水樹奈々が2023年最初のライブ“NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023”を、自身の誕生日である1月21日と翌22日の2日間、さいたまスーパーアリーナで開催した。本公演のコンセプトは“ヒーロー”。
彼女が声優として演じてきたヒーロー/ヒロインが出演する作品の楽曲を中心に、各日のテーマに合わせてそれぞれ違ったセットリストを披露する、特別な2日間だ。しかも今回は両日スタジアムモードでの開催。述べ45,000人が熱狂した2デイズのうち、“−LIGHTNING MODE−”と銘打たれた1月21日公演の模様をレポートする。

TEXT BY 北野 創(リスアニ!)
PHOTOGRAPHY BY kamiiisaka

12年ぶりのウサ耳も披露!ヒーローパワー全開のライブ
初日公演となった“−LIGHTNING MODE−”は、その名の通り“雷”を連想させる歌詞やキャラクターが登場する楽曲を中心に構成。しかもテーマカラーは黄色。水樹奈々の演じたキャラクターで“雷”と“黄色”といえば……そう、彼女の代表作となる『魔法少女リリカルなのは』シリーズのフェイト・テスタロッサだ。


OPムービーで水樹が絵を描き始めて、自らの理想のヒーローの姿を描ききると、いよいよライブが開幕。アメコミと飛び出す絵本をイメージしたステージセットの中央にそびえ立つ、「077(おなな)」ビルのてっぺんに登場した水樹は、『なのは』シリーズとの出会いと「始まり」の歌、TVアニメ『魔法少女リリカルなのは』のOPテーマ「innocent starter」を凛々しい歌声とともに届ける。フェイトの髪色を彷彿させる黄色をベースにした衣装もそうだが、ビルのてっぺんで歌うシチュエーションが『なのは』のOPアニメでのフェイトの姿とも重なり、グッとくる開幕となった。

次曲、メインステージに降り立った水樹が披露したのはTVアニメ第2期『魔法少女リリカルなのはA’s』の挿入歌「BRAVE PHOENIX」。イントロのピアノで察した客席の興奮が会場を覆うなか、水樹はバックモニターに映る満天の星空をバックにすべての運命を包み込むような美声を響かせる。さらに劇場作品『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』の主題歌「PHANTOM MINDS」へと繋げ、冒頭から『なのは』楽曲3連発で会場は熱狂の渦に。


MCでは、この日が自身のバースデー当日であることに触れ、今年は「4+3で“7(なな)”イヤー」になったことをアピール。そしてTVアニメ第3期『魔法少女リリカルなのはStrikerS』のOPテーマ「SECRET AMBITION」でライブを再開させると、続いて水樹がTVアニメ『しゅごキャラ!』で演じたキャラクター・ほしな歌唄のキャラソンのセルフカバー「迷宮バタフライ -diverse-」を披露。ライブでの歌唱はレアなこともあり、その妖艶なステージに客席の熱気がさらに上昇する。次に歌われた「天空のカナリア」はOVA『テイルズ オブ シンフォニア THE ANIMATION テセアラ編』のOPテーマ。そういえば本作で水樹が演じたコレット・ブルーネルも、ほしな歌唄も、髪色は黄色(金髪)だ。

ここで水樹はいったん降壇し、彼女のライブでは恒例となっている、バックバンドのCherry Boys(通称:チェリボ)のコーナーへ。
この日のメンバーは、ギターの渡辺 格(イタルビッチ)、ベースの坂本竜太(りゅーたん)、ドラムスの松永俊弥(まーちん)、パーカッション/ドラムスの福長雅夫(ちょーさん)、バイオリンの門脇大輔(カドディー)、サックスの藤陵雅裕(ファイヤー)、キーボードの佐藤雄大(チャンプ)、そして水樹のライブには初参戦となるギターの設楽博臣(シタランティーノ)の8名。ヒーローソング風のオリジナル曲を歌いつつ、それぞれが「あなたにとってのヒーローは?」という質問に答えるソロ回しで会場を賑やかに盛り上げる(鉄腕アトムから力石 徹、宇宙刑事ギャバン、伊集院 光まで、バラエティに富んだ回答だった)。

そして、なんとウサ耳姿の衣装に着替えた水樹が、ダンサーのteam YO-DAを引き連れて花道の中ほどに登場。ポップでダンサブルなナンバー「Mr.Bunny!」を、ツインテールに結った髪を振りながらエネルギッシュにパフォーマンスする。そこから「一緒に踊ってください!」と呼びかけ「Angel Blossom」(TVアニメ『魔法少女リリカルなのは ViVid』OPテーマ)を披露すると、team YO-DAのメンバー紹介を挿み、アップテンポなトランスロックチューン「PRIDE OF GLORY」では「077」ビルの中腹のスポットに登場。タイトなダンスも含めたクールかつ情熱的なステージングで魅せる。
そこから再びメインステージに降り立ち歌ったのが『魔法少女リリカルなのは』の挿入歌「Take a shot」。ダンサーを従えながら毅然とした歌声で“希望”を届けるその姿は、まさにヒーローそのものだった。

続くMCで水樹は、2011年の東京ドーム公演“LIVE CASTLE”以来となるウサ耳衣装について説明。彼女は同公演のMCで、次の卯年にまたウサ耳を付けることをファンに公言しており、今回はその約束を果たすために着用に至ったと語る。そして水樹が「次は12年後……見たい?」と聞くと客席からは大きな拍手が。「言ったね!?12年後(ウサ耳で)出てきたときにドン引きしないでよ!」と新たな約束を交わし、ここでウサ耳は外して本公演唯一となるバラードゾーンに移行する。


このパートで彼女が歌ったのは「ストラトスフィア」と「深愛」の2曲。前者は水樹が2022年にリリースした最新アルバム『DELIGHTED REVIVER』からのセレクトで、いわば彼女が今伝えたい想いが詰まっている楽曲と言える。宇宙と自然の存在の大きさを感じさせる壮大な映像をバックに届けられるのは、“生きる”ことを力強く肯定する歌。コロナ禍などの大変な状況が続くこの時期だからこそ、“生きるのは 苦しむためじゃない don’t cry”というフレーズが余計に胸に沁みる。そして彼女の代表曲「深愛」。2009年1月21日、水樹の誕生日にリリースされ、彼女を憧れの場所へと連れて行った深い愛の歌だ。
この曲はいつでも感動を呼んでくれるが、この日も会場中のペンライトを白に染め上げて素晴らしい景色を見せてくれた。

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『なのは』への愛と情熱に溢れた“−LIGHTNING MODE−”
続いて上映された幕間のショートムービーは、“HERO NANA”に扮した水樹が敵と戦う、アメコミ映画風のアクション大作に。彼女が後にMCで語ったところによると、なんでも撮影は2日間かけて行ったとのことで、水樹も指導を受けながらアクションに挑んだという。そして劇中、ボスとの戦いでピンチになった“HERO NANA”を助けるべく、「諦めたらあかん!」と関西弁で登場したのが、ヒーローの“ウエダカンヌ”こと声優の植田佳奈。『魔法少女リリカルなのは』シリーズで八神はやて役を務めている縁からのゲスト出演だ。ウエダカンヌはたこ焼き攻撃が敵にまったく効かず、あっけなく敗北するも、倒れた仲間の姿を受けて覚醒した“HERO NANA”が敵ボスを見事に倒し、一件落着というストーリーだった。

その映像のラストで月に向かって飛び立った“HERO NANA”だったが、今度は本物の水樹がメインステージの上空にフライングしながら登場!高さ約12メートルの空を左右に舞いながら「FEARLESS HERO」を歌唱し、さいたまスーパーアリーナの広大な空間にヒロイックな歌声を響き渡らせる。続いてシタランティーノの情熱的なギターソロから始まった「WILD EYES」では、かがり火の焚かれたステージに降り立ち、燃えるようなボーカルでオーディエンスの心に火を付ける。赤を基調とした衣装も楽曲の雰囲気にピッタリだ。

その後のMCで水樹は、久しぶりのフライングに挑戦した理由について、ヒーローは乗り物よりも自力で飛ぶイメージのほうが強かったためと説明。過去のライブで幾度となくフライングしてきた水樹だからこその発想と言えるだろう。そしてライブは早くも終盤戦ということで、ここからはさらに熱いパートに突入。劇場作品『魔法少女リリカルなのは Detonation』の挿入歌「GET BACK」、劇場作品『魔法少女リリカルなのは Reflection』の主題歌「Destiny’s Prelude」を立て続け、そのうえダメ押しとばかりに『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』挿入歌「Don’t be long」を畳みかける。『なのは』楽曲の連発ばかりでなく、バンドメンバーと共にステージを駆け巡りながらのパフォーマンスに、改めて無尽蔵のエネルギーを放出する水樹のすごさを実感できた。

そして「“−LIGHTNING MODE−”の最後はこの曲以外に考えられなかったです」「“永遠の炎”をみんなで灯してください!」と前置きして歌い始めたのは「ETERNAL BLAZE」。TVアニメ『魔法少女リリカルなのはA’s』のOPテーマであり、彼女が自身のライブで最も多く歌っているであろう、水樹とファンにとってとても大切な歌だ。火柱の演出が熱気を煽るなか、彼女は今までよりも一層熱い歌声を会場に降り注ぐ。間奏で“ETERNAL BLAZE”と歌う決め部分では恒例のジャンプで会場が一体となり、そこにいるすべての人が胸に“永遠の炎”を灯して、ライブ本編は終幕した。

アンコールは明るく華やかな「ミラクル☆フライト」からスタート。フロートに乗って客席に登場した水樹は、アリーナを周回しながら、接近戦でファンの1人1人に向き合い反応しつつ歌を届ける。チェリボメンバーとteam YO-DAも花道の最前方で輪になってパフォーマンスをするなど、まるでカーニバルを見ているような気分だ。さらに誰もが笑顔になれる人気曲「POP MASTER」を歌唱。最後はメインステージに戻った水樹がジャンプすると同時に銀テープが発射され、会場はピースフルな空気に包まれる。

その後のMCコーナーでは、チェリボメンバーが前触れなく「Happy Birthday to You」を演奏し始めると、特大のバースデーケーキが登場するサプライズも。水樹は突然のことに驚きながらも、嬉しそうにろうそくの火を吹き消し、「最高の1年にするぞー!」と抱負を語った。そして彼女は『なのは』楽曲が満載となったこの日のライブを振り返りつつ、2020年1月に行われた同作の15周年イベント“リリカル☆ライブ”で新プロジェクトの始動が発表されたことに触れ、「なのはたちに会いたいよねー!」と作品への想いを改めて語る。客席も含め『なのは』を待望するムードになるなか、続いて歌われたのは、劇場作品『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A’s』の主題歌「BRIGHT STREAM」。その希望ある未来に向けて思いを馳せる歌声は、『なのは』との再会を願うすべての人の気持ちを代弁するようだった。

そして水樹はコロナ禍でのライブの状況に触れ、「近い将来、これまでのように、みんなで歌って、飛んで、思い切り絶叫できるような時間が来ますように、そんな“祈り”を込めて。最後の曲は皆さん、全力でかかってきてください」と語る。彼女がこの日の最後に用意していたのは「Pray」。『魔法少女リリカルなのはStrikerS』の第24話「雷光」、フェイトの戦闘シーンで流れた挿入歌だ。“−LIGHTNING MODE−”のフィナーレを飾るのに、これ以上相応しい楽曲はないと言えるだろう。レーザー光線の演出がまるで雷光のように飛び交うなか、水樹は不屈の精神を感じさせる力強い歌声とステージングで、“護るもの”のために立ち上がるヒーローとしての在り方を表現。終わってみると全22曲中12曲が『なのは』関連曲という、“リリカル☆ライブ”ばりの濃厚なセットリストで“NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023”のday1を終えた。

“NANA MIZUKI LIVE HEROES 2023”
2023年1月21日(土)“-LIGHTNING MODE-”

<セットリスト>
01. innocent starter
02. BRAVE PHOENIX
03. PHANTOM MINDS
04. SECRET AMBITION
05. 迷宮バタフライ -diverse-
06. 天空のカナリア
07. Bunny!
08. Angel Blossom
09. PRIDE OF GLORY
10. Take a shot
11. ストラトスフィア
12. 深愛
13. FEARLESS HERO
14. WILD EYES
15. GET BACK
16. Destiny’s Prelude
17. Don’t be long
18. ETERNAL BLAZE

―ENCORE―

EN01. ミラクル☆フライト
EN02. POP MASTER
EN03. BRIGHT STREAM
EN04. Pray

関連リンク
水樹奈々 オフィシャルサイト
https://www.mizukinana.jp/

水樹奈々オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/@mizuki_nana

水樹奈々オフィシャルTwitter
https://twitter.com/NM_NANAPARTY