番組HPより


 共産党をデマ攻撃し大きな批判を浴びていた八代英輝弁護士が、17日放送の『ひるおび!』(TBS)で、“2度目の謝罪”をした。

 この日の番組では、珍しく立憲民主党の江田憲司代表代行をスタジオに招き、横浜市長選の舞台裏や総裁選、総選挙における野党の動向について話を聞いていたのだが、そんななか、八代弁護士が唐突にこう語ったのである。

「先日9月10日の番組内での私の発言、『共産党は暴力的な革命を党の要綱として廃止してない』につきまして、現在の共産党の党綱領には、そのような記載はないと多くのご批判をいただきました。ご指摘のとおり、現在の共産党の党綱領には、そのような記載は存しません」

“2度目の謝罪”という異例の対応になったのは、もちろん本人の積極的な意思ではなく、1度目の謝罪で抗議が止まらなかったからだ。

 13日の1度目の謝罪では、局アナが綱領に暴力的な革命がない旨を訂正・謝罪した一方、八代弁護士は「私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした」などと開き直り。謝罪のフリをしながら、デマを上塗りするような姑息な対応をとっていた。

 この対応に八代弁護士と『ひるおび!』に対する批判はますます高まり、TBSや番組スポンサーにも抗議の声が殺到。番組スポンサーの一つであるキユーピーがCM放映を休止する事態になっていた。ようするに、スポンサーに影響が出始めたことから、2回目の謝罪をせざるをえなくなったのだ。

 しかし、結局のところ、対応はこれだけ。八代弁護士は降板することも、当面の出演を控えることもなく、そのまま出演を続けるらしい。

 八代弁護士の発言は、明らかに「野党共闘に水を差す」という自民党政権の意向に乗っかったデマ発言だ。そんな政治的デマを地上波で垂れ流したというのに、数分にも満たない短い訂正をしただけですませるというのは、いくらなんでも対応が甘すぎるだろう。

 実際、ネット上では、昨年末、室井佑月がコメンテーターを降板させられた件と比較して、「なぜ八代弁護士は降板させないのか」という声も上がっていた。

 ようするに、政権に批判的な室井のことはあっさりクビを切った『ひるおび!』が、こんな重大な問題で八代弁護士を降板させないのは、八代弁護士が自民党応援団だからではないか、という指摘である。

 たしかに、室井佑月の降板劇を見ていると、『ひるおび!』という番組が、政権応援団か政権に批判的かで、コメンテーターの扱いを変えているのは明らかだ。

 前述していたように、室井佑月は政権応援団番組『ひるおび!』で唯一、政権の不正や失政を鋭く指摘していたコメンテーターだった。

 ところが、室井の結婚相手である前新潟県知事の米山隆一が昨年11月27日、次期衆院選で新潟5区に立候補することを表明すると、いきなりそれを理由に降板に追い込まれたのである。

 しかも、出演して降板のあいさつさえさせてもらえず、江藤愛アナウンサーが室井の「公平性を担保すべきとのことで番組の皆さまとご相談の上、『ひるおび!』の出演は控えさせていただくことにいたしました」というメッセージを代読するだけで終わった。

 この対応だけ見ると、「室井は親族が選挙に立候補を表明したのだから、降板は当然。八代弁護士のケースとは違う」と思うかもしれないが、そうではない。TBSでは、同じように親族が選挙に立候補したり、政治家をしていても、降板させられるケースとさせられないケースがあるのだ。

 室井の降板が発表された直後、麻木久仁子がこんなツイートをして疑問を呈していた。

〈本人ではなく家族が立候補するからテレビに出られないなら、例えばお父さんが大臣のアナウンサーさんとか、夫が大臣のキャスターさんとかどうなるの? 大臣、出ますよね? 次の選挙〉

「お父さんが大臣のアナウンサー」というのは、田村憲久厚労相の娘で『ひるおび!』の放送局でもあるTBSのアナウンサー・田村真子のこと、「夫が大臣のキャスターさん」というのは小泉進次郎環境相を夫にもつ滝川クリステルのことだと思われるが、これはまさしく正論だろう。

 室井が『ひるおび!』を降板させられた一方、家族が米山氏と同じ衆院選に立候補するはずの2人はその後も変わらずTBSの情報番組に出演し続けていたのだ。ダブルスタンダードと言うほかない。

 田村真子と滝川クリステルのケースは、TBSのほかの番組の話だが、当の『ひるおび!』でも露骨なダブスタをやっている。

 元オリンピック選手で自民党参院議員を務めたこともある萩原健司氏が今年、長野市長選への出馬を表明したが、それ以降も、双子の弟である荻原次晴氏が『ひるおび!』に準レギュラーコメンテーターとして変わらず出演し続けているのだ。

 それどころか、『ひるおび!』では、今年4月から、上地雄輔を新しく曜日レギュラーとして起用している。

 周知のように、上地雄輔は横須賀市長の上地克明氏の息子。市長に初当選した2017年の市長選は、横須賀を地元とする小泉進次郎が担ぎ、菅義偉官房長官の支援も得て、当選した。進次郎氏の中央政界での存在感や菅官房長官と関係性においても、大きな影響を及ぼした選挙だった。これ以降、進次郎氏と菅首相は急速に関係を深め、のちの滝川クリステルとの官邸結婚報告や進次郎氏の初入閣にもつながっていったといわれる。

 しかも、克明氏の出馬や当選を報じるニュースの見出しには「タレント上地雄輔の父」「上地パパ」といった語が並ぶなど、息子の知名度が選挙に影響を与えているのは明らかだ。

 ところが、『ひるおび!』では今年2月に父親の克明氏が市長選への再出馬を表明したあとに、上地雄輔を曜日レギュラーコメンテーターに起用したのだ。しかも、横須賀市長選が6月27日におこなわれたが、投票まで1カ月を切った6月も毎週出演、告示後、投票2日前の6月25日にも雄輔は普通に出演していた。

 室井のケースを思い出してほしい。室井はまだ、夫が立候補を表明しただけで、選挙の公示どころか、本当に立候補するかどうかもわからない段階で、即、降版に追い込まれたのだ。

 室井の降板時、TBS関係者がその舞台裏について、こう語っていた。

「室井さんは番組でも安倍政権批判、そして菅内閣になっても鋭い政権批判を繰り返してきました。そのたびネットでは炎上し、番組やTBSにもネトウヨからの抗議も多かった。しかも、『ひるおび!』のチーフプロデューサーはかなりネット右翼的な思想をもっているので、前々から室井さんを切りたがっていたんです。ただ、室井さんは『ひるおび!』スタート当初からのコメンテーターですし、政治的発言を理由に切ることもできない。そこで、少し前から苦肉の策として午前のみの出演にするかたちにしていた。そんなところに今回、夫の米山さんが出馬表明をしたので、『すぐに降ろせ』となったんですよ」

 本サイトは当時、室井が政権に擁護的で、夫が自民党から出馬を宣言していたとしたら、こんな措置には絶対になっていない、せいぜい公示期間中の出演見合わせくらいで終わっていたはずだ、と指摘したが、上地雄輔らのケースと比較すると、そのダブスタはもっとひどいものだった。

『ひるおび!』という番組では、政権に批判的で夫が野党から出馬する場合は、立候補を表明した時点で降板に追い込まれるが、立候補する親族が自民党や政権に近ければ、降板どころか、短期間の出演見合わせすらされず、告示・公示後も出演し続けられるのだ。

 今回も同様だ。八代弁護士のようなデマ発言をしたのが、室井のようなリベラル派や政権に批判的なコメンテーターであれば、間違いなく出演見合わせや降板に追い込まれていただろう。

 しかし、八代弁護士のように政権応援団であれば、デマを全国に拡散しても、申し訳程度の謝罪をしただけで、なんのお咎めもなく出演し続ける。八代弁護士のデマだけでなく、『ひるおび!』のこの露骨な政権応援団ぶりこそが大問題であるということを、あらためて指摘しておきたい。

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