東出昌大と唐田えりか不倫騒動で、大バッシングが展開されている。東出の出演していたCM打ち切り、唐田も放送中のドラマ急遽降板に来月放送予定のドラマもお蔵入りと、まるで刑事犯罪でも犯したかのような異常な対応も相次いだ。
ワイドショーも連日、この問題を扱い、コメンテーターたちは「信じられない」「ありえない」「許されない」と、これ以上ないくらいの糾弾コメントを連発している。
ベッキーのときもそうだったが、たかだか恋愛問題、しかも紙切れ1枚があるかないかの違いだけで、なぜここまで極悪犯罪者のような扱いができるのか、意味がわからない。この国では、政治家が汚職したり国民の税金を私物化するより、芸能人が不倫するほうが罪が重大らしい。
しかも、今回、気になるのはワイドショー報道やスポーツ紙の記事に異常なくらい中身がないことだ。ベッキーのときは少なくともLINEのやりとりなど、不倫の証拠やディテールが報じられていたが、今回、マスコミがバッシングの材料にしているのは、ネットの妄想ネタ並みの話ばかりなのである。
カンヌ映画祭で東出が唐田をエスコートしたりハグしている姿が親密すぎる、唐田がインスタグラムに載せていた東出の写真がふたりの恋愛関係をわざと“匂わせ”ている、東出がバラエティ番組で披露した生け花のタイトルが「不倫願望」だった、東出の妻である杏の写真に唐田が「いいね!」をして嫌がらせした……。
ワイドショーはこんなネタを大々的に時間を取って紹介し、「許せない」「信じられない」と糾弾の声を上げているが、これらはすべてただの「こじつけ」にすぎない。
その筆頭が、ワイドショーで池田美優(みちょぱ)やアンミカなど女性タレントまでが叩いている「匂わせ写真」だ。唐田が自分のインスタに東出との親密な写真を載せているのがおかしいというのだが、その多くはそもそもふたりが共演した映画『寝ても覚めても』撮影時や映画公開時に唐田が撮影したオフショットで、映画の公式インスタでも紹介されている半ばオフィシャルなもの。映画公開に合わせて写真展まで開かれている。
実際、写真は東出だけでなく、瀬戸康史や山下リオ、渡辺大知、伊藤沙莉ら他の出演者を撮ったものも数多くあった。山下リオは自身のインスタで〈この写真はアルバムの表紙。
「唐田が東出とのツーショット写真をプリントして配っていた」などと報じられているのも、この山下のコメントを読めば、完全にミスリードであることがわかる。実際は、東出だけでなく、山下ら女性出演者や監督・スタッフも含め撮影現場でのオフショットの数々を収めたアルバムを作り渡していただけのことだ。
〈完全に「彼女が撮った彼氏の写真」にしかみえない〉〈唐田えりかが撮った東出昌大の写真。素敵だな~と思ったけど、今見ると、、、〉などの声が上がっているが、これもこじつけにすぎない。
唐田は幼い頃からカメラが趣味で、フィルムカメラで撮影した写真をインスタにもよくあげていた。カメラ雑誌で連載もしている。この現場に限らず、撮影現場でのオフショットもよくインスタに紹介していた。「彼氏のような空気感」が出ているのは、東出に限ったことではなく、瀬戸康史や他作品で共演した高橋一生の写真もそう見える。単純に唐田は写真がうまいだけなのだ。
また、生け花の「不倫願望」というタイトルは、東出が出演していた『あなたのことはそれほど』(TBS)という不倫を扱ったドラマの番宣を兼ねて出演した際のもの。PRのためにドラマに寄せたタイトルをつけただけなのは明らか、というか実際に東出本人が考えたタイトルかどうかすら怪しい。
さらに、ひどいのは“唐田が杏の写真に「いいね!」した”というもの。これ、正確にはドラマで杏の相手役だった宮沢氷魚のインスタに「いいね!」しただけで、唐田はもともと宮沢と共演経験があり宮沢のインスタにも登場している。友人である宮沢のインスタで、杏が映っていても友人が大抜擢されたドラマの報告に「いいね!」しても何もおかしくないだろう。
カンヌ映画祭のエスコートにいたっては、世界中のカメラが向けられたパブリックな場での出来事。小学生が「映画やドラマのなかでのキスが本気っぽい」と言っているようなレベルだろう。
また『Mr.サンデー』(フジテレビ)や『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)などは、映画のロケ地のひとつである宮城県名取市での撮影風景を捉えた写真やエキストラ男性の証言を紹介。「見つめてる」「他の人は入り込めない空気感」などと無理やり煽っていたが、撮影中なんだからそりゃそうだろうという話だ。
いずれにしても、この程度の情報で、交際とか不倫とか言っていたら、恋愛映画や恋愛ドラマで共演している人は全員怪しいという話になってしまう。東出も唐田も不倫を認めてしまったために沈黙しているが、普通なら名誉毀損で訴えてもおかしくないほどだ。
いったい、なぜこんな根拠レスな報道が繰り広げられているのか。実は、そもそもスクープした「週刊文春」(文藝春秋)の記事にも、東出と唐田の交際については決定的な証拠は掲載されていない。
東出と唐田が密会しているツーショットや、ホテルや自宅マンションといった同じ建物に時間差で入るショットなどの決定的写真もないし、LINEやメールのなどの記録も一切ない。
「文春」が掲載している「ツーショット写真」も、不倫関係を裏づけるものとは言い難い。屋外での飲み会と思しきワンシーンで、ふたりの腕の位置から考えるとふたり以外の第三者が撮っており、ふたりきりで会っていたわけではないことは明らか。写真は「2017年8月」の日付とあり、2017年8月“何日”の写真か書いていないため特定できないが、2017年7月末から8月末は共演映画『寝ても覚めても』の撮影期間。記事内で写真について〈唐田が自分でプリントアウトし、仲間内に配ったもの〉と説明されていることからも、前述したような撮影前後のオフショットである可能性が高い。
それでも、「文春」がここまで踏み込んで書けたのは、ようするに杏サイド、それも杏本人に限りなく近いところから、情報が取れているからだ。
「週刊文春」のスクープが、杏のかなり近いところからの情報によることは、マスコミ関係者が読めば誰でもわかる(くわえて東出と唐田の事務所も早々に認め謝罪した)。だから、テレビなど他メディアも安心して「文春」に丸乗りし、やりたい放題にバッシングを展開しているのだ。一方で交際のディテールが何もないため、ネットのこじつけみたいな話を引っ張り出してきて無理やり叩いている。それがいまのスカスカの東出・唐田バッシングの内実だ。
不倫バッシングを諌める声に対し、不倫そのものだけでなく「会見で嘘をついたのが悪い」とか「最初の対応が悪かった」とかエクスキューズをするコメンテーターもいるが、認めようが認めまいが、証拠があろうとなかろうと、不倫を叩きたいだけというのがよくわかる。
実は芸能界には、これまで不倫密会現場を撮られながら、バッシングどころか、ワイドショーやスポーツ紙ではまったく報じられなかった芸能人カップルが何人もいる。岡田准一と宮崎あおい、中山美穂と渋谷慶一郎、小泉今日子と豊原功補……。小泉にいたっては、バーニングプロダクションを辞めたとたん不倫バッシングされ始めるという露骨さだった。
対して、ベッキーの所属するサンミュージックがそうだったように、東出の所属するユマニテも、唐田の所属するフラームも、決して無名プロダクションではないが、バーニングやナベプロといった大手芸能プロダクションでなく、マスコミ操作に長けていない。テレビでは通常なら躊躇するような根も葉もない噂話の類まで、あることないこと叩き放題になる。
本サイトは、もとよりたかだか不倫を重大犯罪のように糾弾する道徳ファシズム的風潮に批判的な立場だ。しかしそれ以上に問題なのは、大手芸能プロダクションに所属していればテレビで触れられもしないのに、弱小プロダクションの芸能人の不倫だけ、人でも殺したかのように叩きまくるという、芸能ジャーナリズムの不公平な弱者叩きだ。
不倫糾弾という道徳ファシズムが激しくなる一方、その裏では、事務所のパワーバランスによって報じられたり報じられなかったりというジャーナリズム以前の不公正がまかり通っている。不倫なんかよりこのグロテスクな不公正、弱いものいじめのほうこそ糾弾されるべきだろう。