現在放送中のTVアニメ『俺だけレベルアップな件』にて劇伴とOPテーマを手がけている作曲家・澤野弘之。本作で素晴らしい劇伴を聴かせる一方で、SawanoHiroyuki[nZk]としてもグローバルな活躍を見せる韓国の5人組ボーイグループ・TOMORROW X TOGETHERとの強力タッグが実現した。
自身のクリエイティブに新たな変化が生まれつつあるなかで作られたニューシングル「LEveL」について、そしてその先を見据える澤野弘之の2024年について語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一

新たな刺激も得たTOMORROW X TOGETHERとのタッグ
――澤野さんの2024年最初の音楽作品の1つとして、TVアニメ『俺だけレベルアップな件』が放送開始となりました。このインタビューは放送前に行っていますが、PVで確認する限り、バトルものによく合う澤野さんらしいスケールの大きいサウンドを聴くことができました。

澤野弘之 ありがとうございます。根本的な部分はこれまでと大きくは変わらないんですけど、自分がハリウッドの音楽から影響を受けたサウンドの作りが根本にあるので、そうしたものを求められて今回の話もいただけたのかなと思っています。

――確かに、澤野さんの音楽がよく合う世界観の作品の印象がありますよね。


澤野 『俺だけレベルアップな件』だからこうしないと、というものを意識したわけではなくて、自分の音楽を作品に対して素直にぶつけていけばいいなと思っているところはあります。なので、基本的には変わらないんですけど、PVが発表されたときに海外の方も反応してくれているのを見て、全世界で興味を持ってもらえる作品なんだろうなと思いましたね。

――もとより澤野さんの音楽は海外でも支持が厚いですが、今回はより一層感じるものがあったと。

澤野 サウンドトラックのメロディを作る際も日本人的な歌い上げるようなメロディを作るよりも、ハリウッド的な大きくメロディーをとるような作りにできないかなというのは、自分の中で意識してたところはあるかもしれないです。

――確かに、印象に残ったのはメロの大きさですよね。壮大なオーケストラの中でも細かく叙情的なメロディを聴かせる場合もありますが、今回はそこを大きく聴かせていくのかなと。


澤野 がっつり意識するというより少し頭をよぎる程度ではありますけどね。あとは単純に、自分が劇伴を作り続けていくなかで、今後はこういう大きなメロディの取り方をしていくのも重要なのかもしれないと思っていたところもありますね。

――ご自身の劇伴作りの資金石の1つになるかもしれないと。そうしたなかでOPテーマの「LEveL」もSawanoHiroyuki[nZk]が手がけることになりましたが、今回タッグを組むのが韓国のボーイグループ・TOMORROW X TOGETHERというのもまた驚きで。ちなみに澤野さんはTOMORROW X TOGETHERなど、K-POPは普段から聴かれますか?

澤野 普段からすごく意識して聴いてきたわけではないんですけど、TOMORROW X TOGETHERや韓国のアーティストはアメリカとかで活躍している方たちが多く、サウンドも海外を意識して作られている。そこは自分も同じ感覚で音楽を作っているほうなので、音楽的な部分でも韓国のアーティストがやっていることは普段からかっこいいなって思っていました。


――そうしたなかで、TOMORROW X TOGETHERとのタッグが決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

澤野 以前、偶然MTV(音楽専門チャンネル)などで流れていたのを観ていて、音楽的にも割と洋楽寄りのアプローチをしているなって思っていたのがTOMORROW X TOGETHERだったんですよ。そのことがなんとなく頭にあって、今回のコラボについての提案の中に偶然TOMORROW X TOGETHERの名前が出たので、「こんな機会じゃなきゃやれないな」と思って。

――海外でも活躍されているボーイグループをフィーチャーするという点が楽曲作りに影響はありましたか?

澤野 TOMORROW X TOGETHERに歌ってもらうことをすごく意識して作ったというわけではないんですが、海外のユーザーが興味を持ったり、それこそTOMORROW X TOGETHERも海外にたくさんのファンがいるからこそ、サウンド的にも洋楽っぽいグルーヴ感を自分なりに出せたらいいなとは考えていましたね。リズムやメロディーの立たせ方も強調して作れたら、という部分はありました。

――冒頭、パーカッシブなリズムから入っていくのも印象的ですよね。

澤野 あと、今思い出したんですけど、「どういう曲を作ろうかな」って考えていたときに頭をよぎったのが、デスティニーズ・チャイルドだったんですよね。


――お、デスチャですか。

澤野 そうそう、デスティニーズ・チャイルドでパーカッションから始まる「Lose My Breath」という曲があるんですよ。だいぶ古い曲だけどそれを今風に自分が解釈して作ったらどうかなとか思って、パーカッションのリズムで始めたのを思い出しました。

――今回はパーカッションもそうですし、ベースラインも含めて非常にリズムが強い印象です。またそこに乗るボーカルも、特にサビはパワフルさもあって色気もあるTOMORROW X TOGETHERの魅力が出ていますね。

澤野 オケ録りまでは立ち会っていたんですけど、歌のレコーディングはTOMORROW X TOGETHERのチームにお任せだったんですよね。
だから出来上がったもの聴かせていただいた時に、やっぱりかっこいいなと思いました。特に彼らは英語の表現もかっこよく魅せることができるアーティストだなと思っていたので、そういう部分は特によく出ていましたね。あとチームのアイデアとして、サビなどに色んな声を散りばめていて、そういうアイデアを入れてくるのも面白いなと思いました。

――なるほど。ちなみに今回の作詞は澤野さんとBenjaminさんとの共作になっていますが、日本語のパートは序盤だけで、フルコーラスのほとんどは英語になっていますね。

澤野 本当は英語だけでいきたかったんですけど、そこはスタッフとも話をして日本語も入れよう、ということになりました。
じゃあ、久々に自分でも書いてみるかと。ちなみに海外でアニメが配信されるときのオープニングはすべて英語詞になっています。

――さらにグローバルな展開が期待される作品とのタッグになりましたので、今後の反響がすこぶる楽しみですね。

澤野 そうですね。日本の音楽が韓国でどう聴かれているか詳しくはわからないですけど、本当に良い機会をもらえたなって思います。韓国の漫画原作ということで、今回TOMORROW X TOGETHERと組むことができたし、韓国や海外の人たちにも音楽や作品を届けられる機会に結び付いているのは、すごくありがたいことです。

――ちなみにTOMORROW X TOGETHERのメンバーにはお会いしましたか?

澤野 会いましたよ。レコーディングのあとだったかな?彼らが日本でライブをやったときに呼んでいただき、ご挨拶しました。

――勝手な妄想としては2組のステージ上での共演が観てみたいですね。

澤野 そうですね。そういう機会もあればいいなとは思いますけど、まずはこうやって一緒にやれたこと自体が、僕自身もすごく刺激になりました。やっぱり日本人の歌が乗るのとはまた違う。声の乗り方というか、それによってサウンドの響きも「こんなふうになるんだ」という新たな気づきもありました。

新しい自分を作り出していけるかが問われる2024年
――そしてカップリングの「DARK ARIA<LV2>」ですが、こちらは「LEMONADE」に続いてXAIさんをボーカルに起用しています。

澤野 今回のカップリングは、折角だから『俺だけレベルアップな件』とリンクしたものにしたいなと思って。元々XAIさんはサウンドトラックのボーカル曲に参加してもらっていたんですよ。その曲が個人的にも気に入っていて、それをnZk的にリアレンジした形で入れたいな、と。このシングルはTOMORROW X TOGETHERのファンの方たちも聴いてくれると思うんですけど、『俺だけレベルアップな件』に興味を持ってくれた方たちにも向けた曲も入れたいと思っていました。

――XAIさんはかねてから澤野さんの劇伴の参加を熱望していましたからね。そちらも楽しみです。さて、そんな『俺だけレベルアップな件』と「LEveL」から始まる澤野さんの2024年ですが、今年の話の前に、改めて2023年を振り返っていただきたいなと。

澤野 振り返ると早かったなって思うんですけど、それだけ色んなことに挑戦したり、色んな機会をいただけてきたからこそなんだろうなって思います。nZkとしても去年は5枚目のアルバムを出して、そこで尊敬しているASKAさんに参加してもらえたり、その流れでASKAさんと一緒に音楽番組に出たりしましたし。あと、自分の中で、劇伴作曲家としての活動ももちろんなんですけど、プロデューサーとしての今後の活動への動き出しができたと思うんですよね。SennaRinやNAQT VANEのプロデュースというのもスタートしたばかりなので、とにかく今年に向けてこの2つのプロジェクトも含めてプロデューサーとしての活動をどう広げていけるか、そういう部分も重要だった年にもなったのかなと思っています。

――ほかにも『進撃の巨人』のアニメが完結したりもしました。

澤野 そうですね、長くやってきた作品が終わりを迎えた年でもありましたね。海外でライブをやるのもこうした作品がなければ注目されなかっただろうし、影響力のある作品が終わって、また今年から新しい自分を作り出していけるか、そんな年になってくんだなって感じています。そういう意味では去年は何か区切りの年だったのかもしれない。

――そうして何かが終われば新しい始まりもあって、若い才能をプロデュースするのもそうですし、『七つの大罪』のように継承していくものもある。終わりを見つめつつ次に向かっていくのが、今の澤野さんなのかなと。

澤野 そうですね。もちろん過去の作品も大事にしていかなきゃいけないんですけど、そこにばかり向かないで、新しいものをどれだけ作っていくか、という部分にも重きを置いていて……それはやっぱり、ありがたいことにSennaRinやNAQT VANEという新たなプロジェクトがあるおかげでもあると思うんですよね。自分をどう広げていけるかっていう気持ちにもさせてもらえるというか。

――サウンド面でも今回の「LEveL」も含めてフレッシュなものが出来ていますし、澤野さんがリフレッシュされていくような気がしますね。

澤野 そうですね、ちょうど今もSennaRinプロジェクトの曲を色々着手していますし、もちろん新しい作品の音楽制作もやっています。あと、今年はnZkが10周年なんですよ。大々的に「10周年ですよ!」みたいなことをやろうとは思っていないですけど、一応10周年なので、企画しているものとかは多少はあったりします。

――10周年となると色々期待したくなってしまいますね。

澤野 もちろん10年やれたんだという感謝とかはありますけど、先ほども言ったようにやっぱり新しいことに向いて、それをどう広げていくかという部分のほうが今の自分にとっては大事かもしれないですね。そこも含めて、今年も楽しみにしてもらえればと思います。

●リリース情報
SawanoHiroyuki[nZk] 12th Single
「LEveL」
2024年1月24日(水)発売

【通常盤(CD)】

品番:VVCL-2409
価格:¥1,430(税込)

[CD]
01.LEveL by SawanoHiroyuki[nZk]:TOMORROW X TOGETHER
02.DARK ARIA by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
03.LEveL (TV size)
04.LEveL -English ver.- (TV size)
05.LEveL (instrumental)

【期間生産限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:VVCL-2410~2411
価格:¥1,870(税込)
※TVアニメ『俺だけレベルアップな件』描きおろしイラストデジパック仕様

ⒸSolo Leveling Animation Partners

[CD]
01.LEveL by SawanoHiroyuki[nZk]:TOMORROW X TOGETHER
02.DARK ARIA by SawanoHiroyuki[nZk]:XAI
03.LEveL (TV size)
04.LEveL -English ver.- (TV size)
05.LEveL (instrumental)

[Blu-ray]
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』ノンクレジットオープニングムービー

『俺だけレベルアップな件 Original Soundtrack』
2024年3月27日(水)発売

【通常盤(CD)】
品番:SVWC-70650
価格:税込3,300円

[CD]
1.DARK ARIA
2.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.1
3.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.2
4.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.3
5.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.4
6.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.5
7.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.6
8.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.7
9.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.8
10.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.9
11.[Solo-Leveling]SymphonicSuite-Lv.10
12.DunGeoN
13.KSK→GATE
14.Hunter→Monster
15.Am→Km
16.everydayLV.0
17.aikari
18.onlyORE
19.4eVR

●作品情報
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』
2024年1月より放送開始

【イントロダクション】
世界的な人気を博している、原作・原案Chugong、作画DUBU(REDICE STUDIO)、脚色h-goonによるによる韓国の小説、漫画作品。
日本でもマンガ・ノベルサービス「ピッコマ」にて累計PV数6.5億回を突破している本作が、ついに全世界待望のアニメ化決定。
舞台は異次元と現世界を結ぶ通路”ゲート”、そして”ハンター”と呼ばれる特殊能力を持つ人間達が存在する世界。
人類最弱兵器と呼ばれる最低ランクのハンター、「水篠 旬」はある日突然自分だけが「レベルアップ」する力を手に入れる。数多の試練を乗り越え、旬は”最弱”から”最強”へ駆けあがる。

【ストーリー】
異次元と現世界を結ぶ通路”ゲート”が突如発生してから十数年、
世界には”ハンター”と呼ばれる超人的な力に覚醒した人間たちが出現する。
ハンターはその力を使い、ゲート内のダンジョンを攻略し対価を得ることを生業としているが、
強者揃いのハンター達の中で、「水篠 旬」は人類最弱兵器と呼ばれる低ランクハンターとして生活していた。
ある日、低ランクダンジョンに隠された高ランクの二重ダンジョンに遭遇し、
瀕死の重傷を負った旬の目前に謎のクエストウィンドウが現れる。
死の間際、クエストを受けると決断した旬は、自分だけが「レベルアップ」するようになり—。

【キャスト】
水篠 旬:坂 泰斗
諸菱賢太:中村源太
水篠 葵:三川華月
向坂 雫:上田麗奈
最上 真:平川大輔
白川大虎:東地宏樹
後藤清臣:銀河万丈
犬飼 晃:古川 慎

【スタッフ】
原作:DUBU(REDICE STUDIO)、Chugong、h-goon(D&C Webtoon Biz.発行)
監督:中重俊祐
シリーズ構成:木村 暢
キャラクターデザイン:須藤智子
サブキャラクターデザイン:古住千秋
モンスターデザイン:徳田大貴
プロップデザイン:白石創太郎
美術監督:奥村泰浩
色彩設計:中野尚美
撮影監督:井関大智
CG監督:森岡俊宇
モーショングラフィックス:大城丈宗(Production I.G)
編集:近藤勇二
音響監督:田中 亮
音楽:澤野弘之
アニメーション制作:A-1 Pictures

関連リンク
澤野弘之オフィシャルサイト
http://www.sawanohiroyuki.com/

SawanoHiroyuki[nZk] オフィシャルサイト
http://www.sh-nzk.net/

SawanoHiroyuki[nZk]official YouTube Channel
https://www.youtube.com/user/SawanoHiroyukiSMEJ

澤野弘之Official Twitter
https://twitter.com/sawano_nZk

澤野弘之オフィシャルファンクラブ【-30k】
https://n30k.com/