7月に予定されている参院選挙。その行方を占うといわれるのが、1週間後の来週21日に投開票を迎える衆院補欠選挙だ。
「安倍政権の信を問う格好の選挙だけに、報道各社とも力を入れていて、この週末(12~13日)、電話世論調査を実施しました。そうしたところ、安倍政権にショッキングなデータが出てきたんです。自民党候補が2選挙区でいずれも野党候補に大差で破れ、全敗を喫する可能性が浮上しています」
まずは、沖縄3区からみていこう。米軍の辺野古新基地建設に反対する無所属新人の屋良朝博氏が、辺野古新基地容認派の自民党候補、島尻安伊子・元沖縄北方担当相を大きく引き離しているようだ。
きょう14日付けの新聞報道では、島尻氏が「懸命に追う」「激しく追う」などと接戦をイメージさせているが、実際には「ダブルスコアくらいに差が広がっている」(前出・政治部デスク)という。なるほど、玉城知事を当選させた野党勢力の“オール沖縄”の面目躍如といったところだから、当然の結果だろう。
問題は、大阪12区の方だ。現職だった北川知克・元環境副大臣の死去に伴い、自民党が「弔い選挙」とうたって甥の北川晋平氏を擁立。当初、当選確実とみられていた。だがこちらも180度違ってしまったようだ。
「北川氏は、朝日と読売の調査によると、維新の新顔・藤田文武氏にリードを奪われているものの、もう1人の野党候補である樽床伸二・元総務相よりは優勢、もしくは互角と伝えられました。しかし、共同通信の調査結果をみると、北川氏は樽床氏にも差を付けられ、自民が3位に甘んじているんです」
永田町では、調査結果の一部として、「藤田32ポイント」「樽床22ポイント」「北川19ポイント」「宮本岳志9ポイント」という数字が出回っており、なるほど、毎日新聞や東京新聞に掲載された共同の配信記事と併せてみると、安倍政権が大阪で権威失墜の憂き目にあることは歴然としているようだ。
「しかも、調査結果をつぶさに見てみると、各社とも、電話調査に応じた大阪12区の自民党支持層のうち、3割が藤田氏に流れ、同じく3割が樽床氏に流れている点で一致しました。つまり、自民党候補である北川氏に投票するはずだった有権者の実に6割近くが野党候補に投票する傾向が出ているわけです」(前出・大手紙政治部デスク)
維新は安倍官邸に近い第二自民党的な存在だし、樽床も当選したら自民党に合流するのではないかという見方もささやかれている。そういう意味では、この2人が当選しても、大差ないとも言えるのだが、それでも、自民党公認候補がここまで苦戦するというのは全く予想されていなかったことだ。
「この結果は明らかに、今起きている安倍政権の不祥事が影響している。『私が忖度した』と安倍首相と麻生太郎財務相の地元への利益誘導を認めた塚田一郎国交副大臣や、『復興以上に議員が大事』と発言した桜田義孝五輪相によって繰り返された問題発言相次ぐ辞任劇が有権者の信頼を根こそぎ失わせた結果でしょう」(前出・大手紙政治部デスク)
●5月に公表される四半期別のGDP速報値がマイナスになれば、消費税が争点に
当然、こうした情勢調査結果はマスコミから安倍政権へ逐次伝達されており、政権中枢もかなりの衝撃を受けているといわれる。自民党関係者は「沖縄3区は野党の牙城だけにすっかり諦めていたんだが、大阪12区まで失うとなると大ごとだ。残る1週間で巻き返しを図らないといけない」と焦りを隠せないようだ。
「カギを握るのは創価学会票。維新とは対立関係にあるので、樽床氏に流れたとみられている。
もはや選挙情勢をひっくり返すのは絶望的だろうとの観測も流れるなか、安倍政権が心配しているのは7月に控えている参院選への影響だ。補選の選挙結果で、自民党支持層のなかにも「安倍政権はそろそろいいんじゃないか」という空気が広がれば、参院選で大敗北ということにつながりかねない、と危惧しているのだ。
しかも、安倍政権にとっては、補選後にもうひとつ、政権を揺るがす“事件”が起きるとささやかれている。財務省関係者が打ち明ける。
「5月20日に公表される四半期別のGDP速報値がマイナスになる公算が強まっているんだ。参院選を目前にした時期にそんなマイナスの速報値が出たら、安倍首相が責任を問われることになるのは必至。そうなると、参院選での自民敗北の可能性はますます高まってくる」
先日、『れいわ新選組』の立ち上げを宣言した山本太郎が“消費増税反対”を明確に打ち出し、共産党も“消費増税反対”を強調しているが、マイナスのGDP速報値が出れば、他の野党もこの動きに乗って、“ワン・イシュー選挙”戦略に出る可能性もある。そうなると、安倍自民党はますます厳しくなるだろう。
そんななかで、永田町でまたぞろささやかれはじめたのが、消費増税延期と衆院解散、衆参ダブル選挙だ。
「普通ならこれだけ準備を進めておきながら延期というのはありえないが、選挙で勝つためには手段を選ばない安倍首相に限ってはありえる話です。それに、消費増税最強硬派だった麻生財務相の政権内の影響力がかなり落ちていますからね。
いずれにしても、今回の衆院補選の後、政局が大きく動きだす可能性がある。いっそうの注視が必要だろう。
(編集部)