2023年3月、声優アーティスト・上坂すみれのライブ“SUMIRE UESAKA LIVE 2023 TALES OF SUMIPE 運命の書/同人の書”が立川ステージガーデンにて開催された。2013年に「七つの海よりキミの海」にてアーティストデビューを果たした上坂にとって、2023年は活動10周年イヤーにあたり、その記念すべき最初の舞台となったのが今回のライブだ。開催は3月18日・3月19日の2daysにわたり、1日目には“運命の書”、2日目には“同人の書”というサブタイトルも付けられ、そのネーミングからは独特な世界観も感じることができる。今回は本公演2日目にあたる“同人の書”の様子をレポートする。TEXT BY 一野大悟PHOTOGRAPHY BY 鈴木健太(KENTA Inc)、高橋定敬出し惜しみなし、ライブスタート早々から全力疾走!ライブ会場に足を踏み入れると、開演前のステージにはどこか少し懐かしいフォントで書かれた“SUMIRE UESAKA LIVE 2023 TALES OF SUMIPE 運命の書/同人の書”の文字。そこには90年台ゲームミュージックやシティポップが流れ、開演前から会場内は“すみぺワールド”としか形容することができない独特な空気が流れていた。「カーン!」会場の照明が消えた瞬間、ゴングの音が会場内に鳴り響いた。ステージが真っ赤な照明で照らし出され、そこに4人のバンドマンが現れる。スラックスに白シャツ、ネクタイを身につけたバンドメンバーたちが力強く「趣味者のテーマ~underground heaven!!」を演奏すると、聞こえてきたのは清野茂樹によるナレーション。プロレスや格闘技などの実況アナウンサーとして高い人気を誇る氏がバンドメンバーを次々に紹介していくと、締めにこう告げる。「さぁここから逆転の上坂すみれが始まる!拍手と歓声が交錯する中、ステージという名のリングに足を踏み入れる。いよいよ上坂すみれ同人の書が幕開けだー!!」ナレーションのテンションが最高潮に上り詰めたその瞬間、上坂のシンボル・革ブロマークが天に高く掲げられていく。そして、待ちに待った本日の主役・上坂すみれが登場。ここまでの力強いナレーションからは予想しえないガーリーな衣装に身を包み、手にはマイクを持った彼女。ここでライブ第一声が発される。「解放せよ乙女賛歌!」この一言を皮切りに、改めて今回のライブの真のスタートが訪れる。バンドの面々がアッパーな演奏を披露すると、会場内に集まったファン・通称“同志”たちがサイリウムを真っ赤に光らせる。「筐体哀歌」、開始早々、溢れんばかりの熱気が会場を包み込む。そして、2番の間奏では上坂が叫ぶ。「あーーーーーーー!」惜しみないシャウトに会場はさらにヒートアップ、開始早々からボルテージは最高潮に至ったのだった。ステージ上の照明がキュートなピンク色に変化、続いたのは「♡をつければかわいかろう」だ。キュートなパフォーマンスを見せる上坂、その様子に胸打たれる同志たち、そこに本楽曲内でも一際耳を奪う“コールアンドレスポンスのお時間”が訪れる。「上坂すみれは?」その問いかけに、思い思いのレスポンスを送る同志たち。長らく声出しライブが行えずにきた上坂にとってもこの好き放題さは久々に触れるものだったのだろう、“コールアンドレスポンスの時間”を終えた瞬間に、つい笑ってしまう姿が印象的だった。ここに一瞬の静寂、キーボードによる優しいメロディが奏でられると、そこにゆったりと歌声を重ねる。ここまでの盛り上がりを経てここで一度、落ち着いた楽曲が……と思わせた瞬間に空気感は一転、バックバンドによるパワフルな演奏が合流。続いたのは「閻魔大王に訊いてごらん」、バンドのサウンドに負けない力強い歌声が合わさると、そのパワーのぶつかり合いに会場中の熱気もさらに高まった。ライブ開始からここに至るまでを、上坂が、同志達が、全速力で駆け抜けていったのであった。コールアンドレスポンスで再会を喜び合う上坂すみれと同志たち「元気すぎじゃない?」本ライブ初のMCパート、想像以上の熱気を見せた同志たちに上坂が驚きの表情を向ける。そして、長らく会うことができなかった同志たちに「みんな動いてしゃべってる!二次元の住人じゃなかったんだ!」と独特の言い回しで喜びを表現、それに同志達はサイリウムを振って答えた。改めてここで、ステージ開始直後の清野茂樹によるナレーションを振り返る。「内藤哲也(プロレスラー)になったような気分になったよね!」と述べると「トランキーロ!あっせんなよ!」と内藤選手のマイクアピールさながらの発言するも伝わり切らず……。ちょっと不貞腐れ気味に「わからない人はお父さんお母さんにきいてください」と述べて笑いを誘った。そしてライブパートが再開、MCを挟んで最初に披露したのは、「S・O・X」コールが印象的な「Inner Urge」。久々の声出しOKのライブ、渾身の「あは~ん!!!」が会場に響くと、同志達たちも負けじと「S・O・X」を連呼した。その声は、まるで再会を喜ぶ雄叫びのようだった。「たいよう、たいよう、あーしたいよう!」「おおおーおーおっおー!」「げんし、女子は、たいようだった。」、疲れ知らずの雄叫びはさらに熱いものとなる。そこに90年代ゲームミュージックを思わせるサウンドが続き、ステージが青く染まる。「サイケデリック純情」、ダンサブルなテンポに同志達も身体を揺らす。サビに入ると上坂自身もダンスを披露、曲にあわせて照明はピンク、イエローと切り替わりを見せ、視覚的にも同志たちを楽しませた。そこに「地獄でホットケーキ」とダンサブルなナンバーが続く。会場全体が全力で身体をゆらし続け、鳴り響く音楽を全身で満喫したのだった。ここで一度音が止まり、スクリーンにはファンタジーの世界に入り込んだ上坂が映し出される。「変な人って言われることもあるけど……これを見ているお前も変なやつだからな!」愛のあるいじりが早々に飛び出すと、そこから改めて幕間映像がスタート。突如現れた神(CV:福山 潤)から1つの課題が課される、「“モフリクリスタル”を集めろ」と。“モフリクリスタル”、それはモフモフした動物と戯れることで手に入るクリスタル。それを手に入れるべく、上坂がかわいい動物達と触れ合う姿が映し出されると……唐突に映像は終わり再びライブパートが帰ってきたのだった。上坂すみれワールド全開の中盤戦!幕間映像を終えるとそこに白いロリータ服に身を包んだ上坂が登場、ステージ両サイドに設置されたミラーボールが全方向に眩い光を振りまくと、レトロポップなサウンドが流れ、エモーショナルな空気が会場を包む。「海風のモノローグ」では同志たちが青いサイリウムを掲げ、光り輝く海が広がった。舞台は海から街へと移行する。シームレスに続く「City Angel」の心地良いサウンドに緩やかに身体を揺らし続けると、そこに4回のハイハット。アダルトな空気感は一気にキュートに変貌する。そう、「踊れ!きゅーきょく哲学」だ。そのタイトル通り、上坂が、同志たちが曲に合わせて踊り、ライブ会場は一瞬にしてダンスホールに変貌を遂げたのだった。ここでMCパートへ。「幕間映像の間にお着替えしてきました~」と白いロリータ服を改めて紹介。「この衣装のコンセプトはなんでしょう……イノセントエンジェル?イノセントエンジェル31歳です!」と上坂らしさ全開の自己紹介に会場からは笑いが漏れる。「続いての楽曲には振付があります」と続いたのはディスコサウンドが印象的な「Car♡Wash♡Girl」。会場中の同志たちが息ぴったりに振付を披露し、ライブでしか感じられない一体感で溢れていた。「Car♡Wash♡Girl」から一転、ハイテンポな「よっぱらっぴ☆」が続く。そこにさらに「ウエサカダイナミック」が続き、「倒せ倒せ右坂!」「倒せ倒せ左坂!」と、独特のコールがなされ、会場内は完全たる上坂ワールドの中に飲み込まれていったのであった。そして再度暗転し、幕間映像が再開。上坂がフェレットと、フェネックギツネと戯れる平和な映像が流れ、ここまで昂りきっていた同志たちが一度クールダウン、ただただ映像に癒される。その後、例の“モフリクリスタル”を手に入れながらカオスな展開を経て、「それじゃあそろそろライブに戻りますか」というゆるい振りで映像が終了、ライブパートに舞い戻った。アーティスト活動10年の感謝の一言力強さ溢れるロックサウンドでスタートしたのは最新曲「LOVE CRAZY」。そのアッパーなサウンドにあわせて照明は赤と黄に激しくスイッチ、視覚効果も相まって同志たちのテンションを再び最高潮に。ここで全力でライブを楽しむ同志たちに、上坂からの労いコールアンドレスポンスが入る。「肩痛くないですか!」「Yeah!」「腰痛くないですか!」「Yeah!」「給料に満足していますか!」「Boo!」そして「皆さんそれでは地獄へいってらっしゃい!」との曲振りからスタートしたのがTVアニメ『鬼灯の冷徹』EDテーマの「パララックス・ビュー」。裏拍の強い、上坂いわくノリづらいビートにきれいに歌声が重なると、同志たちは小刻みにサイリウムを震わせる。再びミラーボールが会場中に光を撒き散らすと90’sエレクトリックサウンドが会場内をディスコに変える。「来たれ!暁の同志」、上坂自身も曲に合わせてパラパラ風の振付を披露。ここでバンドメンバーの紹介、上坂が各人に無茶振りコメントを要求すると、バンドメンバーもそれにハニカミながらも答えていく。すると、逆襲するかのようにバンドメンバーから上坂にも「アーティスト活動10年の感謝を、ラムちゃんのモノマネで! どうぞ!」という無茶振りが!言葉に詰まりながらも披露すると、客席は黄色のサイリウムを振り、喜びを表現したのだった。ライブもラストスパートに突入、ミラーボールが色とりどりのライトを会場中に送り出すと、「POP TEAM EPIC」がスタート。再び会場内はディスコに豹変したかと思うと、間髪を入れずに「EASY LOVE」が続き、本編ラストのナンバーである「革命的ブロードウェイ主義者同盟」で一気に駆け抜ける。「どんな逆境にも立ち向かえ」、その言葉に、これまで声出しライブが行えずにきた数年間が重なり、このうえないエモーショナルが溢れた。そして本楽曲のラストにはおなじみの掛け声が入り、ライブ“本編”は熱気溢れるままに締め括られたのだった。「ラムのラブソング」のカバーに会場中が大熱狂ここでスクリーンにスタッフロールが映し出される。そのラストに上坂自信が登場して一言。「本編が終わったということは、この後ちょっとしたことが……」会場内を包む“すみぺコール”、それに応えるようにステージに上坂すみれがカムバック。イエローのスカートに黒のTシャツ、白の付け襟というフェミニンな装いので登場すると、最新シングル「LOVE CRAZY」カップリング曲である「リベリオン」を披露。観客は再び高いテンションに包まれる。その後の告知タイムでは“Animelo Summer Live 2023 -AXEL-”への出演、アーティストデビュー10周年記念本の発売、14枚目のシングルリリースなど、アーティストデビュー10周年イヤーの展開を期待させる告知を丁寧に重ねていく。そして改めて本日会場に集まった同志の面々にメッセージ。「ありがとう! 10年友達だからこのあと10年も友達・同志になれるよね!」そしてここでサプライズの1曲へ。上坂すみれがヒロイン・ラムを演じるTVアニメ『うる星やつら』。その“1978年放送版”の主題歌「ラムのラブソング」を披露したのだ!二代目ラムの生声で歌われる“一番好きよ”の言葉は、聴くものを幸せにせずにはおかない。そしてここで本当のライブの締めくくりが訪れる。「みんな好き!大好き!私たちずっと同志でいようね!」そう言ってスタートしたのはデビュー曲「七つの海よりキミの海」。上坂すみれアーティストデビュー10周年、このタイミングで聴く本楽曲に、同志たちは大いに盛り上がるとともに、10年という時間を噛み締めた。コロナ禍を経て、久々の声出し解禁で開催された今回のライブ。そこで発せられた同志たちの声に、上坂自身も力をもらったことは間違いない。それを改めて確認するかのように、上坂すみれと同志たちによる「生産!団結!!反抑圧!!!」が三唱される。こうして本ライブは、終始高い熱気のなか、締め括られたのだった。<セットリスト>M01. 趣味者のテーマ~underground heaven!!M02. 筐体哀歌M03. ♡をつければかわいかろうM04. 閻魔大王に訊いてごらんM05. Inner UrgeM06.げんし、女子は、たいようだった。M07.サイケデリック純情M08.地獄でホットケーキM09.海風のモノローグM10. City AngelM11.踊れ!きゅーきょく哲学M12. Car♡Wash♡GirlM13.よっぱらっぴ☆M14.ウエサカダイナミックM15. LOVE CRAZYM16.パララックス・ビューM17.来たれ!暁の同志M18. POP TEAM EPICM19. EASY LOVEM20.革命的ブロードウェイ主義者同盟―アンコールーEN01.リベリオンEN02.ラムのラブソング ※カバー曲EN03.七つの海よりキミの海●番組情報上坂すみれ SUMIRE UESAKA LIVE 2023 TALES OF SUMIPE5月4日(木・祝)17:00~※放送終了後~WOWOWオンデマンドで1カ月間アーカイブ配信あり収録日:2023年3月19日収録場所:東京 立川ステージガーデン関連リンク上坂すみれ 公式サイトhttp://king-cr.jp/artist/uesakasumire上坂すみれ 公式Twitterhttps://twitter.com/uesaka_official上坂すみれ 公式YouTubehttps://www.youtube.com/@uesakasumire