2022年9月22日より4日間連続で開催された“BanG Dream! 10th☆LIVE”を締め括ったのは、RAISE A SUILEN(以下、RAS)。ライブタイトルの「SOUL ROAR」は「魂の咆哮」と訳される。過去最長のライブ「OVERKILL」を6月に開催してさらにひと回り大きくなったRASは、初めて足を踏み入れる最新のアリーナを舞台にこのテーマでどんな光景を見せてくれるのか。会場とバンドに期待以上の親和性を感じさせたライブをレポートする。RAISE A SUILENのライブはオープニングのSEや音源リミックス、メンバー紹介のレーザーショウから始まっているといっていい。しかも会場は最新の音響・映像・照明設備を備えたアリーナで、冒頭から存分にその威力を発揮させ1万人規模のバンドリーマーのハートを温めると、この日の公演の幕開けに選んだのは「DRIVE US CRAZY」。いきなりのRaychell(Ba.&Vo./レイヤ役)によるアカペラに会場のざわめき立つ。これに小原莉子(Gt./ロック役)、夏芽(Dr./マスキング役)、倉知玲鳳(Key./パレオ役)、紡木吏佐(DJ/チュチュ役)が加わり、シンガロングの状況を作り上げる。火柱が上がり、往時のようにオーディエンスも声を出せたらどれほど楽しかろうと心の隅で叫びながら、ヘビーなサウンドを身に受けてボルテージを上げていく。1番を軽快に歌って再びシンガロングのタイミングになったときに「魂で叫べ!」と、このライブタイトル「SOUL ROAR」と重なる言葉をシャウトする。そうだ。この状況を肯定的に捉えた言葉が今回のライブテーマなのだ。彼女たちの「魂の轟音」は、いきなりのトップギアで、リリックビデオのフォントからメンバーの真剣な眼差しをライブカメラで抜くスクリーン、間奏の煽りや再び立ち上る火柱までエモさに溢れている。曲終わりに「こんばんは、RAISE A SUILENです」とストイックに名乗り、少しの静かな時間を作って「UNSTOPPABLE」のイントロでまた上げていく。緩急を上手く演出したこの曲では小原のギターソロや、背面弾きをする倉知のキーボード、紡木のDJプレイ、タイトなドラムプレイなど、メンバーの技術も堪能できる。先ほどよりもより長いDJプレイからギターのリフ、テクニカルなキーボードプレイから、Raychellはベーシストとしての姿をアピールせんがごとくゴリゴリのノイジーサウンドを強調する。夏芽はパワフルなスネアやシンバル叩きで魅せ、ソロタイムを存分に楽しみながらも最後はDJサウンドのリズムにキッチリと合わせてくる職人ぶりだ。メンバーカラーのLEDが乱れ飛び、そこから「Invincible Fighter」のイントロが始まるとスモークが焚かれ、疾走感溢れるサウンドに乗せてたちまちフロアが一斉にタオル回しの光景が展開する。メンバーのコーラスもかわいらしく入り、2番ではクラップを呼ぶサウンドメイクに。高らかなシャウトからソロ回しを挟み、キラキラのキーボードサウンドとRaychellのボーカルが鍔迫り合いをしながら曲を終えた。続けて同じ3rdシングルからカップリング曲「Takin’ my Heart」へ。静謐なピアノから始まるバラード曲に対し、スクリーンは真っ白でライトもシンプルに2灯のみと曲に集中させる照明演出だ。展開に合わせてバンドサウンドが盛り上げていき、リリックビデオを背負いながらシリアスな表情で歌いきった。「EXIST」のイントロが流れた瞬間、軽いざわめきが起こり、スクリーンには雪が舞う。リリックのデザインも普段とは異なる世界観で、歌謡曲的なメロディに赤い灯が叙情性をさらに増す。こうした情緒はボーカルの丁寧な技巧や各楽器の強弱からも感じられた。青いレーザーが会場を横切るなか、続けてDJは高速の指さばきをしつつも魅せるプレイをし、キーボードはクラシカルなピアノフレーズをまぶし、ギターは音階を刻む。続いて「Sacred world」の都会的なキーボードのイントロを分厚いサウンドが支え、強い声音作りに挟まれるラップパートが良いアクセントとなっている。中盤からの応援の熱さ、キーボードの旋律やギターソロとバトルする場面の盛り上がりは特筆すべきタイミングだった。ここまでノンストップで6曲を歌い、一旦コンディションを整えつつも、マッシュアップ音源のDJをかけてオーディエンスのテンションをキープする演出だ。Raychellのハイトーンが響き渡り、「さあさあ、私たちの色に染まりなさい」と言うと紡木が「全員でアガるわよ」と煽り「!NVADE SHOW!」のキャッチーなイントロが響き渡る。サビで「暴れろ~!」と煽ると爆音のツーバスドラミングに合わせ、さらに会場盛り上がりを見せる。この曲はそれぞれのプレイヤーの演奏以外のパフォーマンスも豊かで見どころとなった。お立ち台にギターを置いてタッピングをする小原やステップしながら流麗なキーボードプレイを見せる倉知、そしてほかメンバーも暴れ回り、終始ステージと客席が一体となった熱い空間を作り上げていった。そのままシンセのループが聴こえるとたちまちクラップが湧く。紡木による「灼熱 Bonfire!」の振付タイムだ。この演出もすっかりお馴染みとなったが、曲自体のパーティーソングとしての完成度も高く、ドラミングのアゲ方やコーラスワーク、キーボードのサウンドメイクやマニピュレーション、DJのアクセント付けまで寝られた構成が光る。長く大きなクラップのあと、Raychellは「暴れていけんのか?ついてこい」と煽り、「OUTSIDER RODEO」へ。ヘビーなギターサウンドを挟み、この日一番のハードな音圧でツーバスとベースが轟音をかき鳴らす。メンバーたちも頭を振ってタオルを回しての演奏が実に楽しそうだ。膝を立てたギタープレイ、高速で挟み込むラップ、クールな表情で奏でるキーボードなど、それぞれメンバーの個性も見どころだ。ここまで60分。ようやく最初のMC時間だ。2023年2月に早くも有明アリーナに凱旋する“BanG Dream! 11th☆LIVE”の告知が行われ、Poppin’Partyとの対バンが告げられると、オーディエンスだけでなくメンバーも喜びの声を上げ、早くもコラボ曲や衣装合わせを相談するほどだ。また、この日にお目見えした新衣装でそれぞれのお好みをアピールする場面は、MCが少なめのRASの人となりをステージ上で見ることができる貴重な機会だ。後半戦は1stアルバム収録曲の「Beautiful Birthday」からスタート。高らかで滑らかで、パワフルさと聴き疲れをしないミラクルなボーカルワークを展開した。夏のライブで感涙を誘ったバラード「Light a fire」では穏やかなギターに乗せてオーディエンスの間からクラップが湧き、それに乗せた確かなボーカルが響き渡る。それはほかの楽器が入っても変わることがないアンサンブルで、Raychellの歌い回しにはエモーショナルな歌詞と合わせる不思議な引力がある。間奏部分でクラップを求め一体感を演出したあと、最後には高らかに歌い上げた。そこからデビュー曲の「R・I・O・T」のイントロが始まると声が湧き上がる。ゴリゴリのEDMサウンドに「頭振れ!」とRaychellからの指令が飛ぶとちょっとした狂乱状態が発生していた。間奏部分では「会場、まだまだ暴れ足りないよね?もっともっとアガっていけるでしょ。その全力、見せてちょうだい」と煽り、ギターソロからサイバーパンクなVJへと見せていくエンターテイナーぶりだ。ステージが暗転しDJミックスが流れるなか、スクリーンにはサプライズで「次の曲撮影OK!※ムービーのみ」の文字が踊る。各バンドリーマーが撮影し各種SNSにアップする伝道師の役割を果たすのだ。その曲とは11月30日リリースの新曲「THE WAY OF LIFE」。高速のシンセロックでド派手なビジュアル、画面にはメッセージ性のあるリリックビデオが踊り、堂々とした歌声が響く。これぞRASとも言える彼女らの良さが詰まった楽曲で、こうした楽曲発表の仕方をするだけの自信の表れを感じさせるものだった。撮影の時間が終わるとたちまち「HELL! or HELL?」のイントロを投下し、手元は高速のクラップに。小原のヘビーなギターに紡木の高速のスクラッチプレイが響きRaychellは「さあ有明、地獄絵図を見せてもらおうか?」と不敵に笑う。スモークやエモーショナルなグラフィック、圧倒的な音圧と渾然一体になったRASの力技で攻めていきつつも、キーボードソロやラップなどの個々人の見せ場も展開し、「I’ll never die!」のヘドバンやその後のボーカルとラップの掛け合いはこのライブの最高地点の1つで、オーディエンスが恍惚とした表情になっていく様子が見えた。MCでRaychellはこれまでの歩みを振り返る。2018年の“BanG Dream! 5th☆LIVE”から「THE THIRD(仮)」としてオープニングアクトとしてステージに立ち、メンバーもまだ4人だった。「THE THIRD(仮)」としての単独ライブ2公演を経て、半年後に両国国技館で開催された“BanG Dream! 6th☆LIVE”ではRASとして5人でステージに立ち、以降着実にこの“BanG Dream! 10th☆LIVE”までキャリアを重ねてきた。Raychellは「私たちは結成して間もないですが、こうしてライブをさせていただけることが本当に嬉しいしありがたいです。私たちは私たちなりに一生懸命足掻いて、今日ここまでやってきました。いつも私たちが全力で暴れられるのもこうして応援してくれるみんながいるからです」と感謝を述べ、盛大な拍手を浴びる。その直後にモードを変えて「ラストまでアガっていけんのか!?」とキレ良くシャウト。ラストスパートに向けて最新シングルの「CORUSCATE -DNA- 」で駆け上がる。アグレッシブなアニメーションMVを背負い、ハイスピードなサウンドに乗せキレのあるシャウトを連発する。間奏では「手を挙げて、魂で叫べ!」と叫び、タテノリの勢いのまま突っ走りラストの「EXPOSE ‘Burn out!!!’」へなだれ込む。ライブの頭に持ってくることが多いこの曲をオーディエンスはここまで待っていたが、Raychellがラストだと宣言するとクラップが大きくなる。「さあ会場1つになろうか」と煽りイントロをブチ上げる。腕の振り上げは最大幅になり、背後に流れるアニメーションMVの世界観と足並みを揃えるかのようなライティングと会場の熱気が彼女たちを後押しする。間奏ではRaychellと小原が体を折って煽りを入れ、キラキラしたシンセサウンドで最後まで盛り上げ、銀テープが発射されたあともシャウト連発で最後までパワフルで緊張感の高いライブを見せた。2022年8月に開業したばかりの有明アリーナは、当然のことながら彼女たちにとって今回が初の舞台だ。それでありながら、まるでこの場所をホームにしているかのように最新のレーザー演出を使いこなし、アグレッシブなエレクトロックサウンド、ケレン味溢れるパフォーマンスで1万人規模のオーディエンスを沸かせる。そうしたステージングだけでなく、エンターテイナーでありながらストイックな姿勢を崩さない姿勢は、この会場から見える背景も相まって彼女たちの都会的な印象を強く感じさせた。告知されたように半年を待たず彼女らは早くもこの場所に帰ってくる。さらに親和性をイメージさせるこの場所で、どんなテーマでどんなセットを魅せてくれるのか、ワクワクさせてくれる公演だった。PHOTOGRAPHY BY ハタサトシ、福岡諒祠(GEKKO)、池上夢貢(GEKKO)TEXT BY 日詰明嘉■BanG Dream! 10th☆LIVEDAY4 :RAISE A SUILEN「SOUL ROAR」セットリストM1 DRIVE US CRAZYM2 UNSTOPPABLEM3 Invincible FighterM4 Takin’ my HeartM5 EXISTM6 Sacred worldM7 !NVADE SHOW!M8 灼熱 Bonfire!M9 OUTSIDER RODEOM10 Beautiful BirthdayM11 Light a fireM12 R・I・O・TM13 THE WAY OF LIFEM14 HELL! or HELL?M15 CORUSCATE -DNA-M16 EXPOSE ‘Burn out!!!’●ライブ情報BanG Dream! 10th☆LIVEDAY1 : Roselia「Sonnenschein」◆日程:2022年9月22日(木) 開場18:00/開演19:00◆出演者:Roselia(相羽あいな、工藤晴香、中島由貴、櫻川めぐ、志崎樺音)DAY2 : Morfonica「Reverberation」◆日程:2022年9月23日(金・祝) 開場17:00/開演18:00◆出演者:Morfonica(進藤あまね、直田姫奈、西尾夕香、mika、Ayasa)DAY3 : Poppin’Party「Hoppin’☆Poppin’☆Dreamin’!!」◆日程:2022年9月24日(土) 開場17:00/開演18:00◆出演者:Poppin’Party(愛美、大塚紗英、西本りみ、大橋彩香、伊藤彩沙)DAY4 : RAISE A SUILEN「SOUL ROAR」◆日程:2022年9月25日(日) 開場17:00/開演18:00◆出演者:RAISE A SUILEN(Raychell、小原莉子、夏芽、倉知玲鳳、紡木吏佐)◆会場:有明アリーナ◆公演詳細:https://bang-dream.com/10th-live©BanG Dream! ©Craft Egg Inc. ©bushiroad All Rights Reserved.BanG Dream! 11th☆LIVEDAY1 : Poppin’Party×RAISE A SUILEN/DAY2 : Roselia×Morfonica◆日程:2023年2月4日(土)・5日(日)◆会場:有明アリーナ◆公演詳細:https://bang-dream.com/11th-live◆チケット最速先行抽選申込受付:受付期間:2022年9月25日(日) 12:00 ~ 12月5日(月) 23:59最速先行抽選申込券は各バンドの最新Singleに封入となります。・Poppin’Party 18th Single「夏に閉じこめて」(発売中)・Morfonica 5th Single「寄る辺のSunny, Sunny」(発売中)・Roselia 12th Single「Swear ~Night & Day~」(10月26日リリース)・RAISE A SUILEN 10th Single「THE WAY OF LIFE」(11月30日リリース)BanG Dream! Special☆LIVE Girls Band Party! 2020→2022開催日時:2022年11月12日(土)開場13:00/開演15:00 予定場所:ベルーナドーム■出演・Poppin’Party・Roselia・RAISE A SUILEN・Morfonica・Afterglow 美竹蘭役 佐倉綾音・ハロー、ハッピーワールド! 弦巻こころ役 伊藤美来◆公演詳細:https://bang-dream.com/events/gbp2022ブシロード15周年記念ライブ in ベルーナドーム開催日時:2022年11月13日(日)開場13:30/開演15:30 予定場所:ベルーナドーム■出演・アサルトリリィ(一柳隊)・少女☆歌劇 レヴュースタァライト(スタァライト九九組)・D4DJ(Happy Around!、Peaky P-key、Photon Maiden、Merm4id、燐舞曲、Lyrical Lily)・BanG Dream!(Poppin’Party、Roselia、RAISE A SUILEN、Morfonica)・from ARGONAVIS(from ARGONAVIS Special Band)・ミルキィホームズ(ミルキィホームズ、フェザーズ)・ラブライブ!シリーズ(Aqours、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会)・令和のデ・ジ・キャラット(バーチャルD.U.P.、奥井雅美)◆公演詳細:https://live.bushiroad-music.com/bushiroad_15thlive/関連リンク「BanG Dream!」公式サイトhttps://bang-dream.com/