眞子内親王の婚約相手・小室圭氏の金銭問題から始まったトラブルが、あらぬ方向へと広がりを見せている。

 眞子内親王がそれでも結婚したいという意思を示したと伝えられたこと、そして妹の佳子内親王がその眞子内親王の結婚について「私は、結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています。

姉の一個人としての希望がかなう形になってほしいと思っています」と、個人の意思を応援するメッセージを発したことから、ネットのみならず、週刊誌が姉妹と秋篠宮家に猛烈なバッシングを展開しているのだ。

 たとえば「週刊文春」は、「奔放プリンセス佳子さまの乱 全内幕」(4月4日号)、「佳子さま紀子さま ダンスで「母娘」断絶」(4月11日号)と、連続して佳子内親王批判。たかだかフィギュアスケートやダンスに熱中していたことや口げんかに強いなどというエピソードだけで「奔放」などと決めつけた。

 また、眞子内親王の結婚問題から秋篠宮家の問題にも話を広げ、小室氏との結婚問題が起きたことについても、学習院でなくICU(国際基督教大学)に進学したせいだと、その教育方針まで批判している。

〈悠仁さまに「帝王教育」施さない秋篠宮家の教育方針を、不安視する声もある〉〈秋篠宮家は「自主性を重んじる」教育方針です。そのため、過去に宮内庁参与が『(悠仁さまに)教育係を付けては』と進言した際に、秋篠宮さまは表情を曇らせていたそうです〉などと付け加えるのだ。

 さらに、今週発売の4月25日号では、「皇太子が漏らされた秋篠宮さまへの憂慮「抗不安薬」「千鳥足」」という特集を組み、皇太子が秋篠宮の「奔放な発言」について不満を漏らしていることを報じた上で、秋篠宮が抗不安薬を服用しているという記事まで掲載した。

「週刊新潮」も同様だ。4月4日号に「「佳子さま」炎上で問われる「秋篠宮家」の家庭教育」なるタイトルの記事を掲載し、佳子内親王「結婚は個人のもの」発言について「(女性皇族の結婚は)当人のお気持ちだけで成り立つものではありません」「誰でも好きになった人と交際し、そのまま結婚、とはいかないのです」「そもそも佳子さまは皇室という存在をどのようにご理解なさっているのか、訝ってしまいたくなるようなお答えでした」と全否定。眞子内親王の結婚問題や佳子内親王発言にかこつけて、秋篠宮家のリベラルな教育方針を徹底批判した。

 続いて、4月18日号でも、「「秋篠宮家」が「私」を優先して「愛子天皇」待望論」というタイトルで、秋篠宮家が“「公」より「私」を優先させている”と攻撃。 佳子内親王発言や秋篠宮家の教育に、美智子皇后も厳しい目線を送っていると指摘したうえで、“「公」より「私」を優先させる”秋篠宮家で育った悠仁親王より、愛子内親王が天皇にしたほうがいいと、女性天皇待望論まで持ち出す始末だった。


 しかし、これらの批判はほとんど言いがかりとしか思えないものばかりだ。たとえば、「結婚は個人のもの」とする佳子内親王の発言は本サイトが先日配信した記事で指摘したとおり、民主主義社会では当たり前の主張。眞子内親王の結婚問題も、小室氏や眞子内親王個人、あるいは秋篠宮家の教育方針に原因があるのではない。

 事実、結婚をめぐるトラブルは他の皇族や宮家でも起きている。個人の結婚や恋愛の自由が保障された民主主義社会と、血統を重視する差別的な天皇制・皇室制度は本来、相いれないものであり、その矛盾が皇族の結婚を複雑で困難にしているのだ。それを、秋篠宮家の問題だけに矮小化するというのは、どう考えてもおかしい。

●秋篠宮バッシングは問題のすり替え、でっちあげと女性差別でしかない

 もっと不可解なのは、“美智子皇后が秋篠宮家の教育に眉をひそめている”などという記述だ。美智子皇后のこの問題に対するスタンスは昨年5月の宮内庁ホームページに掲載された「眞子内親王殿下に関する最近の週刊誌報道について」という声明ではっきりしている。

〈(眞子内親王の結婚問題について)両陛下は当初より一貫して変わらぬ対応をしてこられました。
 両陛下が第一に考えられたことは、これは眞子さまの内心に触れる事柄であり,何人といえども、恐らくはご両親殿下でさえ眞子さまのお考えを待つ以外おありでないということでした。そうした中、ご自分方として出来ることは,極力周囲の雑音から眞子さまを守り、静かな状況を保つ中で、眞子さまがご自分の考えを深められるよう助力なさるということでした。〉

 眞子内親王の結婚について、天皇・皇后は「内心」の問題であり、強引に立ち入るつもりはないし他の誰も立ち入るべきではないという姿勢を鮮明にしている。
それが、佳子内親王の発言に、眉をひそめるというのはどう考えてもおかしいだろう。

 さらに、眞子内親王の結婚トラブルの原因を、自主性尊重やICUへの進学のせいにするにいたっては、ただの女性差別でしかない。週刊誌は秋篠宮や姉妹を叩くために、女性が自主性をもつことや本人が希望するレベルの高い大学に進学することが結婚トラブルにつながるかのような、男尊女卑丸出しの論理を口にしているのだ。

 週刊誌は秋篠宮を「『公』より『私』」を優先などと批判しているが、これもおかしい。秋篠宮は大嘗祭の費用問題などでもわかるように、公と私をきちんとわけるように主張するなど、現天皇皇后と同様、日本国憲法下の象徴天皇制について、高い意識をもっていることがうかがわれる。むしろ、「『公』より『私』を優先」というのは、雅子妃や愛子内親王との家庭生活に関心が集中している皇太子のほうではないか。

 それにしても、眞子内親王の結婚問題や佳子内親王の発言が、いったいなぜこうした過剰ともいえる秋篠宮バッシングに発展してしまったのか。いや、秋篠宮への批判は今週先週に限ったことではない。週刊誌では数カ月前から、批判記事や内部情報が散発的に掲載されてきた。それも、皇室タブーに強い「新潮」や「文春」だけでなく、ふだん、皇室のヨイショ記事しか掲載しない女性週刊誌までが秋篠宮を批判しているのだ。

●秋篠宮バッシングは問題のすり替え、でっちあげと女性差別でしかない

 これはもちろん、ネットが“秋篠宮家叩き”に盛り上がっているという状況が後押ししている部分もあるだろう。だが、もうひとつ、週刊誌の新たな情報源の影響も見え隠れする。
それはズバリ官邸だ。週刊誌の皇室担当記者が証言する。

「これまでの秋篠宮バッシングは、保守的な他の宮家や宮内庁関係者、東宮周辺から出ていることが多かったが、ここ数ヶ月の秋篠宮家の記事は、それだけじゃない。皇室担当じゃなく、政治担当の記者が情報を入れてくるケースが増えてるんだ。官邸で皇室を担当している杉田和博官房副長官の周辺、それから内閣情報調査室あたりが、情報の出どころなんじゃないか、といわれている」

 また、全国紙の官邸担当記者に確認すると、官邸幹部や、安倍首相に近い自民党中堅幹部などが、秋篠宮への批判をオフレコでしゃべるようになっているという。

「皇太子殿下の秋篠宮批判や、抗不安薬の使用なども、宮内庁や皇室周辺ではこれまで聞いたことがなかった。もしかしたら、官邸や内調から出てきた情報なんじゃないでしょうか」(前出・週刊誌皇室担当記者)

 実際、一連のバッシング記事の中にも、安倍首相周辺や官邸が秋篠宮バッシングの情報源になっていることを物語る記述が出てくる。その典型が、「週刊文春」4月11日号に掲載されたこんな一文だ。

〈現天皇との“溝”を埋められない安倍首相。秋篠宮さまについても、昨年十一月の誕生日会見で「大嘗祭は内廷費で賄うべき」と発言されたことに対し、「反乱だね」などと言い放っていた。麻生氏も「内廷費も税金だし、なんで税金に介入してくるんだ」と不快感を見せていたという。〉

 さらに、同記事には、安倍首相に近い関係者のこんなコメントも掲載されていた。


「首相は眞子さまと小室圭さんの問題に関して『早いうちから色んな恋愛を経験していた方がいい。(眞子さまが)可哀想だ』と言っていた。悠仁さまの将来についても『多くの女性と接してもらった方がいいのかも』と。内定費問題をはじめ、首相には秋篠宮家への不信感が根底にあるようです」(前出・首相周辺)
「(前略、生前退位の意向報道について)首相はむしろNHKの情報源を気にしており『秋篠宮さまがリークしたようだ』と見ていました」(官邸関係者)

 どうも安倍首相自身が秋篠宮批判を口にし、それが側近を通じて外に漏れているようなのだ。そして、こうした安倍首相のスタンスを忖度した官邸スタッフや内閣情報調査室が、秋篠宮バッシング情報を週刊誌に流しているということらしい。

●官邸が流す秋篠宮バッシング情報、文春は安倍首相の秋篠宮批判を紹介

もちろん、こうした官邸の動きの背景にあるのは、秋篠宮が現天皇・皇后のリベラルな考えを受け継ぐ姿勢を見せていることだろう。

 今さら説明するまでもないが、第二次安倍政権以降、明仁天皇と安倍首相は“対立”といっていい関係が続いてきた。護憲と戦争への反省、沖縄への思いを隠そうとしない明仁天皇と美智子皇后に対し、安倍政権は改憲と歴史修正主義を推し進めるために天皇夫妻の口をふさごうと、陰に陽にプレッシャーをかけ続けてきた。

 たとえば、2013年末、明仁天皇が誕生日に際した会見のなかで“護憲発言”を行うと、安倍首相のブレーンのひとりと言われる八木秀次・麗澤大学教授が「正論」(産経新聞社)に〈両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない〉〈宮内庁のマネジメントはどうなっているのか〉と、天皇を批判するような文章を発表したが、これなどは明らかに安倍首相からの“改憲の邪魔をするな”という圧力だろう。

 こうした対立は、天皇が「生前退位の意向」を明らかにすると、ますますエスカレート。官邸は天皇の理解者だった風岡典之宮内庁長官を更迭。次長の山本信一郎氏を長官に繰り上げ、後任次長には監視役として、警察官僚出身で内閣危機管理監だった西村泰彦氏を就任させた。


 その後も、「生前退位」をめぐる有識者会議では、安倍首相が送り込んだ日本会議系のメンバーが明仁天皇を公然と批判するなど、政権と天皇・皇后との溝はどんどん深まっていった。

 昨年10月23日に行われた「明治150年」を記念する式典に、天皇・皇后の姿がなかったが、これも、大日本帝国を礼賛する安倍首相の肝いりの式典に、天皇と皇后が出席拒否をしたとみられている(西村次長は「官邸からお声がけがなかった」と弁明したが、これは建前だろう)。

 そして、明仁天皇との関係修復をあきらめた安倍首相はいま、代替わりに乗じて、皇太子=新天皇を取り込もうとしきりに働きかけを行っている。

「安倍首相はこの間、2回も皇太子殿下と面談しています。皇位継承の流れを説明し、元号をあらかじめ伝えたといわれていますが、首相が皇太子に直接、面談するのはきわめて異例。これは、皇太子を取り込む作戦と推測されます。安倍首相としては、自分の改憲路線を天皇陛下に邪魔されたという思いがある。だから、即位を機会に、皇太子夫妻を取り込み、新天皇を政治利用できる関係を築く腹づもりなのではないか。実際、皇太子殿下は波風を立てるのが嫌いな性格ですし、雅子妃は小和田恆元外務省事務次官の娘で、本人もエリート外交官、政治的には安倍首相の考えに近い可能性がありますから、取り込まれてしまう可能性はありますね」(宮内庁担当記者)

●安倍首相を激怒させた秋篠宮の「宗教色の強い大嘗祭は内廷費で」発言

 しかし、そんな安倍首相にとって、目の上のたんこぶになっているのが、明仁天皇のリベラルな姿勢を引き継ぎ、その意向を代弁し続けている秋篠宮の存在だ。とくに、昨年の誕生日会見で、大嘗祭について「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか」として、天皇家の私的活動費である「内廷会計での実施」を提案したことは、国家神道復活を目指す右派勢力をバックにした保守派の安倍首相と相いれないものであり、相当な不快感を募らせたと言われている。

「秋篠宮殿下の発言は、明らかに天皇陛下の意向をくんだものでしたが、安倍首相は相当、危機感を持ったようです。その頃から、やたらと秋篠宮を批判するような情報が安倍首相の周辺から出てくるようになった。
さらに今回、眞子さまの結婚問題がきっかけになって世論が秋篠宮家に批判的になったことに乗じ、殿下の影響力を封じ込めようと、官邸が一気にバッシング情報を流し始めたということじゃないでしょうか」(全国紙官邸担当記者)

 安倍官邸が、野党政治家や政権批判するジャーナリストや学者など敵対勢力のネガティブ情報を出し謀略攻撃を仕掛けてきたことは有名だが、まさか宮家まで標的にするとは……。とても「保守」のやることとは思えないが、しかし、これが安倍政権の本質なのだろう。

 ただ、秋篠宮のこれまでの姿勢や明仁天皇との距離の近さなどを考えると、秋篠宮のほうもこのままおとなしく黙らされるとは思えない。天皇vs安倍首相の対立は、秋篠宮vs安倍首相という形で引き継がれていく可能性は十分あるだろう。
(編集部)

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