千葉、福岡、仙台、札幌、金沢、名古屋、新潟、高崎、高松、広島、神戸、浜松。4月23日にスタートして6月12日にゴールしたMay’nのコンサートツアー“May’n Concert Tour 2022「Laugh&Peace」”、その追加公演が7月30日に大阪で、そして8月6日には2023年7月2日で閉館が決まっている中野サンプラザで行われた。
絶やさぬ笑顔、その先に未来が待っていると信じて
暗転した会場に流れるSE。まだ無人のステージ。フロアには、May’nほかツアーメンバーが思い思いに叫んだり唱えたりする「Laugh&Peace」の言葉がBGMとして宙にこだまする。やがてバンドメンバー、ダンサーがステージにそろい、ロックなインストを響かせるとスピーカーから流れる言葉もツアーで巡った各地の都市名に変化する。前述したように、今回の“Laugh&Peace”はMay’nにとって3年ぶりとなる全国ツアーであるが、2020年にもアコースティックツアー“May’n Acoustic Tour 2020 「Hang jam vol.4」”がツアー途中でコロナ禍によって中止の憂き目にも遭っており、自分が出向くこともファンが上京することも叶わず、地方のファンに会う機会を奪われた3年だった。また、ツアー中に感染拡大の第7波が到来してしまったことで、一層、ファンと共に一公演一公演の重みをかみしめるツアーだったことは想像に難くない。
“Laugh&Peace”のツアータイトルに関しても、新曲「あはっててっぺんっ」と共通する、笑顔で幸せを掴み取る、という思いが表れているが、ライブができる喜び、各地を回れる喜びに満ちたオープニングだった。最後に「Laugh&Peace!東京!」と宣誓の声が鳴り響くとついに1曲目に突入、ハードロックな「ViViD」ながらMay’nは笑顔で拳を突き上げ、会場を引っ張っていく。続く楽曲も、May’nが作詞曲した笑顔ソング「Smile:D」。May’nの両側を固めるのは、“May’nダンサーズ”こと、元気なオトコノコ的なオーバーアクションで弾けるTORA、静と動をアクティブに表現していくワイルドなMITSU。そんな2人と並んでMay’nも軽快なステップで曲を届ければ、会場も3人と一緒になって4つ打ちに合わせて体を弾ませ、最後には全員が両手のVサインと笑顔でのLaugh&Peaceポーズをキメた。
3曲を歌い終えるとMay’nは「汗が止まらん」の言葉から一休みのMCタイム。全国ツアーへの感謝や、生中継配信の視聴者への挨拶、そしてダンサーやバンドメンバー[だっち(b)、はやちゃん(ds)、しんちゃん(g)]を紹介し終えてから「楽しく夏を過ごしていきたいと思います」の掛け声を前振りに「ギラギラサマー(^ω^)ノ」へ。今回の追加公演に合わせ、最高の夏ソングを久々に用意してくれていた。多用されるファルセットが夏の爽やかさを思わせる。間奏では「夏らしく!」、フロアとともにウェーブを実行。最後には、両手を上で大きくワイパーしながらジャンプ、拳を斜め右上・右下へと突き出す振付のあと、May’nは満面の笑みで敬礼ポーズ。ファンも一緒にパラダイス感溢れるフィニッシュを決め、夏の思い出が生まれた瞬間だった。続けては「ヤマイダレdarlin’」。すまし顔から笑顔まで表現力豊かな百面相を皆に味わわせると、ライブでのお披露目は今回のツアーが初という曲の1つ「B.H.U.」に。手羽先や英傑行列といった名古屋に関連するワードを盛り込み、全編名古屋弁で歌われるほか、“BUCHO Hands Up!!”(May’nのライブは“ライ部”と称され、自身を部長と位置付けている)というダジャレを盛り込むなどコミカルさを前面に出しているが、楽曲はクールで瀟洒なデジタルヒップホップ。ラストは、名古屋駅前にある6m10cmの巨大マネキン「ナナちゃん人形」のポーズ!静寂のなか、会場の全員が体の横で両手のひらを地面に向けて仁王立ち、という異様な光景にMay’nも思わず「ふわーっ♪」と変な声を出してしまう。
MCでは春からのツアーについての振り返り、公演を重ねるたびに「自然と振りを覚えて」いくファンに対して、「音楽を楽しんでくれてる」ことを実感できたと話すMay’n。今夏、復活した“青森ねぶた祭”への参戦が叶わずに悔しい思いをしたことなど、ファンに近況を報告したあとで楽曲パフォーマンスに戻る。歌うのは「Real Lies」。向井太一と作り上げたこの曲は、コロナ禍の3年間で誕生した楽曲群の中でも象徴となる1曲。R&B風楽曲の中、ストーリーを感じさせるダンサーとのフォーメーションで聴覚・視覚を堪能させると、続いての「オレンジ」でもゆったりとした時間が構築され、アーミングとともに奏でられるギターソロが心に響かせる。そして、「ダイアモンド クレバス」へ。誰もが愛してやまないサビでは彼女の歌声、表情、仕草で観客を惹きつけていく。ここまで笑顔で歌ってきたMay’nが、等身大で大人な一面を伝える瞬間――。その流れを受けて「Follow Your Fantasy」に入っていく。
コロナとの苦闘の日々を思わせる、こぼれる本心
ここからは、「想いのままに、本能のままに、魂を込めるのがモットー」のMay’nのロックな一面をぶつけるパート。コロナ禍前からライブを支えてきた「Belief」ではスピーカーに足を載せ、キックボクシングで鍛えた足を高く蹴り上げると、素のMay’n、飾らない気持ちを打ち出してきた「graphite/diamond」を繋げたあとで、「インフィニティ」「キミニシニタモウコトナカレ」へ。先の『マクロスF』ソングでもそうであったが、偉大なキャラクターの力を得て羽ばたいたシンガーが、与えられた楽曲を自らの血肉にしていることを実感させられるが、それはMay’nという歌手がアーティストへと昇華し、躍進していく道と重なっていることにも気づく。特にここ数年の、May’n自身をさらけ出すというテーマは、彼女のステージング、パフォーマンスをより一層魅力的にしている。今聴く、シェリル・ノームソングはより力強く、よりシェリル・ノームを感じる。
そんな彼女が、生のままの感情でぶつけてきた「蒼の鼓動」。目の前のファンたちが青いサイリウムを掲げ、声を出さずに“Go to Victory”と心の中で歌う様子を、その唇を目で確かめるように会場全域に視線を飛ばしながら熱く歌い上げた。
5曲連続でライマルことR.マルティネス(中日ドラゴンズ)並みの豪速球を投げ込んできたが、間を置かずにギターの指弾きを背に語るMCに入ったMay’nの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。最近「涙もろくなり、決して泣きながら歌う曲ではない『蒼の鼓動』でも泣きそうな気持ちを抑えていた」と告白する。
今回のツアーを締めるのは、明るく楽しく“Laugh&Peace”の精神にふさわしい「May’n☆Space」。菅野よう子がMay’nに贈った記念曲であり、May’nというシンガーが新たなスタートを切った曲でもある。ライブの曲として定番となった1曲を、いついつまでもMay’nスペースに集まりましょうの気持ちでファンに贈った。両手を掲げて左右に振る振付では客席に向かって「もっと見せて」と要求し、ダンサーMITSUはハンディカメラを持つなど、キラキラとした空間を作り上げたあと、メンバーたちはステージを去っていった。
そんなステージに対する満足と感謝の拍手が会場に満ちると、Tシャツ姿に着替えたMay’nが応えて登場、アンコールが始まる。今回のツアー後も、ミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」の再演、スマートフォン向けアプリ「クァンタムマキ」の主題歌歌唱などのお知らせで、May’nの勢いが止まらないことをファンたちと再確認すると、満を持して「あはっててっぺんっ」を披露する。最新曲の披露に欲が出てしまったMay’nは観客に次々とMay’nシアターへの参加を募る。
万全の準備のもと、「一緒に私たちの漫才ショーに参加していただけますか!」の声から始まった「あはっててっぺんっ」。その言葉に偽りなし、この1曲だけでエンタテインメントショーを感じさせるボリュームたっぷりの楽曲だった。例えば、曲が始まる前のレクチャーで最後に、「さらに欲が出てしまい」とMay’nは、ラスサビ前に2人のダンサーとトリオ漫才の様子を演じてみせるので、両手で×印を作ってしてほしい、と要求していた。このくだりのあとには陽気な楽曲が見せるセンチメンタルな部分が待っていて、歌詞では“笑いあえばどうにかなる”“滑って転んで叫んでそれがどうした運命”という挫折から立ち直る。観客のダメ出しからMay’nたち3人ががっくりと来るも立ち上がって巻き返すという劇を作り出し、会場全体が仲間という一体感を演出していた。
そして正真正銘のラストソングへ。それは、「各地で大事に、一歩一歩歩いて、繋げてきた」と語る「Walk with moments」。別れを惜しむようにステージの両端まで歩いていき、ダンサーとともに手を振りながら観客たちと笑顔を交わすMay’n。
3ヵ月以上にも及ぶツアーは大団円を迎えたが、May’nのYouTubeチャンネルには、『Laugh&Peace』の打ち上げ会場や、「あはっててっぺんっ」の振付講座となるダンスリハーサル参加会場も残っている。何よりも、9月7日にはこの夜の生放送がMUSIC ON!TVにて再放送される。アーティストMay’nの成長と進化を確認できる、貴重な機会だ。画面越しでも感じる愛情に満ちた「熱」い「圧」を感じ取ったならば、もう次なるライ部に惹きつけられて止まないはずだ。
TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
PHOTOGRAPHY BY AZUSA TAKADA
<セットリスト>
01. ViViD
02. Smile:D
03. DOLCE
04. 今日に恋色
05. ヤマイダレdarlin’
06. B.H.U.
07. シキザクラ
08. オレンジ
09. ダイアモンド クレバス
10. Follow Your Fantasy
11. graphite/diamond
12. インフィニティ
13. Belief
14. キミシニタモウコトナカレ
15. 蒼の鼓動
16. 未来ノート
17. May’n☆Space
――アンコール――
EN01. あはっててっぺんっ
EN02. Walk with moments
●放送情報
M-ON! LIVE May’n 「May’n Concert Tour 2022『Laugh&Peace』」
9月7日(水)22:00~24:00
番組詳細はこちら
●リリース情報
「あはっててっぺんっ」
8月17日発売
【CD+BD】
品番:XNDD-00008/B
価格:¥2,640(税込)
【CD】
品番:XNDD-00009
価格:¥1,540(税込)
<CD>
M1:あはっててっぺんっ(TVアニメ「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」ED主題歌)
作詞:May’n・大石昌良 作曲・編曲:大石昌良・やしきん
M2:蒼の鼓動(テレビ愛知「10チャンベースボール」テーマソング)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子/eba
M3:Follow Your Fantasy(Cygamesコーポレートアニメーションムービー)
作詞:古屋真・LynneHobday 作曲・編曲:加藤裕介 Licensed by Cygames, Inc.
M4:あはっててっぺんっ instrumental
M5:蒼の鼓動 instrumental
M6:Follow Your Fantasy instrumental
<BD>
1.あはっててっぺんっMV
2.AwesomeStudio-short- (MVオフショット映像)
「あはっててっぺんっ」オンラインリリースイベントに大石昌良の出演が決定!
日時:2022年8月20日(土)20時
※アーカイブ視聴期間:2022年8月27日(土)23:59まで
出演者:May’n
ゲスト:大石昌良、やしきん
参加方法:「あはっててっぺんっ」(CD/CD+Blu-ray)の初回限定封入特典として封入されている、オンラインイベント参加シリアルコードを入力の上ご参加ください。応募者全員が参加可能です。
関連リンク
May’n オフィシャルサイト
http://mayn.jp/
May’n レーベルサイト
https://www.digitaldouble.co.jp/artists/mayn
May’n Twitter
https://twitter.com/mayn_tw
May’n STAFF Twitter
https://twitter.com/MaynStaff
May’n 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/MaynOfficial
ツアー中、何度もMay’nが語っていたように、今回のツアーは2019年に行ったアジアツアー“May’n ASIA TOUR 2019 「KICK IT UP!!」”以来3年ぶりに日本各地を巡るツアーで、それだけに正真正銘のファイナルとなった東京公演は、May’nの胸に万感の思い迫るのが見て取れる一夜となった。
絶やさぬ笑顔、その先に未来が待っていると信じて
暗転した会場に流れるSE。まだ無人のステージ。フロアには、May’nほかツアーメンバーが思い思いに叫んだり唱えたりする「Laugh&Peace」の言葉がBGMとして宙にこだまする。やがてバンドメンバー、ダンサーがステージにそろい、ロックなインストを響かせるとスピーカーから流れる言葉もツアーで巡った各地の都市名に変化する。前述したように、今回の“Laugh&Peace”はMay’nにとって3年ぶりとなる全国ツアーであるが、2020年にもアコースティックツアー“May’n Acoustic Tour 2020 「Hang jam vol.4」”がツアー途中でコロナ禍によって中止の憂き目にも遭っており、自分が出向くこともファンが上京することも叶わず、地方のファンに会う機会を奪われた3年だった。また、ツアー中に感染拡大の第7波が到来してしまったことで、一層、ファンと共に一公演一公演の重みをかみしめるツアーだったことは想像に難くない。
“Laugh&Peace”のツアータイトルに関しても、新曲「あはっててっぺんっ」と共通する、笑顔で幸せを掴み取る、という思いが表れているが、ライブができる喜び、各地を回れる喜びに満ちたオープニングだった。最後に「Laugh&Peace!東京!」と宣誓の声が鳴り響くとついに1曲目に突入、ハードロックな「ViViD」ながらMay’nは笑顔で拳を突き上げ、会場を引っ張っていく。続く楽曲も、May’nが作詞曲した笑顔ソング「Smile:D」。May’nの両側を固めるのは、“May’nダンサーズ”こと、元気なオトコノコ的なオーバーアクションで弾けるTORA、静と動をアクティブに表現していくワイルドなMITSU。そんな2人と並んでMay’nも軽快なステップで曲を届ければ、会場も3人と一緒になって4つ打ちに合わせて体を弾ませ、最後には全員が両手のVサインと笑顔でのLaugh&Peaceポーズをキメた。
そして骨太なイントロから激しくも楽しくタオルを振り回す、デジタルロックな面とパーティチューンの二面性を持つ「DOLCE」へ。
3曲を歌い終えるとMay’nは「汗が止まらん」の言葉から一休みのMCタイム。全国ツアーへの感謝や、生中継配信の視聴者への挨拶、そしてダンサーやバンドメンバー[だっち(b)、はやちゃん(ds)、しんちゃん(g)]を紹介し終えてから「楽しく夏を過ごしていきたいと思います」の掛け声を前振りに「ギラギラサマー(^ω^)ノ」へ。今回の追加公演に合わせ、最高の夏ソングを久々に用意してくれていた。多用されるファルセットが夏の爽やかさを思わせる。間奏では「夏らしく!」、フロアとともにウェーブを実行。最後には、両手を上で大きくワイパーしながらジャンプ、拳を斜め右上・右下へと突き出す振付のあと、May’nは満面の笑みで敬礼ポーズ。ファンも一緒にパラダイス感溢れるフィニッシュを決め、夏の思い出が生まれた瞬間だった。続けては「ヤマイダレdarlin’」。すまし顔から笑顔まで表現力豊かな百面相を皆に味わわせると、ライブでのお披露目は今回のツアーが初という曲の1つ「B.H.U.」に。手羽先や英傑行列といった名古屋に関連するワードを盛り込み、全編名古屋弁で歌われるほか、“BUCHO Hands Up!!”(May’nのライブは“ライ部”と称され、自身を部長と位置付けている)というダジャレを盛り込むなどコミカルさを前面に出しているが、楽曲はクールで瀟洒なデジタルヒップホップ。ラストは、名古屋駅前にある6m10cmの巨大マネキン「ナナちゃん人形」のポーズ!静寂のなか、会場の全員が体の横で両手のひらを地面に向けて仁王立ち、という異様な光景にMay’nも思わず「ふわーっ♪」と変な声を出してしまう。
そのあとのMCでMay’nは、ナナちゃん人形への愛を熱弁。名古屋におけるハチ公的スポットであり、生まれたときには駅前のシンボルとしてそびえたつナナちゃん人形が、上京してみたら知名度皆無という事実に直面したことから、今回のツアーではナナちゃん侵略化計画を進めてきたことを説明する。不思議な声は期待以上の成果に対する感嘆だったようだ。
MCでは春からのツアーについての振り返り、公演を重ねるたびに「自然と振りを覚えて」いくファンに対して、「音楽を楽しんでくれてる」ことを実感できたと話すMay’n。今夏、復活した“青森ねぶた祭”への参戦が叶わずに悔しい思いをしたことなど、ファンに近況を報告したあとで楽曲パフォーマンスに戻る。歌うのは「Real Lies」。向井太一と作り上げたこの曲は、コロナ禍の3年間で誕生した楽曲群の中でも象徴となる1曲。R&B風楽曲の中、ストーリーを感じさせるダンサーとのフォーメーションで聴覚・視覚を堪能させると、続いての「オレンジ」でもゆったりとした時間が構築され、アーミングとともに奏でられるギターソロが心に響かせる。そして、「ダイアモンド クレバス」へ。誰もが愛してやまないサビでは彼女の歌声、表情、仕草で観客を惹きつけていく。ここまで笑顔で歌ってきたMay’nが、等身大で大人な一面を伝える瞬間――。その流れを受けて「Follow Your Fantasy」に入っていく。
まだ出会ったばかりの新曲は、May’nにとっても歌うたびに新鮮な驚きをもたらしてくれるという。ツアー中にファンの前で歌うことで常に感じてきた、今日は「こんな歌い方になったわ」という感覚を最も得られた1曲だったようだ。ある公演では「魂が出て皆に持って帰ってもらう」気持ちにもなったと、ジャケットを脱いで登場した次のMCでも語っていたが、この日も歌いながら気持ちが盛り上がって「腕が勝手に持ち上がる」瞬間があったと話してくれた。
コロナとの苦闘の日々を思わせる、こぼれる本心
ここからは、「想いのままに、本能のままに、魂を込めるのがモットー」のMay’nのロックな一面をぶつけるパート。コロナ禍前からライブを支えてきた「Belief」ではスピーカーに足を載せ、キックボクシングで鍛えた足を高く蹴り上げると、素のMay’n、飾らない気持ちを打ち出してきた「graphite/diamond」を繋げたあとで、「インフィニティ」「キミニシニタモウコトナカレ」へ。先の『マクロスF』ソングでもそうであったが、偉大なキャラクターの力を得て羽ばたいたシンガーが、与えられた楽曲を自らの血肉にしていることを実感させられるが、それはMay’nという歌手がアーティストへと昇華し、躍進していく道と重なっていることにも気づく。特にここ数年の、May’n自身をさらけ出すというテーマは、彼女のステージング、パフォーマンスをより一層魅力的にしている。今聴く、シェリル・ノームソングはより力強く、よりシェリル・ノームを感じる。
そんな彼女が、生のままの感情でぶつけてきた「蒼の鼓動」。目の前のファンたちが青いサイリウムを掲げ、声を出さずに“Go to Victory”と心の中で歌う様子を、その唇を目で確かめるように会場全域に視線を飛ばしながら熱く歌い上げた。
5曲連続でライマルことR.マルティネス(中日ドラゴンズ)並みの豪速球を投げ込んできたが、間を置かずにギターの指弾きを背に語るMCに入ったMay’nの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。最近「涙もろくなり、決して泣きながら歌う曲ではない『蒼の鼓動』でも泣きそうな気持ちを抑えていた」と告白する。
「蒼の鼓動」を歌う前には「頑張り続けている1人1人のために歌わせてください」と叫んでもいたが、涙の背景には、「一緒に頑張ろう」「うちら頑張ってるよね」「誰かに頑張ってるよと言ってもらいたい」というMay’nの心情があった。感情を爆発させるように語り掛ける姿に、明るく元気に我々をいつも引っ張ってくれたMay’n部長の胸の奥底に苦闘があったことを会場の誰もが感じたことだろう。だが、その涙と汗にまみれた姿を見せることで、新たなwithコロナ時代を突っ走ろうという部長ならではの強い背中でもあった。そんなMay’nから「この曲だけは私の声を皆の1人1人に伝えたい」「1人1人のあなたに届きますように」の想いで紡がれた「未来ノート」。広く広く喉を開き、体中で共鳴させた歌声は、これまでの公演地にまで飛び出していきそうだった。
今回のツアーを締めるのは、明るく楽しく“Laugh&Peace”の精神にふさわしい「May’n☆Space」。菅野よう子がMay’nに贈った記念曲であり、May’nというシンガーが新たなスタートを切った曲でもある。ライブの曲として定番となった1曲を、いついつまでもMay’nスペースに集まりましょうの気持ちでファンに贈った。両手を掲げて左右に振る振付では客席に向かって「もっと見せて」と要求し、ダンサーMITSUはハンディカメラを持つなど、キラキラとした空間を作り上げたあと、メンバーたちはステージを去っていった。
そんなステージに対する満足と感謝の拍手が会場に満ちると、Tシャツ姿に着替えたMay’nが応えて登場、アンコールが始まる。今回のツアー後も、ミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」の再演、スマートフォン向けアプリ「クァンタムマキ」の主題歌歌唱などのお知らせで、May’nの勢いが止まらないことをファンたちと再確認すると、満を持して「あはっててっぺんっ」を披露する。最新曲の披露に欲が出てしまったMay’nは観客に次々とMay’nシアターへの参加を募る。
まずは曲頭、前述のナナちゃん人形ポーズから始めることをお願いし、繰り返し登場する“てっぺんっ”の箇所では両手を頭の上に「にょきっ!」と突き上げるようにリクエスト。さらに、両手を使って「W」をサビで作るように指導。そして間奏の“ぺんぺんぺぺぺん”では、両手を斜め上45°に上げるという振付を、手を下げてしまうと隣の人にぶつかるので「筋力でマナーを守ってください」とレクチャー。大阪の追加公演でもなかった振付講座が次々と続いていった。
万全の準備のもと、「一緒に私たちの漫才ショーに参加していただけますか!」の声から始まった「あはっててっぺんっ」。その言葉に偽りなし、この1曲だけでエンタテインメントショーを感じさせるボリュームたっぷりの楽曲だった。例えば、曲が始まる前のレクチャーで最後に、「さらに欲が出てしまい」とMay’nは、ラスサビ前に2人のダンサーとトリオ漫才の様子を演じてみせるので、両手で×印を作ってしてほしい、と要求していた。このくだりのあとには陽気な楽曲が見せるセンチメンタルな部分が待っていて、歌詞では“笑いあえばどうにかなる”“滑って転んで叫んでそれがどうした運命”という挫折から立ち直る。観客のダメ出しからMay’nたち3人ががっくりと来るも立ち上がって巻き返すという劇を作り出し、会場全体が仲間という一体感を演出していた。
そして正真正銘のラストソングへ。それは、「各地で大事に、一歩一歩歩いて、繋げてきた」と語る「Walk with moments」。別れを惜しむようにステージの両端まで歩いていき、ダンサーとともに手を振りながら観客たちと笑顔を交わすMay’n。
コロナ禍はアーティストを変容させたが、May’nは大きな成長のきっかけとしたのは事実だ。コロナ禍以前からのテーマとなっていた、アウトプット寄りのシンガーというスタンスから、クリエイションを伴うアーティスト寄りへのシフト。そこには、ファンの心に寄り添うために自分をさらけ出す、という目的があった。今回のツアーにしても、いつか声を出せるライブがまた可能になったとき、そこに生まれる景色はコロナ禍以前よりも輝かせることも可能だ、と参加したすべての人が実感できる価値ある時間となった。涙をこらえながらフィナーレを歌い切った姿、最後の力強い“Laugh&Peace”のポーズ、そして本当に1列1列、全客席に手を振って目を合わせてからステージを去ったMay’nの笑顔。それらは我々に力を与えたことは間違いなかった。
3ヵ月以上にも及ぶツアーは大団円を迎えたが、May’nのYouTubeチャンネルには、『Laugh&Peace』の打ち上げ会場や、「あはっててっぺんっ」の振付講座となるダンスリハーサル参加会場も残っている。何よりも、9月7日にはこの夜の生放送がMUSIC ON!TVにて再放送される。アーティストMay’nの成長と進化を確認できる、貴重な機会だ。画面越しでも感じる愛情に満ちた「熱」い「圧」を感じ取ったならば、もう次なるライ部に惹きつけられて止まないはずだ。
TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
PHOTOGRAPHY BY AZUSA TAKADA
<セットリスト>
01. ViViD
02. Smile:D
03. DOLCE
04. 今日に恋色
05. ヤマイダレdarlin’
06. B.H.U.
07. シキザクラ
08. オレンジ
09. ダイアモンド クレバス
10. Follow Your Fantasy
11. graphite/diamond
12. インフィニティ
13. Belief
14. キミシニタモウコトナカレ
15. 蒼の鼓動
16. 未来ノート
17. May’n☆Space
――アンコール――
EN01. あはっててっぺんっ
EN02. Walk with moments
●放送情報
M-ON! LIVE May’n 「May’n Concert Tour 2022『Laugh&Peace』」
9月7日(水)22:00~24:00
番組詳細はこちら
●リリース情報
「あはっててっぺんっ」
8月17日発売
【CD+BD】
品番:XNDD-00008/B
価格:¥2,640(税込)
【CD】
品番:XNDD-00009
価格:¥1,540(税込)
<CD>
M1:あはっててっぺんっ(TVアニメ「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」ED主題歌)
作詞:May’n・大石昌良 作曲・編曲:大石昌良・やしきん
M2:蒼の鼓動(テレビ愛知「10チャンベースボール」テーマソング)
作詞・作曲:草野華余子 編曲:草野華余子/eba
M3:Follow Your Fantasy(Cygamesコーポレートアニメーションムービー)
作詞:古屋真・LynneHobday 作曲・編曲:加藤裕介 Licensed by Cygames, Inc.
M4:あはっててっぺんっ instrumental
M5:蒼の鼓動 instrumental
M6:Follow Your Fantasy instrumental
<BD>
1.あはっててっぺんっMV
2.AwesomeStudio-short- (MVオフショット映像)
「あはっててっぺんっ」オンラインリリースイベントに大石昌良の出演が決定!
日時:2022年8月20日(土)20時
※アーカイブ視聴期間:2022年8月27日(土)23:59まで
出演者:May’n
ゲスト:大石昌良、やしきん
参加方法:「あはっててっぺんっ」(CD/CD+Blu-ray)の初回限定封入特典として封入されている、オンラインイベント参加シリアルコードを入力の上ご参加ください。応募者全員が参加可能です。
関連リンク
May’n オフィシャルサイト
http://mayn.jp/
May’n レーベルサイト
https://www.digitaldouble.co.jp/artists/mayn
May’n Twitter
https://twitter.com/mayn_tw
May’n STAFF Twitter
https://twitter.com/MaynStaff
May’n 公式YouTube
https://www.youtube.com/user/MaynOfficial
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