昨年5月にメジャーデビューを果たした“ざきのすけ。”のニューシングル「未完成」は、TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』EDテーマ。
葛藤や苦しみを抱えながら、自らの道を進む意思を描いたミディアムバラードだ。さらにダンサブルな「Twinkle」、EGO-WRAPPIN’の名曲「色彩のブルース」のカバーを収録。ざきのすけ。の豊かな音楽性を反映した本作について、彼自身の言葉で語ってもらった。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

自分の理想に近づいていくストーリーを描いた「未完成」
――メジャー2ndシングル「未完成」の表題曲は、TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』EDテーマ。楽曲制作はいかがでしたか?

ざきのすけ。
 僕は作詞とボーカルを担当しているんですが、原作を読ませてもらったときに、迫力のあるバトルシーンはもちろん、登場キャラクターたちが抱えている葛藤をすごく感じて。自分の感情とリンクするところも多くあったし、そこに重ねて歌詞を書けたらなと思っていました。僕はずっと1人で音楽をやっていたんですが、1人ではどうしても成し遂げられないことがある。今は関わってくれる人がいて、それが強みになる一方、新たな悩みも出てきてるんですよね。

――ざきのすけ。さん自身の現状とアニメの世界観や物語が繋がっていた、と。


ざきのすけ。 はい。歌詞を書くときはまず大まかなストーリーラインを作るんですよ。「未完成」もそうだったんですけど、ほぼ書き終わったときに元々のストーリ―ライン自体に疑問が浮かんで、全部最初から書き直したんです。それを5回くらい繰り返して……かなり苦戦したんですけど、この歌詞が出来たときに「原作を読んだときに感じたザワザワは、これで表現できた」と思いました。

――特に“僕自身が 誰かの光であるために”というフレーズはすごく印象的ですね。


ざきのすけ。 ありがとうございます。その歌詞はかなり僕自身の感情に寄っていて、“光”は僕の中で音楽の象徴なんです。ずっと音楽に救われてきたし、それを届ける立場になったときに「悩んでいる人、葛藤を抱えている人に寄り添えたらいいな」という気持ちが強くなって。「未完成」も自分が発した光で誰が救われたらなと思いながら制作していました。

――音楽がなければ、もっと生きづらかった?

ざきのすけ。
 そうだと思います。高校生までは勉強をステータスにしていたんですよ。スポーツも苦手だったし、親や友達から褒めてもらえるのが勉強しかなくて。でも、いわゆる進学校に入ったときに、自分より頭がいい人たちがたくさんいて、そこで挫折を経験したんですよね。そのあとに音楽を始めて、そっちのコミュニティで「おまえ、すごいな」みたいなことを言ってもらえるようになって。勉強やスポーツはしっかり順位が決まってしまうけれど、音楽はナンバーワンよりオンリーワンというところもあるじゃないですか。
ほかの人と比べるのではなくて、いかに自分の色出すかが大事なので。

――確かに。歌詞にもできるだけ自分の経験や感情を込めたいと思ってますか?

ざきのすけ。 それはすごく強いですね。完全なフィクションで歌詞を書くことはあまりなくて、僕自身の感情を土台にしてメタファー的に別のストーリーを入れるというか。その割合は曲によって違うんですけど、基本は自分の感情だと思ってます。


――なるほど。「未完成」というタイトルについては?

ざきのすけ。 “光”を軸にして考えていたんですが、少しずつ自分の理想に近づいていく歌詞のストーリーを含めて、“未完成”というワードが一番しっくりきたんです。アニメの登場人物たちも、自分の信念を形にするまでの過程にいますからね。

――確かにそうですね。「未完成」のボーカルレコーディングで意識した部分は?

ざきのすけ。 「未完成は」これまでにあまり歌ったことがないタイプの曲だったんですよ。今までは声を張って、叫びに近いような声色で歌うことが多かったんですけど、「未完成」はバラードだし、サビではファルセットも使っています。先ほど言ったように作詞にかなり時間を割いたので、歌詞に対する愛着もすごく強かったんです。そのぶん、自分の心の動きや揺れ方みたいなものも表現できたのかなと。聴いている人に寄り添うような歌い方もできたし、自分の中で新しいボーカルの表現が得られた感覚もありますね。

――もちろん、この先のざきのすけ。さんのライブでも歌われるでしょうし。

ざきのすけ。 そのことも意識していました。そのためには自分の気持ちをしっかり乗せることが大事だなと。自分で曲を作るときは割と理論的なことを重視するんですが、歌は真逆と言いますか、かなり感情的に歌うことが多いです。プロの声楽家の方が聴いたら「その歌い方、何!?」って怒られるかもしれないけど(笑)、気持ちに任せて歌っていますね。

――それが歌の説得力に繋がっているんだと思います。作曲者としても得られた部分、気づいたところがあったのでは?

ざきのすけ。 ものすごくありますね。自分の曲は4つとか8つのコードをループさせて作ることが多くて。どちらかというと洋楽っぽい作り方なんですけど、「未完成」はすごくJ-POPらしいコード進行なんですよ。J-POPを聴いているときに感じる切なさって何だろう?と考えてきたんですけど、「未完成」を作ったことで「これからもしれないな」と少しわかった気がします。今後の制作にも良い影響があると思いますね。

――TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』のファンの皆さんの反応についてはどう捉えていますか?

ざきのすけ。 もう、すごく気になってます(笑)。もちろん作品に寄り添った楽曲なんですが、アニメを観ながらこの曲を聴いてくれた人が、僕が原作を読んだときのようにその人自身と何かしら共通する部分に気づいてくれたらいいなと思っていて。良い意味でアニメだけで完結しない曲になったらいいなと。

――ちなみにざきのすけ。さん自身が好きなアニメ作品は?

ざきのすけ。 バトル系のアニメは意外と通ってなくて、いわゆる鬱アニメを観ることが多いですね。『メイドインアビス』や『ドロヘドロ』『ベルセルク』もそうですけど、ダークな世界観で、心の奥底を掻き回されるような感覚になるアニメに惹かれるというか。これはちょっとドMっぽい発言かもしれないけど(笑)、落ち込んだときのほうが歌詞とかが浮かんでくるタイプなんです。なので、自分から積極的に鬱アニメを摂取してるところもありますね。

――ダークな鬱アニメが楽曲制作にも効果があるんですね。アニメソングについては?

ざきのすけ。 小さい頃はFLOWさんの『NARUTO』の主題歌をよく聴いてましたね。親と兄が好きで、車の中でずっとかかっていたんですよ。でも、僕自身は割と好んでダークな曲を聴くことが多いかもしれないです。

カップリング曲「Twinkle」/EGO-WRAPPIN’「色彩のブルース」カバーに迫る
――カップリング曲についても聞かせてください。「Twinkle」は世界的なトレンドになっているジャージー・クラブの要素を取り入れたアッパーチューン。

ざきのすけ。 純粋に僕がやりたかったことをやった曲ですね。「未完成」はバラードなので、それに合わせて静かな曲にしようかなとも思ったんですけど、ざきのすけ。というアーティストのことがわかるような曲がいいだろうなと。ジャージー・クラブというとNewJeansさんなどのK-POPを思い浮かべる方もいると思うんですけど、僕にとってはゴリゴリのヒップホップのイメージなんですよ。さらに自分が好きなエレクトロニカやハイパーポップを融合させたくて。作ってるときはすごく楽しかったです。

――制作としてはトラック先行ですか?

ざきのすけ。 完全にトラックが先です。作り始めたときは歌を乗せる想定もしてなくて。半分趣味みたいな感じというか、シンセでメロディを弾こうかなと思ってたんですよ。なので歌を乗せるのはかなりのチャレンジでした。トラックを流しながら思いついたメロディをスマホで録って、そのデータを切ったり繋げたりしながら作っていきました。楽曲の世界観を崩さず、自分の声をどう乗せていくか?という試行錯誤もかなりありましたね。

――“Twinkle, twinkle,star is falling down”というサビのフレーズも印象的でした。

ざきのすけ。 この歌詞は音楽の初期衝動がテーマになっています。音楽を始めたときは衝動がすごく強くて、「理論なんて知らん!とにかくやるんだ」みたいな感じだったんですよ。その後、音楽の理論を勉強してどんどん作品を作っていくなかで、それまでとは違う悩みも出てきて。その感じが「Twinkle」の歌詞にはすごく出ていると思います。“火種に息を吹きかけている”というのはまさに初期衝動のメタファーだし、サビのフレーズは“煌めていた星は落ちてしまった”という儚さを表現していますね。

――音楽活動において、初期衝動はやはり大事ですか?

ざきのすけ。 あったほうがいいなと個人的には思っています。ただ二面性があるような気がするんですよ。衝動によってチャレンジできることもあるし、初期衝動を超えたところで得られる強さもあると思うので。一概には言えないというか、ないものねだり的な感覚もありますね、「Twinkle」には。

――さらにEGO-WRAPPIN’の名曲「色彩のブルース」のカバーも収録。この曲もざきのすけ。さんのルーツの1つだとか。

ざきのすけ。 はい。僕はR&Bやヒップホップが大好きなんですが、その源流を辿るとどうしてもジャズに行き当たるんです。ヒップホップはジャズのレコードのサンプリングから発展してきたし、R&Bのコード進行や音の遊び方がジャズに通じていたり。そのことに気づいたときに「ジャズを知らないと音楽をやる資格がない」と思ってしまったんですよね。オーソドックなジャズを聴いていくなかで、EGO-WRAPPIN’に出会いました。ジャズの要素を日本語に歌にものすごく上手く落とし込んでいて、「すごい。いつか歌ってみたい」と思っていたんです。

――ざきのすけ。さんのリアレンジがすごく個性的ですよね。

ざきのすけ。 ありがとうございます。最初はジャズの源流に立ち戻ったアレンジにしようかと思ったんですけど、どうしても自分らしいサウンドにならなくて。ざきのすけ。の個性を出さないとカバーする意味がないと思い、色々と試すなかでR&Bやエレクトロニックを取り入れました。ただ、歌うのはすごく難しかったです。「色彩のブルース」はメロディ自体にすごい色気があるので、「この色気はどこからきているんだろう?」と見極めながら、自分なりに表現してみました。いつかライブでも披露したいと思ってるんですけど、この色気をステージで出せるのか……それもチャレンジですね(笑)。

――ざきのすけ。さんの新たな表現、音楽的ルーツの両方を体感できるシングルになったと思います。2024年はどんな1年になりそうですか?

ざきのすけ。 これまでは自己中心的というか、自分がやりたいことをいかにかっこよく表現できるか?を突き詰めていたところがあって。それも大事だと思うんですけど、今後は聴いてくれる人がどう感じるか?も重視した作品作りをやっていきたい。迎合するということではなくて、自分なりの音楽を追求しながら、もっとたくさんの人に届く音楽を目指したいと思っています。

●リリース情報
2nd シングル
「未完成」
2024年2月28日(水)発売

CD購入はこちら
https://zakinosuke.lnk.to/imSzU9

【初回仕様通常盤】
価格:¥1,600(税込)
品番:AICL-4529

<収録内容>
M1. 未完成
M2. Twinkle
M3. 色彩のブルース
M4. 未完成 ‒Instrumental-
※初回仕様:描きおろしアニメ絵柄ジャケットスリーブケース仕様

店舗別(予約)購入特典
Amazon  メガジャケ
楽天ブックス オリジナル缶バッジ
セブンネット オリジナルピック
アニメイト ましかくブロマイド
応援店  ジャケット絵柄ステッカー

●作品情報
TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』

放送期間:2024年1月クール
放送日:毎週日曜16:30~
放送局:TBS系全国28局ネット
配信:10月8日よりNetflixにて1週間先行独占配信中スタート。
他各配信サイトにて配信予定

©鈴木央・講談社/「七つの大罪 黙示録の四騎士」製作委員会

関連リンク
ざきのすけ。オフィシャルサイト
http://www.zakinosuke.com/

TVアニメ『七つの大罪 黙示録の四騎士』 公式サイト
https://7sins-4knights.net/