2023年、16回目の開催を迎える“Original Entertainment Paradise -おれパラ-”(以下、おれパラ)。1年の音楽活動の集大成を見せるべく、小野大輔森久保祥太郎鈴村健一寺島拓篤が熱いパフォーマンスを見せる。
そんな輝けるステージに、久しぶりのリリースとなった配信シングル「ヒカリハナツ」を持って臨むのは、寺島拓篤だ。11月1日より一挙配信を開始した人気アニメ『転生したらスライムだった件』シリーズの完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』のオープニング主題歌として書き下ろされた、ポジティブな光を放つ爽快アッパーチューンである本作。2018年放送の第1期のオープニング主題歌となった「Nameless Story」以降、長くタッグを組む『転スラ』への想い、楽曲制作時のこと、そしておれパラへの想いを余すことなく聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY えびさわなち

アーティスト10周年の先に待っていたのは、自然体での活動だった
――昨年、10周年を高らかに歌い上げるベストアルバム『LAYERING』 で10年から先へと踏み出した寺島さん。踏み出した先にはどんな景色が見えていましたか?

寺島拓篤 良いことだとは思うのですが、力が抜けたんですよね。やる気的な意味ではなく、「あれやらなきゃこれやらなきゃ」と力が入っていくのではなく、10年やってきたことで今まで頑なになっていた気持ちをほどいてもいいのかな、という気がしていて。
根底にあるものは変わらないのですが、曲がりなりにも10年、歌と作詞、そしてライブをやってきて、なんとなく自分の中で「こうしたほうがいいよな」という固定概念が凝り固まっていたこともあったと思うんです。でも、一度そういうものを無くしてみるのもいいのかな、と。普段から「ちゃんとしたい」人間なので、概念を崩すことって怖いなと思ってしまうんですよ。今まで「ちゃんと作っていこう」と思っていたことを、良い意味ではみ出したり、崩したりすることは勇気が必要ではあったのですが、「10年やってきたんだから、あえてはみだしてみよう」という気持ちになっています。

――それでも、音楽を始めたきっかけのときから持っていらっしゃるスタンスについては変わらないんですよね?

寺島 それは変わらないです。今までも「色々なことをやる」という気持ちでいましたから、今後もそのスタンスについては変わらないです。


――ずっと楽しみながら活動されていらっしゃる印象はありましたが、そのお気持ちについては10年を経ていかがですか?

寺島 ライブをやるときも作品を作るときもそうなのですが、過程が大変でも、最終的に「楽しい」が待っているので、「よし、やるか」と制作に気持ちが向かっていくことも変わらないですね。

――今「色々とやっていく」というスタンスは変わらない、というお話が出ましたが、寺島さんはいつも音楽へのアンテナを張っていて、面白いものなどを周囲に波及させていくことも多いような気がしています。最近「面白いな」と感じるのはどんな音楽ですか?

寺島 アンテナを張っているようで、実は最新のものを追いかけているわけでもないんですよね。音楽畑で生きてきた人間ではないので、単純にこだわりがないんですよ。最近は家で家事をやりながらオリエンタルな音楽を聴いています。ワールドミュージックが好きで、様々な国へ心を飛ばしているんですよね(笑)。
例えば、ハワイアンミュージックを聴いているときにはココナッツの香りのハンドクリームを塗ってから家事をしたり、アラビアンな音楽を流しているときにはエスニックな香りのある香水をつけてみたりしながら、日常的に音楽と生活とを結びつけながら楽しんでいます。

――ご自身の生活の劇伴みたいですね。

寺島 そうだと思います。箇所箇所で毎日当たり前にやらなければいけないことは迫ってくるので、それを「やらなきゃいけない」というネガティブな気持ちにするよりも、「これをやっている間はこういう楽しいことが出来る」という付加価値をつけて、毎日を楽しくしていこうという感覚で。音楽を共に楽しんでいこう、という思考ですね。

「サトル」として、第1期 第1話以来の登場!
――久しぶりのリリースとなったのが、今回の配信シングル「ヒカリハナツ」です。
まもなくやってくる“おれパラ”でも披露されることとなる1曲ですが、こちらの曲は完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』のオープニング主題歌です。『転スラ』とのタッグも久しぶりとなりますが、これまでの数々のタイアップも含めて付き合いの長くなった『転スラ』はどのような存在だと感じますか?


寺島 第一にありがたい想いですね。元々タイアップする前から好きな作品でしたし、その『転スラ』に初手から関われたことがまずありがたくて、それが今も続いている。こういうことって僕が望んで出来ることでもないですから、お声かけいただけることが本当に嬉しいです。本来、もっと色んな人の歌声で『転スラ』が彩られたら面白いだろうなという気持ちは「Nameless Story」で担当したあとにはすでにあったのですが、その思惑通りにクロエ役の田所(あずさ)くんだったり、海外から勢いのあるMindaRynさんが入ったりと仲間が増えていくなかで、三上 悟を演じる自分が楽曲提供で繋がれて、新しいものをやっていけることは本当にありがたいし、信じられない気持ちだし……なおかつ、実は大変(笑)。そんな色んな想いがありつつ、先ほどの10周年の話とも繋がりますが、今は『転スラ』自体を表すものを、前よりももっと広い視点で見つけられるようになっているんじゃないかなと思っています。


――今回は魔王になる前のリムルとコリウス王国の王位継承権の話でした。なんと大怪盗サトルとしてご出演もされました。いかがでしたか?

寺島 久々に出演しました!キャラデザを見ながら、どう表現をするか悩みましたが、そのままの三上 悟でいいですとのことだったので「わかりました」と。リムルとしてのバトルシーンもありましたが、僕が第1話で演じた三上 悟とはもう違うものになっているんですよね。そこはリムル役の岡咲(美保)さんが数年間演じてきた“リムル”を踏まえたものと、三上 悟の声を上手くミックスできたらな、ということを意識して演じさせていただきました。

――楽曲だけではなく、お芝居でも関われた今作でしたね。


寺島 これは嬉しかったですね。アフレコ現場に行って、変な緊張感がありましたもん。アフレコ現場にいるメンバーも『コリウスの夢』で初参加になる方も多かったんですよね。アスラン役の松風雅也さんとかがいらっしゃるなかで、自分はどういう立ち位置でいたらいいのかな、と。ずっと関わっているけど、まったく出ていないわけではないしな、と不思議な感覚でいました。

――今回、作曲、編曲でタッグを組まれたのはArte Refactの酒井拓也さんです。楽曲が届いたときの印象を教えてください。

寺島 『転スラ』チームからは特に注文もなく「これまでの寺島さんのオープニング感のある楽曲を自由に作ってください」とのことだったので、そのようにお願いをしました。楽曲はもう、単純に「めちゃくちゃ良い曲じゃん!」と。これを歌えるんだ、と嬉しくなりましたし、より良い楽曲にするためにも良い歌詞を書かなければ、と気合いも入りました。

歌詞で描かれるのはコリウス王国での出来事を見つめる寺島自身の視線
――歌詞を書く際にはどんなことを意識されましたか?

寺島 曲を聴いた印象や『コリウスの夢』の物語のキーポイントはどこかな、ということをプロットの段階で読ませていただいて、「どういう歌詞がいいだろうか」と模索していきました。

――これまでにも第1期最初のオープニングである「Nameless Story」からたくさんの楽曲でタッグを組んでこられています。物語も進んできたなかで少し時間軸として過去に戻るお話ではありますが、どういった視点で歌詞を描いていかれたのでしょうか。

寺島 僕のお芝居の感覚とも似ているのですが、どちらかというとそこに存在しているものに合わせていくタイプなので、楽曲の音が変われば自然と歌詞の方向も変化していくんです。それを「メグルモノ」(TVアニメ『転生したらスライムだった件』オープニング主題歌 第二弾)を作っているときにすごく感じていました。「Nameless Story」からだいぶサウンドが変わって、楽曲の持つ気配に寄せていこうと思うと、自然と言葉も傾向が変わっていくものだなと思っていたので、まずは雰囲気に寄って言葉選びをしていきました。不思議なことに共通項が出てくるものなんですよね。それって『転スラ』だからなのか、僕の中にあるものなのかはまだ精査できていないですが、おかげで自然と「寺島拓篤が作る『転スラ』の曲」という一本の軸になっている気がします。結局「ヒカリハナツ」は一周巡って「Nameless Story」の続編のような、後継のような形になったなと僕的には思うんですね。当然、歌詞を見たときに、文字面からは全然違うものという感覚を持てると思うのですが、メッセージや根幹にあるテーマはだいぶ「Nameless Story」に近い感じになりました。「Nameless Story」もある種の“やり直しの物語”。転生したことで、そこから次の一歩を踏み出す、という新しい一歩への背中を押す楽曲ですけれども、「ヒカリハナツ」もそうで。『コリウスの夢』がまさにそういったストーリーでもあるので、それを表現できたらいいなと思って書いていきました。

――『コリウスの夢』の物語自体にはどのような印象がありましたか?

寺島 まさに“番外編”!僕らが子供のころから見てきた色んな作品のスピンオフ作品ですよね。「この事件の頃、その一方で実はこんなことが起きていました」という物語を、第3話完結という美しい形で表現されているなと思いました。視覚的にも異国の風景が広がることでスピンオフ感も出ていますし、よく出来ているなと思いました。

――そんな物語の印象、そして楽曲の印象から生まれた「ヒカリハナツ」ですが、歌詞の視点としてはどういうところに定めて作詞をされたのでしょうか。

寺島 第三者的な視点というか、僕の視点ですね。もちろん今回のキーマンになるであろうコリウス王国の人たち……ゼノビアとサウザーとアスランのみんなが微妙にすれ違ったままいざこざしていますが、心の中にある美しいものや彼らの抱えている輝きが大事で。それが良い未来に進むためへの一番の光になるということを軸に描いていこうと思いました。あとは、もう1人のキーマンであるルミナスの名前といったキーワードをどう織り交ぜようかなと考えていきました。“Luminous”は元々ある英語で、光り輝くということに繋がりますし、“強さ”という意味ではルミナス自身を見れば、その通りですから。そこ上手くリンクしたなと思います。

――寺島さんが描く89秒で聴かせる世界観と、その先のストーリー。普段からどのように意識されていますか?

寺島 これは本当に難しいですよね。テレビサイズは大体1番か最後のサビを使用するんですが、僕はその間のミッシングリンク的なところでどんな物語を描くかをすごく考えます。僕的には1番や最後のサビは、どちらかというとウェイトとしてライトめにしていて、2番のサビがコアなことを表現していたりするんです。毎回流れるものにわかりにくい表現を入れるのもよくないだろうと思ってしまっていて、1番は割とわかりやすく作っているところがあります。『転スラ』のようなタイアップ作品の楽曲については、2番まで聴いて初めて全体がわかるような作りにしているので、映像と一緒にテレビサイズを聴いている方も、フルサイズで聴いてもらって、歌詞からキーワードを探してみてもらえたら嬉しいですね。今回も2番のBメロはまさに物語の核心に繋がっていて、ゼノビアの目が見えないところとリンクしています。彼女の「ネガウモノ」という能力でオーラのような、見えないものだけれど見えていることを、ルミナスの光と併せて表現したいと思ったんですよ。ぜひ、そういう紐解きもやってみてほしいですね。

――その1曲を、歌ではどのように表現しようと思われたのでしょうか。歌声が、10周年を越えたとは思えないほど瑞々しい印象でして……。

寺島 僕も思いました(笑)。「若いな」って。歌っていくなかで、自分なりに発声というほどのどっしりしたものではないにしろ、発音に近い感覚で、この音階でこの音のときに口をこれくらい開いていたほうがいいよなとか、音をこっちに抜いたほうがいいなといった細かい作業について、この10年間で自分の歌に対する好みも生まれてきたんです。それが今回のレコーディングでははまったなと思いましたし、それもあって今回の歌はすごく気に入っています。

――特に「ここの歌い方にはこだわったな」というのはどんなところですか?

寺島 サビです。細かくいえばたくさんありますが、Aメロの落とし具合もそうですし、それが重くならないようなブレスの混ぜ方も含めて、キーをあまり下に持っていかないように意識して歌いましたし。あと、サビの抜け感と滑舌もこだわりましたね。声優という職業が良い作用をしていると思います。一文字一文字、どの音のときにどの跳ね方をさせるか、一文字をどの尺にするか、そうするとどう伝わるか、と歌いながら考えることがすごく楽しかったです。

早く“おれパラ”メンバーと共に過ごしたい!
――寺島さんといえば、1年間の音楽活動は年末の“おれパラ”のために、と言っても過言ではないアーティストです。この1曲を持って、まもなく今年の“おれパラ”がやってきますね。

寺島 そうなんですよ。でも、その手前に色々なことがありすぎて……!だから自分の中で本番感覚が途切れないでいるんです。逆に言えばずっとスイッチが入っているから、いつオフになっているかもわからない。“おれパラ”も色々なものが重なっているところで、みんなで作っています。

――「ヒカリハナツ」はライブでどう表現したいですか?

寺島 もう、それを悩み続けています!少し前に、ふと「ヒカリハナツ」はライブでどうやればいいんだろう」って思ったときがあったんです。マイクスタンドとかもいいよな、と思ったのですが、僕のマイクスタンドはアクリルの筒で中が光るようになっているので、振り回せないんですよね(笑)。普段とは違うパフォーマンスにも出来るのかな、とは思ってもいますが、どうしていこうか思案中です。今回のセットリストの中でどういう展開にできるかな、ということを考えているので、全貌が見えるのはもう少し会議を重ねてからになりそうです。

――“おれパラ”でも肩の力は抜けるようになりましたか?

寺島 なりました!2年くらい前から、だいぶ楽になりましたね。やっぱり先輩方のファンの皆さんも来てくださるなかで、「めっちゃ頑張らないと」という身構えがあったのですが、「もう大丈夫かな」と開き直りに近い感覚があって。もちろん先輩方との会話もそうですが、だいぶホーム感がありますし、なんだったら「ホーム感」という表現がおかしいかも?と思うくらいホームになっていますね。早く小野さんとふざけたいなとか、森久保さんや鈴さんとしゃべりたいなとか、皆さんの歌を聴きたいなとか。楽しみな気持ちのほうが強いですね。

――年末に期待ですね。

寺島 楽しみですよね。早くそれを100%「楽しみ」にしたいです。今はまだ準備にも取り掛かれていないですから。

――2023年の“おれパラ”の話をしている段階で、もうまもなく1年も終わるタイミングとなってしまいます。どんな時間でしたか?

寺島 早かった……。2023年が終わるなんて信じられない。それくらい充実していたんだと思うのですが、どんなことがあったのかをあまり思い出せないくらいバタバタしすぎていて。2、3年分くらいのことがごっちゃになるくらい、色濃い1年でしたね。頭の中が整理できないままに走り抜けてきています。今年は“ナガノアニエラフェスタ”もあって、そこで声出しのライブを堪能できたんです。しかも思いも寄らないような共演もさせていただけましたし、すごく楽しい時間を過ごさせていただいて「やっぱりライブっていいなぁ」と思ったんです。今年の思い出としては、そのことがすごく印象に残っています。“おれパラ”も久々の声出しライブ。それを想像もしていますが、2024年も皆さんと「楽しい」を共有できるような時間にしたいなぁ、と思っています。

――では最後に「ヒカリハナツ」をどんなふうに皆さんに楽しんでもらいたいか、お聞かせください。

寺島 疲れたときに聴いてほしいです。無理やりじゃなく、自然と元気が出てくる曲だなと僕は思っていて。疲れていると色んなものがささくれ立って、自分の心にも陰りが出てくると思いますが、その影を落としているのは他所のものなので、自分の中の光を信じて軽やかに日々を楽しんでもらいたい。そんなちょっとした光の点を与えるような楽曲になればいいなと思っています。

●配信情報
完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』オープニング主題歌
寺島拓篤
「ヒカリハナツ」
配信中

作詞:寺島拓篤
作曲・編曲:酒井拓也(Arte Refact)

配信リンクはこちら
https://lnk.to/LZC-2558

●作品情報
完全新作アニメーション『転生したらスライムだった件 コリウスの夢』

<INTRODUCTION>
「大怪盗、〝サトル〟参上!!」完全新作アニメーション全3話!
WEB小説の連載開始から10年という節目を迎えた「転スラ」を祝し、2023年2月20日より『転スラ10thプロジェクト』が始動。プロジェクト企画第2弾として、原作・伏瀬書き下ろし小説「コリウスの夢」(「転生したらスライムだった件第2期」Blu-rayの特典ブックレットに収録)が全3話の完全新作アニメーションとして2023年秋に展開決定!
TVアニメ第1期と第2期の間に位置する冒険譚が、砂漠に灼熱の太陽が降り注ぐ「コリウス王国」で繰り広げられる。
リムルと仲間たちのスパイ作戦が始まる!!

<STORY>
イングラシア王国で子供たちを救い、教師としての残り少ない日々を過ごすリムル。そんなある日、自由組合のグランドマスター、ユウキからある依頼を聞かされる。その内容は、イングラシア王国と神聖法皇国ルベリオスに挟まれた「コリウス王国」で起こっている王位継承争いの内情を探って欲しいというものだった。リムルは〝サトル〟という名でコリウス王国に潜入捜査を開始。
だが、事態は一国の王位継承争いに留まらず、悪魔や吸血鬼の思惑も絡み合い、混迷を極めていくーー!

【STAFF】
監督:中山敦史
原作:川上泰樹・伏瀬・みっつばー『転生したらスライムだった件』(講談社「月刊少年シリウス」連載)
シリーズ構成:根元歳三
キャラクターデザイン:江畑諒真
モンスターデザイン:岸田隆宏
コンセプトアート:富安健一郎(INEI)
美術:スタジオなや
美術監督:佐藤歩
美術設定:藤瀬智康・佐藤正浩
色彩設計:斉藤麻記
撮影監督:佐藤洋
グラフィックデザイナー:生原雄次
編集:神宮司由美
音響監督:明田川仁
音楽:藤間仁(Elements Garden)
アニメーション制作:エイトビット

関連リンク
寺島拓篤
Lantis web site
https://www.lantis.jp/artist/terashimatakuma/

公式X
https://twitter.com/Terashima_dayo

「転生したらスライムだった件」ポータルサイト
https://www.ten-sura.com