作品を最優先にしながら、自然と“YURiKAらしさ”もにじむ それが「ROMA☆KiRA」
――YURiKAさんが『ロマンティック・キラー』(以下『ロマキラ』)のOP主題歌を担当すると知られたのは、いつ頃だったんですか?
YURiKA 去年の10月、ワンマンライブのリハーサル中でした。「ワンマンの告知動画を撮ろう」ということになったんですが、撮影のなかで誕生日プレゼントとして『ロマキラ』の原作コミックスを渡されたんですよ。そのときに「この作品がアニメ化するので、主題歌を担当してもらいます!」と言われる……という、ドッキリみたいな発表だったんです! だから、発表の瞬間の映像も残っているみたいなんですよ(笑)。
――ということは、そのときにはもう原作を読むことができたんですね。
YURiKA はい。すぐに。主人公の(星野)杏子はゲームと猫とチョコが大好きな子で、それこそ発売日に新作ゲームを買って「今からやるぞ!」というところに魔法使いのリリが現れて、その“三大欲求”を没収されるところから物語が始まるんですけど、その時点でもう私、他人事ではない感じがしたというか……(笑)。
――YURiKAさん自身との共通点が、かなりあった?
YURiKA はい。
――たしかに、私もYURiKAさんと杏子は、すごく似ているなと感じました。
YURiKA あははは(笑)。もし自分のところにもリリが来て“三大欲求”を没収されたとしても、私も「いやいや、言いなりにならないぞ!」みたいに思うだろうなぁ、と思って。でも『ロマンティック・キラー』という作品って、恋愛だけじゃなくて友情を描くような側面もあるので……本当に、シンプルにお話が面白いんですよ。
――ちなみにYURiKAさんの“三大欲求”って、挙げるとしたらどんなものですか?
YURiKA うーん、難しいなぁ……ゲーム、というか乙女ゲームと……あ、ごめんなさいKeyも好きだから(笑)、「ノベルゲーム」ですかね? あと音楽まわりを「アニソン・ゲーソン」とまとめさせていただいて、もう1つは……今のYURiKAとしては、やっぱり「ライブ」ですね。自分が出るのはもちろんですけど、元々観るのも好きなので、これがないとキツいです。
――ということは、この2年くらいはかなりキツかった?
YURiKA そうですね。これからは11月に出すアルバムを引っさげてツアーもやらせてもらいますし、ちょっとずつ戻ってきてはいますけど。それに、“アニソンシンガー”でいる以上、作品を好きな方がお客さんとしていてくれたり「この歌をうたうならライブに行く」みたいに思ってくれることって、やっぱり当たり前のことではないなとも感じたんですよ。
“主題歌のタイトル=作品タイトル”という楽曲を「待ってました!」
――その他にも『ロマキラ』のなかで、刺さった部分はありますか?
YURiKA まず、登場人物みんなを応援したくなっちゃうし、明るい気持ちになれるところはすごく魅力的だなと思います。「リリのプロジェクトだから、みんな杏子のことを好きになる」という設定なのに、「幼なじみ」とかそれぞれの関係性のなかで杏子のことを好きになるし、杏子自体も「これは好きになるよ!」ってわかるくらいいい子なんです。でも杏子は杏子で、誰ともくっつかずに好きなものを取り戻せたらかっこいいし、リリは人間体とマスコット体のどっちの姿もかわいいし、男性キャラもみんなすごくかっこいいし……。あと、ちょこちょこ出てくるオマージュみたいなものも面白いんですよね(笑)。
――少し懐かしい、ネットミーム的なものとかも散りばめられていますからね(笑)。
YURiKA それに、どこか身近さも感じるお話じゃないですか? ……さすがに日常生活に魔法使いは来ないかもしれないですけど(笑)。だからガッツリ「観るぞ!」と意気込まなくても気軽に楽しめる作品でもありますし、でもしっかり何か残るものもあるから、ただ観るだけだと絶対もったいない作品でもあって。どういうスタイルで作品に触れる方にもハマると思うし、性別とか、学生さんとか大人とかも関係なく楽しめるんじゃないでしょうか? うちの家族はみんなコミックスを読んでますから(笑)。
――「ROMA☆KiRA」はそんな作品とピッタリの、キラキラ感のある主題歌になっています。この曲を最初に聴かれたときの印象って覚えていますか?
YURiKA みずみずしくて、きれいで、メロディだけでも“オープニング感”みたいなものを感じました。以前、「薄明パラレル」という曲でご一緒している白戸佑輔さんが作曲してくださっているんですが、白戸さんの曲ならではの「爽やかななかのちょっと淡い部分」とか、「青春の甘酸っぱさ」みたいに感じられるものが、『ロマキラ』にピッタリだなぁと思ったんです。
――その段階では、「どう歌おうか?」というイメージはまだなかった?
YURiKA そうですね。ただ、明るくて爽やかで、高音が広がっていく……みたいなところって“YURiKAらしさ”からそんなにかけ離れていないんですよ。だから、自然と自分らしさを出せる曲でもあるのかな……という感じはしていました。あと、「ROMA☆KiRA」という曲のタイトルが、作品名と同じじゃないですか? それって、アニソンシンガーの醍醐味だと思うんですよ! 誰にでもできることではないので、今でも「いいんですか!?」っていう喜びがとても大きくて……私的には「待ってました!」という感じでした。
作品とキャラクターを歌で表現するという大事な役割
――そこから歌詞がついたりしていくなかで、歌ううえでのイメージが固まっていったわけですね。
YURiKA そうですね……私、実はこの作品に登場するどの男の子よりも、杏子が一番かっこいいと思っていて。そのかっこよさと、曲のメロディや音域のかわいらしさとか女の子らしさが、すごくマッチしているように感じるんです。歌詞の中でも、すごくきれいに「バカヤロー」と言っていたり、運命に向けてファイティングポーズを取ったりと、ただの“かわいい”“爽やか”ではないところが杏子らしいんですよね。そういう躍動感みたいなものはすごくしっくりきましたし、「こんなきれいに『バカヤロー』って言っていいんだ」みたいにも思いました(笑)。
――ちなみにその「かっこよさ」は、どんな部分から感じましたか?
YURiKA “三大欲求”の取り返し方が、本当に杏子らしいといいますか……一人ひとりの男の子を無視するわけでもなく、リリとの関係や女の子同士の友情も大切にしたりとまわりの人たちを大切にしながらなんですよね。これが合っているかはわからないですけど、私もコロナ禍でライブとか歌える機会を奪われてしまった部分がありますし、それを少しずつ自分らしく取り返しているというか……だから杏子がまわりの人を大切にしながら欲しいものを取り返していく姿は勉強になりましたし、自分的には作品を通じて変わった部分かもしれないなとも感じています。
――なんだか「ROMA☆KiRA」って、主人公が歌うOPテーマみたいですよね。元々そんな印象があったんですけど、お話をお聞きするなかでよりそう感じました。
YURiKA よかった、伝わってる! スタッフさんたちも私も、この曲は「杏子の歌」みたいなものにしたかったんですよ。そもそも音楽プロデューサーさんがアニメの作品サイドに推薦してくれたのは、私の歌に“杏子らしさ”みたいなものが共通してあると思ったからみたいで。『ロマキラ』のプロデューサーの方にも「すごく雰囲気が合ってる」と言ってもらえたそうなんです。
――ということは、YURiKAさんは杏子に寄せようとせず自然体でよかったと。
YURiKA そうなんです。これまで歌ってきた曲だと、例えば『宝石の国』の「鏡面の波」は素の自分とかけ離れた世界観に自分から距離を詰めていった曲の1つだったんですけど。杏子には自然に自分と重なるような似ている部分があって、『リトルウィッチアカデミア』のアッコともまた何か違う、杏子ならではのかっこよさもあり、そこも表現したかったというか……私の役目の中で一番大きいものは、やっぱり作品のことを歌うというところだと思っているので、「自分の想いは、無理に乗せなくていいや」という考えだったんです。でも今回は多分、最初聴いたときに感じたように、自然と伝えたいことも一緒に乗せて歌えたような感覚があります。
サビの抜け感と爽快感を増幅させた、レコーディングでのキー変更
――そういった部分では、いい意味で想定とは違ったことがレコーディングで起こったんだと思うのですが、他にもレコーディング中のやり取りなどで変わったところなどはありましたか?
YURiKA キーを一番いいところに設定させてもらえたのは、とても大きかったと思います。白戸さんからは元々「キーが高いかもしれないので、最初にチェックしてほしい」と言われていまして。
――向こうは「高いかも」と思っていたのに、それよりも上に持っていった。
YURiKA はい。私、地声とファルセットの境目がわかりにくいみたいで。自分では裏(声)で歌っているつもりでも、聴いていると表めに聴こえちゃうことが結構あるみたいなんです。だからファルセットで張りやすい位置となると、作曲家目線だと「え、そんなに上なの?」という感じになる……という話をしまして。最終的には「こんなに高いキーにして大丈夫かなと思ったけど、そういうことなんだね」と納得していただきました。あともう1ヵ所特に覚えてるのは、サビの“「スキ」をはじめよう”の「よう」をしゃくるかどうか! しゃくったほうが安定して聴こえるんですけど、そこを「しゃくらずに歌おうか」となりまして。それにその場で対応するっていうのは、結構大変なポイントではありました。
――そのうえで、歌詞に沿って感情を込めなければいけないわけですからね。
YURiKA そうですね。ただ、繰り返しになっちゃうんですけど、歌詞は本当に最初から「『ロマキラ』だ!」という印象で、色んなところから杏子を感じまして。どこも好きだから、「ここ!」みたいに印象的だった部分を一部だけ切り取るのは難しいんですけど……でもやっぱり、「自分で戦う」というところは特に好きですね。この曲って「自分で決めるの」とか「覚悟して」みたいに、言い切っている部分の多い歌詞だと思うんですよ。でもこのメロディというのもあって、それがただ単に強いという感じではなくて、爽やかにも聴こえる。そこが好きなところです。あと、作詞のくまのきよみさんが、レコーディングにリモートで立ち会ってくださったのは嬉しかったですね。ご一緒するのは初めてだったんですけど……すごく褒めていただきました(笑)。
――最後に、そうして想いを詰め込んだ久々の主題歌をこれから聴いてくださる方へ、ひと言メッセージをお願いします。
YURiKA ありがたいことに挿入歌や配信シングルなどでアニメ作品に関わらせてもらい続けていましたけど、作品の“主題歌”となると『BEASTARS』の「Le zoo」以来なんです。そんな曲がこの『ロマキラ』という作品の主題歌であることに、大げさかもしれないですけどすごく運命を感じるんですよね。無理矢理重ねようとしなくても、自然と杏子に重なる想いがあったりするから。この曲を歌っていくという役割をいただけた嬉しさもありますけど、「これから歌い続けていく」という決意も持っていますので、これからも色んなところで歌っていきたいなとすごく思います。……ちなみに私、『ロマキラ』のアクリルスタンドとリリのぬいぐるみをもう予約していまして(笑)。
――他の作品でも作品愛からよくグッズを手にされていますけど、すでに『ロマキラ』でも(笑)。
YURiKA はい。これからツアーがあるので、「杏子、大阪だよ……」みたいなことをやりながら一緒に回りたいですし(笑)、ライブではぬいぐるみを持って歌えたらなと思っています!
INTERVIEW BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
TEXT BY 須永兼次
●作品情報
Netflix シリーズ『ロマンティック・キラー』
2022年10月27日より全世界独占配信
©百世渡/集英社 ©Netflix
●リリース情報
YURiKA
『KiRA☆KiRA』
2022年11月11日発売
【初回生産限定盤】
商品仕様:CD+Blu-ray(MUSIC VIDEO他収録) 三方背ボックス、24 ページブックレット付き
品番:RQBD-0003
価格:¥8,500(税抜)
【通常盤】
商品仕様:CD、24 ページブックレット付き
品番:RQCD-0003
価格:¥3,000(税抜)
<収録曲>
MAGICAL FESTA(inst)
ROMA☆KiRA(Netflixシリーズ『ロマンティック・キラー』OPテーマ)
Shiny Ray(TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』OPテーマ)
ふたりの羽根(TVアニメ『はねバド!』OPテーマ)
Key to my next gate ※新曲
鏡面の波(TVアニメ『宝石の国』OPテーマ)
ミラクルステップ(TVアニメ『怪人開発部の黒井津さん』挿入歌)
Crave ※新曲
眠れる本能(TVアニメ『BEASTARS』EDテーマ)
マーブル(TVアニメ『BEASTARS』EDテーマ)
月に浮かぶ物語(TVアニメ『BEASTARS』EDテーマ)
Le zoo(TVアニメ『BEASTARS』EDテーマ)
パーソナリティ ※新曲
MIND CONDUCTOR(TVアニメ『リトルウィッチアカデミア』第2クールOPテーマ)
他
関連リンク
Netflix シリーズ『ロマンティック・キラー』作品ページ
https://www.netflix.com/RomanticKiller
YURiKA 公式サイト
https://www.yu-ri-ka.com/
YURiKA デビュー5周年特設サイト
https://www.yu-ri-ka.com/kirakira/
YURiKA 公式Twitter
https://twitter.com/_yurika29_