佐々木李子、自身最大規模のZeppワンマンライブ“RE;VE...の画像はこちら >>

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佐々木李子は多面的な顔を持つ表現者だ。声優として『BanG Dream!』発のガールズバンド・Ave Mujicaのドロリス/三角初華役をはじめ多彩なキャラクターを演じる一方で、アーティスト活動では各楽曲の世界観に入り込む“憑依系シンガー”としてあらゆるタイプの楽曲を歌いこなす。

その傑出した才能を存分に味わうことができたのが、12月27日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われたワンマンライブ“RE;VERSI”。個人活動では自身最大規模となる会場で、彼女はリバーシさながら自らの表も裏も余すことなく見せて解放する、“佐々木李子”の軌跡そのものと言うべき歌を届けてくれた。

TEXT BY 北野 創
PHOTOGRAPHY BY Takashi Konuma/Taichi Ishihara

“闇りこち”と“光こち”が交差するリバーシブルなライブ世界

2025年は先述のAve Mujicaを筆頭に活躍の場を大きく広げるなか、ソロ名義でもシングルを2タイトルリリースし、5月にはワンマンライブ“I’m RICO.”を成功させるなど、彼女にとって間違いなく飛躍の年になった。そんな1年の締め括りとなる今回のライブ。まずは香取真人(Gt/バンドマスター)、マツモトタクロウ(Ba)、中村“マーボー”真行(Dr)、岡田 基(Key)から成るサポートバンドが登壇すると、煌びやかなイントロダクションに導かれて佐々木がステージ中央に歩み出てくる。ライブの開幕を飾ったのは「Majestic Catastrophe」。TVアニメ『異世界黙示録マイノグーラ~破滅の文明で始める世界征服~』OP主題歌として、2025年の夏を彩ったシンフォニックメタル調の荘厳なアップナンバーだ。右半身は黒、左半身は白をベースにしたアシンメトリーな衣装を纏った彼女は、バンドの屈強な演奏を凌駕するほどの逞しい歌声を開始早々から響かせて、会場を絶望と安寧が渦巻く「Majestic Catastrophe」の世界に塗り替えていく。

そのダークな“闇りこち”モードから一転、華やかな“光(ひかり)こち”モードで会場を明るく照らし出したのが次曲「Blooming!」。冒頭で「ワンマンライブ“RE;VERSI”にようこそ、一緒に楽しんでいこう!」と客席のトリコ(佐々木李子のファンネーム)たちに呼びかけると、ブラスサウンドで彩られたグルーヴィーなナンバーをソウルフルに表現していく。そして彼女の佐々木李子名義でのメジャー初シングル曲でもある「ドリームクライマー」へ。「みんなの声を聞かせて!」という言葉に応えて会場からは「オイ!オイ!」と大きな声が上がり、サビではフレーズに合わせてクラップも巻き起こる。例え涙する日があったとしても、その感情さえも糧にして夢に向かって前進していく――そんなメッセージ性を持った楽曲を、大勢のファンの前で心から楽しそうに歌う彼女。

リリースから約10年、酸いも甘いも経験してきた今だからこそ、その歌声もより輝きが増していたように感じられた。

MCで「こんりこちー!」と元気いっぱいに挨拶し、「佐々木李子としてここに立ったとき、どんな景色が見れるんだろう」と、この日が来るのをずっと楽しみにしていたと語る佐々木。「これまでずっと溜め込んできた想いを全部ここにぶつけて、一緒に楽しんでいきましょう!」と呼びかけ、この後も最新曲から初期の楽曲までさまざまなナンバーを取り揃えてきたことを伝えてファンの期待を煽る。果たして次はどんな楽曲でくるのか。「ひとつ言えるのは、私、元々“闇の人間”です」と告げると、不穏なイントロと共に狂乱のラウドロック「Psycho」に突入する。グッと深みを増した太く優美なボーカル、髪を振り乱して楽曲の世界に没入していく姿、「セイ!」と号令して会場の熱狂を引き出すステージングの巧みさ。そのすべてが圧巻のひと言だ。

そして彼女の持ち曲の中でもとりわけドラマチックなロックナンバー「Freedom」へ。重厚なバンドサウンドに乗せて、今にも心が決壊せんばかりのエモーショナルな歌を叩きつける。2番サビを歌唱後、その場に崩れ落ちるようにしゃがみ込む振る舞いに哀切が滲む。顔は上げず伏せがちだったところからも、まるで自身の内面の苦悩と対峙するような壮絶さがあった。そこから間髪入れず「もっとロックしようぜ!」と檄を飛ばして歌われたのは「PROVE」。

ステージ下手と上手にそれぞれ備え付けられたお立ち台に乗り、時に客席にマイクを向けてさらに大きな歓声を出すように煽りながら、歌と音楽でトリコたちを牽引する自らの存在証明をアピールする。彼女に先導されて会場中が「WOW WOW~♪」と声を上げる場面は、“この声が紛れもない「僕」だ”という歌詞そのままの光景だった。

あまりの熱気に「ここは真夏?(笑)」と笑う佐々木。2025年は、かねてよりチャレンジしたいと宣言していた滝行には行けなかったものの、いろんな場所で歌を届けることができて「やりきった感」を覚えるほど充実した1年だったと語る。そして、改めてこの日のライブを開催できた感謝の気持ちを伝えると、「今年みんなと一緒に見た素敵な景色を思い出しながらお届けしたいと思います」と、2025年リリースのもう一つのシングル表題曲「Palette Days」(TVアニメ『日本へようこそエルフさん。』OP主題歌)を披露。ステージライトが多色に輝き、パレットのようにカラフルな景色を生み出すなか、佐々木は包容力のある温かな歌声で会場を覆いつくしていく。色とりどりに灯った会場のペンライトが象徴するのは、トリコとのハートを満たす日々。歌い終えて思い出を大切にしまい込むように胸元に手を当てた彼女は、「出会ってくれてありがとう」と想いを伝えて締め括った。

続いて歌われたのは、佐々木自身が作詞・作曲した「君と僕の星」(作曲は佐藤厚仁との共作)。ステージ下手のお立ち台に腰掛けて“君”への想いを馳せるように歌う姿が印象的で、軽やかでいながらどこか哀愁を伴った旋律が遙か夜空へと吸い込まれていく。“必ず星になるよ 君に会いに行くよ きっと星になるよ 約束したから”というフレーズでの伸びやかでニュアンス豊かな表現が、願いのようにも決意のようにも響く。

そこから“フタリ”の未来を描くバラード「フタリノセカイ」へと繋げる流れも秀逸で、優しく寄り添うようなアプローチで“ちぐはぐなままでいいから ずっと二人で一緒にいよう”と想いを届けた。

ここからは趣きを変えて、ピアノと2人だけの時間。ステージ中央に用意されたイスに座った佐々木は、観客にも着席を促して「歌詞を噛み締めて聴いていただけたらと思います」と語ると、TVアニメ『デリシャスパーティ♡プリキュア』後期ED主題歌「ココロデリシャス」を歌い始める。原曲は煌びやかなサウンドが印象的だが、セルフカバーとなるピアノバージョンはテンポを落としたしっとり優しいアレンジに仕立てられており、佐々木は透き通るような高音を交えながら、一つひとつの言葉を大切に歌を紡いでいく。そのプレシャスな時間に続いて披露されたのは、佐々木がだいあ役として歌唱したTVアニメ『キラッとプリ☆チャン』の挿入歌「フレンドパスワード」のピアノバージョン。どちらの作品もいわゆる子供向けのアニメということもあり、歌詞は比較的平易な言葉で書かれているからこそ、そこに込められた希望のメッセージがよりストレートに心に刺さる。時にピアノの方を向いてタイミングを合わせながら、佐々木は聴く者の心を浄化する清らかな歌声を届けてくれた。

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佐々木李子にとってのステージという場所「私が生まれてきた理由」

ここまでリバーシの黒い側にあたる“闇りこち”と白い側にあたる“光こち”の側面を代わる代わる見せて、我々の心を揺さぶってきた佐々木だが、次のブロックでは自身の作詞した楽曲を2曲連続で届けて、自らの世界により深く惹き込んでいく。マイクスタンドを用いて振付と共に披露されたのが「Empty Doll」。直立姿勢のまま手振りを中心にした動きはまるで人形のようだが、最初は“歌うために生み出されたドール”だったのが、楽曲が進むにつれて感情が通っていくような動きと歌の表現が、歌詞のストーリー性を強調する。歌手であると同時に声優・役者であり、過去には朗読と音楽を融合させた“SynapstoRy(シナプストーリー)”シリーズを企画・開催していた彼女らしい、演劇的とも言えるパフォーマンスだ。

そしてアコースティックギターを手にすると、自身のアーティスト活動への想いを描いた「詩をまく者」へ。かつてなかなか芽が出ず思い悩んでいた日々の気持ちも赤裸々に反映した本楽曲。

それでも諦めることなく活動を続けてきた原動力、“咲きたい”というひたむきな願いを力強く歌う姿に、彼女のこれまでの歩みが透けて見えて心が熱くなる。アコギの弾き語りもまた、自身のライブの宣伝のために路上ライブを行っていた頃の佐々木の姿と重なるもので、そういった経験のひとつひとつを積み上げて今このステージに立っていることが、これからも“詩を蒔いていくから”という約束を一層強くしていたように思う。さらにライブでは久々に歌ったという「Walkin’ Walkin」に繋げ、この先も自分の道を歩き続けていく覚悟を表明。この楽曲では定番になっている手を横と縦に振る動きでトリコたちと心をひとつにして、最後は「歩いていくぞ!」と言葉で宣言した。

「本当に楽しい!私、ライブしている時が一番生きてるって感じます」。佐々木はとびきりの笑顔でそう語ると、リハーサルでもテンションが上がってしまい、本来は抑えめに歌うべきところを常に100パーセントで歌ってしまったことを明かして笑いを誘う。この日のライブが余程楽しみだったのだろう。そして「今日はお祭りだよ!」「私は“ゼロ・100”の人間なんだけど、今日はみんなにも100でいてほしい」と、次に歌う曲「豪華絢爛祭」の、この日のために考案した振付のレクチャーを行う。その動きとは、サビで曲に合わせてその場で右と左に回転するというもの。「音に乗っていけば大丈夫!」と勢いよく楽曲を始めると、華麗に疾走するバンドの演奏に合わせてパワフルな歌声でトリコたちをリード。サビで会場中がクルクルと回る姿はまさにお祭りさながらの様相だ。佐々木も間奏パートでギターの高速リフに合わせてエアギターを披露するなどノリノリで走り抜けていく。

「もっともっとロック聴かせて!」と煽ると、何度でも立ち上がる意志を込めた勇壮なロックチューン「Under the Flag」へ。お立ち台の上で片手を高く上げる姿は、有名なジャンヌ・ダルクの絵画の如く旗を掲げているかのようで、エネルギッシュなパフォーマンスで観衆を“次の物語”へと導いていく。そして「次の曲でラスト、まだまだ盛り上がっていくぞ!」と投下されたのは、ライブで歌う景色をイメージして生まれた爽快なアップチューン「Daydreamin’」。バンドメンバーの紹介を兼ねたソロ回しも挿みつつ、疲れ知らずのタフ&パワフルな歌声を畳みかけ、トリコたちも100パーセントの歓声と熱狂でそれに応える。ずっと待ち望んでいたライブ、長い間夢見ていた景色を、想像でも白昼夢でもなく現実のものにして、ライブ本編を締め括った。

すかさず巻き起こった「りこち」コールを受けてのアンコール。ライブTシャツに着替えた佐々木は、赤いエレキギターを手にすると、自身が作詞した「カーテンコールを揺らして」(TVアニメ『デュエル・マスターズ!!』EDテーマ)を歌う。その歌詞には「Empty Doll」と同様、さまざまな葛藤や挫折を経験してきた彼女自身の心情が投影されている。“出来損ないでも良いですか 歌う価値などはありますか”と悲痛な胸の内を明かしながらも“それでも諦めきれないな ステージの上灯す光”とのフレーズにもある通り、そこには彼女のステージに対する思いの表と裏が詰まっているのだ。その両面を繰り返し何度も反転(リバース)させながら、一歩ずつ進んできた佐々木李子の10年以上に渡る歩み、その先に広がっていたトリコたちのカーテンコールに、彼女は最早寸分の悩みすら感じさせない堂々たるパフォーマンスで応えてみせた。

歌い終えて「カーテンコールありがとうございます!みんなの声がどこまでも聞こえてきて、すごく嬉しかった」と感謝の気持ちを伝えると、今度は黒いギターに持ち変えて「もう言葉はいらないということで……早速新曲を聴いてください!」と宣言して、完全未発表の新曲「まるでマトリョーシカ」を初披露。獰猛なイントロや重々しくリズムチェンジする間奏、ヘドバンパートからメロディアスなサビに至る構成など、「Majestic Catastrophe」を凌駕するヘヴィネスさで、照明が激しく明滅するなか、佐々木も陶酔するように歌い演奏する。

またも新たな扉を開く1曲となった。

「佐々木李子のメタル、どうでしょうか!」との問いかけに会場が沸き立つなか、さらに嬉しいお知らせが。なんと本楽曲を含む全10曲すべて新曲となるニューアルバム『RI PATHOS』を2026年6月3日にリリースすることを発表。さらに「まるでマトリョーシカ」を皮切りに、アルバム収録曲を5ヵ月連続で先行配信することが決定した。収録曲はそれぞれ佐々木李子に紐づく事柄をテーマに制作されているとのことで、どんな作品になるのか楽しみなところだ。そして本公演の模様がCS音楽チャンネル「MUSIC ON! TV(エムオン!)」にて全曲独占放送されること、公式ファンクラブ「MottoRico!」初のオフラインイベントが開催されることも発表。詳細はオフィシャルサイトをチェックしてほしい。

新しいお知らせができたことに喜びつつ、こうしてライブを開催できたこと、フルアルバムをリリースできることについて「当たり前じゃないんですよ」と語る彼女。自分の気持ちを言葉にして伝えるのが苦手で、ずっと不器用な生き方をしてきたなかで、ステージで歌っている時は本物の気持ちを届けることができるし、「この場所があるということが、生きていて良かったと思えるし、私が生まれてきた理由がこれなんだ!って強く思います」と、改めてアーティスト活動への想いを言葉にして伝える。「これからもお互い一緒に進んで行きたい。幸せになりたい。なので、いつもなら“ついてきてくれますか?”というところを、今日はこう言います。私についてきて!」と力強く宣言すると、現所属レーベルであるランティスからの初シングル曲「Windshifter」(TVアニメ『リンカイ!』OP主題歌)をラストナンバーとして披露。吹き抜ける風のように爽やかで、太陽のような生命力に満ちた歌声が、世界を眩しく塗り替えていく。ステージを伸び伸びと動き回りながら、トリコたちの生み出す歓声と熱風に押されて、その歌の輝きはさらに増していく。最後は「また必ず会おうね!絶対にこの場所は無くさないよ!」と約束して、初のZepp単独公演を結んだ。

白と黒、光と闇、佐々木李子に内在する両方の要素をひとつのライブに統合することで、彼女自身のこれまでの軌跡をも浮かび上がらせた今回のワンマン。きっと彼女の歩む道には、この先も山があれば谷もあることだろう。だが、それが佐々木李子というアーティストをさらに強く逞しくし、その歌声はどこまでも遠くまで届くであろうことを、確信させてくれるライブだった。

佐々木李子ワンマンライブ「RE;VERSI」
12月27日(土)@神奈川・KT Zepp Yokohama セットリスト

M1 Majestic Catastrophe
M2 Blooming!
M3 ドリームクライマー
M4 Psycho
M5 Freedom
M6 PROVE
M7 Palette Days
M8 君と僕の星
M9 フタリノセカイ
M10 ココロデリシャス (Piano Ver.)
M11 フレンドパスワード (Piano Ver.)
M12 Empty Doll
M13 詩をまく者
M14 Walkin’ Walkin
M15 豪華絢爛祭
M16 Under the Flag
M17 Daydreamin’
-アンコール-
M18 カーテンコールを揺らして
M19 まるでマトリョーシカ ※初披露曲
M20 Windshifter

●2026年1月7日(水)先行配信
「まるでマトリョーシカ」: https://lnk.to/LZC-3395
音楽配信サイト事前予約(Pre-add / Pre-save)受付中

●2026年6月3日(水)発売決定!
佐々木李子フルアルバム「RI PATHOS」
https://sasakirico.lantis.jp/news/644/

●CS音楽チャンネルMUSIC ON! TV(エムオン!)にて、
ワンマンライブ「RE;VERSI」の模様が全曲独占放送決定!

番組名:全曲独占放送! M-ON! LIVE 佐々木李子「RE;VERSI」
放送日時:2026/2/18(水)22:00~24:00
※放送内容はライブ内容と異なる場合がございます

詳しくは、https://www.m-on.jp/info/2025/12/27/306037/

関連リンク

佐々木李子 公式サイト
https://sasakirico.com/

佐々木李子 公式X
https://x.com/sasakirico

佐々木李子 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC5oqO52W1mdO8-7AJuIs5Uw

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