マップス彗星が太陽に引き裂かれ本体を失う劇的な最期を遂げる
Image by Istock <a href="https://www.istockphoto.com/jp/portfolio/NazariiNeshcherenskyi?mediatype=photography" target="_blank">Nazarii Neshcherenskyi</a>

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 2026年1月に発見されたマップス彗星は、日本時間4月4日夜に太陽に最接近することから、肉眼でも見えるほどの輝きを放つのではないかと期待されていたが、その強力なパワーに引き裂かれ崩壊してしまった。

 太陽の猛烈な熱と重力の渦に巻き込まれ、氷と塵でできた本体が耐えきれず粉砕されたのだ。

 NASAなどの観測衛星は、本体を失い塵の尾だけが漂う劇的な最期の姿を捉えている。

 今世紀最大級の天体ショーになるという夢は、宇宙の過酷な環境を前に儚く散る結果となった。

マップス彗星、太陽の近くで散る

 2026年1月13日、チリのアマチュア天文家たちが運営する「MAPSサーベイ」によって発見されたマップス彗星(C/2026 A1)は当初から注目を集めていた。

 近日点で太陽の極めて近くをかすめるように通る「サングレイザー[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC]」という特殊な軌道を持っていたからだ。

 彗星の本体は、水や二酸化炭素が凍った氷に、真っ黒な砂や塵(ちり)が混じり合った「汚れた雪だるま」のような塊だ。

 太陽に近づくと氷が勢いよく蒸発し、一緒に吹き出した塵が光を反射して、巨大で美しい尾を作り出す。

 マップス彗星は太陽の極限まで攻め込むコースだったため、活動がピークに達すれば、昼間の青空の中でも光り輝くと予測されていた。

 しかし、日本時間4月4日23時頃、太陽表面から16万2000kmという場所を通過した際、あまりの熱と重力に耐えきれず、氷の塊は粉々に砕け散ってしまった。

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巨大な彗星が分裂して生まれた「クロイツ群」の宿命

 国立天文台[https://www.nao.ac.jp/news/blog/2026/20260402-maps.html]の解説によると、マップス彗星は「クロイツ群」という有名な彗星のグループに属している。

 これは、過去に存在した一つの巨大な彗星が太陽に接近した際にバラバラに分裂し、その破片が再び太陽へと戻ってきた天体の集まりだ。

 1965年9月18日未明(日本時間)に日本で発見され、実際に昼間の太陽のすぐ横で輝く姿が目撃された「池谷・関彗星(C/1965 S1)[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E8%B0%B7%E3%83%BB%E9%96%A2%E5%BD%97%E6%98%9F_(C/1965_S1)]」もこのグループの一員である。

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 当初、マップス彗星は2011年に明るく輝いたラブジョイ彗星を上回る明るさだったため、無事に生還できるのではないかと期待されていた。

 しかし、ジェイムズ・ウェブ宇宙望遠鏡による精密な観測で、本体である「核(かく)」の直径がわずか0.4kmほどしかないことが判明した。

 時速約160万kmという猛スピードで、数百万度に達する太陽大気「コロナ」の中へ飛び込んだ彗星にとって、そこはあまりにも過酷な地獄であったのだ。

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観測衛星が捉えた本体のない「幽霊のような尾」の正体

 地上の観測者からは太陽の眩しさで見ることはできなかったが、太陽観測衛星「SOHO」は、その悲劇的な最期を鮮明に記録していた。

 公開された映像には、明るい彗星が太陽の裏側へ向かって突き進んだ後、反対側から「本体」を失い、ただの塵の雲となって現れる様子が映っている。

 彗星の核が完全に破壊され、後に残されたのは、粉々になった破片がほうきで掃いたような筋状になって漂う塵の雲だけだった。

 この状態は、本体が存在しないのに尾の成分だけが漂うことから「ヘッドレス・ワンダー(頭のない驚異)」と呼ばれる。

 しかし、その幽霊のような輝きも長くは続かず、破片はすぐに宇宙空間へ拡散した。大彗星への道は、太陽という圧倒的なエネルギーを前に断たれてしまったのである。

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次なる主役は「パンスターズ彗星」 4月後半の夜空に期待

 マップス彗星の消滅は残念なニュースだが、天体観測の楽しみはまだ続く。

 4月中旬から22日頃に、「パンスターズ彗星(C/2025 R3)」が見頃を迎える

 この彗星は日本時間4月20日の午前中に太陽へ最も接近するが、マップス彗星よりも遠い約7460万kmという安全なコースを通過する。

 そのため、太陽の熱で壊れるリスクが低く、今度こそ彗星が夜空を彩る姿が見られるかもしれない。

 日の出1時間前の東の低空、高度10度から20度付近に注目だ。

 4月17日の新月前後は月明かりの影響もなく、双眼鏡を使えばそのぼんやりとした姿や尾を観察できる絶好のチャンスとなるだろう。

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References: Space[https://www.space.com/astronomy/comets/watch-comet-maps-destroyed-in-cataclysmic-fragmentation-near-the-sun] / Nao.ac.jp[https://www.nao.ac.jp/news/blog/2026/20260402-maps.html] / Nao.ac.jp[https://www.nao.ac.jp/astro/sky/2026/04-topics04.html] / Jpl.nasa.gov[https://ssd.jpl.nasa.gov/tools/sbdb_lookup.html#/?sstr=C%2F2026%20A1]

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