ボーダー柄の服をトレードマークに、ユルくマジメに音楽と向き合うコンビ――。“ボーダーズ”こと北川勝利と藤村鼓乃美が贈る「ボーダーズの“音の場”」。隅田川、大横川、小名木川と三方を河川や運河に囲まれた森下は、江戸時代は物資の集積地であり、明治維新以降はその水利を使った小規模な工場などが立ち並ぶ下町でした。おふたりはこの地でどんな風景を見るのでしょう?PHOTOGRAPHY BY 山本マオ INTERVIEW & TEXT BY 田中尚道北川勝利 もう年末年始は「忠臣蔵」やらないのかな?――年末だから必ずやるというものでもないですからね。北川 このあいだテレビをつけてたら、ちょうど「忠臣蔵」を解説する番組をやってたので藤村に「今すぐ観ろ」と送ったんです。藤村鼓乃美 北川さんに言われたのでテレビをつけたんですけど、そのあと、仕事のメールがたくさん来てしまったので観れませんでした。北川 もう!せっかく分かりやすそうな番組だったのに!!――そういえば、今日(ロケ日)は12月14日なので、赤穂浪士討ち入りの日ですね。北川 そうそう!このシリーズ、だいたい「忠臣蔵」の話をしてるからね。――ロケは23年に行ってますが、掲載は年明けなので新年の抱負をお聞きしましょうか。藤村 「売れる」かなー!?北川 おいおい、この話題これで終わっちゃうよ。――藤村さんはだいぶお忙しそうですが。藤村 まだまだ全然です。もっとコンテンツの幅を広げたり、いろんなことをやりたいです。J-POP的なものもやりたいし、アニソンもやりたいし。――ぜひフジムラップ(※#6門前仲町~清澄白河編を参照)も。藤村 「フジムラップ!」ラップを書いてから、韻を踏むのが楽しくなってしまって、日常生活でもいかに韻を踏めるか考えています。――北川さんは?北川 僕は「偉くなる」かなー……。さっき出世不動の前を通ったときに思いました。藤村 出世したいですよね。北川 偉くなるにはシマシマの服着てる場合じゃないよねー……。ジャケットとか着ないと!ジャケット着ないと偉くなれないよなっていつも思うんだけど。まずは形から入らないとなー。――北川さんの中で偉くなるというのはどういうことなんですか?北川 偉い人のように扱われたい。――昔、とある大作家が、小説誌の編集長あてに電話をかけてきたんだそうです。「君のところに一本書いたから」ということで、編集長は平身低頭、輪転機を止めてすべて差し替えたという話があります。藤村 かっこいい!北川 いいですね。いきなり電話かけて、「君のところに一曲書いたから、これシングルにいいと思うよ」って言いたい(笑)。――さて、今回は清澄白河から森下を歩きました。藤村 顔ハメしました。お相撲さんと町娘です。――深川江戸資料館の入り口にあるパネルですね。そのあと陸奥宗光宅跡を見ました。北川 陸奥宗光って誰?――明治時代の外務大臣です。藤村 陸奥宗光って聞いたことないですか?北川 知らない。けど、何度も言いたくなるよ「ムツ・ムネミツ!」藤村 「ムツ・ムネミツ!」ムツムネミツってむっちゃ韻踏んでますね。北川 韻踏んでるならフジムラップに使えるじゃん、「ムツ・ムネミツ!」――陸奥宗光は幕末に西欧列強と結んだ領事裁判権の撤廃をした人です。幕末に結んだ条約は外国人が日本で犯罪を犯した場合、その国の駐日領事が裁判を行うという不平等なものでした。領事は裁判官ではないですし、自国民に有利な判決を出すことが多かったんです。藤村 そのあと橋を見ましたよね。それと明治維新百年記念碑も。――清洲橋と橋のたもとにあった碑ですね。あれは、当時の町会長が記念に建てたものだそうです。北川 そうなのか。それであんなに立派なの作ったんだ。よっぽど力のある人だったんですかね?――とはいえ橋のたもとですからね。北川 でも碑の石も大きかった。藤村 また石の話だ(笑)。そこから川沿いを歩いて、パンを焼くいい匂いがしてました。――パン屋のルビアンの工場だったようです。隅田川を北上して、隅田川から引かれた運河の小名木川を渡る萬年橋と赤穂浪士ゆかりの道を見ました。小名木川は江戸に物資を運ぶ物流路だったため、萬年橋には番屋が置かれて、往来する荷物のチェックをしたそうです。赤穂浪士ゆかりの道は、討ち入りした吉良邸から浅野内匠頭の墓所のある泉岳寺まで行く際に通った道ですね。時代劇の「忠臣蔵」だと、両国橋から隅田川西岸に渡るのではなく、隅田川沿いを南下して永代橋から西に渡ったとされています。藤村 そのあたりでデブ猫ちゃんを見ました。――隅田川の堰堤の隅田川テラスですね。藤村 そこからバナナの木です。――江東区芭蕉記念館ですね。北川 あの建物の前のバナナの木ね!!芭蕉ってバナナだって知ってた?藤村 知らなかったです。バナナ苦手なので。北川 説明で「芭蕉扇」って言われて、「ああ!」ってなった。――一扇ぎで風が吹き、二扇ぎで雲を呼び、三扇ぎで雨が降るという「西遊記」に出てくる魔法のアイテムです。『ドラゴンボール』でもフライパン山の火を消すエピソードに出てきます。北川 清澄庭園からずっと芭蕉の碑がありましたよね。藤村 「古池や蛙飛びこむ水の音」ですね。北川 どこに行ってもその句で。――深川の芭蕉庵での句会で詠まれた句だそうなので、あのあたりゆかりの句なんです。「おくのほそみち」にゆかりの地では、その地で詠まれた句碑がよく建ってます。藤村 「五月雨をあつめて早し最上川」もそうですよね。――ちなみに芭蕉は伊賀の出身で。藤村 忍者だ。――そうなんです。当時すでに老齢だった芭蕉があれだけの距離を歩けたのは忍者だったからだという説があります。藤村 へぇ。北川 マジですか。忍者走りしながら書いたのかな。――句は止まって書けばいいと思います。そこから美人画で有名な伊藤深水の誕生の地ですね。藤村 ああ、北川さんが知ってるって言ってた。北川 娘さんは知ってます。とは言っても親戚とかじゃないけど。。知らないの?大女優だよ。――女優の朝丘雪路さんのお父さんですね。津川雅彦さんの義理のお父さんと言いますか。北川 赤穂浪士といえば、藤村、「忠臣蔵」見た?藤村 ……。北川 藤村「忠臣蔵」全然見ないから。藤村 あれは見ました。北川さんにおススメされた「真夜中の弥次さん喜多さん」。宮藤官九郎さんだったので。北川 藤村はNHK見ないからな。藤村 そんなことないですよ、北川さんに勧めらた「魔改造の夜」とかは見ました。それに、今度『響け!ユーフォニアム3』はEテレでやるんです。「忠臣蔵」を誰かがコンテンツにしてくれないですかね? その曲の作詞をしろと言われたら見ます。北川 「チュウシングラップ」だね!!<INFORMATION>◆北川勝利4月10日発売花澤香菜 NEW ALBUM『追憶と指先』サウンドプロデュース担当『追憶と指先』収録曲楽曲提供「VENUS REVOLUTION」作詞・作曲:真部脩一 編曲:tepe(Veill)・北川勝利「インタリオ」作詞:宮川弾 作曲・編曲:北川勝利◆北川勝利・藤村鼓乃美4月10日発売花澤香菜 NEW ALBUM『追憶と指先』収録曲楽曲提供「ドラマチックじゃなくても」作詞:藤村鼓乃美・北川勝利 作曲:北川勝利 編曲:北川勝利・Tansa・宮川弾関連リンク北川勝利 Twitterhttps://twitter.com/roundkitagawaROUND TABLE オフィシャルサイトhttp://www.round-table.jp/藤村鼓乃美 Twitterhttps://twitter.com/Necono3