今年デビュー10周年イヤーを迎えた鈴木このみが、約2年半ぶりのニューアルバム『ULTRA FLASH』をリリースした。ヒット曲「Bursty Greedy Spider」をはじめとした6曲のシングル表題曲に加え、草野華余子や岡嶋かな多、BRADIO、野性爆弾くっきー!といった豪華な顔ぶれの参加による多彩な新曲をたっぷり収めた本作。
まさに今の彼女のウルトラな輝きを堪能できる一枚となっている。2012年に当時15歳でデビューしてから10年、元気にデイズオブダッシュし続けてきたこのみんの進化を見逃すな!

10年分の輝きとエネルギーが詰まった『ULTRA FLASH』
――デビュー10周年の節目に届けられる今回のニューアルバム『ULTRA FLASH』、どんな作品にしようと思って制作を始めたのですか?

鈴木このみ まず、この2年半でリリースしたシングル曲を並べたときに、あまりにも密度が濃すぎて、これをアルバムにまとめるのは大変だぞ……!というところから始まりました(笑)。ただ、そのすべての曲に共通していたのが、たくましくて生命力があるということだったので、今回のアルバムはそれを軸にしようということになって。

――たしかに「Realize」「Theater of Life」「命の灯火」など、近年のシングル曲はエネルギーに満ち溢れたものが多かったです。

鈴木 それと私はこの2年くらいで、「誰も見逃せないくらい輝いてやる!」という気持ちが沸々と湧いていて(笑)。いくら(コロナ禍の状況が)緩和してきたとはいえ、まだ以前のようには会えないなかで活動するのであれば、いつもの倍は輝くしかないと思っていたので、アルバムのタイトル候補として「FLASH」という言葉が出てきたんです。そこから鈴木らしい、ちょっと面白おかしいけどかっこよくも取れる言葉ということで『ULTRA FLASH』というタイトルにしました。

――『ULTRA FLASH』はインパクトがある言葉です。

鈴木 それに使い勝手も良くて。「ウルトラなライブをやります!」とか「ウルトラなメンバーでお届けします!」とか、すごく言いやすいんです(笑)。

――ジャケットやアーティスト写真もギラギラに輝いていますよね(笑)。

鈴木 今回はとにかく面白いアルバムにしたくて。
シングル曲を並べたときに、すごく幅があるので、これに統一性を持たせるのは難しいと思ったんですね。であれば思い切り振り切ったほうがいいなって。

――ちなみに、もっと輝きたいという気持ちがどのように生まれてきたのか、もう少し具体的にお話を聞いてみたいです。

鈴木 1つは、今の私の周りにすごくギラギラしている人が多いということ。それと、これは抽象的な言葉になるんですけど、「今この瞬間を生きねば!」という気持ちが自分の中で大きくなってきたのもありますし、この2年半のシングル制作がすごく楽しかったというのもありますね。私は悩みがちな性格なんですけど、今は気持ちがスッキリしてきたというか、「どんな状況でもやることは変わらないか!」という気持ちに自然になってきたのが大きいです。

――実際、今回のアルバムからも、鈴木さんの絶好調ぶりが伝わってきましたし、心身ともにすごく健やかな雰囲気も感じました。

鈴木 たしかに私、今すごく健康的かもしれないです。本当によく歌い、よく笑い、よく遊んだ制作期間だったので。締め切りがあるのに、内緒でこっそり遊びに行ったりもしていましたし(笑)。今は何が起こっても大丈夫!っていう感じですね。

――では、そんなアルバムについて、新曲を中心にお話を聞かせてください。
まず表題曲の「ULTRA FLASH」は、最近よくご一緒されている草野華余子さんと鈴木さんの共作曲になりました。


鈴木 まず私が鼻歌のような形で作ったものを、華余子さんとスタジオに入って一緒に悩みながら整えて、それを私が持ち帰って2コーラス目を考えて、また華余子さんに整えてもらう、という作り方でした。華余子さんは私が何を出しても受け止めてくれるので、すごく心強かったです。

――本作にも収録のシングル曲「Bursty Greedy Spider」をはじめ、これまでの制作で信頼関係を築けていたわけですね。

鈴木 歌のことについても詳しく教えてくれますし、すごく褒めてくれるのでレコーディングも自信をもって進めることができて。それこそ「たくましく生きていこう!」という気持ちも華余子さんに影響されている部分が大きくて、華余子さんはこの2年半の私にとってのキーパーソンだと思います。本当にいつもギラギラしている方なので。

――たしかに、いつもエネルギッシュな印象です。

鈴木 それこそ「Bursty Greedy Spider」をアルバムの1曲目にしたのも、声帯結節の手術を経たこともあって、改めてリスタートを切った曲という気持ちがあったからで。私は歌うことには自信がありますけど、(楽曲を)作ることに関してはまだまだ頑張るべき部分がたくさんあって。でも、華余子さんと一緒だったら、きっといい曲が作れると思ったんです。

――作曲はお二人の共作ですが、作詞は華余子さんにすべてお任せしていますね。


鈴木 華余子さんはこの2年半、ずっと私のことを見てくれていた方ですし、ご本人のエナジーも上乗せしていただきたくてお願いしました。華余子さんには、先ほどお話した「今のこの瞬間を切り取りたい」という気持ちをお伝えして。今は配信ライブもありますけど、それでも私は直接届けられる場所が好きだし、いつでも会えると思っていてはいけない気がするんです。目の前にいる人に、次もまた会えるとは限らないから、その瞬間をすごく大事にしなくてはいけない。そんな話を2人でして。

――実際にあがってきた歌詞を見てどう思いましたか?

鈴木 自分の中でもすごくエモくなって……10年の重みを感じるー!って思いました(笑)。華余子さんから「今までの楽曲のキーワードをたくさん盛り込むのはどうですか?」と言っていただいたんですけど、これは私的にもサプライズ感があってすごく嬉しかったです。しかも今までに発表してきたシングルにまつわるキーワードがちょうど10個入ってるんですよ。それに気づいたときはビックリしました。

――「DAYS of DASH」「Love is MY RAIL」「This game」「Redo」「Beat your Heart」など、キャリアごとの大切な曲のタイトルがたくさん入っていて、聴いているだけで鈴木さんのこれまでの歩みがフラッシュバックするような歌詞ですよね。

鈴木 サビの“輝け ULTRA FLASH!!!”のビックリマークが3つなのも、私がいつもブログを更新するとき、タイトルは全部ビックリマーク3つで統一しているところを反映してくれていて。すごく細かな愛情がたくさん隠されています。


――しかもそんな特別な楽曲のアレンジに、ファンキーなサウンドで人気のバンド、BRADIOさんが参加されていて。これはどういった経緯で?

鈴木 今回はすごく弾けた楽曲にしたいとお願いしたときに、華余子さんから提案していただきました。私、実は昔、金沢のアニメイベントでBRADIOさんと一度だけご一緒させていただいたことがあって。楽器レコーディングのときにBRADIOさんから「昔、ご一緒しましたよね?」と言っていただけたのが、すごくびっくりで嬉しかったです(笑)。私もそのときのことを鮮明に覚えていて。客席からBRADIOさんのライブを観ていて、自然に体が揺れていたんですよ。その頃の私はまだ10代だったんですけど、「わー!大人ってかっこいい!」って思った記憶があって。だから仕上がりがすごく楽しみでした。

――で、実際に完成したものを聴いてみていかがでしたか?

鈴木 いやー、たまらなかったですね(笑)。元々のデモは爽やか青春ロックみたいな感じだったのですが、そこに大人のかっこよさみたいなものが加わっていて。「大人も最大限に遊んでいいし、それがかっこいいでしょ?」と言われている気持ちになりましたし、パーティーに混ざれた気がしました。この曲のレコーディングは本当に楽しくて、遊ぶような感覚がありましたね。


――歌も晴れやかといいますか、一点の曇りもない感じが気持ち良くて。

鈴木 ありがとうございます!これがアルバム制作の最後に歌った曲だったので、これで(アルバム制作が)終わりと思うと、すごく寂しかったんですけど(苦笑)。私もこんなにハッピーなアルバムになるとは思っていなかったです。



大阪人魂が爆発!? 野性爆弾のくっきー!作詞の笑撃ロック
――そして本作随一の衝撃作が、アグレッシブなロックチューン「ダメージ小でした」。まず野性爆弾のくっきー!さんが作詞を担当していることに驚きました。

鈴木 これは私がどうしても大阪弁で面白い曲を歌いたくて。私は大阪人なんですけど、自分が思っているよりもそのことを認知してもらえていない気がするんです。なので「意外とコテコテの大阪人やねんけど」というところを見せたくて(笑)。それとアルバムだからこその面白い曲を作りたくて、「歌詞はくっきー!さんにお願いできないですか?」とダメもとでお願いしてみたら、まさか本当に書いていただけて。本当に嬉しいです。

――そもそもなぜ、くっきー!さんにお願いしたかったのでしょうか?たしかに盆地で一位やジェニーハイといったバンドで音楽活動もされていますが。

鈴木 どうせなら普段とは違う界隈の方と一緒にやってみたい思いがあったのと、面白い化学反応が起こることを期待して、大阪弁であればお笑い芸人の方がいいのかな、というところから始まっていて。
でも、曲としてちゃんと成立しているものにしたかったので、ご自身でバンドもやられていて、YouTubeでも音楽関係のことに触れていることの多い、くっきー!さんがいいんじゃないかしら?ということでお願いしました。それにどんな歌詞を書いてくださるのか全く想像がつかなかったので。

――野性爆弾のネタも含め、予想外のことを平然とやってのける人ですものね(笑)。

鈴木 歌詞も予想以上のものが届いて、「こうきたか!」と思いました。1行目から“ミジンコくらい鬼みみちぃ”だし、やっぱり“歯”というワードが多いんだなあと思って(笑)。でも、よく読むと意味がちゃんと通っていて、歌い終わったあとに感動するんですよね。この歌詞をどうやって書いたのか、すごく気になっています。

――時折理解不能なフレーズも挿みつつ、なぜか最終的にはエモいんですよね。

鈴木 そうなんですよ。子供のまま大人になりたかったけど、大人もいいことあるし頑張ろうや!みたいな気持ちになれるというか。最終的にはすごくハッピーな方向に気持ちが持っていける曲に感じました。

――そのテーマ性は鈴木さんから提案したわけではない?

鈴木 私から提案させていただいたのは、日常には色々な細かい嫌なこと、例えば足の小指をぶつけたり、色んなダメージがあるけど、でもこまごまとした良いことも毎日あって。だから最終的にはめっちゃハッピーやん?という方向になるようにお願いしました。

――まさしくそんな感じにはなっていますね。

鈴木 たしかにそうなんですけど、使われているワードが想像していなかったものばかりで。しかも表情をどれだけ付け加えても大丈夫な曲調だったので、歌い方の模索も色々できました。2Aの“畳のほつれをモミモミしながら”のところはかわいらしく歌ったり、“背骨の 歪みは なんセンチ”は「リゼロ」っぽくシリアスで重めな感じにしたり。コーラスも「大人の歯ぁたち」というクレジットでスタッフさんに歌ってもらったんですけど、みんなアホの子になって微妙に音程を外しながら歌うっていう(笑)。いっぱい遊べました。

――ラウドロック寄りのアレンジも相まって、キバオブアキバとの楽曲「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」を彷彿させるインパクトも感じました。

鈴木 そういえば昔、作詞家の坂井竜二さんの作詞レッスンを受けていたことがあったんですけど、そのときに「君の武器はどの曲のときでも思い切り振り切れることだよ」と言ってくださったんです。青春っぽい曲では全力で青春に振り切るし、カップルがたくさんいる場所でも「ワタモテ(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い)」みたいな曲を思い切り歌えるしって(笑)。なのでこれは自分の得意分野なんだと思います。

――しかし、ここまで関西弁が入っている曲は今までなかったですよね?

鈴木 そうですね。よくファンクラブイベントで、自分の曲を関西弁で替え歌することはあったんですけど、そういえばしっかりと大阪弁の歌はなかったなと思って。“だいぶ擦ったけど”という歌詞も、普通なら“こすった”だと思うんですけど、私が“すった”と歌ったら、スタッフのみんなが「あれ?」ってなったんですよ。そのときに「そうか、“すった”は大阪弁だ」と思って。なので割とナチュラルボーンな大阪弁で歌いました(笑)。

ダンス曲から壮大なバラードまで、成熟と進化を見せた新曲群
――一方で岡嶋かな多さんプロデュースによる「HELLO」は、R&B調の大人っぽい曲です。

鈴木 私は昔からダンスも好きなので、ライブツアーでもダンサーさんを引き連れてよく踊っているんですけど、基本は歌100パーセントで制作した楽曲にダンスを加えている形なので、ライブで披露するときに歌とダンスを合わせて100パーセントになる曲を作ってみたくて。そういうお話をしたときに、スタッフさんから岡嶋かな多さんの名前を挙げてくださって、「えっ!逆にいいんですか?」ってなりました(笑)。

――歌詞では自信満々な女性像が描かれていて、今の鈴木さんの年齢だからこそ歌える大人な世界観を感じました。

鈴木 たしかにこれまでのダンス曲は背伸びして歌っていた記憶があるんですけど、この曲は割と等身大に感じていますね。ディレクションも岡嶋さんにしていただいて、エンジニアさんも含め完全に岡嶋さんのチームと初めてご一緒させていただいたんですけど、「自信たっぷりに歌いましょう!」と言っていただきました。

――その自信たっぷりな感じが、『ULTRA FLASH』の“輝きたい”というテーマにリンクしているなと思って。

鈴木 そうですね。実は元々この曲を「FLASH」というタイトルにしようかと思っていたくらい、自分の中ではかなりアルバムのテーマにシンクロする、メッセージ的には裏表題曲的な意味合いがある曲です。

――歌声にも艶やかさが感じられる瞬間があったり、ブレスを使った表現も多く、あらゆる面で成長を感じました。

鈴木 ありがとうございます!普段とは違うブレッシ―な歌い方をしていたり、吐息がポイントになっていて。あと、この曲はライブでさらにすごいことになると思います。元々「こういうダンスがしたいです!」というイメージが先にあって作っていただいた楽曲なので、ダンサーさんとも「次はこんなことがしたいんだけど、どう思う?」みたいにキャッキャッと打ち合わせという名のお茶会をして(笑)。すごくライブ映えすると思います。

――続く「PROUD STARS」は、シングル曲「Missing Promise」でご一緒されたhotaruさん(作詞)と半田 翼さん(作曲・編曲)による壮大なバラード。アニメ『真・一騎当千』の主題歌となっています。

鈴木 制作の前に作品のシナリオを読ませていただいたんですけど、登場する戦士たちの気持ちに自分と重ねられるところがすごくあって。それこそ現代人も今はみんな頑張っているし、戦士だよなあって思うんですよ、自分に限らず。私は作品の中で戦士たちが「何のために戦うのか?」と問われるシーンが印象に残ったんです。強くなれるのが楽しい戦闘狂のような人もいれば、主を守る忠誠心のために頑張る人や、まだ理由は見つけられていないけどやるしかない人もいて。本当に様々なんだけど、みんな己の誇りのために戦っているところは共通していたんですね。私も自分で自分を誇れるために、自分を応援してくれるみんなが誇ってくれたらという想いで、そういうプライドのために戦っているところが大きいので、その気持ちをhotaruさんに赤裸々に託して歌詞を書いていただきました。

――そういった戦いの日々の中で育んだ自身の価値観や尊厳、人としての成熟のようなものも感じられます。

鈴木 「Missing Promise」はすごく少女性があって、まだ何もわからず感情がおもむくまま動いているからこその狂気性みたいなものを秘めているイメージがあって。「PROUD STARS」はすべてをわかったうえで「私は戦う!」と言っている人のイメージがあるので、精神年齢は少し上がって聴こえるんじゃないかと思います。1人だけで凛と立っているイメージというか。

――歌も聴いていると背筋が伸びるような凛々しさがあって。かつ、個人を超えた人の想いと言いますか、意志が引き継がれていくような、大きな流れも感じられました。

鈴木 テーマ自体もすごく大きいので、歌も波の満ち引きじゃないですけど、割と大きく取って歌いましたし、すごく丁寧に録っていきました。いまだにどの拍で入ればいいのかよくわからないですけど(笑)。難しいですけど、すごくいい曲を書いていただきました。

10周年を迎えた今の想い「特別な日に思うのは、意外と普通のこと」
――そして6月10日公開の劇場版『異世界かるてっと~あなざーわーるど~』の主題歌「メロディックロードムービー」は、伊東歌詞太郎さんとのコラボによるデュエット曲。

鈴木 この曲も作品の世界観に寄り添って制作していきました。今回の『異世界かるてっと』は、みんな同じゴールに向かっているけど、その向かう理由はそれぞれ違う人たち、というイメージがあって。で、私と歌詞太郎さんもお互い歌を大事にしている意味では、多分ゴールは同じ同士なんですけど、お互いやり方も進め方も違う。そこが作品ともリンクするねと話しながら進んでいきました。

――それぞれの価値観を持った人たちが、交差したりすれ違いながらも、自分の道を信じて進んでいくような勇ましさがあって。しかも鈴木さんと伊東さんが掛け合うことで、歌詞の内容と相まってすごくエモーショナルに響くという。

鈴木 そうですよね!この曲、私が先攻だったので、私が完成版を聴いたのはトラックダウンのタイミングだったんですけど、上手い具合に重なり合って高め合っている感じになっていて感動しました。それとやっぱり、色んな人と歌うのは楽しいなと思いました。今回は自分が先攻だったので伸び伸びやらせてもらえたんですけど、歌詞太郎さんは歌の立ち上がりが速かったり、私とは同じ音の到達点にいくまでのタイム感が少し違うことに気付いて。いい経験をさせていただきました。

――音源だと鈴木さんと伊東さんがお互いを高め合う関係性が浮かびますが、きっとライブだと鈴木さんとファンの関係性にも捉えられそうだなと思って。みんながライブの現場で1つになって、またお互いそれぞれの生活に戻っていくっていう。

鈴木 たしかに!お互いに良いパワーを与えあいながら、お互いの道をひたすら信じて進んでいくっていう。私の中でこの曲は総集編みたいなイメージがあって。お互い今までの足跡がある人たちが、それぞれ同じゴールに向かったり、ときどき離れていったり、また近づいていったり。なのでこの曲はアルバムの後半に置きました。

――そのあと、アルバムの最後を飾る楽曲が、鈴木さんが自分で作詞した「Ordinary Wish」です。これがまた泣ける曲になっていて。

鈴木 ありがとうございます!私、自分で作った曲は、自信満々で「ドヤ!」とは言えなくて……(苦笑)。なので、そう言ってもらえるとすごく自信になります。でも、この曲を書くのは照れ臭かったですね。

――たしかに、だいぶ本心を吐露しているように感じました。ファンの方や周りの人々に対する気持ちがしっかりと乗っていて。

鈴木 そうですね。元々は、最近冷ためのバラードが多かったので、アルバムでは温かみのあるバラードを入れたいという話から始まって。これはすごく苦い思い出なんですけど、実はこの2年半の中で、自分で歌詞を書きたかったけど納得のいくものができなかった曲があって、そのことがめちゃくちゃ悔しかったんです。なので今回は絶対に書き切ろう!と思って、内心燃えていました(笑)。

――それで生まれたのが「Ordinary Wish」、いわばみんなとの普通の日々こそが特別という想いを形にした曲だったと。

鈴木 この10年のことを振り返ると、もちろん色々な経験をしてきたんですけど、結局一番記憶に残っているのは、あのときあの人がこういう顔をしていて嬉しかったなあ、ということなんですね。今でもすごく思い出すのが、シングルコレクションのライブ( 2020年10月9日に東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催された“鈴木このみ Live 2020 ~Single Collection~”)で、手術でしばらく休養することを発表したときのみんなの不安そうな顔で。あの光景は本当に一生忘れないと思います。「私のひと言でこんなに泣いてくれるんだ」というのが、自分の中ではすごく衝撃的で。だって、私はその人にとって、毎日会える人でもないし、私に最大限できるのは歌で返すことでしかなくて。けど、こんなにみんなは自分のことを心配してくれるんだって、そのときにすごく感じたんです。そのことをふと思い出して書いたのが、2Aの歌詞で。

――“ねぇ たった一言で その瞳が揺れて いつも驚かされているんだ”の部分ですね。

鈴木 だから誰かが何かをしてくれて嬉しかったことのほうが、自分の中ですごく記憶に残っている10年だなと思っていて。紆余曲折はありましたけど、でもその度に、色んな人から色んなものをもらってきましたし、多分これから出会う人もそうだと思っていて。特別な日に思うのは、意外と普通のことだなって。だから正直、今もまだ10周年の実感が湧いていないんです。ありがとうという気持ちとか、これからも続いたらいいなあとか、本当にそういう普通のことだけなんだなって感じたので、普遍的なメッセージになりました。

――そういった心からの想いをシンプルな言葉で伝えているところがすごくいいなあと思って。この曲の歌詞に“格好つけない 言葉にしよう”とありますけど、きっと鈴木さんは「自分をこう見せたい!」というよりも、相手に素直な想いを伝えたい気持ちが先にくるんだと思うんですよ。だからこそ、誰かがいることが、鈴木さんにとっては大切なことなんだろうなと。

鈴木 本当にそうかもしれないですね。それこそデビュー前は母がすごく応援してくれて、当初は母がずっと衣装を作ってくれていましたし……今はそれが高じて服屋さんをやっているんですけど(笑)。歌のレッスンに通っていた時期にトラブルがあったときも、助けてくれた先生たちがいて。15歳でデビューしたにも関わらず普通に伸び伸び暮らしていけたのは、友だちに恵まれていたんだろうなとも思いますし、デビューしてから出会った人たちもいい人ばかりで。だからずっと人と一緒に歩んできた感覚はあります。

――なおかつそれは、アルバム全体のテーマである“輝いている自分を見ていてほしい”という想いにも繋がりますよね。その輝きは誰かが見ることで初めて意味が生まれるものなので。

鈴木 ああー、そうかもしれない。ちゃんと書けて良かったー。総じていいアルバムが出来た気がします(笑)。

――個人的には、そういった素直で温かな想いを書きつつ、最後は“何度でも 伝えるから 見つめ返して”と歌っているところが、すごくグッときたポイントですね。

鈴木 本当ですか!? そこは(編曲を担当したyuxuki)wagaさんにも同じことを言っていただきました(笑)。ここは何の計算もなく、自然と書いたんですけど。やっぱり私は、歌に関しては自信があると思うんですけど、自分に対しては正直、自信がないほうだと思うので。でも輝きたいっていう。矛盾はいっぱいあるんですけど、すごく等身大なアルバムになったと思います。

――そういう部分もひっくるめて、今の鈴木さんの輝きが詰め込まれた作品になったのではないかと思います。ご自身としてはどんなアルバムになったと感じますか?

鈴木 ひと言で表すならどでかい、タイトルに恥じないウルトラなアルバムになりました!自分や自分を作ってくれているスタッフさん、お世話になっている作家さん、応援してくれているみんな、色んな人のパワーが感じられる作品になったので、ぜひこのアルバムを聴いて、「明日、頑張れるかも!」と思ってもらえたら幸せです。

――そして6月には全国ツアー“鈴木このみ 10th Anniversary LIVE TOUR ~ULTRA HYPER FLASH~”も決定しています。

鈴木 ツアータイトルに“ハイパー”まで付けてしまったので、さらに気合いを入れて頑張りたいです(笑)。ダンスはもちろん、楽曲にも色んな仕掛けがバンバン入ってくると思いますし、レコーディングしながらライブステージのことも考えていたので、いい流れでライブができるんじゃないかと思います!

INTERVIEW & TEXT BY 北野創(リスアニ!)

●リリース情報
『ULTRA FLASH』
5月25日発売

【初回限定盤(BD+CD)】

価格:¥6,600(税込)
品番:ZMCZ-15571
仕様:アーティストフォトジャケット
※歌詞ブックレット(24P)
※特製スリーブ
※撮りおろしULTRAフォトブック(36P)

【通常盤(CD)】

価格:¥3,300(税込)
品番:ZMCZ-15572
仕様:アーティストフォトジャケット
※歌詞ブックレット(24P)

<CD>
1「Bursty Greedy Spider」(TVアニメ「蜘蛛ですが、なにか?」後期OPテーマ)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子、岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)

2「ULTRA FLASH」
作詞:草野華余子 作曲:鈴木このみ、草野華余子 編曲:草野華余子、BRADIO、EFFY

3「ダメージ小でした」
作詞:野性爆弾くっきー!  作編曲:篠崎あやと・橘亮祐

4「Missing Promise」(TVアニメ「ひぐらしのなく頃に卒」EDテーマ)
作詞:hotaru  作編曲:半田翼

5「Glorious Day」(ゲーム「プラオレ!~SMLE PRINCESS~」主題歌)
作詞:鈴木このみ 作曲:鈴木このみ、今井了介 編曲:前田佑

6「HELLO」
作詞:Kanata Okajima 作曲:Kanata Okajima、Teje 編曲:Teje

7「PROUD STARS」(アニメ「真・一騎当千」主題歌)
作詞:hotaru 作編曲:半田翼

8「舞い降りてきた雪」(TVアニメ「恋とプロデューサー ~EVOL×LOVE~ 」EDテーマ)
歌:恋とプロデューサーfeaturing Konomi Suzuki
作詞・作曲:中島卓偉 編曲:荒幡亮平

9「Theater of Life」(TVアニメ「デカダンス」OPテーマ)
作詞・作編曲:ANCHOR

10「命の灯火」(TVアニメ「ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド」OPテーマ)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子、eba、岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)

11「Realize」(TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」2nd season 前期OPテーマ)
作詞・作編曲:篠崎あやと、橘亮祐

12「メロディックロードムービー」(劇場版「異世界かるてっと~あなざーわーるど~」主題歌)
歌:鈴木このみfeaturing 伊東歌詞太郎
作詞・作編曲:ヒゲドライバー

13「Ordinary Wish」
作詞:鈴木このみ 作曲:伊藤聴太 編曲:yuxuki waga

<Blu-ray>
「Konomi Suzuki Live Selection 2021」ストリングスを含めた特別編成によるビルボードライブ「Premium Acoustic Live」全編と2021年春ツアー「Bursty Monster」東京公演の一部を収録

●ライブ情報
10th Anniversary LIVE TOUR ~ULTRA HYPER FLASH~
2022年6月1日(水)
会場:大阪・Zepp Osaka Bayside
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:キョードーインフォメーション0570-200-888
2022年6月2日(木)
会場:愛知・Zepp Nagoya
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:ズームエンタープライズ052-290-0909
2022年6月6日(月)
会場:東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
時間:OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:ディスクガレージ050-5533-0888

チケット料金
HYPERチケット前売¥10,000(税込)※限定グッズ付き(10th Anniversaryトートバッグ&缶バッジ)
通常チケット前売¥6,500(税込)
全席指定お一人様1公演につき計4枚まで
※別途ドリンク代が必要
※3歳以上チケット必要
※HYPERチケットの限定グッズは現地会場でのお渡しになります。会場にお越しになれない方にはお渡しできないことをご了承ください。
※1公演につきHYPERチケットと通常チケットを合計4枚お申込みされた場合でも、片方の券種のみが落選することはございません。

関連リンク
鈴木このみオフィシャルサイト
https://www.konomi-suzuki.net/

ライブツアー特設ページ
https://www.konomi-suzuki.net/pages/ULTRA_HYPER_FLASH
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