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ASCA初のアジアツアー“ASCA ASIA TOUR 2025”のファイナル公演が11月24日に渋谷O-WESTで行われた。ソウルを皮切りに、上海、北京、台北、香港と各地を駆け抜けたアジアツアー。
PHOTOGRAPHY BY 草刈雅之
TEXT BY 逆井マリ
現時点の集大成的なセットリストで攻める
早くもライブハウスならではの熱気に満ち溢れるなか、背中が大きく開いた変形ロングジャケットに青の衣装を仕込んでステージに飛び込んだASCA。バンドマスター&キーボードの半田彬倫をはじめ、ドラムの田中航、ベースの富岡陽向、ギターの杉村謙心、マニピュレーターの小林タイチという精鋭たちを従え、『28』のオープニングナンバー「エスキース」へ。腕を大きく広げ“ちょっと自画自賛? いまを愛せてる”とハイトーンで届けていく。その姿には8年間歌い続け、さらにはアジアツアーを大成功に収めた自信とみんなと会えたことに対する喜びが滲んでいた。続けて「一緒に叫んでいきましょう!“叫び続けろ”」と『魔法科高校の劣等生来訪者編』のオープニングテーマ「Howling」へ雪崩込んでいき、さらには「逆境スペクトル」とくるのだから、フロアが盛り上がらないわけがない。タオルを振り回し、さらには頭も振り回したりと、序盤からハイライトのようなセットリストでフロアを焚き付けてみせたのだった。
息を整えつつ最初のMC。「初めてのアジアツアーを海外5都市まわってきました。今日がそのファイナルです」と語尾に力を込めれば、客席から大きな拍手が。「今日ここに集まってくれたことに、本当に感謝してもしきれません。
「それでは、ASCA “ゼロ地点”の歌を聴いてください」と、『リスアニ!』Vol.30の付録CDに収録されたプレデビュー曲「RUST」へ。イントロが鳴った瞬間フロアからは怒号のような歓声が上がり、クラップ、ジャンプ、ヘドバンと、目まぐるしいほどに反応が連鎖して、ライブハウスならではの揺れを起こしていく。曲を締めくくる直前、ASCAは頼もしさを湛えた背中をフロアに向けると、次の瞬間ギターの速弾きと共にくるりと前を向いて「最前線」へと突っ走る。フロア全体を力強くリードしながら、過去と未来と現在の境界線を切り開くかのようなロックチューンを叩き込み、この流れがデビュー8周年を迎えたことを語るMCへと繋がっていく。そもそも“ゼロ地点”という言葉は、2019年に行われた“ASCA LIVE 2019 -絶対零度-”の由来ともなったもの。ちなみにその時のライブは、この日の会場の真横にある渋谷・duo MUSIC EXCHANGEで行われていた。
「渋谷は私がデビューしてから初めてワンマンライブをやった場所で思い出深いんです。8年経った今も、思い出の地で皆さんに向けて歌を届けられていることを本当に嬉しく思っています。この声に出会ってくれてありがとう」
そして、ゼロ地点から一歩ずつ積み上げてきた歩みを示すようなブロックへ。デビュー曲「KOE」、アルバム『28』にも収録されている「Never Let It Go」、さらASCAがゲストボーカルとして参加したSawanoHiroyuki[nZk]の「Unti-L」と、新旧織り交ぜたミディアムナンバーを、今のASCAならではの豊かな表現力で届けていく。ASCAの伸びやかな歌声、そしてバンドメンバーのダイナミックなアンサンブル、さらに照明の演出も手伝って、さながら巨大なホールにいるかのようなスケール感が立ち上がっていた。
「最高の景色が広がってます!」とASCA。観客に改めて感謝を伝えつつ「1人1人のところを回ってハグしたいぐらいの気持ちなんです。だからね、気持ちだけでもエアーハグを送らせてください」と両腕を広げると、フロアの空気がふっとやわらいだ。一方、11月はデビューの月であり、1stアルバム『百歌繚乱』のリリースなど自分にとって特別な出会いのあった時期であることと、この8年間には同じ数だけの別れもあったことを語る。しかしそれがどんな別れでも「出会えたことに感謝したいと思えるようになった」と穏やかな表情を見せ、誰の中にもある“別れ”の記憶に寄り添いながら、これから別れがあった時にも前を向けるようにとの願いを込めて次の曲「MOONWORK」へ。
「MOONWORK」は2025年の春アニメ『ばいばい、アース』第2シーズンEDテーマを飾ったミディアムナンバー。マイクとの距離をゆっくり離したり近づけたりしながら、声の強弱を緻密に操っていく姿も印象的。バンドと息を合わせ、繊細なボリュームコントロールをしながらも全身で感情を放つような歌唱に、ASCAが抱えてきた“愛”の温度がそのまま乗る。ときに泣き出しそうなほど切実な表情を見せる瞬間もあり、その一挙一動が曲の世界観をさらに深めていった。
誰もが息を飲むようにじっと聴き入っていた光景をガラりと変えたのはアニメ『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』エンディングテーマ「Giver」。ASCAは曲に合わせるようにロングジャケットを脱ぎ、青いサテン調のパンツスタイルに。動くたびにフリンジが揺れ、どこか異国の舞踏を思わせるかのようで、曲の持つオリエンタルな雰囲気が一層際立つ。
長い髪を払いながら「東京、声出せるか!?」と挑発するようにASCAが問いかければ、フロアからは熱いシンガロングが跳ね返ってくる。魂のぶつかり合いのような光景を見せたのが次の「Teamfight Tactics: K.O. Coliseum」のテーマソング「Fighter!!」。このブロックではバンドメンバーのエネルギッシュさも印象的で、続く「VIVID WORLD」ではASCAがギター杉村と背中合わせになる一幕も。ステージ上手から下手へと縦横無尽に駆けながら歌うASCA。ステージ上の全員が互いに刺激し合いながら熱を高めていく。そのエネルギーがそのままフロアに伝わり、“戦い”と一言でいうより、お互いがどこまで楽しみ尽くせるのかが勝負のコロシアムのよう。ASCAも「もうみんな最高すぎるから!」「すごい幸せです」と満面の笑みだ。
MCでは本公演を支えるバンドメンバーを紹介。キーボード&バンドマスターの半田を紹介する際、ASCAはふと思い出したように「ずっと謝りたかったことがあるんです」と切り出した。というのも、今回のライブのリハーサル中にスタッフ2人の誕生日祝いをした際に、半田の誕生日がその翌日だったことを知らずにスルーしてしまったんだとか。しかも半田自身に「ハッピーバースデー」を弾かせてしまったという(笑)。
あなたが輝いていることを伝え続けていきたい
あなたが輝いていることを伝え続けていきたい
その呼びかけと共にライブは後半戦へ突入。ここではメドレー形式で「I DON’T CARE」「#kwk」「Gift of Life」の三者三様の楽曲を届け、曲の合間やサビで何度も目の前のフロアにいる1人1人と、さらには2階席にも何度も視線を向けて、客席の境界がふっと曖昧になっていく。そんななかでアニメ『ばいばい、アース』OPテーマ「FACELESS」を。「ばいばい」とでもつぶやくように指を小さく折り曲げてみせる姿がかわいらしく、曲にあわせてくるくると変わっていく表情も魅惑的だ。さらに痺れるようなロックナンバー「明日世界が終わるとしても」では何度も手をひろげ、間奏では客席の1人1人を確かめるように視線を送り、深く頷きながらステージを踏みしめる。そこから弾みをつけて、「いくぞ!」と高く拳を上げて本編ラストブロックの「凛」「CHAIN」へ突入。曲中、自らの体でタンバリンを鳴らすかのようにリズムを刻みながら歌い、音に身を委ねるたびにロングヘアがしなやかに舞う。
アンコールのASCAコールに応え、ツアーTシャツを身に纏ったASCAが登場すると、いきなりアニメ『ソードアート・オンラインアリシゼーション』オープニングテーマ「RESISTER」を投下。フロアの温度が一気に上がり、“君がいるから歌い続けるよ”の一節が決意表明のように響く。この日は「RESISTER」に限らず、ステージを彩った曲の1つ1つが決意表明のようだった。“生き様”と言ってしまうと仰々しいかもしれないが、この日のASCAのステージからはそれが自然と伝わってくるのだ。激しさだけでも繊細さだけでもない、人としての振れ幅ごとしなやかに歌に乗せているからだろうか。
アンコールではグッズ紹介の時間も。今回のTシャツには、これまでのイベントで少しずつ増えてきたオリジナルキャラクターたちが勢ぞろい。「8周年というタイミングだからこそ、色々なものを詰め込んだ想いにしたかった」と語り、その声には長く応援してくれるファンへの感謝が滲む。その感謝を歌でといわんばかりに「今日だけの特別を持ってきました」とKeyの最新作となるゲーム『anemoi』オープニングテーマ「エタニクル」をライブ初披露。ケルト風の爽やかな旋律が駆け抜け、サビではASCAのハイトーンが軽やかに舞い上がり、緑色の照明がその世界を想像させる。新しい冒険の扉が開いていくようなサウンド感が今のASCAにもピッタリだ。
「時には、自分が何のために歌っているのかわからなくなることもあったし、自分が歌ってていいのかなって思う瞬間が何度かあって。でも、こんなにも音楽が好きだったんだ、歌うことが好きだったんだ。そのことに改めて気付くことができた。その気持ちを変えてくれたのは皆さんなんです」と観客1人1人を見ながら力強く伝え、「人の力ってすごい」とASCAは何度も何度も噛みしめるように語った。「あなたの“好き”というまっすぐな気持ちには、すさまじい力と輝きが灯っている。みんなのおかげで自分を愛せるようになった。私のこの人生、愛せるかも。愛すべきものなのかもって」。
そして改めてその決意を言葉で伝える。「私はこれからもステージに立ち続けたい。あなたが輝いていることを、ステージから伝え続けたい。皆さんが好き、楽しいって想いを持ち続けていけるように、9年目も頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願いします」
ラストは28歳のASCAの素直な想いを綴った「28」。客席も含めた全体がステージだと言わんばかりに照明がふわりと明るくなる。“歌って、届いて君に出会えた生まれてこれて良かった”と、ASCAは胸に手を添え、真っ直ぐに観客へ想いを届けるように歌いきった。歌い終えた瞬間真っ先に取った行動が客席に向けた大きな拍手だったことが印象深い。その姿が9年目を迎えた29歳のASCAの今を象徴しているかのようだった。最後に「8」ポーズで記念撮影し「来年のASCAの活動も盛り沢山ですので、期待して付いて来てください! 愛してます!」とメッセージ。万雷の拍手が降り注いだ。
アグレッシブに攻め立てる猛々しい瞬間がありながらも、この日のASCAはバックパッカーのごとく風のようにしなやかで軽やかで、まさにその生き様がはっきりと現れていた。素直に生きる、軽やかに生きる、自分を心から愛する。それがどれほど難しいことか、きっとこの場にいた多くの人が身をもって知っているはず。しかし、彼女は強さも弱さも嘘なく差し出し、その難しさすら声に乗せる。それが今のASCAの魅力の1つなのだ。
そんな彼女が素直な心境を語った場面で発した「あなたが輝いていることを伝え続けていきたい」という言葉は、同時にファンが彼女に伝え続けていきたいことでもある。互いに熱い想いを交換し、眩しく照らし合う光景は、ASCAが“愛し、そして愛される人”であることをはっきりと証明していた。この輪はこれからもどんどんと広がっていくはず。29歳、9年目のASCAも明るい予感しか、ない。
“2025.11.24「ASCA ASIA TOUR 2025」ファイナル@渋谷O-WEST”
<セットリスト>
M01.エスキース
M02.Howling
M03.逆境スペクトル
M04.RUST
M05.最前線
M06.KOE
M07.Never Let It Go
M08.Unti-L
M09.MOONWORK
M10.Giver
M11.Fighter!!
M12.VIVID WORLD
M13.I DON’T CARE~#kwk~Gift of Life(メドレー)
M14.FACELESS
M15.明日世界が終わるとしても
M16.凛
M17.CHAIN
EN01.RESISTER
EN02.エタニクル
EN03.28
●「ASCA ASIA TOUR 2025 -11.24 TOKYO-」プレイリスト
https://asca.lnk.to/asiatour2025
●リリース情報
「Giver」
TVアニメ『龍族Ⅱ -The Mourner’s Eyes-』エンディングテーマ
予約:https://asca.lnk.to/260204PKG
関連リンク
ASCA オフィシャルサイト
https://www.asca-official.com/
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