経済・地位報酬の項目が大きく改善

2025年7月22日
株式会社ドクタートラスト
https://doctor-trust.co.jp/

 株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦、以下「ドクタートラスト」)のストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者267万人超(7,779の企業・団体)のデータを活用し、さまざまな分析を行っています。

 今回は2024年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、およそ56万人(およそ1,800の企業・団体)の有効回答結果を分析し、経年での変化などを調査しました。


 

YouTubeで解説動画公開中

【2024年度総括】累計267万人のストレスチェックデータから見える最新の傾向

 

【動画:https://www.youtube.com/watch?v=WJNFJnYqj4I

 

調査結果のポイント

・ 高ストレス者率の増加は熟年層に偏っており、特に60代の増加が目立つ

・ およそ5%の人が職場でハラスメントを受けていると感じている

・ 前年度とくらべて、待遇面やキャリア志向にまつわる設問に大きな改善がみられた

 

 以下では、調査結果について、要点をまとめた「要点解説編」と、詳しく説明した「詳細解説編」に分けてご紹介します。

 

要点解説編

 

1. 他年代にくらべて60代のストレスが増加傾向

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O2-7uvlNzsa

 

 図1のグラフは60代における高ストレス者率の推移を示しています。

 2024年度は8.1%で、2019年度からは1.9ポイントの増加となっていました。これは、他の年代と比較しても経年での増加幅が大きい結果となっていました。この背景には法改正による定年の引上げなどが関連していると考えられます。労働市場における高年齢者への期待が高まる中、60代の人が新たな働き方や環境に適応していく過程で、ストレスを感じる機会が増えている可能性があります。

 

2. 5.5%の人が職場でハラスメントを受けていると回答

 今回の分析では、職場でハラスメントを受けていると回答した人の割合が5.5%でした(前年度5.7%)。経年では改善がみられるものの、依然として一定数の人がハラスメントを受けていると自認していることがうかがえます。

 厚生労働省のハラスメントに関する実態調査(※1)においても、過去3年間にパワーハラスメントに関する相談があったと回答した企業はおよそ6割に上ることが報告されています。

 職場におけるハラスメントは、従業員のエンゲージメントや生産性だけではなく、組織全体のブランドイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。ハラスメントがない健全な職場環境の構築は、企業の持続的な成長には不可欠です。

※1:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度)」

 

3. 最も改善が大きかった項目は、給料などの報酬面

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O6-Fs114B3o

 

 図2のとおり、前年度とくらべて最も改善がみられたのは給与・報酬面に関する項目でした。
前年度からは2.9ポイント、2019年度からでは8ポイント以上の増加になります。

 近年の物価高騰が不安視されている一方で、組織における従業員の給与・報酬面の改善に対する意識は以前にも増して高まっていることがうかがえました。組織が持続的な成長を実現する上で、従業員の確保・定着に向けた策略として報酬改善がコストではなく、戦略的な投資として重要性を増しているのかもしれません。

 

 

詳細解説編

はじめに

 ストレスチェック制度は、2015年以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が法律で義務づけられています。

 ドクタートラストでは制度開始から9年間にわたり、全国官公庁・事業団体など各組織に応じたストレスチェックを提供してまいりました。現在では通常の57項目版とあわせて、より詳細な解析が可能である80項目版や独自の設問をご用意しています。また、集団分析結果のフィードバックや受検後相談窓口などのアフターフォローも提供しており、国内トップクラスの受検者数を誇っています。

 今回の調査では、2024年度にドクタートラストでストレスチェックを受検したおよそ56万人の最新の分析結果をご紹介します。

 

調査結果

1. 受検率は2023年度から1.2ポイント増加し、88%台へ

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O1-1i7DZ8Ea

 

 図3は、2019年度から2024年度の受検率と高ストレス者率です。受検率とは、ストレスチェック受検対象者における実受検者の割合です。また、高ストレス者率とは、ストレスチェックの結果から「ストレスの強い自覚症状がある」または「自覚症状が一程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポートの状況が著しく悪い」とされた人を指します。

 全体の受検率は経年で増加傾向にあり、2024年度は過去最高値となりました。
一方、全体の高ストレス者率は6年間継続して13%台となっており、大きな変化はみられませんでした。そこで、次項では高ストレス者率の推移を年代別に置き換えて示します。

 

2. 年代別の高ストレス者率は、6年間で20・30代が減少、40・50・60代が増加傾向

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O9-9w5P9PL4

 

 図4は、2019年度から2024年度の6年間における、年代別の高ストレス者率の推移を示しています。6年間では、20代が2.7ポイント減少、30代が0.3ポイント減少、40代が1.0ポイント増加、50代が1.0ポイント増加、60代が1.9ポイント増加となりました。

 全体の高ストレス者率には経年での変化がみられませんでしたが、年代別では40代以降、特に60代で増加の傾向がうかがえます。高年齢者雇用安定法(※2)の改正により2025年4月から65歳までの雇用が義務付けられるなど、今後も60代の業務負荷は増加していくことが推察されます。

※2:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」

 

3. 不良回答ランキング~トップは「一生懸命働かなければならない」~

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O4-5a2fi0XF

 

 図5は、各設問に対して不良(好ましくない)回答をした人が多い順にランキングを示しています。

不良回答率の1位~5位は前年度から順位に変化はなく、仕事における量的・質的な業務負担に関する設問が集中していました。なお、ストレスチェックの設計上、「一生懸命働かなければならない」などの設問に対して「まあそうだ・そうだ」と答えることで、「仕事の質的負担が高い」、すなわちストレスが大きいとみなされる点は注意が必要です。

 個人差はありますが、熱意をもって仕事に打ち込むことが悪いこととは限りません。仕事における量的・質的な業務負担については、各組織の実状と照らし合わせて慎重に解釈する必要があるでしょう。

 また、前年度同様に、不良回答が最も少なかったのはハラスメントに関する設問でした(「職場で自分がいじめにあっている」の設問に対して「そうだ」・「まあそうだ」と答えた人)。


 ただ、厚生労働省「令和6年度の業務災害に係る精神障害に関する事案の労災補償状況 」(※3)では、出来事別の支給決定件数として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が224件でトップに挙げられています。 また当設問の性質上、自身がハラスメントを受けていると気づいていない人や、正直に回答しにくい人もいるかもしれません。引き続き、ハラスメントの理解を深めるための定期セミナーや相談窓口の設置などハラスメントへ柔軟に対応できる体制構築が求められます。

※3:厚生労働省「令和6年度過労死等の労災補償状況」

 

4. 前年度から特に差がみられた5つの設問

 2024年度の結果で、前年度から特に差が大きくみられた5つの設問は下記の通りです。括弧内の数値は前年度にくらべて、どのくらい良くなったかを示しています。

 

【経年で特に差がみられた設問】

① 自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている(+2.9pt)

② 意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われている(+2.6pt)

③ 職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている(+2.2pt)

④ 仕事でエネルギーをもらうことで、自分の生活がさらに充実している(+2.1pt)

⑤ 一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ(+2.0pt)

 

 なお全体では、1ポイント以上良くなった設問が21問、1ポイント以上悪くなった設問が3問となっており、全体的には概ね良化していることがうかがえます。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O11-A7W2vkPY

 

 図6のとおり、良好回答の割合は前年度に比べて2.9ポイント増加しました。2019年度からの6年間では8.3ポイント増えています。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O10-8i007QPE

 

 図7のとおり、良好回答の割合は前年度に比べて2.6ポイント増加しました。2019年度から継続して増加傾向にあり、6年間では9.1ポイント増えています。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O5-3R8Tc4sV

 

 図8のとおり、良好回答の割合は前年度に比べて、2.2ポイント増加しました。2019年度からの6年間では5.6ポイント増えています。


 

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O3-pwB7uPsJ

 

 図9のとおり、良好回答の割合は前年度に比べて2.1ポイント増加しました。ただ前年度から改善はみられるものの、当設問は依然として不良回答の割合が高い設問となっています。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507182390-O7-xVv6579Q

 

 図10のとおり、良好回答の割合は前年度に比べて、2.0ポイント増加しました。2019年度からの6年間では5.9ポイント増えています。

 

さいごに

 本分析では、前年度にくらべて待遇面やキャリア志向にまつわる結果が特に良くなっており、組織側の従業員に対する報酬や、育成に向けた改善意識が高まっていることが推察できます。

 一方で、仕事における質・量の側面は前年度に続いて不良な結果となっていました。業種や職種によって従事する業務内容は異なりますが、適度なストレスは生産性の向上につながります。業務負荷が過度にならないよう、残業時間の削減やセルフケアの研修を行うなど、各組織として取り組めることがないかを見直していく姿勢は引き続き求められるでしょう。

 過去6年間では、高ストレス者に該当する人が20・30代の若年層でわずかに減少しているものの、40代以降の熟年層では若干の増加がみられます。定年の引上げや、再雇用制度の見直しなど、高年齢者の労働力に対する期待は高まっているため、新たな観点からの分析も検討していきます。

 またストレスチェックの受検率は2024年度が88.7%で、過去最高値となりました。一方で、未受検者はおよそ11%に上ります。
限られた就業時間の中でストレスチェックを受けることに対し、ネガティブな感情を持つ忙しい従業員は少なくないかもしれません。ただ、ストレスチェックを受けることは、受検者自身の理解や、職場環境改善の足がかりとなるため、従業員が安心して積極的に受検へ臨めるよう組織側の取り組みも大切です。ドクタートラストは従業員一人ひとりのために、さらには各組織のために、これからもストレスチェックサービスを真摯にご提供いたします。

文責:福田築(ストレスチェック研究所 アナリスト)

 

調査対象

調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス 2019年度~2024年度受検者

対象受検者数:

2024年度 555,956人(1,777の企業・団体)

2023年度 479,612人(1,390の企業・団体)

2022年度 410,352人(1,162の企業・団体)

2021年度 324,624人(940の企業・団体)

2020年度 240,275人(685の企業・団体)

2019年度 199,290人(575の企業・団体)

 

【全80項目一覧】

(1)非常にたくさんの仕事をしなければならない、(2)時間内に仕事が処理しきれない、(3)一生懸命働かなければならない、(4)かなり注意を集中する必要がある、(5)高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ、(6)勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない、(7)からだを大変よく使う仕事だ、(8)自分のペースで仕事ができる、(9)自分で仕事の順番・やり方を決めることができる、(10)職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる、(11)自分の技術や知識を仕事で使うことが少ない、(12)私の部署内で意見のくい違いがある、(13)私の部署と他の部署とはうまが合わない、(14)私の職場の雰囲気は友好的である、(15)私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、喚起など)はよくない、(16)仕事の内容は自分にあっている、(17)働きがいのある仕事だ、(18)活気がわいてくる、(19)元気がいっぱいだ、(20)生き生きする、(21)怒りを感じる、(22)内心腹立たしい、(23)イライラしている、(24)ひどく疲れた、(25)へとへとだ、(26)だるい、(27)気がはりつめている、(28)不安だ、(29)落着かない、(30)ゆううつだ、(31)何をするのも面倒だ、(32)物事に集中できない、(33)気分が晴れない、(34)仕事が手につかない、(35)悲しいと感じる、(36)めまいがする、(37)体のふしぶしが痛む、(38)頭が重かったり頭痛がする、(39)首筋や方がこる、(40)腰が痛い、(41)目が疲れる、(42)動悸や息切れがする、(43)胃腸の具合が悪い、(44)食欲がない、(45)便秘や下痢をする、(46)よく眠れない、(47)どのくらい気軽に話ができますか?(上司)、(48)どのくらい気軽に話ができますか?(職場の同僚)、(49)どのくらい気軽に話ができますか?(配偶者、家族、友人等)、(50)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(上司)、(51)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(職場の同僚)、(52)あなたが困った時どのくらい頼りになりますか?(配偶者、家族、友人等)、(53)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(上司)、(54)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(職場の同僚)、(55)あなたの個人的な問題を相談したらどのくらいきいてくれますか?(配偶者、家族、友人等)、(56)仕事に満足だ、(57)家庭生活に満足だ、(58)感情面で負担になる仕事だ、(59)複数の人からお互いに矛盾したことを要求される、(60)自分の職務や責任が何であるか分かっている、(61)仕事で自分の長所をのばす機会がある、(62)自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている、(63)私は上司からふさわしい評価を受けている、(64)職を失う恐れがある、(65)上司は部下が能力を伸ばす機会を持てるように取り計らってくれる、(66)上司は誠実な態度で対応してくれる、(67)努力して仕事をすれば、ほめてもらえる、(68)失敗しても挽回するチャンスがある職場だ、(69)経営層からの情報は信頼できる、(70)職場や仕事で変化があるときには、従業員の意見が聞かれている、(71)一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ、(72)人事評価の結果について十分な説明がなされている、(73)職場では(正規、非正規、アルバイトなど)色々な立場の人が職場の一員として尊重されている、(74)意欲を引き出したりキャリアに役立つ教育が行われている、(75)仕事のことを考えているため自分の生活を充実させられない、(76)仕事でエネルギーをもらうことで自分の生活がさらに充実している、(77)職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)、(78)私たちの職場ではお互いに理解し認め合っている、(79)仕事をしていると活力がみなぎるように感じる、(80)自分の仕事に誇りを感じる

 

ドクタートラスト概要

株式会社ドクタートラスト https://doctor-trust.co.jp/

株式会社ドクタートラスト(本社:東京都渋谷区、代表取締役:高橋雅彦)は企業ではたらく人の健康管理を専門に受託している会社です。産業医(国内トップクラス)や保健師などの医療資格者が企業を訪問の上、健康診断結果に基づく健康指導、過重労働者面談を行います。また、267万人超のビッグデータに基づく職場環境改善コンサル「STELLA」や、 外部相談窓口サービス[アンリ]、健康管理システム「エール+」もご好評いただいております。その他 ストレスチェック、健康経営セミナー、 衛生委員会のアドバイスなど、さまざまな業務を実施します。

 

ストレスチェック研究所 https://www.stresscheck-dt.jp/consultant/

ストレスチェック研究所は、ドクタートラスト内に設置された研究機関です。ストレスチェックで得られた膨大なデータの分析を行うとともに、ストレス耐性が高く組織の強みである人材を「STELLA(ステラ)」と名づけ、これら人材を活用した強固な組織作りを目指す職場環境改善コンサル業務を行っています。

 

ストレスチェックサービスに関するお問合せ

株式会社ドクタートラスト ストレスチェック研究所 担当:杉山、上田

TEL:03-3464-4000(代表)

特設サイト:https://www.stresscheck-dt.jp/

企業さま用お問合せフォーム:https://www.stresscheck-dt.jp/sc_form_document/
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