「プリキュア」シリーズ20周年を記念する作品の1つ、『キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~』(以下、『キボウノチカラ』)。『Yes!プリキュア5』『Yes!プリキュア5 GoGo!』『ふたりはプリキュア Splash☆Star』の登場人物たちが“オトナ”に成長した姿を描くが、そのEDテーマにはキュア・カルテット(五條真由美、うちやえゆか、工藤真由、宮本佳那子)が歌う「雫のプリキュア」が起用されている。
そこで、その4人に集まっていただき、キュア・カルテット結成当時の話から、今回の『キボウノチカラ』への印象などを語ってもらうと、プリキュア史やアニメ史に残したいエピソード、現在まで続くプリキュア歌手間における仲の良さはここにあったかと感じさせるエピソードが溢れるように零れだした。その雫の数々を受け取ってほしい。

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

一緒に作り上げた仲間がいつの間にか「カルテット」に
――今回はレジェンドであるキュア・カルテットの方々に集まっていただきましたが……。

宮本佳那子 「レジェンド」なんて言われ慣れていない(笑)。

五條真由美 去年(“デリシャスパーティ♡プリキュア LIVE 2022 Cheers!Delicious LIVE Party♡”)で慣れたでしょ?

宮本 いや、去年もそわそわしていました。プリキュアライブの歌手公演(“かんぱいParty♡”)に出演したとき、五條さんと私がレジェンド枠と言われて、「まだまだ私は全然レジェンドじゃないのに」「年齢的にはMachicoさんとそんなに違わないし」って。今回のキュア・カルテットでは末っ子ポジションなのですごく落ち着きます(笑)。

五條 最後にキュア・カルテットとして出演したのはいつだっけ?

宮本 5周年記念ライブ(“プリキュア☆ミラクル☆マジカル☆コンサート”)が最後だったと思います。

工藤真由 15周年ライブ(“プリキュア15周年Anniversaryライブ ~15☆Dreams Come True~”)でも4人で歌いましたよね?

宮本 「4人」ではなかったと思う。

うちやえゆか (メドレーの1曲目で歌唱した)「プリキュアモードにSWITCH ON!」だけで。

五條 そのあとに、他(のプリキュア歌手)のみんなが入ってきた感じ?

宮本 そうです、そうです。

五條 そうか。
「キュア・カルテット」としてではなかったんだよね。だからやっぱり5周年記念ライブ以来。

宮本 今回の『キボウノチカラ』は、私の歌手デビュー作でもある『Yes!プリキュア5』(以下、『5』)の子たちが出てくるということで、また携われたことが嬉しいです。あと、キュア・カルテットは5周年のスペシャルユニットみたいな形だったんですけど、当時は右も左もわからず、歌手になると思っていないままにデビューしたので、先輩方にステージでの立ち振る舞い方やマイクの持ち方、スピーカーの音の聴き方とか、色々教えてもらっていました。そこから15年のときを経て、新曲を一緒に歌えることはすごく嬉しいですし、皆さんの隣でステージに立てるのがすごく楽しみです。

――色々と教えてもらったということですが、工藤さんと宮本さんが先輩方から言われたことで印象に残っているものはありますか?

宮本 『5』のミュージカルショーで、『ふたりはプリキュア Splash☆Star』(以下、『スプラッシュスター』)の主題歌を歌った先輩としてうちやえさんと共演させていただいたときに、私は1番のところで2番の歌詞を歌ってしまって、ステージをハケたときに悔しくて泣きそうになったんですね。そうしたら、うちやえさんが「今泣いちゃだめよ。泣いたら声が変わってしまうから、終わるまで我慢しないといけない」と声をかけてくださって。私は今もその言葉を胸に刻んで、ステージでは泣かないようにと思っています。

うちやえ 佳那子ちゃんはとにかくリハーサルを頑張っていて、かわいかったんですよね。だから、いつもの元気なままでいてほしいと思って話しかけたんだと思いますけど、それで気持ちが晴れたなら良かったです。

宮本 素敵な先輩です。
子供たちに向けて歌っていくにはどうすればいいかというところを含めて、直接というよりもその横顔とお姿で教えてくださって。お二人から学んだことはすごく多かったです。

うちやえ 私たちも最初は手探りだったからね。

工藤 3人でミュージカルをやっていたときは楽屋で色々とお話させてもらいましたし、今の佳那子の話は私の中でもすごく響いた言葉として覚えています。五條さんには、その背中を見て学んだ部分がたくさんあって。私が2年目で『Yes!プリキュア5 GoGo!』(以下、『5GoGo!』)の主題歌(「プリキュア5、フル・スロットル GO GO!」)を担当したとき、『プリキュア』も5年目ということで一緒に歌う機会が増える中で「真由ちゃん、歌、良くなったね」って褒めてもらったんですよね。それがすごく嬉しかったです。

宮本 私、言われたことない!もうこれは、「五條さんに褒めてもらえるまでやめられないな」と今、強く思いました(笑)。

工藤 (笑)。教え方の全然違う、そんな2人の背中を見ながら、どうやって歌っていけばいいのか、先輩たちから学んでいきましたね。でも、佳那子からも教わったことももちろんありましたし、私が年上だから教えたところもありましたけど、姉妹のような関係で面白かったですね。

宮本 はい、お姉ちゃんみたいな存在です。


――キュア・カルテットが結成されたときの感想は覚えていますか?

五條 でも、結成という感じじゃなかったんですよね。4人で歌う機会があったなかで、いつの間にかキュア・カルテットになっていたような。

宮本 「私たち、キュア・カルテットって名前なんだ」みたいな。

五條 そう。むしろ20周年になった今、初めて「キュア・カルテットです」という感じでこうやってお話をさせていただいています。なので結成した感覚がないんですよね。

宮本 5周年ライブのときも「プリキュアの歌手の皆さんです」みたいな紹介のされ方でしたよね。私たち以外にプリキュア歌手がいなかったから。

――あぁ、なるほど。

五條 佳那子ちゃんも最初のシリーズ(『ふたりはプリキュア』)の楽曲(「ゲッチュウ!らぶらぶぅ?!」)からコーラスで参加していたし、そのあとに『スプラッシュスター』でやえさん(うちやえ)が入ってきて、『5』で真由ちゃんが入ってきて、4人で一緒に歌うことも多くなってきたなかで、たまたまある日、「キュア・カルテット」と言われた感じだったんですよ。

――後輩みたいな、仲間みたいな感覚ですか?

うちやえ 一緒に作り上げた部分もあるので、後輩だけど頼りになる仲間みたいに今は思っています。

五條 私は“後輩”の感覚が強いかもしれない。
あと、やえさんはすごく難しいの!『プリキュア』シリーズでは私が先輩になるけど、芸歴も年齢も上なので後輩という感じではないし。

うちやえ はっきり言っちゃうね(笑)。

五條 でもやっぱり“同志”という感じかも。最初の頃は『プリキュア』が今みたいに大きなコンテンツではなくて、特に私が歌っていた1年目は皆さんにまだ浸透していなかったんですよね。『5』のときも、キュア・カルテットができたときもまだそうでした。

うちやえ うんうん。

五條 だから、真由ちゃんも佳那子ちゃんも、後輩でもあり、同志でもあり、一緒に苦楽を共にした仲間みたいな部分がありますね。歌手として呼ばれていても「私たちは何をやればいいんだろう?」みたいなところが多い時代だったんですよ。

――小さな劇団では出演者も裏方を担う部分がありますが、そういった全員での手作り感があったということでしょうか?

うちやえ そうなんです。

五條 本当に。だから、歌手として作品に参加するだけではなく、作品が育っていく過程を一緒に歩んでいる感覚があります。

イベントで感じた熱気をスタッフや声優陣に伝えるという役目
――その頃、『プリキュア』が大きなコンテンツになりそうな雰囲気は感じていましたか?

五條 あの……正直、最初はあまり期待されていなかったと思います。
でも、当時、『ふたりはプリキュア』(以下、初代)の放送が2月にスタートして、3月くらいに池袋のサンシャインシティ噴水広場でイベントを行ったら、3階までいっぱいになるくらい人が集まったんですよ。CDもおもちゃも数をあまり用意していなかったので、ほぼ皆さんに歌を聴いてもらうだけになったくらいで(苦笑)。ただ、そのときに人気のすごさは感じました。大阪と東京で第1話の試写会があったときも、来ていただいた皆さんの反応はすごく良かったです。それに、あの当時はいわゆるタイアップ的な主題歌が多かったと思うんですけど……。

――J-Popアーティストによる主題歌が増えていました。

五條 でも、(OP主題歌の「DANZEN!ふたりはプリキュア」は)久しぶりに番組名を連呼する曲だったんですよね。しかも『ふたりはプリキュア』は(プリキュアのカラーが)黒と白だったので男の子もイベントに結構来てくれたんです。2年目が決まった時点で『プリキュア』がかなり浸透してきたとは感じました。それと当時は(プリキュアの)声優さんが表に出てくることもなかったので、主題歌を歌っている私がイベントに出ることが一番多い立場で、視聴者の皆さんと会う役目だったんです。だから、プリキュアに対する興味や空気感はすごく感じていましたし、私はそれをスタッフさんや声優陣にお伝えてしていました。1年目はほぼ稼働なしで、2年目で少しずつ稼働が増えてきたのかな?イベントがちゃんと動き出したのはもう少し後だったと思います。


うちやえ その辺りからお試しで色々やるようになったよね。

工藤 私たち(工藤と宮本)が担当した『5』のときに初めて衣装を作ってもらえて。

宮本 サンクルミエール学園の制服の衣装を着て、プリキュアの友達という感じでした。

工藤 私たちは主題歌シンガーとして作品をよく理解した上で子供たちの前に立つ、子供たちとプリキュアを共有することを非常に大事にしていた記憶があります。

――今は、「プリキュアの主題歌シンガーに決定=イベントやライブで忙しい1年」というイメージですよね。うちやえさん、工藤さん、宮本さんは『プリキュア』に参加されるときの心境は覚えていますか?

うちやえ 私は1年目に『ふたりはプリキュア ボーカルアルバム2 Vocal Rainbow Storm!!~光になりたい~』で1曲(「Beautiful World」)歌わせていただいたんですけど、そのときに五條さんと名刺交換をしたんです。

五條 そう、やえさんが名刺に顔写真をシールにして貼っていて。

工藤 ありましたね!

うちやえ その後に『スプラッシュスター』のOP主題歌(「まかせて★スプラッシュ☆スター★」)でまた歌わせていただくことになったんです。私からすれば、『プリキュア』の曲にこんなに適した人はいないだろうと思う歌声の五條さんがいるのに、主題歌を歌うことになって「大変だ」と思いました。シリーズが変わっての歌い手変更でもありましたし、今みたいに毎年シリーズが変わるという流れができていなかったので、自分の歌だけではなく、『スプラッシュスター』が受け入れてもらえるといいなと思っていました。

五條 いつ終わるかわからないっていう状況だったよね。『5』のときも。

工藤 そんな感じでしたね。私、最初にプリキュアのお話をいただいたときはステージの方のお仕事だと思ったんですよ。

五條うちやえ宮本 (笑)。

工藤 でも、ふたを開けたらお歌のオーディションでした。私のときは5次審査くらいまであったんですよね。私自身、五條さんが歌う『プリキュア』の楽曲が好きでよく歌っていましたし、『スプラッシュスター』のアニメも観ていましたけど、お二人(五條とうちやえ)のようなお姉さんな歌声ではないし、歌い方も全然違っていて。ただ、私はダンスが好きで、子供たちと一緒に歌って踊れる人というところで選ばれてもいたので、とにかく全力で歌って踊っていました。振付も自分で考えましたし。

――必死な気持ちで。

工藤 そうですね。『5』のOP主題歌(「プリキュア5、スマイル go go!」)を歌うことが決まったときは嬉しくて夢心地でしたし、テレビで実際に観るまでは信じられなくて、放映を観たときは泣きました(笑)。ワクワクでいっぱいだったことを覚えています。あと、五條さんとの初顔合わせがレコーディングだったこともすごく覚えています。

五條 最初の頃は、コーラスや仮歌はほぼ私たち(五條とうちやえ)だったので。

工藤 すごく緊張しながら挨拶したんですよね。でも、私が「真由」で五條さんが「真由美」なので、勝手に「まゆまゆ同士だ」とは思っていました(笑)。うちやえさんとはそれこそ、佳那子も話していたようにミュージカルで1年間ご一緒して、「ついていこう!」という気持ちでした。ミュージカルが終わった夜、ホテルで佳那子と反省会をしていたんですよ。私から「集合!」って声をかけて、主題歌歌手になったからには次にちゃんと繋げられるように、ここで終わらないようにしていこう、って熱く話し合っていました。部活みたいな感じで(笑)。

宮本 そうでした(笑)。「こんなに完璧なお姉さん二人と並んで歌う私たちには何ができるんだろう?」みたいな話をしていました。工藤さんは「私はダンスが得意だからダンスを頑張る」と言っていましたけど、私は特に何もないから「子供たちと1番歳が近いので笑顔で頑張ります」みたいな。そうやってお互いを励まし合いながらやっていました。

工藤 すごく語っていたよね。お酒も飲んでないのに(笑)。

宮本 その頃は2人とも未成年だったので。

――宮本さんは、デビュー曲が『5』の前期ED主題歌「キラキラしちゃってMy True Love!」ですが、それ以前にもヤング・フレッシュの一員としてコーラスで『プリキュア』シリーズに参加していましたよね。

宮本 コーラスとして「ゲッチュウ!らぶらぶぅ?!」と「ムリムリ!? ありあり!! INじゃぁな~い?!」に参加していました。五條さんにはそのとき、(当時プロデューサーの)鷲尾(天)さんから紹介されてご挨拶したのが初めてでした。「背の高いお姉さんだなあ」という印象で。

五條 アハハ(笑)。

宮本 「キラキラしちゃってMy True Love!」は歌のオーディションがあると言われたので、「あ、受けます」という感じだったんですよね。

――慣れた現場ということで緊張しなかったのでしょうか?

宮本 緊張よりも歌える喜びの方が勝っていたんですよね。子役の時にミュージカルもやっていましたし、全然上手くはなかったんですけど歌は好きだったので。でも、受かるとは思っていなかったです。歌えて、レコーディングしてもらえて、聴いてもらえるなんてハッピー、くらいの気持ちで歌いに行きました。

――なんて天真爛漫な(笑)。

宮本 そうなんですよね(笑)。オーディションを受けたのはOP主題歌だったんですけど、エンディングに決まって、そのときも「わーい!嬉しい!」くらいの感じでした。事の重大さを理解できていなかったと思います。

工藤 だから私がホテルで集合をかけたんだと思います(笑)。佳那子のそういうところに助けられてもいたんですけど、私はもうバリバリ熱い感じだったので、多分「もっと気合いを入れていこう!」と思ったんでしょうね。

宮本 私も受け入れてもらえるかはすごく心配でした。私が歌った「キラキラしちゃってMy True Love!」にしても、それまでのプリキュアの主題歌に比べると歌声に幼い感じがあったと思うので。第1話は本当に正座しながら観て、ちゃんと自分の歌が流れるか確認したくらいで。

頑張ってきた私たちが今ここから応援する、という気持ちで
――改めて『キボウノチカラ』の話を聞いたときの感想も教えてください。

五條 「おぉっ!」っていう感じでした(笑)。でも、「やっとできることなのかもしれない」とも思いました。私たちがプリキュアの曲を歌っていたときと比べると、だんだんと少し上の年齢の方にも観てもらえる作品になりましたけど、それでも“オトナ”まではいかなかったので。20周年ならでは新たな試みですよね。きっと視聴者の方たちと同じ感想だと思います。「えーっ!?」みたいな。

宮本 「あの子たちは永遠の中学生で大人にはならない」という気持ちがあったので、「プリキュアってオトナになるんだ」という印象もありました。

工藤 私は『5』への思いが一番強いので、知ったときは驚きました。でも楽しみしかなかったです。しかも、こうやって声をかけていただいたので。私としては、キュア・カルテットというすごく安心感のある場所で歌わせていただけるのですごく嬉しかったです。

うちやえ 私は、『オトナプリキュア』と聞いて一瞬「?」となりました。でも、実は『スプラッシュスター』のときに日向 咲、美翔 舞、霧生 満、霧生 薫の4人の将来を想って作った「奇跡の雫」という曲があって(『ふたりはプリキュアSplashStar VocalアルバムII ~奇跡の雫~』収録曲)、それは「流した涙も汗も大人になったときには宝物になるだろう」ということを想像して書いていたので、まさかこんなに年月が経ってから本当になるとは、という気持ちでした。彼女たちがどのように歩んできて、どんな服を着て、どんな生活をして、どんな職業についているのか、すごく楽しみです。「雫のプリキュア」の歌詞もすごく深いので、きっと色々あったんだろうなという想像が膨らみますし。



――他のお三方も、楽曲を受け取ったときの印象や感想を教えてもらえますか?

五條 最初は『プリキュア』のEDテーマっぽくない印象を受けて。それは『オトナプリキュア』だからとは思ったんですけど、でも何回も聴いていると、大きなドラマを感じさせてくれたので納得するところはありました。キュア・カルテット名義の楽曲ということで、最初はもうちょっと明るく楽しい感じを想像していて。なので「キュア・カルテットで歌うにはなかなかの大人曲だな」と思いました。

宮本 カルテットはお祭り曲が多いですもんね。

うちやえ 私も、『オトナプリキュア』だからこの曲調なんだろうなとは思いました。歌詞に“涙”という言葉がたくさん出てくるので、これまでの『プリキュア』では子供たちに向けて歌っていたけど、今回はどうするべきかをディレクターさんに聞いたんです。そうしたらやっぱり、「少しオトナに寄せてもいい」ということだったので、今までのプリキュアソングとは違う感覚を歌に乗せられる新鮮さもありました。

工藤 私も五條さんと同じで、もっと明るい曲がくると予想していたので、「こうきたか」と思いました。でも、歌詞には共感するところがたくさんあって。私は本当に『5』と一緒に育って、『プリキュア』には色々なことを教わってきた人生でもありましたし、(『5』の主人公/夢原)のぞみちゃんたちの気持ちになって、『5』の一員として歌わせてもらった部分もあったので、すごくすんなりと入ってくる歌詞でした。重い言葉もたくさんありますけど、それでも明るく前向きに、軽いというかラフな感じだけどキラキラして聴こえたので、「ああ、やっぱりこれは『プリキュア』だ」という感覚を覚えて、すごく嬉しく思いました。しかも、キュア・カルテットの歌声で聴いてもらえるので、皆さんの反応が本当に楽しみです。

宮本 私も初めて聴いたとき、葛藤して、苦悩して、日々の困難なことをたくさん感じる曲だったので、今までの『プリキュア』のイメージとは少し違っていました。でも、レコーディングのときに作品の説明で、(夢原のぞみたち)みんなは友達がいて、プリキュアとして戦って、優等生で……のぞみちゃんは勉強がちょっと苦手なタイプだったけど。

五條うちやえ工藤 (笑)。

宮本 でも、キラキラしていた子たちがオトナになって社会の壁にぶつかり、色々な苦悩を経験していく、と言われて、だからこういう歌詞なのかと納得がいきました。確かに前向きで、どこかにキラキラした希望が隠されているとも感じたんですよね。それに、キュア・カルテットで歌ったものを聴いたら、やっぱりキュア・カルテットの音色にはプリキュアらしさがあるから。『5』を観ていた子供たちが聴いたら、懐かしさとともに、オトナになった自分たちのことも一緒に感じられる曲になったと思います。



――『プリキュア』は頑張る女の子を描いた作品でしたが、『キボウノチカラ』はまだまだ女性には大変なことがある時代に、社会で頑張るオトナになった女の子が描かれるんだろうと感じさせる歌詞だと思いました。だからこそ、ソロではなく、4人で力強く励ますカルテットという形をとったことも納得しましたし、実際、かつて“女の子”だったオトナを励ます楽曲になっているとも感じました。

五條 嬉しいです。冒頭の“目醒めるとき 強くなる瞳に 一粒 光の雫がこぼれた”で4人の歌がパンと出てくるところは、キュア・カルテットならではのスタートになっていますよね。聴く人を最初にギュッとつかむ歌詞になっているので、そこを1人で歌うのか、2人で歌うのか、4人で歌うのかによって聴く方は全然変わりますし、4人で歌ったことで開かれる感じがすごく出たと思います。アニメ本編が終わったあとに流れるエンディングとして、『プリキュア』らしいキラッとするものが出せたかなと。

うちやえ あと、真由ちゃんが“そこにいる”、佳那子ちゃんが“そこにある”、私が“ここにいる”と歌っているところは、いわゆるDメロの「一番言いたいことを持ってくるところ」なんですけど、そこに(作詞の)只野(菜摘)さんがあえて“そこ”“ここ”という言葉を持ってきた、この感覚が素晴らしいと思いました。

五條 私もそのことをやえさんから聞いたとき、「あ、ホントだ」「すごい歌詞だな」と思いました。私が歌う“立ちむかっている”はプリキュアっぽいですし、自分としても歌いやすい歌詞なので気づかなかったんですけど、その強いワードの前に“そこにいる”“そこにある”“ここにいる”という言葉が入るのはすごいバランスですよね。

うちやえ 私も自分が“立ちむかっている”だったら気づかなかったと思います。でも、聴いていたらそれぞれが“そこ”や“ここ”に立っている気がして。「キュア・カルテットがここにいる」「私たちみんなが応援している」というイメージで歌いましたし、私たち4人もそれぞれに頑張ってきたという背景が見えるように歌うことを託されている気がしたんです。だから、ここはすごく力が入りますし、いつも歌いながら考えさせられる場所になっています。なかなか入れられない歌詞だと思いますし、感動しました。

五條 こういう歌詞は聴く側も考えさせられますし、聴くときの自分の状況によって捉える意味が変わってくると思います。

工藤 私もそこは歌いながら考えていました。しかも、そのあとに佳那子と二人で“正直ないのちが”と歌っていて。そこでも「“正直ないのち”ってなんだろう?」ってすごく考えました。でも、聴いているうちにだんだん自分の中に入ってきたんですよね。それに、うちやえさんと五條さんが歌っている“忘れないでね”がすごく『5』らしかったんですよ。のぞみちゃんたちが「忘れないでね」と言っているようで、「うん、忘れてないよ」って胸が締め付けられました。あと、うちやえさんが1人ずつ立っていると言っていましたけど、私も「久しぶりに帰ってきたよ。忘れないでね」という気持ちがありました。なんとなく、大切な人のことを想って聴いてもらえるといいな、と思いましたね。

宮本 私はその後の落ちサビで、1人ずつしっとりと歌い上げていくパートが好きなんです。キュア・カルテットってみんなが個性的で、歌詞カードの歌い分けを見なくても誰が歌っているかわかるんですよね。それは誰かが誰かに合わせるのではなく、みんながそれぞれに自立して、それぞれのシリーズの歌手だという思いを持って歌っているからだと思うんです。でも、みんな同じ方向を向いている、そして歌い継いでいく、というところがすごく感じられました。最後に4人で“一粒に始まる”と歌う部分もスタートを感じさせて、本当に好きなパートです。

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キュア・カルテットごっこをぜひやってもらいたい!
――皆さんの感想まで繋がり、重なっていきますね。もし、小さい子たちや、昔小さかったプリキュアファンが「雫のプリキュア」を歌うとしたらどんなアドバイスをしますか?

宮本 この曲、難しいですよね。技術的なこととして跳躍が多いし、キーは高いし。

五條 出だしから結構ハードだし、(音程が)下がったり上がったりしているところにちゃんとピッチを当てていかないといけないもんね。

宮本 音の動きが細かいんですよね。全部8分音符で。

うちやえ (作曲の)高木 洋さんはそこをよくわかって作っているよね(笑)。

工藤 あと、「Yes!」とか「Five!」みたいな掛け声はなくて。友達と一緒に仲良く歌ってほしい気持ちはすごくありますね。大切な人のことを想って、『5』を観ていたオトナになった子供たちに歌ってほしいです。

宮本 生きる強さがすごく込められている曲だと思うので、あまり飾らずにありのままで歌ってほしいですね。

五條 難しい曲だから、小難しく歌うよりも素直に歌うのが一番いいと思います。

うちやえ あとは、ストレートに元気に楽しく、という『プリキュア』独特のテンションとはまた違うので、アニメの絵を見て、それを思い浮かべながら歌うとイメージを作りやすいかもしれないです。

宮本 絵があるとヒントになりますよね。

うちやえ そう。あとはキュア・カルテットっぽく歌ってみる、というチャレンジも楽しいかもしれないと思いました。

――ではぜひ、プリキュア友達を集めて歌ってもらいたいですね。

工藤 ぜひキュア・カルテットごっこをやっていただきたい(笑)。

――もちろん子供4人でも。

宮本 私のパートが人気なかったらどうしよう!

五條うちやえ工藤 (笑)。



――20周年を迎えた今だから発見できた『プリキュア』の魅力、というものはありますか? “オトナ”になった今だからわかる、みたいな。

五條 どうでしょう?私は最初から“オトナ”だったから(笑)。

うちやえ そうなのよ。(工藤と宮本の)二人の話を聞いていても「違うなぁ」ってすごく感じるよね、今日。

工藤宮本 (笑)。

うちやえ でも最近、『プリキュア』の魅力を改めて考えたときに、地面を踏みしめて立ち上がって、笑顔でいるけど実は頑張っているみたいなところだと思いました。そういう根性論みたいなところが好きなのかもしれないです。昭和っぽいですけど。

五條 私たちは昭和生まれですから。私は意外と日常シーンも好きなんですよね。コメディチックな方が好きなところがあるので。『プリキュア』ってそういう要素もたくさんあるじゃないですか。その意味でも「変わらないな」と思う部分が大きい気がします。毎年、作品ごとにテーマが違っていても、その根本には、壁にぶち当たったり落ち込んだりしても、必ず前や仲間の方しか向かないストーリーがあると感じます。だから、『ふたりはプリキュア』を今観ても、最新シリーズの『ひろがるスカイ!プリキュア』を観ても、やっぱり『プリキュア』だと感じます。20年経ってもそこは変わらないって思いますね。

うちやえ イベントで歌っていたときに、20代くらいの方から「『スプラッシュスター』世代なのでバイトの休憩中に聴きに来ました」と言われたことがあって。自分が観ていた『プリキュア』を大切にしてくれているんだな、と思いましたね。ずっと変わらず、今の子たちが胸を掴まれるような、キラキラしたかわいいところを長年描いてきたからシリーズが続いてきている、と私は思っていて。その変わらないところもすごいですよね。これからも、変化しつつも変わらないところを期待しています。

――工藤さんと宮本さんは『プリキュア』をどのように捉えていますか?

工藤 本当にお二人が言った通りですね。今はどういうものが流行っているかを『プリキュア』を観て知るところもありますし、今年は男の子もプリキュアになったので、きっと『プリキュア』で線を引くところはない気がします。それと、私は、自分が忘れていた何かを思い出させてくれるのが『プリキュア』だと思っていて。私は小さい頃から変身する女の子たちが大好きだったんですけど、変身シーンを見るといまだに鳥肌が立つんですよね。セリフのひと言ひと言が力強いから、「信じる気持ちは本当に大事なんだな」と教えてもらえるし、20年経っても安心して楽しめるところがすごいと思います。

宮本 頑張っている人ってかっこいいじゃないですか。やっぱり輝いてるし、憧れますよね。今年の初めに新宿ウォール456で流れされていたプリキュアの映像を見に行ったんですけど、リアルタイムでプリキュアを見ていた世代のお姉さんたちが一所懸命に写真を撮っていて。それを見て、何年経っても色褪せない憧れがあるんだと思いました。『プリキュア』って永遠の憧れだと思うんですよね。私が『プリキュア』の歌を歌い始めたときは高校生だったんですけど、中学生の(プリキュアの)みんなが頑張っている姿を見て、かっこいいと思ったし、勉強になったんですよね。「私もそういう風になりたいな」って思うことがたくさんありました。だから、どの年代の人たちが見ても憧れる、そういう存在なんじゃないかと思います。



――最後に。20周年記念として改めて皆さんのイチオシのプリキュアを教えていただけますか?

五條 私はずっとキュアマリン推しです。やっぱりコメディが好きなんですよね。キャラデザが好きというのもあるんですけど、すごくかわいいのでキュアマリンが好きです。もちろん『ふたりはプリキュア』の2人(キュアブラックキュアホワイト)は別格というか、どちらかというと同志なので“推す”とは何か違う気がしていて。『スプラッシュスター』もそうですね。(キュアブルーム役の樹元)オリエちゃんや(キュアイーグレット役の榎本)温子ちゃんとは家族みたいな間柄なので。

――キュアマリンは人気ですよね。2019年にNHKが行った総選挙でも3位でした。

五條 私も投票したと思います。あと、(キャラクター部門で)モフルンにも投票しました。声がかわいすぎて大好きなんです。

宮本 (齋藤)彩夏さん。

五條 そう、彼女の声がすごい好きなの。めっちゃかわいい。

うちやえ 私はやっぱり、自分が(主題歌を)歌った『スプラッシュスター』のキュアイーグレットとキュアブルームの2人かな。まあ、1人に選べていませんけれども。

五條工藤宮本 (笑)。

うちやえ 聞かれるといつも困るんですよね。あと、キュアフローラは誕生日が同じ4月10日で、変身シーンのコーラスも歌わせてもらったので、勝手に親近感を感じています。

工藤 私はキュアドリーム一択ですね。彼女の言葉には希望がありすぎて。大好きなのが映画(『プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』)のセリフで、「みんな同じ空の下にいるんだから!」という言葉はすごくズシッときました。のぞみちゃんの言葉を聞くと泣いちゃうんですよ、私。本当に夢があって、希望があって、そのときそのときの私に対して応援の言葉をくれるし、考えがピュアだし。だから『キボウノチカラ』では、のぞみちゃんが挫折を経験しながらもどうやって望みを叶えたのか、というところが気になります。

――宮本さんは?

宮本 いや、これは難しい。

五條 決まってるんじゃない?

宮本 はい、キュアソードを推します。愛しています。

五條 そりゃそうだね(笑)。

――宮本さんは『ドキドキ!プリキュア』でキュアソード/剣崎真琴を演じられているので。キュアソード以外では誰になりますか?

宮本 一人を選ぶのは難しいですが、私もキュアドリームが好きですね。私たち(工藤と宮本)の最初のプリキュアですし。あれ?でも(『ドキドキ!プリキュア』の主人公の)キュアハートが好きと言わないといけないのかな。

五條 いや、大丈夫。私の推しのキュアマリンは『ハートキャッチプリキュア!』だけど、私は何も関わっていないから(笑)。

――20周年ということもありますが、やはり話が尽きないですね。

宮本 世の中の人みんなが『プリキュア』を観て、プリキュアソングを歌ったら世界が平和になると思うんですけど。

うちやえ (笑)。

五條 確かに。

宮本 プリキュアを教科書に載せるべきです。

工藤 そして先生として私たちが学校に行く、みたいな(笑)。

●リリース情報
キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~エンディングテーマソングシングル
12月6日発売

【初回生産限定LPサイズ仕様CD+DVD】

品番:MJSS-09361~2
価格:3,630円(税込)

【通常盤】

品番:MJSS-09363
価格:1,650円(税込)

©2023 キボウノチカラ オトナプリキュア製作委員会

関連リンク
TVアニメ『キボウノチカラ~オトナプリキュア’23~』オフィシャルサイト
https://otonaprecure2023.com/

プリキュア音楽&映像商品公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/precure_marv
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