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『エヴァンゲリオン』シリーズの30周年を記念し、これまで高橋洋子が歌ってきた『新世紀エヴァンゲリオン』のTVシリーズおよび劇場版『シト新生』、そして2020年代に至るまでの関連楽曲群から抜粋した作品を1枚にまとめたアルバム『EVANGELION FLASHBACK』がリリースされた。30周年記念ということで、当時を振り返ってのさまざまな思い出や、新録カバー曲の「今日の日はさようなら」にまつわる話を聞くと、高橋の思いがけないプライベートなエピソードを話してくれた。
INTERVIEW & TEXT BY 日詰明嘉
『劇場版 シト新生』主題歌「魂のルフラン」は「母親目線」
――高橋さんはこれまでさまざまな『エヴァンゲリオン』の歌をうたってこられましたが、この30年のタイミングで『EVANGELION FLASHBACK』としてアルバムにまとめられたことについて、どのような思いで受け止めていますか?
高橋洋子 写真のアルバムと同じで、自分の30年間が映し出されているものがCDという形で皆さんに聴いていただけるのは、非常にありがたいなと思っています。30年って、結構長いと思うんです。アルバムにしたら手で持てない重さになることでしょう。お聴きいただく方は、この音楽を聴くことによって1995年から2025年の間のことを思い出すと思います。ですので、私のほうから皆さんに「この曲はあなたにとってどういう曲ですか?」と尋ねてみたいと思いがあります。
――『エヴァンゲリオン』というコンテンツがここまで続いてきて、最近になって初めてご覧になった方もいるでしょうし、初回放送から耳にした方もいますし、それぞれの人生に寄り添った30年でしょうね。『残酷な天使のテーゼ』のエピソードはリスアニ!WEBでも以前伺いましたが〈https://www.lisani.jp/0000128739/〉、本当に作品情報が少ない中で歌われたそうですね。
高橋 現在、一般的には、「この曲はこういう歌詞で……」と、背景も含めた情報を入れて臨むと思うのですが、私の場合は当時キングレコードとは別のレコード会社に所属をしていて、たまたまご縁があって歌わせていただけるっていうことになり、いわばスタジオミュージシャンのような立ち位置だったんです。本当に歌詞とメロディ、音源だけだったんです。絵や設定資料といったものは一切なくて。スタジオに呼ばれてその場で譜面を渡されて、レコーディングして帰ってきて、オンエアを観て「あ、これだったんだ」と知るような、日常のお仕事と同じような状況でした。
――この作品も最初にご覧になったのは皆さんと同じくオンエアのタイミングだったそうですが、オープニングは率直にどんな印象でしたか?
高橋 もう、絵と歌がシンクロしていて、「こういう主題歌映像があるんだ!」と非常に感動しました。カット割りも後ろのシンセの音によって、キャラクターが切り替わって、ストーリー性もちゃんとあってびっくりしましたね。
――その後、『エヴァ』は大きなムーブメントとなって、放送後には劇場版が制作されました。ちょうど現在「月1エヴァ」〈https://www.evangelion.jp/30th_movie_fest.html〉という形で、過去の劇場作品が公開され、久々に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』もスクリーンにかかりました。当時はどんな様子でしたか?
高橋 レコーディングの段階では「魂のルフラン」か「心よ原始に戻れ」のどちらが『シト新生』の主題歌に採用されるかは決まっていない状態でした。「魂のルフラン」は大森先生が曲を書いていて、「心よ原始に戻れ」は佐藤英敏先生が書いていて、アレンジは両方とも大森先生がされていました。そのときに大森さんが、「自分はどちらの曲も精一杯アレンジをした。だから、どちらが選ばれても構わない」とおっしゃいまして、そこに本当のプロフェッショナリズムを感じました。私だったら「自分の曲が選ばれたいな」なんて思っちゃうので(笑)。
――及川眠子さんは劇場版のときも資料をご覧にならずに歌詞を書かれたという話があります。「魂のルフラン」の歌詞の印象はいかがでしたか?
高橋 レコーディング当日にファックスで歌詞が届いて、スタッフが書き入れてすぐ歌うという感じだったので、こちらも余裕はありませんでした。印象的だったのはタイトルですね。当時の世の中だと、「魂」という言葉は、少々偏った印象を与えるような認知だったと思うんです。その中にあって、「ルフラン」はリフレイン、すなわち輪廻という意味で「魂のルフラン」というタイトルをつけたことも、及川眠子さんのすごさを感じました。ただ、当時はまだ及川眠子さんとお会いしてなくて、会ったのはずいぶん後になってから。どなたか定かではないのですが、「会って話を聞いたりしないほうが、かえって想像力が働いて新鮮に歌えるんじゃないか」とおっしゃっていて、なるほどと。
――その後、お会いされる機会があったそうですが、どんなお話をされましたか?
高橋 とても親しくさせていただいて、「洋子ちゃんはやっぱり母性だからさ、やっぱりこういう歌をうたうときは、常に母親目線になるんだよね」といったことをおっしゃっていました。シンジなのか、リスナーの皆さんに対してか、「真実の姿を自分で見つけて、帰ってきなさい」といった視点を意図されていたんじゃないかなと、改めて思います。
――レコーディングのことを伺えればと思います。「魂のルフラン」はカラオケで歌おうとすると難しいとはよく言われますが、高橋さんご自身は難しさを感じられましたか?
高橋 「残酷な天使のテーゼ」と「魂のルフラン」では「魂のルフラン」のほうが圧倒的に歌いやすいです。それはなぜかというと、ブレス位置がちゃんと届く位置にあるから。
――楽曲は映画『シト新生』の「REBIRTH」編の最後に流れたわけですが、ご覧になったときの印象は?
高橋 当時、新宿ミラノ座がもう、すごい行列で。劇場で初めて「ここでかかるのか!」と知ったんです。その後はおそらく当時の皆さんと同じように、ずっとその先のこととかの考え事をしながら、いつの間にか自宅に帰っていた感じです。
――私も当時は驚きました。先日の「月1エヴァ」で、はじめてあのタイミングで聴いたファンの方もいるでしょうね。
高橋 30年って、本当にいろんな思い出がありますね。今でもこうやって仕事をさせていただけることって、やっぱり『エヴァンゲリオン』との出会いがあったから。作品ももう本当にもちろん素晴らしいし、スタッフたちも素晴らしいし、超一流の皆さんの中に入れていただけたことに、本当に感謝です。すごくあっという間だったし、でもものすごい内容が濃かったし、いろんなことがあったから、両手で抱えきれないくらいの思い出があります。ただただ嬉しいと思う日もあれば、どうしようって思う日もあれば、その繰り返しで今日まで来ているので。
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思い出の東京滝野川少年少女合唱団とレコーディングした「今日の日はさようなら」
――今回のアルバムには「今日の日はさようなら」が新録として入っていますが、これは高橋さんからのアイデアですか?
高橋 そうなんです。以前から何度もこの企画の話は出ていて、なかなかタイミングが合わず実現しなかったのですが、今回はみんなが満場一致で「あ、いいね」という話になったので実現しました。カバーという認識よりも、自分の中にあって非常に大切にしている曲、思い出の曲、そして『エヴァンゲリオン』の中で使われている曲の3つが一致したのがこの曲だったというわけです。
――どのような思い出が?
高橋 私が小学校2年から高校2年までいた東京滝野川少年少女合唱団で、最初に練習した曲がこの曲だったんです。だからすごく覚えてるし、学校でも卒業式とかお別れ会とかもう事あるごとに、何度歌ったかっていうくらいみんなが知っている曲です。私は2000年から2005年まで介護の仕事をしていたのですが、介護現場ではその日の帰りの会で必ずこの曲を歌うんですね。私もちょっとピアノ弾いたりして。だから、大事なときに常にそばにあった曲がこの曲だったんです。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』で流れてたときはびっくりしましたけど、林原めぐみさんが淡々と歌われるシュールさが効果音のように、シーンをみんなにより印象づけたと思います。私にとっては冒頭でお話ししたように、写真のアルバムと同じように私の人生を、そして『エヴァンゲリオン』で過ごした30年を1つの写真のアルバムのように載せるのに適した曲が、この曲だったと思っています。
――小学校低学年の頃から歌い続け、年を経るなかで感じ方も変わるような懐の深い曲ですよね。
高橋 当時、合唱団で歌うことが私の道しるべになってくれたりもしたので、今回は合唱団のみなさまにもコーラスで参加してもらったんです。
――東京滝野川少年少女合唱団は高橋さんにとってどんな存在ですか?
高橋 入る前は家でピアノをやっていたのですが、父親がスパルタで嫌いになってしまっていたんです。でも合唱団での活動は楽しくて仕方がありませんでした。人前は苦手だけど、みんなと一緒なら歌えるっていうところもあったので。「カルメン」など他いろいろなオペラだったり、こうしたレコーディングのコーラスだったりとか、自分たちの定期演奏会とか、いわゆる本番として歌う機会も本当にたくさんありました。有名な先生が来て発声の基礎を教えていただく機会もあり、自分が出来上がる場でもあったと思います。
――そんなこの曲で高橋さんはピアノも弾かれています。
高橋 スパルタの父には「もうお前の前でピアノなんか弾くか」みたいに思った時期もあるぐらい本当に辛くて、大人になって歌の世界に行ったから途中で辞めたんですけど、父は私がピアノ弾くと喜ぶんですよ……。そして私も、あんなに嫌いになったピアノなのにやっぱり弾きたくなるんです。悔しいけど。
――なんだか碇シンジくんと重なりますね。
高橋 本当ですね(笑)。わかるんですよ、彼の気持ちが。葛城ミサトさんに心を寄せた時期も長いし、綾波レイちゃんが良いなと思ったときもありましたし、やっぱりアスカ・ラングレーだなと思った時期もありましたが、最後はやっぱりシンジに収まるっていうところが自分なりの答えです。
――高橋さんのピアノのほかにこの曲の伴奏にチェロがありますね。これは『シト新生』の「DEATH」編から?
高橋 それはアレンジャーのSiNくんですね。TV番組とか自分のコンサートで長く手伝ってもらっているのですが、不思議と『エヴァ』関連では一緒にお仕事をしたことなくて。で、今回頼んでみたところ、「やっぱりこの曲はチェロが必要だと思んです」と言うので、真意は彼に聞かないとわからないのですが、1つ言えることは、SiNくんは『エヴァ』ファンです(笑)。
――2026年2月には『EVANGELION 30th Anniversary Edition LP』としてアナログレコードが2枚同時に発売されます。
高橋 CDの『EVANGELION FLASHBACK』は、お腹いっぱいになる幕の内弁当みたいな作りなのですが、アナログLPのほうはどちらかというと「残酷な天使のテーゼ」の世界、「魂のルフラン」の世界の2つの世界観に分かれているような感じで、ちょっと違う感じに仕上がってます。それぞれの世界観に近しい楽曲とエッセンスを加えたものをセレクトして、レコードで聴くことも意識して構成しています。
――レコードで聴くことの意識とは?
高橋 レコードで聴くときって、環境を丁寧に整えることが多いと思うので、それに適したマスタリングをしていただいています。例えば収録されている「残酷な天使のテーゼ 2009VERSION」は、楽曲にさまざまな技巧が凝らされていて、このレコードではいろいろ細かいことをしている部分まで聴き取っていただけると思います。それぞれの曲がレコーディングされた時代によって音圧も違いますし、そのあたりはマスタリングでなるべく揃えられるよう工夫してもらいました。
――そういう手間暇がかかっているんですね。
高橋 そうなんですよ。なので、聴き方を変えていただけるといろいろと面白いかと思います。「Fly Me to the Moon 2020」は、2020年に私が歌を入れたもので、演奏音源は1995年のものをベースとしています。当時はショートバージョンしか収録しなかったんですね。なのにその後、ライブではフルで歌ったりしているので、「そろそろ音源としてフルの作品を作りますか」として作ったのが2020年のことでした。
――「魂のルフラン」盤にも「魂のルフラン 2010VERSION」とありますね。
高橋 これは鷺巣詩郎先生にアレンジしていただいたもので、鷺巣節がめちゃくちゃ効いています。意外と知らない方がいらっしゃるので、これはレコードで聴いてほしいものですね。「心よ原始に戻れ 2020」は、オリジナルよりもこちらのほうがレコードで聴くのに適しているからという意図です。「慟哭へのモノローグ」は、音の作りにもすごくこだわって大森先生があちこちに仕掛けをしている楽曲で、これもLPでぜひ聴いていただきたいですね。とても良い曲なのにあまり日の目を見る機会がなかったので、ぜひ聴いていただきたいです。ミックスでも十分にこだわって作業するんですけど、マスタリングでも、さらにもっと良くなるんですよ。
――そしてこれが発売される2月には横浜で30周年記念のイベント“EVANGELION:30+; 30th ANNIVERSARY OF EVANGELION”が開催されます。
高橋 その中で、2月22日に単独ライブをさせていただく予定があって、高橋洋子という名前で何か新しい動きがお見せできればと思っています。衣装も含めて考えていることがあるので、ぜひ会場でお楽しみいただければと思います。世界的なステイホームになって以降、配信サービスが進んで、もう一度TVシリーズから観直してくださったファンの方も増えて、「エヴァンゲリオンの30周年の主題歌は『残酷な天使のテーゼ』だよね」と思ってくださる方が世界中にいらっしゃるので、そういった方々に楽しんでいただけるようにいろいろ試行錯誤しています。会場に来ることで、皆さんのいろんな思い出も一緒に加わり、そして私たちからすると、皆さんがそこに参加することで完成するのがフェスだと思っているので、ぜひ皆さんも作る側の1人という思いを持って来ていただけると、より楽しめるのではないかと思っています。
〈この他の『EVANGELION FLASHBACK』収録曲については過去の「リスアニ!WEB」のインタビュー記事もご覧下さい〉
https://www.lisani.jp/0000128739/
https://www.lisani.jp/0000155861/
https://www.lisani.jp/0000191021/
https://www.lisani.jp/0000221825/
https://www.lisani.jp/0000229050/
『EVANGELION FLASHBACK』
2025年10月29日発売
品番:KICA-2641
定価:¥3,850(税込)
【CD】
01. 残酷な天使のテーゼ
02. FLY ME TO THE MOON 2020
03. 無限抱擁
04. 幸せは罪の匂い
05. 魂のルフラン
06. 心よ原始に戻れ 2020
07. 慟哭へのモノローグ
08. 暫し空に祈りて
09. TENSIONS – welcome to the stage
10. 赤き月
11. what if?
12. Final Call
13. Teardrops of hope
14. 罪と罰 祈らざる者よ
15. 今日の日はさようなら ※カバー曲〈新録〉
『「残酷な天使のテーゼ」EVANGELION 30th Anniversary Edition LP』
2026年2月21日発売
【カラーヴァイナル初回限定盤】
品番:NAS-2164
定価:¥4,400(税込)
封入特典:ジャケットイラストカード
【通常盤】
品番:NAS-2165
定価:¥3,300(税込)
<収録曲> ※初回限定盤・通常盤共通
残酷な天使のテーゼ
FLY ME TO THE MOON 2020
無限抱擁
幸せは罪の匂い
残酷な天使のテーゼ 2009VERSION
TENSIONS – welcome to the stage
赤き月
Final Call
『「魂のルフラン」EVANGELION 30th Anniversary Edition LP』
2026年2月21日発売
【カラーヴァイナル初回限定盤】
品番:NAS-2166
定価:¥4,400(税込)
封入特典:ジャケットイラストカード
【通常盤】
品番:NAS-2167
定価:¥3,300(税込)
<収録曲> ※初回限定盤・通常盤共通
魂のルフラン
心よ原始に戻れ 2020
慟哭へのモノローグ
暫し空に祈りて
魂のルフラン2010VERSION
Teardrops of hope
what if?
罪と罰 祈らざる者よ
●イベント情報
EVANGELION:30+;
30th ANNIVERSARY OF EVANGELION
2026年2月21日(土)~2月23日(月・祝)【3日間】
会場:横浜アリーナ
チケット:発売中
DAY2(2026年2月22日)
【STAGE AREA】
17:30~
高橋洋子 SPECIAL LIVE EVANGELION FLASHBACK(仮)
※「STAGE AREA」は「日付指定制/全席指定制」となります。指定された日以外のご入場はできませんのでご注意ください。
※「STAGE AREA」にご入場いただくには、該当日のSTAGE AREA TicketまたはALL AREA Passが必要となります。
※上演時間や内容は変更となる可能性がございます。
関連リンク
高橋洋子オフィシャルサイト
http://king-cr.jp/artist/takahashi/
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