数々のアニメ作品を手がけてきた水島精二がエグゼクティブプロデューサーを担当し、飯森みちる(CV:中島由貴)、中沢 栞(CV:鈴代紗弓)、太田 希(CV:大野柚布子)という女子高生3人の日常をコミカルに、そしてカオティックに届けるピクチャーボイスドラマ「VOISCAPE」。水島監督とともにYouTube上で公開された全6話をプレビューしながらボイスドラマの可能性を拡張する画期的な試みを振り返っていく短期連載の最終回は、大きな話題を振り撒いた第5、6話のカオティックな内容を解説してもらうとともに、「VOISCAPE」がこの先向かう、ボイスドラマの新たな地平に向けて語ってもらった。
音響もキャストの演技も極まった第5話
――さて、今回は5、6話についてお話をお伺いします。まず5話「七福神の話をしてる場合じゃない」ですが、いわゆる神回というか……。
水島精二 そうですね、この回が一番大変でした(笑)。
――神回というか、サイケ回というか(笑)。
水島 最後までそのノリで終わりますからね(笑)。
――4話での“ラジオやってみた”からの流れで“漫才やってみた”なのかな?と思いきや、中盤から全然違う方向にいきましたね。
水島 よくわからない世界に飛んで行くという。しかもそのあとは「トワイライト・ゾーン」みたいな終わり方をしますからね。
――最後は怖いという(笑)。いわゆる最初は漫才のなかでもパワー系というか、力技でゴリ押す流れなのかなって思っていたんですよ。鈴代さんの演技もそちらに振り切った、鬼気迫るものがあって。
水島 多分喉が鳴ったんだと思うけど、変な音もN Gにせずそのまま採用してますからね、「あれ、なんか変な音鳴った、けど生々しいからこれで!」って(笑)。
――まるでボコボコ膨らむSEが鳴っているような……。
水島 SEはつけてないので恐らく息や喉の鳴っている音だと思うんだけど、もう偶然、その息遣いのなかで体から発した変な音を、余す事なく採用していますね。そういう意味ですごくナチュラルな彼女の芝居のみで、全然加工していないんですよ。
――まるで死ぬ間際のセルみたいな(笑)。
水島 でも本当にその苦しさがないとダメなんです。あそこからの爆発する音もめちゃめちゃこだわりましたから。結局僕が作っているんですけど、効果音を探しまくって、その中で4つくらい音を重ねて作っている。「ドーン!」って音がして遅れて衝撃波による爆風がきて、それによってビリビリっていう振動がくる……みたいな段取りと大きい音がレベルを振り切って割れている、みたいなことも狙って。ハリウッド映画的な音を目指して素材を組み上げて調整して、かなり良い感じになりました。
――効果も本気で作ったという。しかもそこから様々な漫才師がネタ合わせをしていき高次元の世界に移るという、誰も予想していなかった展開になっていくわけですよね。
水島 漫才師の声をどうしよう、弊社の役者で録るか悩んでいたんです。鈴代さんたちのお芝居を録ったあとに別録りでやることにはなるので、予算と時間を考えてベストな策をとりたくて。それで知り合いの、BAN BAN BANの鮫島(一六三)さんにネタ提供か、あるいはネタ持ち込みで出演できないか相談して、そうしたらトントン拍子で話がまとまり、鮫島さんの伝手でオトメタチとスクラップスという若手芸人にも参加してもらえて、あとはよっぴー(ニッポン放送アナウンサー吉田尚記)にも出てもらえて。
――DJ仲間の鮫島さんと吉田さんに本業でお願いしたと(笑)。高次元で色んな方向からネタが聞こえるという、サイケデリックな仕上がりになりましたね。
水島 ネタだけもらって役者に演じてもらうより格段のリアリティがありますからね。メタだし。芸人さんの1組に2つくらいずつネタをやってもらって、それを録って調整させてもらいました。でもあの空間でも、せっかくやってもらったからにはネタがちゃんと聞こえてほしいので、あまりリバーブはかけられないよな……とか、結構細かく調整しました。
――高次元に移ってからはまさに別世界のお話になって、栞も爆発後は毒気が抜かれたような思念体的な演技になりましたね。
水島 1人だけ違うところに飛ばされてますからね。
――そこから日常に戻って、ループしているようなオチもゾッとするというか。
水島 3話までの制作と、4、5、6話の制作って少しスパンが空いているので、映像も含めて4話以降のほうがクオリティーが上がっているんですよね。最後も音楽はミステリアスな、それこそ「トワイライト・ゾーン」みたいな感じの曲をつけたら、映像もバババババ!と光る演出をしてくれて。話を聞いたら動画担当のアドリブだったんですよ。
――映像演出としてもより研ぎ澄まされていったと。
水島 みんなが「これはやりすぎたほうが面白いんだ」という感覚が映像チームにも波及したのを実感できて、音響ディレクターとして嬉しかったですね。
――そんなエンディングのあとに流れる「I☆SPECIAL!」ですが、こちらはまたポップな楽曲で。
水島 そうですね、普通あんな終わり方をしたら、それこそ「トワイライト・ゾーン」みたいな曲がきそうなのに、一番かわいくてポップな曲がついてますからね。
――それこそもっともアニソン的なアプローチですよね。
水島 普段は自分でシナリオや音を作っているときに、曲も同時に考えていくんですけど、今回は良いアイデアが思いつかなくて……収録の時にその話をしたら、弊社プロデューサーの桟敷(宗太)から「1曲ハッピーハードコアやりたいんですけど、どうですかね」ってアイデアが来て、「(DJ)Genkiがやっているような明るくて、とにかくハッピーなやつです」って。それは本編とのギャップがあって面白いなと、「それやりましょう!」ってなりました。
――なるほど。
水島 デモが上がってきて「歌詞の方向性はどうしますか?」と言われたので、曲調から「今日は晴れているから、散歩がてらにでも世界救っちゃおうかな~」みたいなノリの感じのテンションの曲にしたいと話して。それが異世界とパラレルになっている、そういうことをすぐ妄想するオタクのお話みたいな感じになると共感できていいな、と思って作ったんです。ハッピーハードコアは僕的に浅い分野だったので、桟敷にリードしてもらって制作しました。1コーラス目と2コーラス目の入りのアレンジだけ少しニュアンスを変えたいとか、そこで歌詞も展開していってほしいという要望だけ投げかけて、GenkiとGettyが頑張ってくれました。yukaccoさんの歌詞も最高、めっちゃかわいいってなって。
――かわいい仕上がりにはなりましたが、あのストーリーからのこの曲で、ますます今後の展開がわからなくなってきました(笑)。
水島 これでかなりはぐらかせたと思います(笑)。
ボイスドラマはさらなる次元へ?カオティックな第6話
――そうした流れからの6話「イノシシなのは私だけじゃない」ですが、こちらもマラソン回と見せかけてかなりぶっ飛んだお話で。
水島 マラソンが苦しくて鼻提灯。で、どっか行くっていうね。
――文字ベースだけでも意味がわからないです(笑)。
水島 こちらもすごい台本が上がってきてどうしようかなと思いましたよ(笑)。鼻提灯の音とかものすごく悩みましたもん。
――“鼻提灯の音”というのもなかなかないですよね(笑)。
水島 「プウ~ン……」っていう音(笑)。あれもやたら探しましたからね。あれだけのストックを誇るArtlistで見つけられず、日本のSEなどからも色々探したけれど、やっぱりあまり良い音が見つからなくて。結果Artlistからの音を2つ混ぜたのかな?それに大野さんに「プウ~ン……」って言ってもらったものを重ねたりして。頭の中にはイメージがあって過去に聞いてるってことは効果さんが具現化してるわけで。その音に到達できなくて悔しかったですね。ここでも効果さんの凄さを思い知るという(笑)。あと音楽的には、「小さい頃のナウシカが歌っているような曲を」って話していた曲が良い感じで上がって、これは歌もちゃんと幼い子が歌ってほしいって要望していたら、弊社エンジニアの娘さんが行けるのでは?となり、お願いしてみたら歌ってもらえて、めちゃイメージ通りに仕上がったという。
――まさに「王蟲との交流」のような曲ですよね。
水島 中身が入れ替わって……みたいな話ですね。中身の入れ替わりはもう少し時間があればもっとクオリティを上げられたよなあ……と。僕が監督を務めたTVアニメ『夏色キセキ』でも同じようなことをしていて、あのときは本人たちに一度演じてもらった音声を入れ替わる人たちに持って帰ってもらい、それを聴いて練習してもらって後日収録したんですよ。だからイントネーションやニュアンスはちゃんと元の役なんだけど、声だけ別の子って表現が精度高くできて。だけど今回のコンテンツではそこまでの段取りはとれなくて。でもよく聴くと、それぞれが演じている人のクセをなんとか寄せようとしてくれているんですよ。
――中島さんが演じる栞というのもフレッシュですし、雰囲気が出ているなあと。
水島 そうですね、中島さんに上手いことやってもらって。
――ほかにも、初めから部族同士の抗争に駆り出されるという。
水島 あれは僕がオーダーしたものではなく、高垣(雄海)くんが書いてきたもので。「軍勢」とか書いてあるけどどうするんだ!ガヤ録らないでいけるかな?」みたいな(笑)。あそこは流石に絵描きチームも困っていたみたいで、僕にも相談がきました。でもこちらから伝えたオーダーに対して、絵が気の抜けた感じにアレンジされていて、その感じとモブの声のギャップがすごく良いバランスで素敵なんですよ。
――そこの抜けを設定のぶっ飛び方でフォローする部分もあって。
水島 そうですね、そこをとにかくしっかりやらないと、このコンテンツって届かないよなと思ったので。キャストたちもコントをやっているっていう意識はそこまでなかったと思う。そういうなかで最初は普通に台本を読んできたけど、ディレクターに「もっとやってもっとやって」と言われ続けるという。多分1話の完成形を聴くまで本人たちも「?」ってなっていたと思いますよ。
――そうしたキャストたちの感触というものは、1話から6話まで順番に聞いていくと、より深みが増していくように感じられるんですよね。
水島 この間、鈴代さんに久しぶりにコメント録りに来てもらったときに、ちょこっとセリフを録ったんですよ。そしたら「なんかテンションが低いよ」と言ったら「あああ~
もっとか~~!」と頭抱えて唸ってました(笑)。で、最後までやりきって「疲れました……」って言って帰っていったんだけど、「まあでも、あの栞を作ったのもあなただからね」っていう気持ちで見送りました。「お疲れさま……」って(笑)。
――そして、6話のED曲「space voyage」ですが、ついにプログレ曲がきたぞと。
水島 そうですね。僕らしさのある曲を、という……でも実は、1話のバンドネタ回収です。
――たしかに1話にプログレというワードが登場していましたね。
水島 「プログレ」って言っておけばおじさんが喜ぶっていうところから、どこかでプログレをやろうと思っていて。でも5話の曲がもしかしたらプログレになったかもしれないんですよ。ただ5話の曲がドラマチックで、異世界でプログレだと当たり前じゃないですか。それでハッピーハードコアにして。それで「6話までがYouTubeで流れるやつだから、きれいに回収した感じになる……よし、プログレやろう」という(笑)。
――よし、プログレやろう(笑)。
水島 で、たまたま別件でレコーディングが一緒だった(佐藤)陽介に、「やる?」って聞いたら「やりたいです!」って言うから、彼は別にプログレが得意とかというわけではないんですけど、リファレンスの曲をたくさん投げてお願いして。ただ最初にももいろクローバーZやヒャダイン的な方向性の曲が届いたから「違う!もっと本格的なやつなんだ」って伝えて、もっとおおげさな、マジェランなどのプログレのバンドの曲を投げ直して。
――そこでマジェランを持ってくるとはかなりマニアックな(笑)。
水島 そう?1990年代ってドリーム・シアターとか、アカデミックな感じのバンドがいたけど、マジェランとかって古い時代のプログレじゃないですか。
――いわゆる1990年代のプログレハード/メタル勢のなかでも壮大なイメージがありますよね。
水島 アニソンの文脈でいうと「キグルミ惑星」みたいに展開する曲を作ったことはあるんだけど、みんなの耳に残っているのはヒャダインさんがオープニング・エンディングを担当したTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』の主題歌とかみたいで。陽介の曲が完成して、歌詞を書いてもらうときに、「宇宙海賊が出てきて宇宙を旅するんですよ」みたいなことを言ったら、陽茉莉-himari-ちゃんが最初書いてきてくれたのが、もう完全にももクロみたいな感じで(笑)。
――褒め言葉ですが、おっさんが喜びそうなプログレというか。終盤の泣きのギターソロはまさにそれで素晴らしいですね。
水島 あれはHylen(宇佐美祐二)くんですよね。ギターが弾けてトラックメイカーもやっている人で。「かっこいいギターが入ったな~」って思っていたら「難しかったです」と言っていて、まあそりゃそうだよな、プログレの曲だからなあって(笑)。
――水島さんの文脈では「キグルミ惑星」の流れもありますが、相変わらずハイクオリティーなプログレ曲になりましたね。
水島 1話で流した曲もそうですけど、ちゃんとそのジャンルが好きな人が聴いたときに「おお、頑張ってんじゃん」というレベルにはどうしても持っていきたかったので、全曲そういう刺さり方を目指そうと思っていました。元のジャンルに対しての敬意はどうしても残したかったし、“なんちゃって”みたいなものが一番嫌いなので。やるならそのものズバリか、もしくはそこからちょっとポピュラリティを足したみたいな。もちろんそれを僕が作るわけじゃないので、作ってくれる人にパンパンと鞭を入れるのが役目(笑)。
カオスのその先に、VOISCAPEが向かう“世界の果て”に待つものは……?
――全6話までのお話をお伺いしましたが、発売されたアルバム『まだ、世界の果てじゃない』では新録のドラマが2編入っていますね。これがまた3人の日常を映した、すごくほっこりするような内容で。
水島 CD用にあと2話くらいエピソードを足したいということだったので、そもそもがこのストーリーの出発点を書いた麻草 郁さんに、そこを踏まえたもう少し日常寄りのやつを、今までの流れも踏まえつつ書いてもらおうって。
――なるほど、日常的な方向性は最初からあったわけですね。
水島 YouTubeでは高垣くんに自由に書いてもらうというポリシーでやったから、この2話に関しては6話まで聴いた麻草さんに、そのテイスト組みつつ、元々の企画意図もわかった上でお話を考えてもらって、そしたら怪談話とお弁当話が届いて。
――まずはそのお弁当回「箱に詰めたら終わり、じゃない」も3人がお弁当を食べるというほっこりしたエピソードで。
水島 お弁当回も結構細かいこだわりがあって、お弁当箱の素材とかもちゃんと決まっているんですよ。こういう素材だから、開けるときにこの音がしますみたいなことも台本に書いてあって。麻草さんは演出も手がける脚本家だから、そういうディティールもキャラクター性へのアプローチとして利用してくる。しかしこのお話はYouTubeではないので、絵がないんですよ。
――たしかにそうですね。
水島 それもあって、「おっ、ハードルが1個上がった」って(笑)。高垣くんのネタはコントだから会話の勢いでいけるんだけど、今回は日常の延長でそのリアリティーが必要で、空間を表すための音をつけておかないといけない。だからお弁当回だったら、外だからずっと空間のノイズが聴こえている。でもわざとらしく車の音とかをつけると、排気ガスがくるような場所のように聴こえちゃう。だから公園みたいな場所でずっと風の薄い音が聴こえていて、かつ鳥の鳴き声とかも適度に入れる。トンビが最初に飛んでるところから、たまに小鳥のさえずりが聴こえる……みたいなものも入れてもらうようにして。意外と細かいんですよ。
――たしかに新作ということもあって、音響のディティールの細かさは極まっていますよね。
水島 栞が弁当を出すときも、いかにも新聞紙!みたいな「ガサガサゴソゴソ」する音を探して。あとみちるがでっかい弁当箱を持ってきたのも、「これは大きいやつです」みたいな指示を出して、そういう音を探してつけて。だからディティールをちゃんと表現しないと伝わらないだろうなみたいなところで、それを主張するんじゃなくて当たり前のものとしてついてるものをしっかりつけるというのは、より神経を使ってやってますね。
――そうした日常をきめ細やかに聞かせるなかで、3人の演技も穏やかな印象で。それこそ希のキャラクターもすごくナチュラルな。
水島 柔和なキャラクターになっててね。
――そんな3人のやりとりが微笑ましくもあるのは、怪談回「眠れぬ夜も、あるじゃない」もそうですね。
水島 電気の効果音とかもね。ちゃんとこだわりましたよ。
――寝る前の他愛もないやり取りにほっこりしつつ、グッとくる良さもあって。また、本作に収録された新曲「世界のはてじゃない」「センチメンタル・グラヴィティ」の2曲もそうした日常的なムードも感じられますよね。
水島 そうですね。歌に関してもこのコンテンツに密接に関係している感じを出したいなと思ったから、エピソード的にも歌的にも両方でまたさらに補足しながら強固な形にして、さあ次へ行くぜ!みたいな気持ちでね。ドラマに「まだ、世界の果てじゃない」ってタイトルがついている以上は「なんでこのタイトルなの?」っていう部分は、いつか最初のプランに戻る日のために強めに匂わせようと思って(笑)。その未来を感じさせる「世界の果てじゃない」が、肯定的な意味合いで、逆に「このまま終わるかも……」という不安な部分も曲にしようって「センチメンタル・グラヴィティ」を作りました。この2曲の裏テーマです(笑)。
――繰り返しになりますが、何かを匂わせるというか、ストーリーや曲から何か深読みできそうなものがあるのかもしれない……という。改めて、ピクチャーボイスドラマという方式で聞く人たちの創造性を広げていくような試みとしても非常に興味深いものになりました。だからこそ今後にも期待したくなるというか。
水島 そうですね。例えばメタバース(架空の世界)もそうだけど、自分たちが実際にそこに入って没入感を得る電脳空間ってこれまで映像作品でたくさんあって、それを基準にクオリティを考えていて、そこの再現度が低いとお客さんは納得してくれないと思っていたんですよ。でもこのコロナ禍で、VRなどバーチャルなものを若い子たちが楽しみ始めたときに、自分も体験したらアバターとかのクオリティが高くなくても全然没入感あるんだとショックを受けたんです。完全に頭でっかちだった。なので、今回音声とイラストだけでやるときにも、「まずやれることを、とにかく柔軟に面白がってやってみよう!見つけよう!」っていうのはあったりしました。「こういうのもあるんだ」というところの面白がりみたいなところが、上手く伝わるといいなと思っていて。
――これもまたエンタメの1つの選択肢であるという。
水島 本当にそうです。だからこのコンテンツがバーチャルな方向にいってみたらどうなるかなとか、それこそ360 Reality Audioみたいな立体音響とかで悪ふざけしてみたりするのも面白そうだなと思いますよ。そういうプロデューサーが主導でやりたいことをどう膨らませてどう面白くするか、どう無茶なことをやるか、みたいな作戦を僕らが考えて、音響のディレクションまでやることでその世界観もきちっと聞かせるというのは、今回の自分の最大のミッションだと思っています。予算内でね(笑)
――それがこの6話プラスαで研ぎ澄まされていったこれまでを経て、この先どうなっていくのかという。それこそ音響も含めた演出というものがより先鋭化される、ボイスドラマの可能性をどこまで拡張できるかということなのかなと。
水島 そう言ってもらえるのはすごく嬉しいし、やった甲斐があったと思いますね。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
VOISCAPE<飯森みちる(CV中島由貴)、中沢栞(CV鈴代紗弓)、太田希(CV大野柚布子)>
発売日:2022年3月30日(水)
・販売店リンク
https://lnk.to/voiscape_madahate_CD
・音楽配信リンク(Streaming)
https://lnk.to/voiscape_madahate
・音楽配信リンク(Download)
https://lnk.to/voiscape_madahate_DL
【通常盤】
品番:GNCA-1613
価格:¥3,850(税込)
【あにばーさる限定盤(飯森みちる盤)】
品番:GNCT-0033
価格:¥7,700(税込)
【あにばーさる限定盤(中沢栞盤)】
品番:GNCT-0034
価格:¥7,700(税込)
【あにばーさる限定盤(太田希盤)】
品番:GNCT-0035
価格:¥7,700(税込)
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(※通常盤/あにばーさる限定盤共通)
・CD1
01. GO GO WEST(作詞 水島精二 作曲・編曲 エンドウ.)
02. ホーム(作詞 山本メーコ 作曲・編曲 佐藤陽介)
03. 幻想の旅へ(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 グシミヤギ ヒデユキ)
04. 憧れのレディオスター(作詞・作曲・編曲 おぐらあすか)
05. I☆SPECIAL!(作詞 yukacco 作曲・編曲 DJ Genki / Getty)
06. space voyage(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 佐藤陽介)
07. 世界のはてじゃない(作詞 山本メーコ 作曲・編曲 板倉孝徳)
08. センチメンタル・グラビティ(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 遠藤信吾)
・CD2:オリジナルボイスドラマ
01. 箱に詰めたら終わり、じゃない
02. 眠れぬ夜も、あるじゃない
<あにばーさる限定盤特典>
・特典CD収録
*CD1収録曲の各キャラクターによるソロバージョン(合計8曲)
・特典DVD収録内容
*ピクチャーボイスドラマ「まだ、世界の果てじゃない」映像データ
・特製スリーブケース仕様
<全仕様共通特典>
2023年6月25日開催「VOISCAPE」イベント(仮)チケット先行販売応募券
●イベント情報
アルバム「まだ、世界の果てじゃない」リリースイベント
■開催日時および出演者
5月21日(土)出演:大野柚布子さん(太田希役)
6月4日(土) 出演:中島由貴さん(飯森みちる役)、鈴代紗弓さん(中沢栞役)、大野柚布子さん(太田希役)
6月5日(日)出演:鈴代紗弓さん(中沢栞役)
6月10日(金)出演:中島由貴さん(飯森みちる役)
※ イベント内容はインターネットサイン会となります。
※ イベントの開催日時および参加方法など詳細は後日改めてVOISCAPE公式Twitterにてお知らせ致します。
●朗読&トークイベント公演概要
開催日時:2022年6月25日(土)
昼公演 開場:14時15分 開演:15時00分
夜公演 開場:17時15分 開演:18時00分
出演者:VOISCAPE(大野柚布子、鈴代紗弓、中島由貴)
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール
料金:全席指定 ¥6,000(税込)
●作品情報
ピクチャードラマプロジェクト「VOISCAPE」
まだ、世界の果てじゃない
<作品概要>
どこの「世界」にでもいる3人の女子高校生。
この3人でしか作れない「世界」の中で、刹那のキラメキを
どこまで笑い飛ばしながら生きていく日常系コメディ
<キャラクター>
飯森みちる(CV:中島由貴)
まっすぐで真面目。面倒見が良く、仲間思いの元気ムスメ。
頑固だけど理屈に弱く、長い時間かけて説得されると納得してしまうことがある。
学級委員長などを任されるタイプだが、本人は地位や権限にさほど興味はない。
運動能力が高い。
苦手なものは「特にない」
好きな食べ物は「ごはん」
中沢 栞(CV:鈴代紗弓)
考える前に動くポジティブガール。
行動力が高いが、衝動的でツメが甘い部分もある。
その行動から周囲を混乱させるところがあるが、純粋さと優しさで不思議と人が集まってくる。
「お笑い」や「占い」などのカルチャーを人一倍リスペクトしている。
苦手なものは「おばけ」
好きな食べ物は「何かに入っているイチゴ」
太田 希(CV:大野柚布子)
直感が鋭く、常識に囚われない不思議な優等生。
物怖じせず、周囲を冷静に見渡すことができる。
成績優秀で運動神経も高く、どんなことでも少し練習すればできてしまう。
占いが得意。
苦手なものは「大勢の子供が同じ歌を歌っている景色を見ること」
好きな動物は「悪夢を食べるバク」
【スタッフ】
エグゼクティブプロデューサー:水島精二
クリエイティブプロデューサー:荒木 悟
シナリオ:麻草 郁・高垣雄海
キャラクター原案/キャラクターデザイン:いぬもと
背景・彩色:鴨鳴アヒル
動画:おれお
音響ディレクター:水島精二
音楽:グシミヤギ ヒデユキ
音楽プロデュース:水島精二・Hifumi,inc.
映像制作/音楽制作:Hifumi,inc.
総合プロデュース:Hifumi,inc./NBCユニバーサル
●ラジオ番組情報
文化放送・超!A&G+「RADIO VOISCAPE」
放送局/放送日時:文化放送・超!A&G+にて毎週月曜日23:30-24:00
(リピート放送:毎週火曜日11:30-12:00)
出演:VOISCAPE
<中島由貴(飯森みちる 役)、鈴代紗弓(中沢栞 役)、大野柚布子(太田希 役)
©VOISCAPE
関連リンク
「VOISCAPE」オフィシャルTwitter
https://twitter.com/voiscape_PR
水島精二 公式Twitter
https://twitter.com/oichanmusi
音響もキャストの演技も極まった第5話
――さて、今回は5、6話についてお話をお伺いします。まず5話「七福神の話をしてる場合じゃない」ですが、いわゆる神回というか……。
水島精二 そうですね、この回が一番大変でした(笑)。
――神回というか、サイケ回というか(笑)。
水島 最後までそのノリで終わりますからね(笑)。
――4話での“ラジオやってみた”からの流れで“漫才やってみた”なのかな?と思いきや、中盤から全然違う方向にいきましたね。
水島 よくわからない世界に飛んで行くという。しかもそのあとは「トワイライト・ゾーン」みたいな終わり方をしますからね。
――最後は怖いという(笑)。いわゆる最初は漫才のなかでもパワー系というか、力技でゴリ押す流れなのかなって思っていたんですよ。鈴代さんの演技もそちらに振り切った、鬼気迫るものがあって。
水島 多分喉が鳴ったんだと思うけど、変な音もN Gにせずそのまま採用してますからね、「あれ、なんか変な音鳴った、けど生々しいからこれで!」って(笑)。
3、4話とエスカレートしたお芝居をやっていくなかで、多分焚きつければ行き着くところまで行くだろうなと思ってんですよ。だからあの一連だけ特に「もっといけるでしょ!」という気持ちも込めて3テイクくらい余計に録って。もっと鬼気迫るヒーローインタビューをやりたいと思っているのにどうしてもできないみたいな部分に加えて、体に異変が起きて……という流れで、彼女に「体がボコボコ膨らんでいくんだよ」と伝えたら、「ボグッ!」みたいな変な音を口で言ったりしていましたね。
――まるでボコボコ膨らむSEが鳴っているような……。
水島 SEはつけてないので恐らく息や喉の鳴っている音だと思うんだけど、もう偶然、その息遣いのなかで体から発した変な音を、余す事なく採用していますね。そういう意味ですごくナチュラルな彼女の芝居のみで、全然加工していないんですよ。
――まるで死ぬ間際のセルみたいな(笑)。
水島 でも本当にその苦しさがないとダメなんです。あそこからの爆発する音もめちゃめちゃこだわりましたから。結局僕が作っているんですけど、効果音を探しまくって、その中で4つくらい音を重ねて作っている。「ドーン!」って音がして遅れて衝撃波による爆風がきて、それによってビリビリっていう振動がくる……みたいな段取りと大きい音がレベルを振り切って割れている、みたいなことも狙って。ハリウッド映画的な音を目指して素材を組み上げて調整して、かなり良い感じになりました。
けど、結構時間はかかって、今まで組んだ音響効果さん達の技の素晴しさを感じました(笑)
――効果も本気で作ったという。しかもそこから様々な漫才師がネタ合わせをしていき高次元の世界に移るという、誰も予想していなかった展開になっていくわけですよね。
水島 漫才師の声をどうしよう、弊社の役者で録るか悩んでいたんです。鈴代さんたちのお芝居を録ったあとに別録りでやることにはなるので、予算と時間を考えてベストな策をとりたくて。それで知り合いの、BAN BAN BANの鮫島(一六三)さんにネタ提供か、あるいはネタ持ち込みで出演できないか相談して、そうしたらトントン拍子で話がまとまり、鮫島さんの伝手でオトメタチとスクラップスという若手芸人にも参加してもらえて、あとはよっぴー(ニッポン放送アナウンサー吉田尚記)にも出てもらえて。
――DJ仲間の鮫島さんと吉田さんに本業でお願いしたと(笑)。高次元で色んな方向からネタが聞こえるという、サイケデリックな仕上がりになりましたね。
水島 ネタだけもらって役者に演じてもらうより格段のリアリティがありますからね。メタだし。芸人さんの1組に2つくらいずつネタをやってもらって、それを録って調整させてもらいました。でもあの空間でも、せっかくやってもらったからにはネタがちゃんと聞こえてほしいので、あまりリバーブはかけられないよな……とか、結構細かく調整しました。
――高次元に移ってからはまさに別世界のお話になって、栞も爆発後は毒気が抜かれたような思念体的な演技になりましたね。
水島 1人だけ違うところに飛ばされてますからね。
――そこから日常に戻って、ループしているようなオチもゾッとするというか。
水島 3話までの制作と、4、5、6話の制作って少しスパンが空いているので、映像も含めて4話以降のほうがクオリティーが上がっているんですよね。最後も音楽はミステリアスな、それこそ「トワイライト・ゾーン」みたいな感じの曲をつけたら、映像もバババババ!と光る演出をしてくれて。話を聞いたら動画担当のアドリブだったんですよ。
――映像演出としてもより研ぎ澄まされていったと。
水島 みんなが「これはやりすぎたほうが面白いんだ」という感覚が映像チームにも波及したのを実感できて、音響ディレクターとして嬉しかったですね。
――そんなエンディングのあとに流れる「I☆SPECIAL!」ですが、こちらはまたポップな楽曲で。
水島 そうですね、普通あんな終わり方をしたら、それこそ「トワイライト・ゾーン」みたいな曲がきそうなのに、一番かわいくてポップな曲がついてますからね。
――それこそもっともアニソン的なアプローチですよね。
水島 普段は自分でシナリオや音を作っているときに、曲も同時に考えていくんですけど、今回は良いアイデアが思いつかなくて……収録の時にその話をしたら、弊社プロデューサーの桟敷(宗太)から「1曲ハッピーハードコアやりたいんですけど、どうですかね」ってアイデアが来て、「(DJ)Genkiがやっているような明るくて、とにかくハッピーなやつです」って。それは本編とのギャップがあって面白いなと、「それやりましょう!」ってなりました。
――なるほど。
水島 デモが上がってきて「歌詞の方向性はどうしますか?」と言われたので、曲調から「今日は晴れているから、散歩がてらにでも世界救っちゃおうかな~」みたいなノリの感じのテンションの曲にしたいと話して。それが異世界とパラレルになっている、そういうことをすぐ妄想するオタクのお話みたいな感じになると共感できていいな、と思って作ったんです。ハッピーハードコアは僕的に浅い分野だったので、桟敷にリードしてもらって制作しました。1コーラス目と2コーラス目の入りのアレンジだけ少しニュアンスを変えたいとか、そこで歌詞も展開していってほしいという要望だけ投げかけて、GenkiとGettyが頑張ってくれました。yukaccoさんの歌詞も最高、めっちゃかわいいってなって。
――かわいい仕上がりにはなりましたが、あのストーリーからのこの曲で、ますます今後の展開がわからなくなってきました(笑)。
水島 これでかなりはぐらかせたと思います(笑)。
ボイスドラマはさらなる次元へ?カオティックな第6話
――そうした流れからの6話「イノシシなのは私だけじゃない」ですが、こちらもマラソン回と見せかけてかなりぶっ飛んだお話で。
水島 マラソンが苦しくて鼻提灯。で、どっか行くっていうね。
――文字ベースだけでも意味がわからないです(笑)。
水島 こちらもすごい台本が上がってきてどうしようかなと思いましたよ(笑)。鼻提灯の音とかものすごく悩みましたもん。
――“鼻提灯の音”というのもなかなかないですよね(笑)。
水島 「プウ~ン……」っていう音(笑)。あれもやたら探しましたからね。あれだけのストックを誇るArtlistで見つけられず、日本のSEなどからも色々探したけれど、やっぱりあまり良い音が見つからなくて。結果Artlistからの音を2つ混ぜたのかな?それに大野さんに「プウ~ン……」って言ってもらったものを重ねたりして。頭の中にはイメージがあって過去に聞いてるってことは効果さんが具現化してるわけで。その音に到達できなくて悔しかったですね。ここでも効果さんの凄さを思い知るという(笑)。あと音楽的には、「小さい頃のナウシカが歌っているような曲を」って話していた曲が良い感じで上がって、これは歌もちゃんと幼い子が歌ってほしいって要望していたら、弊社エンジニアの娘さんが行けるのでは?となり、お願いしてみたら歌ってもらえて、めちゃイメージ通りに仕上がったという。
――まさに「王蟲との交流」のような曲ですよね。
それが流れる3人が猪になるパートもそうですが、それまでの展開もなかなかすごい内容で。
水島 中身が入れ替わって……みたいな話ですね。中身の入れ替わりはもう少し時間があればもっとクオリティを上げられたよなあ……と。僕が監督を務めたTVアニメ『夏色キセキ』でも同じようなことをしていて、あのときは本人たちに一度演じてもらった音声を入れ替わる人たちに持って帰ってもらい、それを聴いて練習してもらって後日収録したんですよ。だからイントネーションやニュアンスはちゃんと元の役なんだけど、声だけ別の子って表現が精度高くできて。だけど今回のコンテンツではそこまでの段取りはとれなくて。でもよく聴くと、それぞれが演じている人のクセをなんとか寄せようとしてくれているんですよ。
――中島さんが演じる栞というのもフレッシュですし、雰囲気が出ているなあと。
水島 そうですね、中島さんに上手いことやってもらって。
――ほかにも、初めから部族同士の抗争に駆り出されるという。
水島 あれは僕がオーダーしたものではなく、高垣(雄海)くんが書いてきたもので。「軍勢」とか書いてあるけどどうするんだ!ガヤ録らないでいけるかな?」みたいな(笑)。あそこは流石に絵描きチームも困っていたみたいで、僕にも相談がきました。でもこちらから伝えたオーダーに対して、絵が気の抜けた感じにアレンジされていて、その感じとモブの声のギャップがすごく良いバランスで素敵なんですよ。
――そこの抜けを設定のぶっ飛び方でフォローする部分もあって。
水島 そうですね、そこをとにかくしっかりやらないと、このコンテンツって届かないよなと思ったので。キャストたちもコントをやっているっていう意識はそこまでなかったと思う。そういうなかで最初は普通に台本を読んできたけど、ディレクターに「もっとやってもっとやって」と言われ続けるという。多分1話の完成形を聴くまで本人たちも「?」ってなっていたと思いますよ。
――そうしたキャストたちの感触というものは、1話から6話まで順番に聞いていくと、より深みが増していくように感じられるんですよね。
水島 この間、鈴代さんに久しぶりにコメント録りに来てもらったときに、ちょこっとセリフを録ったんですよ。そしたら「なんかテンションが低いよ」と言ったら「あああ~
もっとか~~!」と頭抱えて唸ってました(笑)。で、最後までやりきって「疲れました……」って言って帰っていったんだけど、「まあでも、あの栞を作ったのもあなただからね」っていう気持ちで見送りました。「お疲れさま……」って(笑)。
――そして、6話のED曲「space voyage」ですが、ついにプログレ曲がきたぞと。
水島 そうですね。僕らしさのある曲を、という……でも実は、1話のバンドネタ回収です。
――たしかに1話にプログレというワードが登場していましたね。
水島 「プログレ」って言っておけばおじさんが喜ぶっていうところから、どこかでプログレをやろうと思っていて。でも5話の曲がもしかしたらプログレになったかもしれないんですよ。ただ5話の曲がドラマチックで、異世界でプログレだと当たり前じゃないですか。それでハッピーハードコアにして。それで「6話までがYouTubeで流れるやつだから、きれいに回収した感じになる……よし、プログレやろう」という(笑)。
――よし、プログレやろう(笑)。
水島 で、たまたま別件でレコーディングが一緒だった(佐藤)陽介に、「やる?」って聞いたら「やりたいです!」って言うから、彼は別にプログレが得意とかというわけではないんですけど、リファレンスの曲をたくさん投げてお願いして。ただ最初にももいろクローバーZやヒャダイン的な方向性の曲が届いたから「違う!もっと本格的なやつなんだ」って伝えて、もっとおおげさな、マジェランなどのプログレのバンドの曲を投げ直して。
――そこでマジェランを持ってくるとはかなりマニアックな(笑)。
水島 そう?1990年代ってドリーム・シアターとか、アカデミックな感じのバンドがいたけど、マジェランとかって古い時代のプログレじゃないですか。
――いわゆる1990年代のプログレハード/メタル勢のなかでも壮大なイメージがありますよね。
水島 アニソンの文脈でいうと「キグルミ惑星」みたいに展開する曲を作ったことはあるんだけど、みんなの耳に残っているのはヒャダインさんがオープニング・エンディングを担当したTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』の主題歌とかみたいで。陽介の曲が完成して、歌詞を書いてもらうときに、「宇宙海賊が出てきて宇宙を旅するんですよ」みたいなことを言ったら、陽茉莉-himari-ちゃんが最初書いてきてくれたのが、もう完全にももクロみたいな感じで(笑)。
――褒め言葉ですが、おっさんが喜びそうなプログレというか。終盤の泣きのギターソロはまさにそれで素晴らしいですね。
水島 あれはHylen(宇佐美祐二)くんですよね。ギターが弾けてトラックメイカーもやっている人で。「かっこいいギターが入ったな~」って思っていたら「難しかったです」と言っていて、まあそりゃそうだよな、プログレの曲だからなあって(笑)。
――水島さんの文脈では「キグルミ惑星」の流れもありますが、相変わらずハイクオリティーなプログレ曲になりましたね。
水島 1話で流した曲もそうですけど、ちゃんとそのジャンルが好きな人が聴いたときに「おお、頑張ってんじゃん」というレベルにはどうしても持っていきたかったので、全曲そういう刺さり方を目指そうと思っていました。元のジャンルに対しての敬意はどうしても残したかったし、“なんちゃって”みたいなものが一番嫌いなので。やるならそのものズバリか、もしくはそこからちょっとポピュラリティを足したみたいな。もちろんそれを僕が作るわけじゃないので、作ってくれる人にパンパンと鞭を入れるのが役目(笑)。
カオスのその先に、VOISCAPEが向かう“世界の果て”に待つものは……?
――全6話までのお話をお伺いしましたが、発売されたアルバム『まだ、世界の果てじゃない』では新録のドラマが2編入っていますね。これがまた3人の日常を映した、すごくほっこりするような内容で。
水島 CD用にあと2話くらいエピソードを足したいということだったので、そもそもがこのストーリーの出発点を書いた麻草 郁さんに、そこを踏まえたもう少し日常寄りのやつを、今までの流れも踏まえつつ書いてもらおうって。
――なるほど、日常的な方向性は最初からあったわけですね。
水島 YouTubeでは高垣くんに自由に書いてもらうというポリシーでやったから、この2話に関しては6話まで聴いた麻草さんに、そのテイスト組みつつ、元々の企画意図もわかった上でお話を考えてもらって、そしたら怪談話とお弁当話が届いて。
――まずはそのお弁当回「箱に詰めたら終わり、じゃない」も3人がお弁当を食べるというほっこりしたエピソードで。
水島 お弁当回も結構細かいこだわりがあって、お弁当箱の素材とかもちゃんと決まっているんですよ。こういう素材だから、開けるときにこの音がしますみたいなことも台本に書いてあって。麻草さんは演出も手がける脚本家だから、そういうディティールもキャラクター性へのアプローチとして利用してくる。しかしこのお話はYouTubeではないので、絵がないんですよ。
――たしかにそうですね。
水島 それもあって、「おっ、ハードルが1個上がった」って(笑)。高垣くんのネタはコントだから会話の勢いでいけるんだけど、今回は日常の延長でそのリアリティーが必要で、空間を表すための音をつけておかないといけない。だからお弁当回だったら、外だからずっと空間のノイズが聴こえている。でもわざとらしく車の音とかをつけると、排気ガスがくるような場所のように聴こえちゃう。だから公園みたいな場所でずっと風の薄い音が聴こえていて、かつ鳥の鳴き声とかも適度に入れる。トンビが最初に飛んでるところから、たまに小鳥のさえずりが聴こえる……みたいなものも入れてもらうようにして。意外と細かいんですよ。
――たしかに新作ということもあって、音響のディティールの細かさは極まっていますよね。
水島 栞が弁当を出すときも、いかにも新聞紙!みたいな「ガサガサゴソゴソ」する音を探して。あとみちるがでっかい弁当箱を持ってきたのも、「これは大きいやつです」みたいな指示を出して、そういう音を探してつけて。だからディティールをちゃんと表現しないと伝わらないだろうなみたいなところで、それを主張するんじゃなくて当たり前のものとしてついてるものをしっかりつけるというのは、より神経を使ってやってますね。
――そうした日常をきめ細やかに聞かせるなかで、3人の演技も穏やかな印象で。それこそ希のキャラクターもすごくナチュラルな。
水島 柔和なキャラクターになっててね。
――そんな3人のやりとりが微笑ましくもあるのは、怪談回「眠れぬ夜も、あるじゃない」もそうですね。
水島 電気の効果音とかもね。ちゃんとこだわりましたよ。
――寝る前の他愛もないやり取りにほっこりしつつ、グッとくる良さもあって。また、本作に収録された新曲「世界のはてじゃない」「センチメンタル・グラヴィティ」の2曲もそうした日常的なムードも感じられますよね。
水島 そうですね。歌に関してもこのコンテンツに密接に関係している感じを出したいなと思ったから、エピソード的にも歌的にも両方でまたさらに補足しながら強固な形にして、さあ次へ行くぜ!みたいな気持ちでね。ドラマに「まだ、世界の果てじゃない」ってタイトルがついている以上は「なんでこのタイトルなの?」っていう部分は、いつか最初のプランに戻る日のために強めに匂わせようと思って(笑)。その未来を感じさせる「世界の果てじゃない」が、肯定的な意味合いで、逆に「このまま終わるかも……」という不安な部分も曲にしようって「センチメンタル・グラヴィティ」を作りました。この2曲の裏テーマです(笑)。
――繰り返しになりますが、何かを匂わせるというか、ストーリーや曲から何か深読みできそうなものがあるのかもしれない……という。改めて、ピクチャーボイスドラマという方式で聞く人たちの創造性を広げていくような試みとしても非常に興味深いものになりました。だからこそ今後にも期待したくなるというか。
水島 そうですね。例えばメタバース(架空の世界)もそうだけど、自分たちが実際にそこに入って没入感を得る電脳空間ってこれまで映像作品でたくさんあって、それを基準にクオリティを考えていて、そこの再現度が低いとお客さんは納得してくれないと思っていたんですよ。でもこのコロナ禍で、VRなどバーチャルなものを若い子たちが楽しみ始めたときに、自分も体験したらアバターとかのクオリティが高くなくても全然没入感あるんだとショックを受けたんです。完全に頭でっかちだった。なので、今回音声とイラストだけでやるときにも、「まずやれることを、とにかく柔軟に面白がってやってみよう!見つけよう!」っていうのはあったりしました。「こういうのもあるんだ」というところの面白がりみたいなところが、上手く伝わるといいなと思っていて。
――これもまたエンタメの1つの選択肢であるという。
水島 本当にそうです。だからこのコンテンツがバーチャルな方向にいってみたらどうなるかなとか、それこそ360 Reality Audioみたいな立体音響とかで悪ふざけしてみたりするのも面白そうだなと思いますよ。そういうプロデューサーが主導でやりたいことをどう膨らませてどう面白くするか、どう無茶なことをやるか、みたいな作戦を僕らが考えて、音響のディレクションまでやることでその世界観もきちっと聞かせるというのは、今回の自分の最大のミッションだと思っています。予算内でね(笑)
――それがこの6話プラスαで研ぎ澄まされていったこれまでを経て、この先どうなっていくのかという。それこそ音響も含めた演出というものがより先鋭化される、ボイスドラマの可能性をどこまで拡張できるかということなのかなと。
水島 そう言ってもらえるのはすごく嬉しいし、やった甲斐があったと思いますね。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
●リリース情報
VOISCAPE<飯森みちる(CV中島由貴)、中沢栞(CV鈴代紗弓)、太田希(CV大野柚布子)>
発売日:2022年3月30日(水)
・販売店リンク
https://lnk.to/voiscape_madahate_CD
・音楽配信リンク(Streaming)
https://lnk.to/voiscape_madahate
・音楽配信リンク(Download)
https://lnk.to/voiscape_madahate_DL
【通常盤】
品番:GNCA-1613
価格:¥3,850(税込)
【あにばーさる限定盤(飯森みちる盤)】
品番:GNCT-0033
価格:¥7,700(税込)
【あにばーさる限定盤(中沢栞盤)】
品番:GNCT-0034
価格:¥7,700(税込)
【あにばーさる限定盤(太田希盤)】
品番:GNCT-0035
価格:¥7,700(税込)
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(※通常盤/あにばーさる限定盤共通)
・CD1
01. GO GO WEST(作詞 水島精二 作曲・編曲 エンドウ.)
02. ホーム(作詞 山本メーコ 作曲・編曲 佐藤陽介)
03. 幻想の旅へ(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 グシミヤギ ヒデユキ)
04. 憧れのレディオスター(作詞・作曲・編曲 おぐらあすか)
05. I☆SPECIAL!(作詞 yukacco 作曲・編曲 DJ Genki / Getty)
06. space voyage(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 佐藤陽介)
07. 世界のはてじゃない(作詞 山本メーコ 作曲・編曲 板倉孝徳)
08. センチメンタル・グラビティ(作詞 陽茉莉-himari- 作曲・編曲 遠藤信吾)
・CD2:オリジナルボイスドラマ
01. 箱に詰めたら終わり、じゃない
02. 眠れぬ夜も、あるじゃない
<あにばーさる限定盤特典>
・特典CD収録
*CD1収録曲の各キャラクターによるソロバージョン(合計8曲)
・特典DVD収録内容
*ピクチャーボイスドラマ「まだ、世界の果てじゃない」映像データ
・特製スリーブケース仕様
<全仕様共通特典>
2023年6月25日開催「VOISCAPE」イベント(仮)チケット先行販売応募券
●イベント情報
アルバム「まだ、世界の果てじゃない」リリースイベント
■開催日時および出演者
5月21日(土)出演:大野柚布子さん(太田希役)
6月4日(土) 出演:中島由貴さん(飯森みちる役)、鈴代紗弓さん(中沢栞役)、大野柚布子さん(太田希役)
6月5日(日)出演:鈴代紗弓さん(中沢栞役)
6月10日(金)出演:中島由貴さん(飯森みちる役)
※ イベント内容はインターネットサイン会となります。
※ イベントの開催日時および参加方法など詳細は後日改めてVOISCAPE公式Twitterにてお知らせ致します。
●朗読&トークイベント公演概要
開催日時:2022年6月25日(土)
昼公演 開場:14時15分 開演:15時00分
夜公演 開場:17時15分 開演:18時00分
出演者:VOISCAPE(大野柚布子、鈴代紗弓、中島由貴)
会場:恵比寿ザ・ガーデンホール
料金:全席指定 ¥6,000(税込)
●作品情報
ピクチャードラマプロジェクト「VOISCAPE」
まだ、世界の果てじゃない
<作品概要>
どこの「世界」にでもいる3人の女子高校生。
この3人でしか作れない「世界」の中で、刹那のキラメキを
どこまで笑い飛ばしながら生きていく日常系コメディ
<キャラクター>
飯森みちる(CV:中島由貴)
まっすぐで真面目。面倒見が良く、仲間思いの元気ムスメ。
頑固だけど理屈に弱く、長い時間かけて説得されると納得してしまうことがある。
学級委員長などを任されるタイプだが、本人は地位や権限にさほど興味はない。
運動能力が高い。
苦手なものは「特にない」
好きな食べ物は「ごはん」
中沢 栞(CV:鈴代紗弓)
考える前に動くポジティブガール。
行動力が高いが、衝動的でツメが甘い部分もある。
その行動から周囲を混乱させるところがあるが、純粋さと優しさで不思議と人が集まってくる。
「お笑い」や「占い」などのカルチャーを人一倍リスペクトしている。
苦手なものは「おばけ」
好きな食べ物は「何かに入っているイチゴ」
太田 希(CV:大野柚布子)
直感が鋭く、常識に囚われない不思議な優等生。
物怖じせず、周囲を冷静に見渡すことができる。
成績優秀で運動神経も高く、どんなことでも少し練習すればできてしまう。
占いが得意。
苦手なものは「大勢の子供が同じ歌を歌っている景色を見ること」
好きな動物は「悪夢を食べるバク」
【スタッフ】
エグゼクティブプロデューサー:水島精二
クリエイティブプロデューサー:荒木 悟
シナリオ:麻草 郁・高垣雄海
キャラクター原案/キャラクターデザイン:いぬもと
背景・彩色:鴨鳴アヒル
動画:おれお
音響ディレクター:水島精二
音楽:グシミヤギ ヒデユキ
音楽プロデュース:水島精二・Hifumi,inc.
映像制作/音楽制作:Hifumi,inc.
総合プロデュース:Hifumi,inc./NBCユニバーサル
●ラジオ番組情報
文化放送・超!A&G+「RADIO VOISCAPE」
放送局/放送日時:文化放送・超!A&G+にて毎週月曜日23:30-24:00
(リピート放送:毎週火曜日11:30-12:00)
出演:VOISCAPE
<中島由貴(飯森みちる 役)、鈴代紗弓(中沢栞 役)、大野柚布子(太田希 役)
©VOISCAPE
関連リンク
「VOISCAPE」オフィシャルTwitter
https://twitter.com/voiscape_PR
水島精二 公式Twitter
https://twitter.com/oichanmusi
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