VR(仮想現実)や3DCGなどの技術が長足の進歩を遂げ、それらの要素を採り入れたアニメーションMVやライブ演出が大きく注目を集めている昨今。それによりアニメと音楽の関係性も変化し、次々と目新しいコンテンツが登場しているわけだが、そのなかでもとりわけ面白い取り組みを行っているのが、パチンコスロット店「アイランド」と、アニメーション制作会社「Production I.G」によるコラボレーションアニメプロジェクト「ステージ・バイ・ステージ」だ。
アニメ監督、声優、アーティスト――様々な分野のフレッシュな才能が集結する本作の魅力について紹介する。

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“バーチャルアーティスト”として活動する3人の姿を描く物語
「ステージ・バイ・ステージ」は、我々が現在過ごしている時代より少し先の未来、バーチャルライブなどの技術が今よりも発達し、バーチャルでのアーティスト活動が文化として定着した世界を舞台にした物語。設定上は、アイランドのマスコットキャラクター・アイラが活躍するTVアニメ『でびどる!』(2018年)の未来にあたるとのことだが、本作でフォーカスが当てられるのは、アイラたち『でびどる!』の登場キャラクターではなく、それぞれの想いを胸にバーチャルアーティストとして活動を行う3人の女の子たちだ。

杏道リア(CV:夏吉ゆうこ)は18歳のフリーター。過去のとある出来事が原因で、何事に対しても途中で熱が覚めてしまい、心から熱意を注ぐことのできるものを探しているなか、ネットメディアでアルバイトを始めたことをきっかけに、バーチャルアーティストの存在を強く意識するようになる。

井伊嶋美沙(CV:mido/THE BINARY)は貿易会社に勤務する25歳のOL。学生時代は勉学に勤しみ、「手のかからない優秀な子供」として生きてきたが、実は生粋のバーチャルオタク。就職するも慣れない環境に疲弊し、改めて自分の人生を見つめ直すことで、それまで抑えていたバーチャルアーティストへの憧れを形にしていく。

府良わらび(CV:あかまる/THE BINARY)は15歳の中学3年生。超内向的な性格だが、小学生の頃からネット上で匿名のアーティストとして活動を行っており、その筋ではある程度は知られた存在に。だが、自分の表現に行き詰まりを感じ始めていたところ、バーチャルアーティストのことを知り、そこに新たな可能性を見出していく。

年齢から性格まで三者三様で、バーチャルアーティストになった経緯もバラバラの3人。
その成長物語こそが「ステージ・バイ・ステージ」の中核となっているわけだが、いわゆるストーリー仕立てのアニメ―ションでそれを描くのではなく、音楽と最新鋭の映像技術との融合によるアニメーションMVで表現されているのが本作の最も特筆すべきポイントだ。

MVの制作を手がけたのは、Production I.G所属の大城丈宗。これまで『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』『Re:ゼロから始める異世界生活 2nd season』といった人気作のOP/ED映像を制作してきた気鋭のクリエイターで、「ステージ・バイ・ステージ」にはMVの監督、原案、絵コンテ、演出、3DCG、撮影、編集で関わっている。キャラクターの大まかな設定も彼のアイデアを形にしたものとのことで、本作の世界観を構築した人物と言っていいだろう。

作品を彩る楽曲、映像作品を意識したアニメーションMV
「ステージ・バイ・ステージ」からは、今のところ2曲が発表されている。第1弾楽曲「Synchronicity」は、杏道リア(CV:夏吉ゆうこ)によるキャラクターソング。シャープなギターカッティング、軽やかなエレピ、タイトなドラムなどが絡み合って疾走感溢れるグルーヴを形成する洒脱なナンバーで、作詞はモリタコータ、作編曲・演奏は気鋭の音楽クリエイター集団・Art Necoのメンバーたちによるもの。「自分らしさ」を探して自問自答しているような歌詞は、杏道リアがどんな女の子なのか想像を膨らませてくれるし、リアルとフィクションの狭間を揺れ動く「自分」という存在の描かれ方は、バーチャルアーティストを題材にした「ステージ・バイ・ステージ」の作品性ともリンクするものだ。

そして何より、夏吉ゆうこの(杏道リアの18歳という設定にしては)やや大人びた歌声が、彼女のキャラクター像にさらなる深みを与えている。現時点で公開されているMVは15秒バージョンのみだが、フルバージョンではリアルとフィクション、2人の杏道リアが交差するギミックで、彼女の心情の変化と成長が見事に表現されているので、公開を楽しみにしていてほしい。

もう一方の第2弾楽曲「ただしい感情」を歌うのは、midoとあかまるによる音楽ユニット・THE BINARY。彼女たちは普段から「第三のスキン」と呼ばれる3Dアバターを用いて活動しており、仮想空間でのバーチャルライブを行ったり、リアルライブでも最新技術を駆使した2.5次元的なステージ演出を展開するなど、「ステージ・バイ・ステージ」の世界観を実際に体現しているような存在と言えるだろう。


たなかと白神真志朗が楽曲提供した「ただしい感情」は、チル&レイドバック感のあるトラックに乗せて、THE BINARYの2人が憂いを帯びた歌声とラップを聴かせる、今までの彼女たちにはあまりなかったスタイルのナンバー。全体体に夜の雰囲気を纏ったサウンド感がアダルトなムードを演出する。過去を後悔するような切ない歌詞は、midoとあかまるがキャラクターボイスを担当する井伊嶋美沙と府良わらびの心境にそのまま当てはまるものではないかもしれないが、“わたしの言葉にはわたしが住んでないみたい”といったフレーズからは、自分の本当の気持ちを確かめるために新しい世界に飛び込む美沙とわらびの姿が自然と浮かぶ。

そのシンクロをより鮮明に体感できるのが、本楽曲のMVだ。仕事ばかりの毎日に疲れを感じている様子の美沙、ピアノを前にしながら浮かない表情のわらび。鬱屈した気持ちを抱える2人が、思い切って新しい一歩を踏み出すことで、今まで知らなかった「自分」を見つける。そんな心情の変化が、リアルとバーチャルアイドルの両方の姿を映し出すことで表現されており、僅か90秒ながら何度でも観返したくなるほど濃厚な映像作品に仕上がっている。

2次元らしいキャラクターデザインと、3DCGで描かれた写実的な背景の不思議な親和性、実写の映像作品を意識したようなカメラワークの妙を含め、 バーチャルアーティストという題材を最大限に活かすべくたくさんのアイデアが盛り込まれている「ステージ・バイ・ステージ」。この先も楽曲やアニメーションMVだけでなく、作品内容的にVRライブやAR(拡張現実)コンテンツなど様々な試みも期待できるし、リアルとフィクションの垣根を超えた新しい映像表現が、ここから生まれるかもしれない。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

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●作品情報
「ステージ・バイ・ステージ」

既にトップアイドルとなったアイラ、シマ、はなたちに憧れた女の子たちのミュージックライフが今始まる―。
TVアニメ「でびどる!」のその先の、さらに未来を描くスピンオフアニメシリーズ!!
バーチャルライブ等の技術が著しく発達し、バーチャルでのアーティスト活動がカルチャーとして定着した世界。
育った環境も経歴もそれぞれ異なる3人の女の子達が、同じバーチャルアイドルとして日々成長していく物語。


関連リンク
「ステージ・バイ・ステージ」オフィシャルサイト
http://sta-by.com/
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