2022年10月12日、高野麻里佳が3rdシングル「LOVE&MOON」をリリースした。収録曲は、自身がニーナ役を務めるTVアニメ『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』のED主題歌でもある表題曲、タイトルが偶然にもトリプルミーニングという運命的なc/w曲「スミレ」の2曲。
楽曲に込められた想いにとどまらず、高野麻里佳がさまざまな自分自身を見せてくれた。

――「LOVE&MOON」の第一印象は覚えていらっしゃいますか?

高野麻里佳 しっとりと始まって、心がきらきらわくわくしていくような導入だったので、「どんな物語が始まるんだろう」ってすごく引き込まれたのを覚えています。歌詞も、“月がきれい”という言葉が入っているのが面白いなぁと思って。日本人ならやっぱりどこかで聞いたことのあるフレーズだと思うんですけど、ロックなサウンドに合わせたらこんなに爽やかに歌えるんだっていう驚きもありました。

――そのとき「レコーディングではこう歌おう」みたいなイメージは生まれました?

高野 これまでの楽曲では、一つ一つコンセプトを持っていたり、どういった自分で歌おうかと決めながら歌ったりすることが多かったんですけど、今回は小細工しないほうがメッセージの伝わる曲だと感じました。だから、一度そういうところから離れて、思いのままに真っ直ぐ歌おうと思いましたね。

――実際のレコーディングでは、歌いながらどんなことが頭に浮かんでいましたか?

高野 「自分が月を見上げるときってどういうときだろう」って考えたんですね。それで、全力で一日をやりきってくたくたになったときに見上げる月の優しい光は、まるで頑張った自分を褒めてくれるようだと思ったので、月が優しく見守ってくれているイメージで歌いました。曲を聴いてくれた方にも、「頑張ってる姿、ちゃんと見てるよ」みたいなメッセージを心強く感じていただけたら嬉しいです。

――ほかに、レコーディングで印象に残った思い出はありますか?

高野 この曲に関しては、ディレクションが一切なかった、っていうのが思い出ですね(笑)。基本的にいつも、「高野さんが作ってきたものを一度見せてください」っていうところからレコーディングが始まるんですけど、感性のままに歌ったらそこから特に何もなく……。強いて言うなら、立ち会ってくださった(作詞・作曲・編曲の)ARAKIさんから「いい声ですね!」って褒められたくらいでした(笑)。


――ご自身から「もう一度」とお願いすることもなかったですか?

高野 ありました。自分としてはストレートに気持ちをぶつけたい曲だったのに、情熱的になればなるほど変にしゃくりあげてしまって……。お願いして録り直しさせてもらいました。でも、それでもスタッフの皆さんは、「いや、高野さんの節がついたものを僕たちは聴きたいです」って言ってくださって。

――そんな菩薩のような。

高野 そうなんです(笑)。結局、思いのままに歌ったテイクが採用されました。アニメタイアップソングではありますけど、アニメファン以外の方の心にも響くワードもたくさん詰まっていますし、色んな方にお薦めしたい楽曲になりました。

――ご自身に一番響いたワードはどれですか?

高野 2番サビの“叶ってもまた夢なんて見てしまうよ”です。私は、すでに夢を一つ叶えているんですよね、声優になりたいという夢を。だけど今は次の夢を見ていて、自分の両親が年を取っておじいちゃんやおばあちゃんになっても演じているような、国民的キャラクターに声をあてたいんです。そうやって夢が叶ったあとも夢を見続けるのが人間だし、その旅の途中は楽しいことだけではなくて、この先に辛いことがまたどこかで待っているかもしれない。
夢を見ることは幸せだとしても。そういう相反する二つの感情がこの歌詞には詰まっていて、「すごく尊い歌詞だな」って思いました。

――タイトルの「MOON」の部分は先ほどから伺えていますが、「LOVE」の部分で意識されたポイントはありますか?

高野 やっぱり「愛」って形として見えないものだと思うんです。でも、月がきれいだと思うこと自体、愛に溢れているじゃないですか? 心が荒んでたら多分きれいになんて見えないですよ(笑)。なので、歌詞に「LOVE」って言葉は出てこないんですけど、私は「LOVEを歌っている曲」だとずっと思っています。

――レコーディング中、ライブで歌うときのことは想像されていましたか?

高野 私は「歌」は「歌うものではなく聴くもの」という人生を歩んできたので……。

――あぁ、これまでも仰っていましたよね。カラオケにもあまり行かず、音楽を聴いて楽しむタイプだと。

高野 そうなんです。なので楽曲作りをするときも、ライブで歌っている自分を一切想像できないんですよ(笑)。1stアルバムに収録された「Ready to Go!」だけは、観客の皆さんの前で歌うことを前提に作った曲なので違うんですけど。でも、それ以外の曲はCDで聴いてもらうときのことだけをイメージしていて、音の厚みなんかを意識しているんです。
だから、そういう部分をライブでは表現するのが難しくて、ライブではいつもすごく後悔します。「そのまま歌えない!」「こういうふうに歌っていればこういうライブができたかもしれないのに」って。一度CDのことを忘れないとCDを超えられないので、ライブでは気合いを入れ直していますね。

――初回限定盤のDVDには「LOVE&MOON」のミュージックビデオとそのメイキングも収録されます。撮影での思い出は?

高野 今までのMVはどれも私一人が被写体となっていたんですけど、今回はバンドさんが一緒に映ってくださっていたので孤独感がありませんでした(笑)。皆さんの音楽につられて笑顔になっていたので、撮影中にスタッフさんから「今回の高野さん、すごく自然に笑顔が出ますね」って言われました。

――バンドのボーカルになった気持ちですね。

高野 そうですね、一夜限りの。方向性の違いで別れてしまったんでしょうか(笑)。でも、目が合うと皆さんが微笑んでくれて、それがすごく温かかったです。

――メンバーは全員女性だったんですか?

高野 そうなんです。だから、すごくポップでかわいいガールズバンドになったかと思います。


――カップリング曲の「スミレ」についてもお聞きしたいんですが、ご自身としてはどんな楽曲だと感じていますか?

高野 日々の幸せを1つ、2つ、3つ、4つと数えているところがすごくかわいくて。心って、疲弊してしまったら動かなくなっちゃうと思うんですよ。だから、大きな世界での小さな出来事をわざわざ歌詞にして歌うというのは、すごく素敵なことなんだという魅力を感じています。自分もこうやって慎ましく過ごせるような人になりたいな、そう思いながら歌った曲でした。

――高野さんは慎ましい方だと思っていたんですが、慎ましくなりたいですか?

高野 慎ましくなりたいです!(笑)。やっぱり、贅沢もしたくなりますし、多くを望んでしまいがちなので……。

――そんな貪欲な高野さんが最近感じた「いいこと」は?

高野 コーヒーが美味しいこと……?(笑)。

――慎ましいじゃないですか(笑)。

高野 あはははは(笑)。コーヒーが美味しいもそうですし、猫がかわいいもそうですね。

――高野さんはかなりの猫好きですが、昔からなんですか?

高野 昔からです。おばあちゃん家に迷い込んだ野良猫の死を経験したとき、「私も猫と一緒にいてあげたい」と思った経験があって。
だから猫を飼い始めるときも、最初に保護猫を見に行ったんですけど、一人暮らしなので断られちゃって。

――譲渡先として認めてもらうにはかなり条件は厳しいですよね。それまでの環境が良くない猫を引き受けるだけに、日中一人にしないというような。

高野 なので、ブリーダーさんから譲り受けることにしました。今はお家に4匹いるんですけど、なるべく仲良くなれるように、相性の良い種類の子たちを集めました。

――4匹いるなら、その猫ちゃんたちだけで4つのいいことが埋まりますね。

高野 あ、たしかに!今、部屋の一角を全部猫のスペースにしているんですけど、朝アラームが鳴ると猫たちが私のところに、わっ!って寄ってきて、お腹や腕に乗ってくるんです。猫たち的には「私が起きる=ご飯の時間」ということなんですけど(笑)。でも、それで動けなくなって二度寝してしまったときは、「なんて幸せなんだ!」「この幸せを皆にも分けてあげないとな」って思います。

――ちなみに、猫ちゃんたちのお名前は。

高野 スコティッシュフォールドのこまち、アメリカンショートヘアのひめ、で、ミヌエットがてまりとすみれです。

――「すみれ」!?(作詞の)山本メーコさんはそのことを知っていて歌詞に?

高野 いえ、ほんっとに偶然で。
猫のことは何も知らないと思います。すみれちゃんは誕生日が2月23日で、誕生花のスミレには「小さな幸せ」「幸福」という意味があるので、小柄なミヌエットにぴったりじゃないかと思ってそう名付けたんです。「すみれ」という曲名は実はスマイル(smile)にもかけてあって、笑顔という意味も込められているんです。だから、うちのすみれと合わせてトリプルミーニングになりますね(笑)。

――勝手な想像ですけど、レコーディング中はすみれちゃんのことを思い浮かべながら歌われましたか?

高野 そこは割り切っちゃいました(笑)。AメロとBメロでは足元にある小さな幸せを見つけていき、すごく爽やかに世界が広がっていくようなメロディラインのサビでは大きく息を吸って「空気おいしー!」みたいなイメージで歌いましたね。

――歌詞の中で一番感情移入できたフレーズはどこですか?

高野 やっぱり「誰かのじゃない私の世界」ですかね。「声優になるぞ!」って決めた瞬間から、自分のいいところは自分で知ってなきゃいけないですし、悪いところもちゃんと受け入れていないといけないんですよ。履歴書に自分の長所や短所を書かなければいけないので。だから、「自分は何を持っているんだろう?」と常に探しているところはありますね。

――もし今、「自分の長所は何ですか?」と聞かれたら?

高野 私は自分のことを過小評価しがちというか、自分の魅力に気づくのが苦手なので短所を長所に変えようとするタイプなんです。で、私って実はすごく頑固なんですよ。例えば、台本も原作もめちゃめちゃ読み込むので、作品への思い入れがすごく強くなりますし、自分の中で作り上げたキャラクターにもすごく愛情を持っちゃうんです。そのためにアフレコで、「そうではなくて、こうしてください」と言われたときに融通がきかないことがあるんです。それでよく反省しています。

――音楽活動でもそういうことはありますか?

高野 音楽活動については経験が浅いので、自分の我を通すというよりは、「こうしたほうがいいですかね?」と逆に教えを仰ぐことが多いですね。声優とは全然違うアプローチで挑んでいると思います。アーティストとして高野麻里佳の歌をもっと突き詰められたときは「こうやって歌いたいんですよ!」っていう”我”を身につけたいですね(笑)。

――次のシングルでも成長した高野さんが見られそうで期待が高まります。

高野 「私の音楽はこれだ!」という気持ちで、ちゃんと胸を張ってレコーディングに臨めるようになっていたいですね。

INTERVIEW BY 清水耕司 TEXT BY 友安美琴

●リリース情報
高野麻里佳 3rd シングル
TVアニメ『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』EDテーマ
「LOVE&MOON」
10月12日発売

【初回限定盤(CD+DVD)】

品番:COZC-1938~9
価格:¥2,090(税込)

【通常盤(CD Only)】

品番:COCC-18034
価格:¥1,430(税込)

■mora
通常/配信リンクはこちら

<CD>
01.LOVE&MOON
作詞・作曲・編曲:ARAKI
02.スミレ
作詞:山本メーコ 作曲・編曲:溝口雅大
03.LOVE&MOON(Instrumental)
04.スミレ(Instumental)

<DVD>
「LOVE&MOON」ミュージックビデオ
メイキング映像

関連リンク
高野麻里佳 音楽情報サイト
https://columbia.jp/kohnomarika/

TVアニメ『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』公式サイト
https://beasttamer.jp/
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