2月20日、パシフィコ横浜 国立大ホールにて、声優・内田真礼によるライブツアー“MA-YA-YAN Happy Cream MAX!!”の神奈川公演が開催。自身にとって2019年秋以来のライブツアーの幕開けを飾る公演となったこの日のライブは、昨年10月リリースの最新アルバム『HIKARI』の楽曲を盛り込みつつ、コンセプチュアルなショーのような要素も取り入れたハッピーかつ観客の心動かす濃い公演となった。店内でそして店外へ、ハッピー届ける“看板娘”この日の公演は“アイスクリーム屋の看板娘”という内田の設定になぞらえて、そのお店のCMや商品紹介をイメージした映像が開演前から上映されるなど、趣向を凝らした取り組みが盛りだくさん。コロナ禍に伴う時差入場を行なったり、入場後も会話を控えなければならないファンに対する嬉しいサービスだ。そして開演時間直前になると、ステージが暗転。代わってメインスクリーンに映し出された柱時計が6時を指すと、前述のCMでも用いられたサウンドロゴが流れて1日がスタート。バンドメンバーが入場してそのサウンドロゴをベースにしたインストを演奏し、ダンサーがモップなどを用いたストンプを繰り広げると、時計の針が高速でぐるぐる回転してライブロゴが登場。内田によるタイトルコールが場内に響き渡り、2階ステージに内田が登場。弾むようなリズムのナンバー「フラッシュアイデア」を振付を交えつつ、キュートに歌ってライブをスタートさせる。ダンサーによる、側面にLEDを装着したキャリーケースも用いての非常に独創的なパフォーマンスも、ステージを効果的に彩っていく。さらにもう1曲、続けて披露した「Girl is fun」も、ダンサブルなリズムをもったキュートなポップナンバー。開店準備中のようなダンサー陣と笑顔で見合ったり、テラス席に座って掛け合ったりとまさに“ショー”のようなステージを展開。それを受け取る観客側も楽曲に合わせたクラップを起こすことで、ステージ上だけでなく会場全体が一体感に包まれていく。そんななか、2サビ後にはステージ奥の扉の向こうへと内田が姿を消した……と思ったら、早替えでウエイトレス姿に!ラブリーさをさらに増した出で立ちで、“看板娘”としてキュートにこの曲を披露しきった。歌唱後、看板娘らしく「ようこそ、いらっしゃいませー!」の言葉から始まったこの日最初のMCパートでは、改めて前述した設定を自身の口から説明しつつ、それに沿ったアメリカンダイナー風のセットに大満足の内田。「たくさんたくさん、楽しいこと詰め込んできました!」と宣言して、「お店も忙しくなりますよー!」との言葉に続いて開店……もとい、ライブが再開される。ここから早くも必殺ナンバーを立て続けに披露し、スタートダッシュを決めるどころか前半のクライマックスまでも形作ってみせた内田。その最初の加速を担ったのが「+INTERSECT+」だ。この日は“看板娘”らしくアイスの乗ったお盆を右手に持ちつつ、ダンサーとともにパフォーマンスを繰り広げながらの歌唱。1サビ「好きだよ」のフレーズ後には、普段ならばファンがジャンプとともにコールをするタイミングで炭酸ガスが噴き出す。この演出と観客の振るペンライトの光がリンクすることで“いつものライブ”により近づいたものを感じたのか、内田の笑顔の輝きはさらに増していく。そんな彼女の表情にピッタリだったのが、続く「Smiling Spiral」。さらに笑顔全開のステージを繰り広げていき、サビの後半では内田が押し出した手に合わせて客席前から後ろへとウェーブも発生。それは内田からスタートした笑顔の波を可視化したものだったのだろうか。ふと見渡すと、誰もがその表情に楽しさを溢れさせていた。また、2サビ明け間奏のコールは声出しNGの観客に代わって、前述のキャリーケースに文字を表示。さらに後半ではそれをウェルカムボードに見立て、内田が看板娘らしくアイスのイラストを描く……といったパフォーマンスも目にも楽しいもの。さらには落ちサビ前にキックボードでステージを往復したり、ラストにモンキーダンスまで織り交ぜて楽しさをいっぱいに表現すると、ステージに登場したキッチンカーに乗り込む形で「Shiny drive, Moony dive」とともに出発!ステージ奥のLEDスクリーンが流れていく景色を描写し、ロードを走るキッチンカーの中でゴキゲンに歌唱する形をとっていく。2サビの途中でその歌詞になぞらえて「『PENKI』かけちゃおう!」と口にすると、カーステレオのコントロールパネルを模した画面がスクリーンに登場。1stアルバム『PENKI』の曲を次々“選曲”し、それに合わせてバンドが演奏していく。しかも驚くべきことに、楽曲指定は完全に内田のアドリブ。長い付き合いのMAAYA BANDならではの見せ場だったのではないだろうか。そして「『PENKI』サイコー!」のシャウトに続いて「Shiny drive, Moony dive」に戻り、ラストまで歌唱したところでキッチンカーを降りたのだった。曲明けには「ここで気分を変えて……」と、熱く熱く盛り上がった会場に涼をもたらすスペシャルフレーバー・アコースティックコーナーがスタート。まずここまで5曲とガラリとカラーの違う楽曲「カナリア」では、アコースティックとはいえ心の機微をダイレクトに出す曲らしく、歌声の圧は若干強めのものに。高めの音域も弱くならずに真っ直ぐ想いを乗せて歌いきると、アコースティックの似合うナンバー「君のヒロインでいるために」のイントロでは、場内を包むクラップに内田も「良い感じ!」とご満悦。2サビ明けには自らを囲むバンドメンバーとも視線を交わすと、ラストのコーラスは観客の代わりを彼らが担う。一方内田はファンとともにリズムに合わせて腕を振り、場内の一体感はさらに上昇。その中心にいるヒロインとして、最後にニコッと笑顔でこの曲を締め括った。この光景が胸を熱くさせたのか、わずかに声を詰まらせつつ「ライブ、できて良かったぁ……」と安堵の想いを口にする内田。だが、すぐに切り替え「横浜のハッピーを、大爆発させましょう」といたずらっぽく笑うと、夕暮れ時を思わせるオレンジの照明のなか「ストロボメモリー」を披露。少々テンポ遅めのアレンジもあってか、普段以上に深い感情をぐっと込めて歌っていく。特にサビでの激しい感情の発露はよりいっそう心を惹きつけるもので、いつの間にかその姿に見入ってしまっていたことに、ふと気づく。始まる“夜のライブハウス営業”、そして光差す新しい世界その歌唱中の雰囲気から一転、MCではバンドメンバーをアイスクリーム屋の“従業員”として順にポジションを当てはめていったりと、和やかなトークを展開。そして観客に対しても“バイト面接”と称したリズム感テスト……の名目で、観客がリズムに合わせてクラップを行なうバンドタイムに移行。その間に内田が降壇し、パラソルを持ったダンサーがステージ奥の扉の前でそれを広げると、「ハートビートシティ」の開始と同時にその後ろから衣装チェンジした内田が登場。夜の街を思わせる演出のなか、リズムに乗りながらも優しさも感じさせる歌声で楽曲を彩っていく。また、この曲では前述したパラソルの骨組みに組み込まれていたLEDも演出のポイントで、終盤内田の後ろでダンサーがそれを用いて鼓動のようなうごめきを表現。内田の歌声・パフォーマンスと合わせて“新たなはじまりの兆候”を感じさせてくれた。そしてダンスロック感ある「ロマンティックダンサー」と、夜を迎えたステージ上の世界に似合う楽曲をさらに続けていく内田。サウンドに上手く乗りながら、強めの歌声を響かせていく。終盤、内田は再びステージ奥の扉の先へ。曲が終わると時計の振り子の音が響き、バンドメンバーも降壇。そんななかでスクリーンに投映された時計が今度は19時を指すと、その瞬間内田が扉からまたも衣装チェンジして登場。凛とした表情で、ダンサーを従えながら「アストラ」をスタイリッシュに届けていく。低音域が多いメロディをしっかりと歌うボーカルに加え、レーザーと連動し従えるかのようなダンスパフォーマンスもこなして“魅せる1曲”を見事に形作っていた。さらに、曲明け雑踏のSE流れるなか2階ステージへと上がった内田は、スポットライトを浴びて「Change the world」を微笑みたたえて歌い始める。「カナリア」を通じて暗闇の中での想いを吐露してからのこの曲という構成は、もう1回新しく世界が始まっていくかのような感覚を覚えさせてくれるものだ。歌唱後、内田はステージの後ろへと降壇。賛美歌のようなコーラスが流れるなか、バンドメンバーが1人ずつステージへと戻り、音を重ね、順にソロを執っていく。そして5人揃って音を重ね、ステージが青の光に染まるなか、衣装替えした内田がステージ後ろから登場。スピード感あるロッキンなナンバー「Never ending symphony」で“新たなスタート”を飾る。A・Bメロは鋭い視線をもって歌いつつも、サビでは光溢れる世界と重ね合わせるように笑顔で歌い、間奏ではちょっぴり小悪魔な笑みも振り撒いてみせる。また、スタンドマイク曲にもかかわらず落ちサビ前にはヘッドバンギングも交えるなど、ここにも想いの熱さを滲ませ、最後の最後まで力強さと熱のこもった歌声を響かせてくれた。さて、ステージ上の世界が夜へと変わり、“従業員”であるMAAYA BANDまで衣装チェンジ完了。ガラッと雰囲気の変わったステージについて「夜はライブハウス営業になっております!」と説明し、「本当の私を開放していくぜー!」と高らかに宣言したところで、生バンドならではのダンスロック色濃いめのアレンジとなった「c.o.s.m.o.s」からライブ終盤戦がスタート。縦ノリなリズムのサウンドと、再びLEDを組み込んだパラソルを用いたダンサーのパフォーマンスが、場内に宇宙空間のような浮遊感をもたらしていく。続く「LIFE LIVE ALIVE」はそのサウンド感を踏襲しつつ、明るさを強めに付与したもの。その曲を内田は、一気に明るさを取り戻した世界に向けて笑顔で歌う。コール部分に合わせて拳を突き上げながら、客席へと目線を配りエネルギーを発していくと、それを受け取った観客もクラップを巻き起こしてパワーを送り返し、生き生きとしたエネルギーが場内を満たしていく。そんな曲に続いて、イントロ中の「アゲてこー!」のシャウトがさらに場内のボルテージを上げたのが「共鳴レゾンデートル」。ハイテンポなナンバーではあるが、表情豊かに内田は楽曲を届けていき、終盤に差し掛かったなかでもまったく隙がない。さらに「共鳴したい?(共鳴しよう)」のフレーズをどんどんクレッシェンドにして想いを炸裂させたり、時には身にまとったジャケットをはだけさせながら力いっぱい歌ったりといった姿を通じて、内田真礼のロックスタイルを改めて提示もしてくれたように思う。そうしてこの曲を全力で歌いきった内田、達成感もあってか笑顔で「めちゃめちゃ楽しいですね!」と率直な想いを一言述べる。一方で、まだファンと一緒に声を挙げられず悔しい気持ちがあることも正直に語りつつ、「みんなで作るライブの力は、未来に大きな形で花開くと思う!」と前向きな今の想いを続け、「これからもエキサイトでハッピーな世界を更新しましょう!」という言葉に続いて、ラストナンバー「Excite the world!」へ。この曲でも表情豊かにファンと視線を交わしつつの歌唱となったが、意識的な部分もあったのだろうか、特に言葉がよく伝わってきた1曲だったようにも感じられた。さらにこの曲は、内田がみんなの先頭に立つにふさわしい存在であることも、再確認させてくれた。楽曲序盤にステージ両サイドからのスポットに当たる表情はどこか神秘的で、でも曲が本格的に始まった途端求心力をもった笑顔へと転じ、2サビ明けには感情をセリフに込めて叩きつけて大サビ前の「一緒に行こう!」のフレーズでは希望を感じさせてくれる。そんな数分間に改めてファンは惹きつけられ、そして巻き込まれ、最後は内田先導の腕振りで会場が一体に。その光景を前に内田は、最後の最後まで力いっぱい歌声を響かせて、ライブ本編を締め括ったのだった。開催時点での想いをストレートに反映した昨年7月のワンマンライブとはうって変わって、ショーやストーリー性の高いライブとなった今回のツアー。曲ごとの役割も非常に明確で、工夫を凝らして切れ目なく楽しめるよう作り込まれており、だからこそ「観客が声を出せない」ということの悔しさも率直に語っていたのだろう。しかし内田真礼の2022年は、まだ始まったばかり。4月20日(水)にはニューシングル「聴こえる?」のリリースを、そして9月24日(土)には1stワンマンライブのリバイバル公演の開催をそれぞれ控えている。内田真礼がいる世界は、楽しい予定がたくさん待っているこの世界は、これからもきっとエキサイティングに違いない――そんなことを自然と思わせてくれるライブに、この公演はなっていたように思う。TEXT BY 須永兼次“内田真礼ライブツアー2022「MA-YA-YAN Happy Cream MAX!!」”神奈川公演2022.02.20@パシフィコ横浜国立大ホール【SET LIST】M1. フラッシュアイデアM2. Girl is funM3. +INTERSECT+M4. Smiling SpiralM5. Shiny drive, Moony dive ~PENKIメドレーM6. カナリアM7. 君のヒロインでいるためにM8. ストロボメモリーM9. ハートビートシティM10. ロマンティックダンサーM11. アストラM12. Change the worldM13. Never ending symphonyM14. c.o.s.m.o.sM15. LIFE LIVE ALIVEM16. 共鳴レゾンデートルM17. Excite the world!【SET LIST PLAYLIST】https://lnk.to/MAYAYANHCM関連リンク内田真礼 オフィシャルサイトhttp://uchidamaaya.jp/内田真礼 オフィシャルTwitterhttps://twitter.com/maaya_taso