タレントのダレノガレ明美が、あの百田尚樹センセイに絡まれ、“炎上”に追いやられているのをご存知だろうか。安倍応援団のネトウヨ作家と、おしゃれインフルエンサーの人気モデルに何の接点が?と首をかしげる人も多いと思うので、簡単に流れを振り返っておこう。
導火線となったのは、最近、箱根や八王子などの街中に野生のイノシシが出没しているというニュースだ。街に降りてきたイノシシが人間に危害を加えるのではと不安視されており、自治体は駆除などの対策に取り組んでいる。出没の理由としては、猟師が減ったことによる絶対数の増加や、森林伐採等の環境破壊による生態系の変化など、いくつかの説があるが、はっきりとした原因はわかっていないという。いずれにしても、イノシシは不足した食料を求めて人里に降りてきているものと推測される。
ワイドショーなども盛んに取り上げている「イノシシ問題」だが、これにダレノガレが反応。10日、自身のTwitterに“イノシシが箱根の商店街を疾走”というテレビのニュース画像をアップし、こんな感想を投稿した。
〈イノシシの居場所をとってしまってるのは
人間だよね。
悲しいね。
食べるものがないから街に行くしかないのよね。
イノシシだって人間の住む街に行きたいわけじゃないはず。
だから、危ないけれども
イノシシを殺さないでほしいな。〉
14日現在、このツイートは4800万件以上リツイートされ、1.2万人の「いいね」がついているのだが、一方で、ネットの一部からは「そのまま突進されて血だらけになれってか」「野生のイノシシ飼えるものなら飼ってみろ」「なら人間を間引きすれば?」「ゴキブリ出てきたら絶対殺しそう」などと批判的な声が相次いだのだ。
そして、このダレノガレの“炎上”のなか、突如として首を突っ込んできたのが、あの百田センセイというわけである。百田氏は12日深夜、ダレノガレの「イノシシを殺さないでほしいな」ツイートをRTしながら、こんな投稿をした。
〈200万人もフォロワーがいる有名人だから敢えて言うけど、幼稚園児みたいなこと言わないでほしいな。
この一見美しく見える意見を真に受けるバカもいるからね。〉
この百田センセイのダレノガレ批判は2900件以上RTされ、ダレノガレのツイートを上回る1.4万件もの「いいね」がついている(14日現在)。いずれにしても、ダレノガレの“炎上”を煽ったかたちだろう。
だが、このダレノガレは黙ってはいなかった。11日には批判のカキコミに対して〈アンチがどんなに私を叩いても擦り傷より痛くないからな!! 私のSNSくらい書きたい事書かせなさい!〉と投稿。さらに12日、百田センセイのディスツイートを投稿から約1時間後には、名指こそしていないが、こう反論したのだった。
〈指殺人を私にしようとしている方。
私が死ぬ前に自分の指がもげるよ。
私にそんなの効かない。
何年炎上してると思ってるの?
炎上怖くて発言抑えてたら
自分が自分じゃなくなるよ!
私は私
ダレノガレ明美。
人の目気にして発言致しません。
だから、私を精神的に追い込もうとしても時間の無駄〉
一方の百田センセイは、その後のダレノガレのツイートには直接反応していないものの、「ダレノガレさんのような意見があってもいいと思う」「私はダレノガレさんの意見は正しいと思う」などと述べた複数の一般ユーザー相手に、〈わかったから、君はゴキブリも蚊も殺さない生活をしろよ〉〈何言うてるのかわからんが、バカなのはたしかみたいやな〉(12日)などと挑発的な返信をしている。
イノシシを巡って降って湧いたダレノガレと百田氏のバトルだが、それにしても、「イノシシを殺さないでほしい」という素朴な意見を発した女性芸能人のもとへ、脂っこいオッサンがいきなりすっ飛んできて、上から目線で「幼稚園児みたいなことを言うな」と説教って……なんというか 、路上で若い女性を意味なく怒鳴りつける“ハラスメントオヤジ” を思わせる。
そもそも、ダレノガレは動物好きで、実際に里親を探している猫の環境作りなどを行う動物愛護のプロジェクトにも参加している。今回、“炎上”しているツイートも、そうした動物愛護と環境保護の観点から率直に感想を述べただけだ。それを、寄ってたかって「お前がイノシシを飼え」とか「幼稚園児レベルのバカ」と罵り、血祭りにあげようとするのは、どう考えてもやり過ぎだろう。
しかも、百田センセイのツイートからもわかるように、ダレノガレをバッシングする内容の多くは、本気でイノシシ問題について考えているようには見えない。少なくとも、イノシシが人里に降りてこないため、人間が努力して環境を変えようというような提案は皆無で、単に「人間に迷惑をかけるイノシシは殺して当たり前」という話ばかりだ。そう考えると、百田センセイやネトウヨ界隈がダレノガレのツイートに反応したのは、イノシシ問題それ自体ではなく、別の意識に支えられているのではないか。
ひとつ考えられるのは、ネトウヨ界隈が「社会や政治に意見する若い女性」を極端に嫌っているということだ。最近も、地球温暖化をめぐる二酸化炭素排出の削減などを訴えているスウェーデンの16歳、グレタ・トゥーンベリさんに対し、ネトウヨ界隈が一斉に攻撃に出ていることは周知の通り。
どうやら、ネトウヨの頭の中には動物愛護や環境への取り組みは「パヨク」みたいなイメージがあるらしく、さらに発言しているのが若い女性であればなおさら、それだけで攻撃対象にすべきとなる、ということだろう。動物愛護や環境問題を訴える女性に対して、嫌がらせ的な当てこすりを繰り返す姿は、少なくとも、自然を保護して国土の保全を求める本来的な「保守」とはかけ離れている。いずれにしても普段、「愛国」を掲げるネトウヨ界隈は、結局、“ナンチャッテ保守”とすら言えない連中であり、醜悪な“ミソジニー集団”であることがよくわかるというものだ。