月に水は存在するのか?最新研究で最も可能性の高い場所が絞り込まれる
アルテミスIIミッションで撮影された月の表面 Image credit: NASA

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 これまでの研究で、月に水のある証拠は次々と明らかになっている。月の水は液体ではなく、永久に太陽の光が届かない極付近のクレーターに氷として存在していると考えられている。

 だが、それがどこに、どれだけあるのかは、長年の謎だった。

 アメリカとイスラエルの国際研究チームが30億年以上にわたる月の歴史を分析した結果、南極付近の古くて暗いクレーターほど氷が豊富に存在する可能性が高いことが明らかになった。

 2026年4月2日、NASAのアルテミスIIのミッションで4人の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船が打ち上げられ、54年ぶりに月の周辺を有人飛行し、地球へ帰還する途上で飛び込んできた、胸躍るニュースだ。

 この研究成果は『Nature Astronomy[https://www.nature.com/articles/s41550-026-02822-9]』誌(2026年4月7日付)に掲載された。

月の南極は氷の貯蔵庫

 月には大気も磁場もほとんどなく、太陽の光と熱が直接降り注ぐ。昼間の表面温度は120℃を超え、液体の水は瞬く間に蒸発してしまう環境だ。

 しかし月の南極付近には、特別な場所がある。クレーターの底に、何十億年もの間、太陽の光が一度も届いたことのない領域がある。

 科学者たちはこれを「コールドトラップ」と呼ぶ。内部の温度はマイナス157℃以下に保たれており、迷い込んだ水の分子が蒸発せず氷として積み重なっていく。

 なぜそんな場所が生まれるのか。

 現在の月の自転軸の傾きは約1.5度と、地球(約23.5度)に比べてほぼゼロに近い。

 そのため極付近のクレーター内部には、永遠に太陽が差し込まない領域ができる。

この構造が、月の南極を「氷の貯蔵庫」にしている。

 NASAが2009年に打ち上げた月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター」に搭載された観測装置「LAMP」は、こうしたクレーターの一部に氷が存在する可能性を示すデータを送り返してきた。

 だが、氷の分布にはばらつきがあり、なぜクレーターによって氷の量が大きく異なるのか、その理由は長い間わからないままだった。

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古く暗いクレーターほど氷が多い

 コロラド大学ボルダー校の惑星科学者ポール・ヘイン准教授と、イスラエルのワイツマン科学研究所の惑星科学者オデッド・アハロンソン博士らの国際研究チームは、月の歴史を巻き戻すことでこの謎に迫った。

 ルナー・リコネサンス・オービターに搭載された温度計測装置「ディバイナー(Diviner)」の月面温度データとコンピューターシミュレーションを組み合わせ、クレーターがどのように変化してきたかを推定した。

 ここで鍵となるのが、月の傾きの歴史だ。

 月の自転軸の傾きははるか昔はもっと大きく、数十億年かけて現在のほぼゼロに近い状態に落ち着いてきた。

 現在は永久に日陰になっているクレーターでも、過去には太陽が差し込んでいた可能性がある。

 シミュレーションで導き出したコールドトラップのリストをLAMPの観測データと照らし合わせた結果、最も長く日陰であり続けたクレーターほど氷が多い可能性が高いことが明らかになった。

ヘイン准教授は、月で最も古いクレーターに最も多くの氷が存在する可能性が高いことを示し、月が30億年から35億年もの長い期間にわたってほぼ継続的に水を蓄積し続けてきたと説明する。

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最も氷の多いクレーターの候補

 この発見は同時に、巨大な彗星の衝突が一度に大量の水をもたらしたとする「一撃説」を否定するものでもある。

 もしその説が正しければ、新旧のクレーターに関係なく氷は均等に分布するはずだからだ。

 しかし実際には古いクレーターほど氷が多い可能性が高く、水は長い時間をかけてじわじわと積み重なってきたと考えられる。

 チームが注目しているのが、月の南極近くに位置するハワース・クレーター(Haworth Crater)だ。

 30億年以上にわたって日陰が続いてきたと推定されており、大量の氷を蓄えている最有力候補の一つだとヘイン准教授は述べた。

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月の水はいったいどこからやってきたのか

 では、月の水はどこからやってきたのか。今回の研究では起源を特定するには至らなかったが、可能性のある経路はいくつか挙げられている。

 1つ目は火山活動だ。はるか昔、月が火山活動をしていた時代に、内部に含まれていた水が地表へ運ばれた可能性がある。

 2つ目は彗星や小惑星の衝突で、水を含む天体が衝突した際に放出された水分子が極付近のコールドトラップに流れ込んだと考えられる。

 3つ目が太陽風だ。

 太陽から絶え間なく放出される水素イオンの流れが直接月面に降り注ぎ、月面の酸素と反応して水に変換されることがある。

 太陽風を通じて絶え間なく水素が月に降り注いでおり、その一部が月面で水に変換されることがあるとヘイン准教授は説明する

 起源はおそらく一つではなく、これらが組み合わさって30億年以上かけてじわじわと氷が積み重なってきたというのが、現時点での最も有力な見方だ。

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月の氷が利用できると宇宙探査が進む

 今回の研究結果は、将来の月探査において重要な意味を持つ。

 月の氷は宇宙飛行士にとって飲料水として使えるだけでなく、水素と酸素に分解すればロケットの燃料と酸化剤になる。

 地球から大量の水を運ぶコストを考えれば、月で水を調達できることは将来の深宇宙探査の実現可能性を大きく左右する。

 地球以外の場所で利用可能な形の水を見つけることは、天文学における最も重要な課題の一つだとアハロンソン博士は語っている。

 ヘイン准教授は現在、氷を含む可能性のあるクレーターを詳細に観測するための新型赤外線カメラ「L-CIRiS」を開発中で、NASAは2027年後半に月の南極付近へ配備する計画だ。

 最終的に月の水の起源という謎を解くには、現地でサンプルを採取し、地球に持ち帰って分析する必要がある。

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 折しも、月との距離は急速に縮まりつつある。

 現在アルテミス計画が進行中だ。

 日本時間2026年4月2日、NASAのアルテミス計画で4人の宇宙飛行士を乗せたオリオン宇宙船が打ち上げられた。

 4月6日に月の重力圏に突入し、4月7日午前8時2分頃には地球から約40万6770kmという人類史上最も遠い地点に到達、アポロ13号が1970年に樹立した記録を56年ぶりに更新した。

 月の裏側を通過するフライバイを成功させたオリオン宇宙船は現在地球への帰路についており、日本時間4月11日午前に米カリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に着水する予定だ。

 1972年のアポロ17号以来54年ぶりの有人月周辺飛行となったこのミッションに続き、2028年にはアルテミスIVで月の南極付近への有人着陸も計画されている。

 月と地球を行き来する時代が近づくほど、月での水の確保は欠かせない課題となる。今回の研究は、その答え探しとなるかもしれない。

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References: Water on the moon? New study narrows down the mostly likely locations[https://www.colorado.edu/today/2026/04/07/water-moon-new-study-narrows-down-mostly-likely-locations] / Observational constraints on the history of lunar polar ice accumulation[https://www.nature.com/articles/s41550-026-02822-9]

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