った。車を止めて近づいてみると、それはミユビナマケモノだった。
よく見ると、ナマケモノは1匹ではなかった。小さな赤ちゃんが、母親の背中にぴったりとしっかりとしがみついていたのだ。
母子そろって、道路上という危険な場所にいたのだ。
ナマケモノが道路にいた理由と地上の危険性
ミユビナマケモノは、中央アメリカから南アメリカにかけての熱帯雨林に広く生息する動物だ。ブラジルはその分布域のほぼ中心にあたる。
一生のほとんどを木の上で過ごし、食事も睡眠も、さらには出産までも樹上で行う。地上に降りるのは、排泄のときと、別の木へ引っ越すときだけだ。
では、なぜこの母子は道路の上にいたのだろうか。
ブラジルでは1960年代以降、アマゾンを縦断・横断する道路の建設が急速に進んだ。
この母子もおそらく、次の木を目指して道路を横断しようとしていたのだろう。
問題は、ナマケモノの地上での移動速度だ。
後ろ足の筋肉がほとんど発達していないため、地上では歩くことができず、前足で体を引きずるようにしか進めない。
樹上では木の枝につかまる力を活かして動けるが、平らな地面の上ではその力が使えないのだ。
そのため、走り抜けるトラックのドライバーが気づいたときにはもう手遅れになりかねない。
しかも地上はナマケモノにとって天敵だらけだ。
樹上ではジャガーやピューマといった大型肉食獣に見つかりにくいが、地上に降りた瞬間に格好の標的になってしまう。
野生のミユビナマケモノの死因の半数が、地上に降りたときに天敵に襲われたことによるという報告もある。
道路の横断は、ナマケモノにとって文字通り命がけの行為なのだ。
父親がナマケモノ母子を抱き上げ、安全な木へと運ぶ
危険を察知したクローデシーさんの夫が、すぐに行動に移った。
ナマケモノをそっと両手で抱き上げると、背中にしがみついた赤ちゃんごと、道路脇の森まで運んでいった。
そして母子が安全に過ごせる木を見つけ、しっかりとつかまらせた。
その一部始終をとらえた動画には、赤ちゃんをしっかり背負ったまま木の幹につかまる母ナマケモノの姿が映っている。
ナマケモノの母親だけが担う献身的な子育て
ミユビナマケモノの母親は、生まれた赤ちゃんを約6ヶ月間、ほぼ24時間体制で自分の体に抱えて育てる。
最初の6ヶ月間、赤ちゃんは母親の胸にしがみついて過ごし、日中はこまめに少量ずつ母乳を飲む。生後わずか1週間ほどで、赤ちゃんは母親の口のまわりの葉をかじり始め、何を食べればよいかを母親から直接学んでいく。
子 育てをするのは母親だけだ。父親は育児に一切関与しない。
母親は最長で12ヶ月間、たったひとりで赤ちゃんを育て上げる。やがて赤ちゃんが独り立ちできるようになると、母親は自分のなわばりを赤ちゃんに譲り、自らは隣接する森へと去っていく。
ほとんどの哺乳類では子どもが親のなわばりを離れて独立するが、ミユビナマケモノでは母親の方が去るという、非常に珍しい別れ方をするのだ。
この日、道路でクローデシーさん一家に出会った母ナマケモノも、背中の赤ちゃんをしっかりと守りながら、次の木を目指して懸命に進んでいた。
道路の建設や森林の分断といった人間の活動が、ナマケモノの暮らしをじわじわと脅かし続けている。











