【エッセイ連載】「伊藤美来のmoi!」第21回目:お料理少女...の画像はこちら >>

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声優アーティスト・伊藤美来が日常で感じたことを切り取り、私らしく文章にしていくエッセイ連載「伊藤美来のmoi!」。

「初めましての方や応援してくれている方にも、表面的な私だけではなく自分の頭の中を見てもらう気持ちで書いていきたい。

“伊藤美来”がどんな人間か知ってほしい」。
そんなオモイを込めて言葉を綴っていきます。

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小さい頃は料理が大好きだった。嘘じゃない。年を重ねるにつれて料理をしなくなったのだ。こんなことを言うといい子ちゃんぶって……と思われるかもしれないが、小学生の頃はお手伝い好きな少女だった。お料理、洗濯物畳み、お買い物、お風呂洗い。まあ、お片付けだけは苦手だったけど。「みくちゃんがいると助かるわあ」とお母さんに褒めてもらえることが何よりも嬉しかった。その中でも一番好きだったのが料理。料理ができるようになりたくて、お母さんと一緒にキッチンに立ちレシピ本を音読したり、煮物を煮込んだり、盛り付けを担当したりと、お母さんは私にできることからチャレンジさせてくれた。小さな私が料理が上手くなりたいと思ったのは、強い憧れだった。

少女漫画でもアニメでも、私がなりたい!と思うかわいい女の子は、みんな料理上手だった。みく少女は目を輝かせながらそれらを観て、私も大人になったら美味しい料理を作って家族や友達に喜んでもらいたい、女の子ならお料理できなきゃね!と、平成感丸出しの考えだが本当にそう思っていた。

思い立ったら行動が早いのは今と変わらず、小学生向けの毎月届くお料理本の契約を両親にねだった。「本当にやるの?」と何度も聞かれたけど私は料理上手になりたかったし、何より特典でついてくる、お子様用の調理器具セットが欲しくて欲しくてたまらなかった。小さい私の手にもぴったりサイズの包丁や泡立て器、まな板にゴムベラまで付いていた。届いたときは胸が躍ったのなんの。この相棒たちと一緒に、ごはんもお菓子もたくさん作っていくぞ、と心に決めた。早速料理本の中から作りたい料理を見つけた。初めての料理に選んだのは、難易度MAXのクリームシチューだった。この本の中で一番作りたかった。もちろん食べるのも好きだったし、私の憧れの美少女たちは作中でフリフリのエプロンを身につけ、みーんなクリームシチューをぐつぐつ煮込んでいたから。どうしてもクリームシチューが作りたいの!と無理やりお母さんにゴリ押しし、その日の晩ご飯は「みくちゃん特製クリームシチュー」に決定した。

あの日のことは忘れもしない。お母さんには後ろで見守ってもらいつつも、私はあくまで一人で作りたかったので手は出さないでほしいとお願いした。届いたばかりの自分専用の包丁とまな板を使って野菜を切っていく。お母さんのお手伝いじゃない、夢の一人お料理。楽しくて楽しくてしょうがなかった。初めて作ったクリームシチューはなぜか茶色くて、憧れたホワイトシチューではなかったが、やりきった感はとてつもなかった。上出来とは言えないシチューを食べた家族は「美味しいよ、よくできたね」と褒めてくれた。それからは見守りありの一人お料理で、色んなものを作ったと思う。ポロポロのハンバーグとか、味の濃い焼きそばとか。クッキーもよく焼いた。自分が理想の女の子にどんどん近づいていくようで嬉しかった。

こんなに料理の虜だった私がなぜ料理をしなくなったのか。

それは簡単。次にハマった物語の主人公が料理下手だったから。その子は何を作っても丸焦げで、オーブンを開けるたびに煤だらけのアフロになっていた。そんな不器用な子が、指を怪我しながらも好きな子のためにチョコレートを作るシーンに、みく少女は胸を打たれたのだ。この子みたいになるには、まず料理が下手じゃなくちゃいけない!と、今までの頑張りをあっけなく捨て、憧れを「健気なお料理下手少女」にシフトチェンジしたのだった。幼かったとはいえ、自分でも愚かすぎるなと思う。やろうと思えばいつでもできるし、なんて甘えた考えで大学生までなあなあに生きてきてしまった。そんななか、健康維持と金銭面を考えると料理は人生で必要不可欠なスキルだと学び、いざ久々に料理をしようと和食作りを試みたが……何もできなかった。1つの工程に時間がかかりすぎるし、何より味噌汁が美味しくなかったのがかなり悲しかった。味噌汁って家庭科の教科書の最初のページにあったよな……。それからまた料理から離れていたのだが、29歳にしてまたお料理熱がきている。憧れじゃなくてとにかく健康になりたいのが理由だけど。
美味しくて体に良い料理に挑戦したい。最近はおにぎりと、味噌汁リベンジから始めている。あの頃使っていた小さな泡立て器は、今はお味噌を溶かすのに使っている。味噌汁の正解はまだ模索中だが、おにぎりは美味しく握れるようになってきた。あの頃はすぐ解約しちゃったけど、お料理本を契約してくれた両親に感謝だ。あの日々のときめきがずっと胸にあったから、またお料理始めてみたいと思えた。いつか真っ白なホワイトシチューを家族にご馳走しなきゃな。


えだまめと塩昆布のおにぎり。
湿気ったのりが上手く噛みきれなくていつもぼろぼろする。

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