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TVアニメ『ウマ娘 シンデレラグレイ』(以下、『シンデレラグレイ』)を彩る主題歌が、クオリティの高い映像と共に話題を呼んでいる。そんなOP主題歌「超える」で作詞・作曲・歌唱を担当した[Alexandros]の川上洋平、たかはしほのか(リーガルリリー)が作詞・作曲したED主題歌「∞」を歌うオグリキャップ役の高柳知葉、さらにベルノライト役の瀬戸桃子の鼎談が実現。
PHOTOGRAOHY BY 河本悠貴
INTERVIEW & TEXT BY 千葉研一
“私が私を追い抜き去っていく絵”は最初に出てきたフレーズの1つ
――川上さんはこれまでのインタビューなどで、「前のアルバムを忘れて、超えることを常に考えている」といった趣旨の話をされています。今回のタイトルはまさに「超える」ですから、そういった想いも込められているのではと感じたのですが。
川上洋平 常にそうなのですが、作品や曲を作り終えた時ってその曲を堪能しきっているんですよ(笑)。だって、0から曲を生み出して歌詞を書いてアレンジもやって、曲が出来たら今度はレコーディングしてミックスしてマスタリングして……何千回と聴いているわけで。自分のものになっているから。なので新曲を作り始める時はいつも「次は違うものにしたい」というモードになっているんです。これは意識しているというより、無意識的なことですが。あと、あえて意識的なことを言うならば、「これまでやっていたことで安定したくない」という思いはすごくあります。(ファンの方に)「ワタリドリ」が好きですとか「閃光」が好きですと言っていただけるのは嬉しいしありがたいですけど、同じようなものを作るのは安定志向というか、守りに入っていますよね。それってむしろ誠意がないと思うんです。何か犠牲を払ってでも「自分たちはこれがやりたい!」「このアートが今見せたいものです!」といった気持ちでいたい。それによって生じる犠牲を恐れたくないと毎回思っています。
――そして生み出されたのがOP主題歌「超える」。どういった曲にしようと考えたのでしょうか?
川上 まずは原作であるマンガを全部読んで、自分に共通する部分や共鳴する部分を見つける作業をしていきました。それが見つからなかったら大変なんですけど(笑)、『シンデレラグレイ』に関しては自分の今の気持ちにハマった部分がすごくあって。
――具体的にはどういった部分がハマったのでしょうか?
川上 1つ具体例を挙げるなら、オグリキャップが「私自身を超えなきゃいけない」「私自身を超えたいんだ」というシーンです。それはオグリキャップが他のウマ娘と競うなかで「どういう気持ちで生きていったらいいんだろう?」と思っていたってことですよね。自分もチャートなどで他のアーティストの方と競う中で「どういう心持ちでいればいいんだろう……」とぼんやり思っていて。なのでオグリキャップがその答えを見つけたシーンにすごく共感したんです。ならばそれを曲として書こうと思い、その結果タイトルが「超える」になりました。
――サビの印象的なフレーズ“私が私を追い抜き去っていく絵”も、まさにそこから生まれたんですね。楽曲制作を始める際に意識したことを教えてください。
川上 (曲調が)バラードではないのは共通認識として多分みんな持っていたと思いますし、お話をいただいた時から「バラードではなくテンポの速い曲がいいだろうな」というのは自分の中にありました。でも、楽曲制作を始める時に考えていたのはそのくらいでしたね。
――川上さんの場合、歌詞と曲はどちらから作るのですか?
川上 基本的には、メロディを作ってから歌詞を作ります。仮歌みたいな感じで適当な日本語と英語が混ざったものを作り、そこから変えて歌詞を決めていくのですが、バッと浮かんでハマった言葉がある時はそのまま採用することもあります。最初に作ったデモではポップで派手なサビはなく、ちょっと地味な雰囲気だったんです。嫌いじゃなかったけど、微妙だなと思っていて。なので1つの形になった後で1週間くらい寝かせて、もう一度スタジオに入って作業をしていた際に、やっぱり(派手な)サビを作ろうとなりました。メロディが出るまでずっとかき鳴らして、鳴らして鳴らして……、それで出てきたのが今のサビです。歌詞に関しては、“私が私を追い抜き去っていく絵”や“物語の”の部分は仮歌の時からありました。このフレーズは本当に自然と出てきたもので、最初から変わっていないです。最初はその2行だけあって、これがどう繋がるのか探す旅に出た感じですね。
――この曲を聴いた時はここの歌詞が“絵”だとは思わなかったので驚きました。
川上 すごく細かいですけど、サビの2行目に“浮かべる”ってあるじゃないですか。この“浮かべる”も自分の中でハマっちゃったんですね。手の内を明かすみたいで嫌なんですけど(笑)。それで元々“私が私を追い抜き去っていく Yeah!”だったのを、“Yeah!”から“絵”に置き換えれば“浮かべる”と繋がるなと思い、“絵”にしたんですよ。
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「うまぴょい伝説」のような曲を依頼されたのかと思って
――高柳さんと瀬戸さんは、「超える」を聴いていかがでしたか?
高柳知葉 最初に聴いたのは第1クール最終話のアフレコのタイミングでした。みんなで第1話をほぼ完成している状態で観せていただき、そこに「超える」も入っていたんです。なのでTVサイズを最初に聴いたのですが、もうその段階で「すごい!この作品を彩るのになんてピッタリな曲なんだろう!かっこ良すぎる!」と感動しました。
瀬戸桃子 みんな盛り上がっていましたよね。
高柳 そうそう。その後フルで聴いたらまた感覚が変わったというか。疾走感がとてもありますし、走っている時の青空やレース場の空気、匂い……そういったものをすごく感じて、改めてすごいと思いました。
瀬戸 私はみんなで第1話を観た時はちょうどお手洗いに行っていて、OP映像を見逃しちゃったんです。ゆっくり手を洗っていたら「なんか流れてる!」って(笑)。
――『ウマ娘』アニメシリーズの主題歌は、劇場版も含めてこれまですべてウマ娘たちが歌唱してきました。そういう意味では、[Alexandros]さんが歌唱も担当しているのは挑戦的ですよね。
川上 最初にお話をいただいた時はてっきりウマ娘が歌う曲を作ってほしい、「うまぴょい伝説」(のような曲を)を作ってもらいたいと言われたのかと思って「よっしゃ!」となったんです。「うまぴょい伝説」は本当に名曲ですから。初めて聴いた時からものすごい曲だと思っていましたから。
高柳 嬉しいです!
川上 歌詞に“きみの愛馬が!”ってありますよね。ここが何て言っているのかずっとわからなくて、歌詞を見た時に本当に感動しました。これを書いた人は天才です。
高柳 (作詞作曲を担当した)本田(晃弘)さんが喜びますね。
川上 だから、お話をいただいた時に、これは「うまぴょい伝説」を超える曲を作らなきゃ!って(笑)。
高柳 競う相手はそこなんですね(笑)。
川上 そうしたら「今回はそういうのじゃなくて大丈夫です。いつもの[Alexandros]さんで」と言われて、「え?いいんですか?」と。
――そんなことが(笑)。いつか、川上さんが制作した「うまぴょい伝説」のような曲も聴いてみたいです。
川上 自分が歌わないのなら。自分で歌っちゃうと怪我してしまうので(笑)。
高柳 それって私たちウマ娘キャストが歌う曲を提供していただく可能性もなくはないってことですよね。その世界線も見てみたいです!
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「∞」とは『シンデレラグレイ』のオグリキャップでなければ出会えなかった
――ED主題歌「∞」は、これまでのオグリキャップのイメージとは曲の雰囲気も歌い方も違っていて驚きました。曲を最初に受け取った時はいかがでしたか?
高柳 リーガルリリーさんの楽曲って、たかはしほのかさんの歌声込みで素晴らしい世界観が生み出されていると思っていたので、楽曲提供していただけると伺った時は「どうアプローチしたらいいんだろう……?」と思いました。仮音源でたかはしさんが歌っていたものもすでに楽曲として完成されていましたし、それ以上に流れてくる1音1音がとてもキラキラしていて。聴いた瞬間にカサマツ(『シンデレラグレイ』の舞台となる地名)の河川敷から川がキラキラ光って見える景色が浮かんで。
――ED映像にも河川敷を走るシーンがありますよね。
高柳 そうなんです。「私が曲を聴いてイメージしたものと一緒だ!解釈一致で嬉しい!」と思いました。カサマツだけでなく、この先オグリキャップが歩んでいく景色、日々感じる色々なものも浮かんできて、本当に感動しましたね。
――実際のレコーディングでは、どんなことを意識したのですか?
高柳 特にゲームの楽曲ではオグリキャップとして力強い歌い方、声の出し方をすることが多いのですが、ライブでバラード曲やかわいい楽曲を歌う時にはオグリキャップとして色々な歌い方を模索しつつやってきて。そんななかで今回の楽曲はこれまでのアプローチだと表現しきれない楽曲だなと思いました。なのでレコーディングに臨む時は「これまでのオグリキャップ像をキープした歌い方」「たかはしさんに寄せた歌い方」「楽曲の世界観により近いような歌い方」、さらに各々の歌い方の中間といった感じの複数パターンを持っていったんです。そして現場で色々と試し、最終的にオグリキャップらしい形でこの楽曲に寄り添える歌い方をスタッフの皆さんと一緒に作り上げることができました。
――圧倒的な強さや健啖家のイメージだけでなく、『シンデレラグレイ』で内面の機微も描かれたからこそ歌えた楽曲だと感じました。
高柳 本当に『シンデレラグレイ』の世界のオグリキャップじゃなかったら出会えなかった楽曲ですし、出会えたとしても私1人ではとても歌いきれない楽曲だったと思います。作品自体はクールでかっこ良く、スポ根で少年マンガ的な表現も多いですけど、オグリキャップのことで言えば既存コンテンツの中では一番表情や感情が豊かだと思っていて。そういった意味では、レコーディングに臨むまで不安もありましたが、実際にレコーディングしてみたら違和感がなくスッと「∞」を歌うオグリキャップの形に辿り着けました。
――瀬戸さんに、ベルノライト視点でもご自身の視点でも構いませんので、「∞」を聴いての印象をお聞きしたいです。
瀬戸 ベルノ(ライト)がオグリ(キャップ)ちゃんと出会ったのはカサマツトレセン学園ですから、膝が悪くて歩けなかった頃からの友達ではないです。でも、ベルノの気持ちを投影して聴くと「走れるから走る」っていうオグリちゃんの言葉の理解がより深まるなと思いました。少し話が飛躍しちゃいますけど、私が毎日ご飯を食べられるのも本当にありがたいことですし、こうやって声優として出演できるのも当たり前のことじゃないですよね。そう思うとハッとさせられる楽曲でもあるなって。
――では、川上さんから見て、この楽曲や高柳さんの歌はどう感じましたか?
川上 とびっきり良かったです。オープニングからエンディングまでを聴いて(作品全体が)立体的になるというか。
高柳 ありがとうございます!
川上 エンディングの映像も良くて。特に好きなのは、お母さんに膝をさすってもらうシーンなんです。実は原作マンガを読んだ時にお母さんとのシーンが引っかかっていて、オグリの過去回想シーンがもうちょっと欲しいなと思っていたんです。それをED映像で想像させてくれるのが良かったですね。一瞬しか出てこないですけど「だから今があるんだ」「だから前に進めるんだ」という過去から現在、未来にいくところで、その過去の部分を表現しているのがエンディングだと感じて。さすがたかはしほのかさんだなと思いましたね。実は「超える」でもお母さんのことを歌っているんです。“And I miss you Bright old days”はお母さんのことを歌った歌詞なんですよ。
――このフレーズは気になっていました。“I miss you”の“you”がお母さんを差しているということですね。“Bright old days”は何を表しているのでしょう?。
川上 もちろん「1歩前の自分」という意味もありますし、やっぱり前に進む時は何らかの犠牲を払ったり、友達を失ったりすることがあるじゃないですか。競争だから、その人よりも上に行っちゃって気まずい思いをするとか。そうではない、みんなでワイワイ横並びにやっていた時代は明るかったなみたいな雰囲気も“Bright old days”には込められています。
――そういう繋がりを聞くと、どちらの曲も深みが増しますね。では最後に、せっかくの機会なのでお聞きしますが、ベルノライトの曲ができるとしたら瀬戸さんはどんな曲を歌いたいですか?
瀬戸 そうですね……できたら、川上さんに作っていただいて(笑)。
川上 ぜひぜひ。
瀬戸 大口叩きました(笑)。ベルノは喜怒哀楽が豊かでコミカルな部分もありますし、色々な成分を担っていると思うんです。ですから、オープニングやエンディングとはちょっと違った感じの、キャッチーでみんなが口ずさんじゃうような曲を歌ってみたいなと思います。
●リリース情報[Alexandros]
「超える」
配信中
配信リンクはこちら
https://lnk.to/Alexandros_Koeru
New Album『PROVOKE』
発売中
特設サイト
https://sp.universal-music.co.jp/alexandros/PROVOKE/
オグリキャップ(CV.高柳知葉)
「∞」
5月21日発売
品番:UPCH-6039
価格:¥1,650(10%税込)
<CD>
01. ∞/オグリキャップ (CV.高柳知葉)
02. BRIGHTEST HEART/オグリキャップ (CV.高柳知葉)
03. ∞ (Off Vocal)
04. BRIGHTEST HEART (Off Vocal)
関連リンク
[Alexandros]
オフィシャルサイト
https://alexandros.jp/
オフィシャルX
https://x.com/alexandroscrew
オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/channel/UCjIHV9sLF2yrYH2ClgPAzSg
『ウマ娘 シンデレラグレイ』
オフィシャルサイト
https://anime-cinderellagray.com/
オフィシャルX
https://x.com/umamusu_animeCG
高柳知葉
オフィシャルX
https://x.com/tomoyo_t_1014
瀬戸桃子
オフィシャルX
https://x.com/mmk_seto