富田美憂×『デート・ア・ライブ』が織り成す究極の形「OveR」
――新曲「OveR」は、人気シリーズの最新作『デート・ア・ライブIV』のOPテーマになります。まずはタイアップのお話をいただいたときの感想をお聞かせください。
富田美憂 『デート・ア・ライブ』は私世代のアニメが好きな男の子はみんな観ていました、私も学生時代に観ていた作品なので、まさか自分がオープニングを歌えるとは思ってもみなくて、当初は「これって現実?」と思いました(笑)。人気シリーズということもあって最初はプレッシャーもありましたけど、富田美憂だからこそ歌える『デート・ア・ライブ』の世界観もきっとあると思ったので、だんだん緊張よりもワクワク感のほうが大きくなりました。
――昔からいちファンとしてアニメをご覧になっていた富田さんが思う、『デート・ア・ライブ』の魅力とは?
富田 個性的なキャラクターがたくさん登場するので観ていて飽きないですし、精霊の女の子たちもかわいらしいだけではなく、“強い女の子”ばかりなので、同性の私から見てもすごくかっこいい作品という印象が強くて。そこは『デート・ア・ライブ』の大きな魅力だと思います。
――本作の主人公・五河士道は、強大な力を持った精霊に対抗するために「デートしてデレさせる」ことをミッションとしていますが、富田さんならどの精霊とどんなデートをしてみたいですか?
富田 わー、迷う!(笑)。でも、今回の新キャラの(星宮)六喰ちゃんがすごくかわいいなと思っていて。金髪で髪の長い女の子なんですけど、PVで初めて観たときから「この子、好き!」と思っていたので、やはり六喰ちゃんですかね。自分がデートに誘うなら、おうちで飼っている犬も連れて行って「どーだ!」って見せつけたいです。女の子はみんなもふもふが好きだと思うので(笑)。
――いい作戦ですね(笑)。今回のOPテーマ「OveR」は壮大なロックチューンですが、最初に受け取ったときの印象はいかがでしたか?
富田 いつもは何曲かの候補曲から選ばせていただくことが多いのですが、今回は作家の皆さんが「富田美憂が『デート・ア・ライブ』の楽曲を歌うとしたら?」というイメージで楽曲を書き下ろしてくださったので、楽曲をいただいたときからすごくしっくりきました。ただ、歌の難易度がすごく高かったので、歌いこなすためにはどうすればいいか、を事前にすごく考えました。
――この楽曲のどんな部分に自分らしさを感じましたか?
富田 私は1stシングルのときから「富田美憂は強いイメージでいこう」ということで活動してきたので、“強さ”を感じさせる曲を多く歌ってきたんですけど、この曲も聴いた瞬間に「強い!」と感じました。でも、今までのロックな曲やかっこいい曲とはまた違った方向性の“強さ”があったので、この曲で私のまた新しい一面が出せるんじゃないかと思いました。
――たしかに。今までの楽曲で言うと、「Broken Sky」もワイルドな雰囲気に溢れていましたが、この曲からはそういった激情的な“強さ”だけでなく、内から滲み出る“感情の強さ”みたいなものがありますよね。
富田 はい。私も初めてこの曲を聴いたときに、もちろん“強さ”が念頭にありつつ、AメロやDメロからは“切なさ”や胸がちぎれそうになる気持ちを感じました。それと全体を通してすごく綺麗で、“美しさ”も兼ね備えた楽曲だと思うんです。歌うときも、サビの部分は凄みと圧を出すために言葉をパキッとさせて歌ったんですけど、曲の端々に含まれている“女性らしさ”を感じさせる部分では一瞬だけ色っぽい表情を出してみたり、色々なパターンを考えながら歌いました。
――Aメロでのやや儚いアプローチからBメロを経て、サビに入った瞬間の衝撃と迫力。
富田 実はこの曲、1年くらい前には出来上がっていて、1stアルバム(『Prologue』)のレコーディングが全部終わった直後に(歌を)録らせていただいたんです。『Prologue』を制作したことで、自分の新しい可能性を見つけたり、表現の引き出しが増えたので、その経験があったからこそ歌えた楽曲だと思います。特に“あなた”という単語が歌詞に何回も出てくるのですが、その1つ1つに込めた気持ちもそれぞれ違っていて。例えば“あなた”のことがどうしようもなく憎い気持ちだったり、“あなた”が欲しくて仕方がない気持ち。“あなた”という3文字にこだわって表現したので、ぜひ聴き比べてほしいです。
――この曲の作編曲を担当した坂部 剛さん、作詞の渡部紫緒さんは、これまでの『デート・ア・ライブ』シリーズの楽曲も手がけてきた方々ということで、作品とリンクする部分もたくさんありますよね。
富田 そうですよね。私もイントロの入り方がちょっと劇伴っぽいなと思いました(笑)。レコーディングのときには作家の皆さんとお会いすることができなかったので、後から教えていただいたのですが、歌詞には(時崎)狂三の心情もすごく盛り込まれているんですよ。私も歌っているときに「もしかしてそうかな?」と思っていたので、そのお話を聞いたときに「やっぱり!」と思って(笑)。
――言われてみればたしかに。
富田 そうなんです!それこそ“目覚めても 目覚めても 届かない”は狂三の能力に繋がりますし、“あなた”というものに固執しているところも狂三っぽいなと感じて。だから、今までのタイアップの楽曲は作品が6割、自分としての気持ちが4割くらいのバランスで歌っていたんですけど、この曲に関しては作品の世界観がドーン!と表現されていたので、普段の声優としての役作りに少し似ている感覚がありました。キャラソンではないんですけど、そのキャラクターを自分自身にも投影させて歌うような作業をしましたね。
――そのキャラクターを演じるとまではいかずとも、自分をその楽曲の主人公に当てはめて歌っていくと。
富田 そうですね。キャラクターや物語に全振りする歌い方を、アーティストとしてもやっていいんだという一個の発見でもあって。この「OveR」を歌ったことによって、アーティスト・富田美憂の武器が一個増えたんじゃないかと思います。
――なるほど。今のお話を踏まえたうえでもう一度この曲を聴くと、また違った聴こえ方になりそうですね。いやあ、狂三は個人的にも好きなキャラクターなのでちょっと嬉しいです。
富田 私の弟も狂三が好きなんですよ。
――これは“OR(=選択肢)”とかけているのかなと思いました。『デート・ア・ライブ』は主人公がデート相手を含め、色々な選択をしていく物語でもありますし。
富田 その通りです!(笑)。歌詞の中にも“あなた”と“私”や“過去”と“未来”のように対比している言葉が多いので、そういう意味でも“OR”をかけていると。なので『デート・ア・ライブ』のファンの方には「おっ!」と反応していただけると思いますし、逆に私の楽曲から『デート・ア・ライブ』に触れる方にも、より作品にのめり込んでいただける素晴らしい楽曲になったと思います。
“オーバー”な振る舞いとファッションのこだわりが詰まったMV
――「OveR」のMVは、富田さんがクールに振る舞う様々な姿のカットが繋ぎ合わされていて、すごくかっこいい映像に仕上がっていますね。
富田 まさか炎をバックに撮影する日がくるとは思わなかったです(笑)。監督やスタッフの皆さんも、アルバムやワンマンライブを経て、またひとつレベルアップした富田美憂の楽曲という認識をしてくださっていたので、MVも今までよりも強さを全面に出していただいて、炎のように今までにない演出も含め、挑戦的なものになりました。
――個人的には、口紅をはみ出して塗るシーンが印象深かったです。かっこよさと同時に大人っぽさも表現されているように感じて。
富田 あのシーンが難しかったんですよ(苦笑)。「OveR」ということで、コップに水を注いで溢れさせたり、オーバーに関連することを色々やらせていただいたなかで、口紅をオーバーに塗ってみたんです。ただ、普段リップを塗るときは鏡を見るんですけど、今回は鏡がなかったので「自分の唇はどこかな?」というところから始まり(笑)。「とにかくかっこいい化粧品のCMのつもりで、キメッツキメの顔でやってください」と言われながら、3~4テイクくらいかけて、すごくこだわって撮ったんです。他にもバラの花を燃やしたり、ドミノを倒したり、普段やらないようなことをやらせていただいたので、ちょっと背徳感がありました(笑)。
――Gジャンとミニスカートを合わせたストリート寄りの衣装もかっこよかったです。富田さんのこだわりポイントは?
富田 今までのMVでは毎回衣装らしさのある衣装を手作りで作っていただいていたんですけど、今回はあえて私服っぽいナチュラルな感じに挑戦しました。そのなかでも、ジャケットは衣装さんにリメイクしていただいたり、お腹を思い切って出してみたり(笑)。下は腿まであるロングブーツを履かせていただきました。アルバムを経ての4thシングルということで、ビジュアル面でも1つレベルアップした感じが出せたらと思いまして。
――普段もああいった格好をされることはある?
富田 Gジャンはよく着ますね。ロングブーツは去年に流行ったので思い切って1足買ったんですけど、まだ2回くらいしか履いてなくて。
――富田さんが普段ファッションでこだわっていること、あるいは自分的にしっくりくるスタイルも教えてもらえますか?
富田 ファッションはすごく好きで、私は特に靴が好きなんです。だから今回のロングブーツもテンションが上がりました(笑)。そしてこれは声優さんあるあるなんですけど、イベントでは自前で衣装を用意することが多いので、例えば自分の演じているキャラクターが赤のイメージだったら赤い服、男の子のキャラクターならパンツにしてみたり。あとは、私は結構ボーイッシュなものも、女性らしい服も、両方ともよく着るので、朝起きて「うーん、今日はズボン!」とか「今日はかわいいの!」みたいに、その日の気分で決めることが多いですね。
――どちらも似合うのでいいですよね。その意味では毎回衣装を決めるのも楽しいのでは?
富田 楽しいですね。作品をリリースするたびに色んな恰好をさせていただけているので、私的には衣装もアーティスト活動をするなかでの楽しみの1つになっています。
実は表題曲と表裏一体!? 優しいバラードソング「ねえ、君に」
――カップリング曲の「ねえ、君に」は優しい雰囲気のバラードソング。表題曲の「OveR」とは真逆とも言えるタイプの曲調です。
富田 元々「OveR」のカップリングはバラードがいいと自分のなかで決めていたんです。3rdシングル(「Broken Sky」)のカップリングに収録した「インソムニア・マーメイド」がお気に入りの曲なんですけど、それに近いイメージの、柔らかくて温かみのある、前向きなバラードが歌いたいです、というお話をしていて。この曲に関してはコンペで選ばせていただいたんですけど、聴いた瞬間に「絶対にこれ!」と思いました。
――どんなところにピンときたんですか?
富田 サビのメロディが純粋にすごく好きでした。それとデモでいただいたときから完成版とほぼ同じ歌詞が付いていたんですけど、パッと聴いたときは恋の歌なのかな?と思いきや、もっと大きな愛情みたいなものが描かれていて。実際に私も歌うときは、家族や友達、こはく(富田が飼っている愛犬の名前)、普段自分が大事にしている人やものを思い浮かべて歌いました。それこそ「OveR」は「“戦争”と書いて“デート”と読む」じゃないですけど、殺伐とした世界観なので、そこから打って変わって柔らかい感じの曲をカップリングにすると、シングルとしてバランスがいいかなと思いました。
――大きな愛情と同時に、距離の近さを感じられる曲でもありますよね。その意味でも、普段一緒に暮らしている人が浮かびやすい曲なのかなと。
富田 そうですね。“「ただいま」”や“「おかえり」”といった言葉が入っていますし、ちょっと日常的な歌詞になっていて。だからぜひ皆さんも大切な方を思い浮かべながら聴いてほしいです。
――歌う際にこだわったポイントは?
富田 バラードの場合、切なさを連想することが多いと思うんですけど、この曲に関してはじんわり温かい感じを表現したかったので、基本的にずっと笑顔というか明るい表情で歌いました。声のトーンも、「OveR」はちょっと重みのある歌い方をしていましたけど、「ねえ、君に」に関しては軽やかに聴こえるように意識して。なので歌い方のアプローチも真逆な感じですね。この曲のトラックダウンのときに、いつもお世話になっているスタッフさんにも、「「Present Moment」のときくらい開けた感じの明るい曲だよね」と言っていただけました。
――サウンド的にも包み込むような優しさが感じられます。
富田 そのトラックダウンのレコーディング作業時に、スタジオの音響設備で大きな音で聴いたときに、映画を一本観終わったような感覚になって。ピアノが基調になっている曲なので、余韻の残り方とかも、映画のエンドロールが終わって映画館が明るくなるときの感じに似ているなと思いました。
――「OveR」とは対極にあるような楽曲ですが、実は2曲とも“溢れんばかりの愛”という意味では繋がりがあるように感じました。
富田 そうなんです!コンセプト的には“愛”が両方に共通したテーマなので、同じテーマでもこんなにも変わってくるのかって思いましたね(笑)。
――その意味では面白いシングルになりましたが、富田さん的には本作にどんな手応えを感じましたか?
富田 どちらの楽曲もすごく挑戦で、正直「OveR」のオケを初めて聴いたときは、「こんなにすごい曲、歌えるのかな……」ってビビってしまったくらいだったんです(笑)。でも、アーティスト活動も今年で3年目になるなかで、自分的には1stアルバムを経て、一歩一歩は小さいかもしれないですけど、着実に前に進めている実感があるので、今回も完成品を聴いたときに、レベルアップは達成できたんじゃないかなと思います。それと同時に、次はこれを超えなくてはいけないという新しいハードルが出来たので(笑)、まずはこの作品が皆さんのもとに届けられる喜びを噛みしめつつ、頑張っていきたいです。あとはなんといっても『デート・ア・ライブ』のOPテーマなので、オンエアがすごく楽しみです!(※取材はTVアニメの放送開始前に実施)
――そういえば今までのTVシリーズのOPテーマはすべてsweet ARMSが担当してきたので、それ以外の方がOPテーマを担当するのは今回の富田さんが初めてですよね?
富田 はい。その重圧はすごく感じています(笑)。なので放送が終わったときに、ファンの方に「このオープニングで良かったな」と思っていただけたら、私のなかでは大成功かなと思います。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
●リリース情報
富田美憂 4th シングル
TVアニメ『デート・ア・ライブIV』OPテーマ
「OveR」
2022年4月20日発売
【初回限定盤(CD+DVD)】
品番:COZC-1862/3
価格:¥2,090(税込)
【通常盤(CD Only)】
品番:COCC-17956
価格:¥1,430(税込)
<CD>
M1.OveR
作詞:渡部紫緒 作曲・編曲:坂部 剛
M2.ねえ、 君に
作詞・作曲・編曲:遠藤直弥
M3.OveR(Instrumental)
M4.ねえ、 君に(Instumental)
<DVD>
「OveR」ミュージックビデオ
メイキング映像
●作品情報
『デート・ア・ライブIV(フォー)』
放送・配信中
【STAFF】
原作:橘 公司/原作イラスト:つなこ(株式会社KADOKAWA ファンタジア文庫刊)
監督:中川 淳
シリーズ構成:志茂文彦
キャラクターデザイン:中村直人
サブキャラクターデザイン:田中詩織
メカニックデザイン:明貴美加、 森木靖泰
美術監督:中田洵輝
色彩設計:池田ひとみ
撮影監督:野澤圭輔
3Dディレクター:白井賢一
特効・2Dワークス:益子典子
編集:吉武将人
音響監督:えびなやすのり
音楽:坂部 剛
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:GEEKTOYS
製作:「デート・ア・ライブIV」製作委員会
【CAST】
五河士道:島崎信長
夜刀神十香:井上麻里奈
鳶一折紙:富樫美鈴
五河琴里:竹達彩奈
四糸乃:野水伊織
時崎狂三:真田アサミ
八舞耶倶矢:内田真礼
八舞夕弦:ブリドカット セーラ 恵美
誘宵美九:茅原実里
七罪:真野あゆみ
本条二亜:生天目仁美
星宮六喰:影山 灯
<INTRODUCTION>
『空間震』という未曾有の災害を伴い、隣界より顕現する少女たち――精霊。
災厄とまで呼ばれるほど圧倒的な能力を有した彼女たちに対して、人類は対処に追われ続けていた。
精霊に対抗するに当たり、人類に可能な手段は、武力をもって精霊を殲滅する、もしくは――
『デートして、 デレさせる』!
デレて好感度MAXに達した精霊とキスをすることで、彼女たちの霊力を封印し、己の力にも転換できる――そんな異能の力を持った五河士道。精霊たちを闘争のスパイラルへと巻き込む元凶となっている強大すぎる霊力を抑え、ときに彼女たちを守るためその力を行使することで、士道は夜刀神十香を始めとした精霊たちを次々と救っていった。
人類の前に初めて精霊が出現して数十年。人類と精霊の関係性や対処法も人知れず変容していた……
士道に救われた数々の精霊たちと、まだ見ぬ精霊たち。
そして、士道を含む<ラタトスク>とは異なる手段を以て、精霊たちと対峙する者たち。つかの間の静寂を破り……士道たちの戦争<デート>が、また始まる――
関連リンク
富田美憂優 公式ツイッター
https://twitter.com/miyju_tomita
富田美憂スタッフ公式ツイッター
https://twitter.com/miyustaff
富田美憂レーベルサイト
https://columbia.jp/tomitamiyu/
アニメ『デート・ア・ライブIV』公式サイト
https://date-a-live4th-anime.com