2022年4月13日、作曲家・澤野弘之が全曲プロデュースした1st EP『Dignified』で、シンガーのSennaRinが待望のメジャーデビューを果たした。YouTubeで公開している動画の総再生回数5500万回という高い人気を獲得し、今年3 月から劇場上映しているアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』のW 主題歌を担当して話題となっている。
自ら作詞やアートワークを行うマルチな才能を持ち、明るいキャラクターも魅力的な彼女。音楽のルーツやデビュー前のエピソード、そして今回のEPに込めた想いを聞く。

コンプレックスだった歌声
――まず、SennaRinさんが最初に音楽に触れるきっかけというのはなんだったんですか?

SennaRin きっかけというきっかけはなくて、生まれたときから母がピアノを弾いていて、父がギターやドラム、ベースができるみたいな人だったんですよ。両親共に音楽を仕事にしているというわけではなかったんですけど、小さい頃からピアノやアコースティックギターみたいな楽器が当たり前にある家庭で。なので音楽はずっと当たり前に聴いていましたし好きでした。でも、歌いたいと思ったのは小学校高学年くらいですかね。

――自分の歌の魅力に気づいて、アーティストを目指していこうと思ったのはいつ頃ですか?

SennaRin 小学校高学年の頃は歌うことが好きで、母にも「歌上手じゃん」って言われてたんですけど、私的には小さい頃から声がハスキーすぎて、男っぽくてコンプレックスだったんです。私は結構、現実的に物事を考える性格なので、「歌うことは好き、人よりちょっと上手いかもしれない、でも声が良くないな」って思っていたんですよ。中学生くらいまでそう思ってたんですけど、高校1年生で動画をYouTubeに上げ始めて、そうするとコメントがダイレクトに届くじゃないですか。そこで「声がいい」ってたくさんコメントをいただいて、「私の声っていいのかな?」と初めて思った感じですね。

――実際に自分で動画を投稿しようと思ったのは、歌うのが好きだったからですか?

SennaRin そうですね。まず最初にTwitterをやっていて、弾き語りの動画をちょこちょこ上げていたんですけど、もっと世界の多くの人に聴いてもらうためにYouTubeに投稿しようって、最初は試すみたいな感じでした。
そうやっているうちに、「やっぱり歌無しの人生なんて考えられないな」って改めて思って。

運命的な澤野弘之楽曲との出会い
――デビューが決まったのはいつだったんですか?

SennaRin 上京した年です。18歳のときで。

――デビューが決まったから上京した感じですか?

SennaRin いえ、違います。上京は半分ノリで(笑)、2週間前に飛行機のチケットを取ったんですよ。「上京しちゃおっかな」って言ってから2週間で上京して、その後デビューの話をいただきました。しかも!偶然、上京する飛行機の中で、澤野さんのサウンドトラックをずっと聴いていたっていう!

――それは運命的ですね。

SennaRin 本当に、運命ですよ!(笑)。歌の入ってない曲が聴きたくて調べて出てきたのが澤野さんの曲で、そのときは「この曲、澤野弘之さんという方が作ってるんだー」っていうくらいだったんです。そしたらそこから少しして「澤野弘之さんという方がいらっしゃって……」とプロデュースのお話をいただいたので、「知ってますー!!!」って。

――ご自身の中ではどういうアーティストを目指したいというイメージはあったんですか?

SennaRin 元々は日本だけじゃなく、邦楽よりも洋楽、K-POPとか色んな国の音楽を聴いていたので、澤野さんと出会って、私も世界に通用する音楽を歌えるアーティストになりたいという気持ちが深まっていきました。

――歌だけでなく作詞もやってみたいと思われていたんですか?

SennaRin はい!澤野さんとお会いする前から、「コンセプト」というものを考えるのが大好きで。
例えばサウンドトラックを聴きながら「こういう人がいて、こういう気持ちで……」みたいなのをずっとカフェとかで考えるのが大好きだったんです。なので澤野さんからデモをいただいたときも、趣味でやっていたことと同じような感覚で作詞しています。昨年末に澤野さんがリリースされたPiano solo album「scene」の発売記念特番に出演させていただいた際、「Missing Piece」という楽曲のカバーで歌詞を書かせていただいたのですが、書き上がった歌詞を澤野さんに渡したときに「24歳、一人暮らし……」みたいなメモ書きの設定を消し忘れて、そのまま澤野さんに送っちゃったみたいなこともありました(笑)。

――そういう世界観を考える作業は、それぞれの楽曲をイメージしたアートワークにも繋がっているのかなと思うのですが、今回のEPのジャケットもそうですか?

SennaRin 今回のジャケットは私が描いた5曲の絵をコラージュしたものなんです。

――そうだったのですね。元々絵を描くのが好きだった?

SennaRin はい。絵を描くのはすごく好きで、Instagramにもちょこちょこ上げたりしていたのですが、筆で描くのは初めてでした。「描けるのか?」って感じだったんですけど、5枚出来上がって、本当に嬉しいです。

この世のすべての感情を込めて
――最初の曲は「dust」と「melt」になると思いますが、初めてRinさんが歌うために書かれたオリジナルの楽曲をもらったというのはどんなお気持ちでしたか?

SennaRin やばかったです(笑)。もう大ニヤケで……とにかくずっとニヤけてました(笑)。曲を聴くときにほかの雑音を一切入れたくなくて、家にある音響機器ではパソコンの音が良いのですが、それに自分が持っている一番音の良いヘッドホンをつけて、明かりも全部消して(笑)。その聴き方は今も曲をいただいたときのルーティーンになってます。


――「dust」と「melt」はアニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』のW主題歌となってますが、曲を聴いたときの印象はいかがでしたか?

SennaRin 「melt」には“優しさ”という言葉をいくつも入れてるんですけど、“無条件に与えられる愛”“浴びる優しさ”みたいなものを感じて、海に沈んでいくような、空に浮かんでいくような壮大なものから、“優しさ”を感じていました。曲単体で聴いたときの感覚と、『銀河英雄伝説』という作品と合わさったときの感覚は変わることがなくて、本当にピッタリだなって思いました。

――「melt」はRinさん(茜雫凛名義)とcAnON.さん、澤野さんと共作で歌詞を書かれていますね。

SennaRin そうなんです。曲を聴いて初めて受けた感覚は“優しさ”だったのですが、それをテーマにすると歌詞を書くときに難しくて。色んな方に当てはまる、同じ感覚を感じてほしいというのを考えながら、本当に時間をかけて歌詞を書きました。1つ1つの言葉を、「本当にこれでいいのか」「伝わるのか」って考えながら当てはめていきましたね。

――澤野さんのレコーディングはいかがでしたか?

SennaRin 細かい指示はあまりなかったのですが、「この部分はもう少し強く、強く!」っていうのを澤野さんから伝授いただき、「はいっ!」って言って歌う感じでした。私も部屋を暗くしてもらって、この世のすべての感情をぐっと込めて歌っていました。





レコーディングで澤野弘之が見せた「魔法」
――ところで、今回のEPの中でプロローグとエピローグみたいに入っているインストがありますが、Rinさんの声が発声練習みたいに入ってきて驚きました。

SennaRin 本当に発声練習をしただけなんですよ(笑)。発声練習を3回くらいやったのを録り、澤野さんがその場でアレンジして作っていただきました。


――まるで魔術師みたいですね。

SennaRin 本当に魔法だって思いました。

――そこから1曲目「BEEP」に繋がっていくわけですね。こちらもRinさんがcAnON.さんとの共作で作詞をされていて、「J SPORTSラグビー」テーマソングということもあってスポーツ感がある楽曲になっていますね。

SennaRin 作詞をするにあたって、初めてラグビーの試合を生で観させていただいたんです。その時、結構上のほうの席から見ていたんですけど、すごく音が伝わるんですよ。そういう臨場感のある音や、ラグビーを見るまで知らなかったキックオフだったりスクラムを組んだりするのを、興奮しながら観させていただいたんですけど、その感覚を全部持ち帰って作詞をしました。ラグビーのファンの方からしたら、「あっ、ラグビーの試合がこういうふうに見えているんだ」という歌詞もあるのかなって思いますし、ラグビーのファンじゃない方も「この歌詞はどういうことなんだろう?」ってラグビーに興味を持ってもらえるような歌詞になったと思います。

――サウンドにも歌詞にも遊びがある楽曲ですね。

SennaRin 英詞部分をcAnON.さんが書いてくださってるんですけど、cAnON.さんと同じ空間で「ここはこうしたらどうですかね?」ってお話ししながら作詞させていただきました。最後のほうに“Hip! Hooray! Hip! Hooray!”っていうワードが出てくるんですが、それもモロにラグビーの用語(※ラグビーの試合後に行うエールの交換)だったりするんです。



私にとっての「証」
――同じくダンサブルな楽曲なのが「Limit-tension」ですが、この曲も作詞をされていますね。


SennaRin 「Limit-tension」という単語は造語ですが、澤野さんにつけていただいたんですよ。最初にデモを聴いたときから、サビ頭が印象に残るメロディだと思っていたんですけど、最後までこの部分が全然決まらなくて。レコーディングをする直前に澤野さんに「Limit-tensionはどうだろう……」って言われて、「それだー!」ってなりました(笑)。この曲は、告白する前とか勝負する前の“願掛けソング”みたいな感じの曲です。(フィギュアスケートの)羽生結弦さんが、音楽を聴きながら「ふーっ」って気合いを入れてから競技にいく映像を見たことがあるんですけど、それを想像して作詞しました。私も結構ルーティーンを決めちゃうタイプなんですけど、そういう時間ってすごく大事で。そういうときのための音楽が1曲あればいいなって思って、この曲を作りました。一瞬の爆発のために、どんどん構えていく、準備していくみたいな歌詞になっているかなと思います。「Limit-tension」は「限りある時間」っていうニュアンスの単語になっているので、ぜひ皆さんにも勝負の瞬間の時に聴いていただきたい楽曲です。

――綺麗にまとめましたね(笑)。

SennaRin よかった!(笑)。

――最後にもう1曲、「証」です。
2021年12月28日にオンエアされたテレビ東京「THE MAKERS ~突破の条件~」の澤野弘之特集回でレコーディングシーンが流れていましたね。


SennaRin そうなんですよね。この曲も作詞をさせていただいたのですが、制作期間が、澤野さんに見ていただくまで4日間だったんです。まずテーマをどうしようって。ものづくりをする人を知るために、ドキュメンタリー番組をたくさん観てリサーチしました。ものづくりをする方々って、自分がいなくなったあとでも、自分が作り出したものが大切な人を護り続けてくれるような、自分が生きた証を残していく、そういう尊いお仕事なんじゃないかなと思って、作詞を進めようと思いました。まずは「証」というタイトルに決めて作詞を始めたのですが……行き詰まりました。でも、「ああ、どうしよう……」って悩んでる私って、「ものづくりしてる!」と思って。私の気持ちも乗っている歌詞なので、私にとっての「証」も出来上がりました(笑)。

SennaRin、頑張ります!
――さて、4月のデビューが近づいていますが、SennaRinとしてどんな活動をしていきたいと思いますか?

SennaRin まず、今やっている作詞や絵もそうですけど、どんどん新しいことに挑戦して、成長していきながら、澤野さんと制作を続けたいです。SennaRinというアーティストが日本のみならず、世界の方に知ってもらえるように、認めてもらえるように、頑張っていきたいですね。

――今年はこのあとも色々と動きがありそうですし、SennaRinの年にしていきたいですね。

SennaRin はい!SennaRin、頑張ります!どうぞよろしくお願いします!

INTERVIEW BY 澄川龍一 TEXT BY 金子光晴

●リリース情報
Debut EP
「Dignified」
発売中

【初回生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL-2016~2017
価格:¥3,300(税込)

【初回仕様限定盤(CD)】

品番:VVCL-2018
価格:¥2,200(税込)

■mora
通常/配信リンクはこちら
ハイレゾ/配信リンクはこちら

<CD>
01. Dignified-IN
02. BEEP(J SPORTSラグビーテーマソング)
03. melt(アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』テーマソング)
04. Limit-tension
05. dust(アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These 激突』主題歌)
06. 証(テレビ東京『THE MAKERS ~突破の条件~』テーマソング)
07. Dignified-OUT

<Blu-ray>
01.「melt」Music Video
02.「BEEP」Music Video
03.「証」Music Video
04.「melt」「BEEP」「証」Music Video Making

●本誌情報
5月17日発売の最新号「リスアニ!Vol.48」にて澤野弘之との対談を掲載!
詳しくはこちら
https://www.lisani.jp/0000199263/


関連リンク
SennaRin オフィシャルサイト
https://www.sennarin.com/

SennaRin Twitter
https://twitter.com/senna_rin

SennaRin 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCF3GFSms-WSRmJKvOgLC7mw
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