ついに選挙戦終盤にさしかかった27日投開票の衆院選だが、そんななか、本日23日のしんぶん赤旗のスクープが反響を呼んでいる。
なんと、自民党が裏金事件を受けて非公認にした候補が代表を務める党支部に対し、党本部が選挙公示直後に政党助成金2000万円を振り込んでいた、というのだ。
これは一体どういうことなのか。まず、今回の衆院選では、自民党から公認を得られなかった10名が無所属として立候補している。だが、そのうち8名が自民党選挙区の代表(支部長)のままであることを19日付の赤旗が報道。その8名には、安倍派幹部だった萩生田光一氏(東京24区)や高木毅氏(福井2区)も含まれていた。
そして、本日付の赤旗では、自民党・森山裕幹事長から支部会計責任者に宛てた「支部政党交付金支給通知書」(9日付)を入手。紙面に掲載されたその通知書には、「衆議院総選挙の公認料及び活動費として、支部政党交付金を支給します」と書かれ、10日付で公認料分500万円と活動費分1500万円の合計2000万円を振り込むことが明記されていた。
さらに赤旗は、非公認候補となりながら党支部長のままでいる、ある政党支部にも取材。この政党支部の会計責任者は「他の支部のことはわからないが、党本部から党勢拡大のための活動費ということで2000万円が振り込まれた」と、その事実を認めたというのだ。
また、党本部から届いた13日付の文書では「公認料」の文言はなく、2000万円を「党勢拡大のための活動費」として振り込むという内容だったという。ようするに、公認した候補に選挙費用として支給する2000万円を、名目だけ変えて非公認候補にも支給している、というわけだ。
言っておくが、政党助成金は国民の税金が原資だ。それをよりにもよって、裏金問題を理由に非公認とした候補に事実上、選挙活動費のために支給するとは──。
しかも、この問題を他メディアも後追いすると、森山幹事長は活動費を支給していたことを認めながらも「党勢拡大のための活動をしていただきたいという趣旨だ」と詭弁を弄す始末。森山幹事長は先日も、裏金議員が当選した際の役職登用について「選挙を経るということは国民の信任を受けたということ。ここであまり差別が続いてはいけないと思う」などと発言し顰蹙を買ったばかりだが、裏金非公認候補に血税から2000万円を支給することが「差別の是正」とでも言うのだろうか。
ともかく、裏金非公認候補に対する2000万円支給の事実は、有権者を欺く重大問題であり、自民党の腐敗ぶりを象徴するものだ。
しかも、気になるのが、裏金議員の選挙情勢だ。非公認の無所属である裏金候補のなかでも悪質性がとりわけ高い安倍派幹部が、各社の情勢調査で優勢が伝えられている。
その筆頭が、安倍派5人衆のひとりだった西村康稔氏(兵庫9区)だ。自民党からは非公認となったが公明党から推薦を受けており、情勢調査でも「圧倒」「優位」「優勢」などと伝えられている。
また、同じく安倍派5人衆のひとりだった下村博文氏(東京11区)も、毎日や朝日は立憲民主党の阿久津幸彦氏と「横一線」「接戦」としながらも、下村氏の名前を先に記載。つまり、下村氏のほうが優勢にあるということだ。
さらに、全選挙区のなかでももっとも注目を集めているとも言えるのが、萩生田光一氏(東京24区)だ。萩生田氏といえば裏金2728万円というトップレベルの悪質議員だが、テレビ取材に対して「非公認って大変。『やっぱり悪い人なんだ』ってダメ出しされたような印象を与えられてしまう」などとコメントするなど、被害者気取りでまるで反省の様子がみえない。その上、今回の報道によって、自民党本部から政党助成金2000万円を受け取っていると見られている。また、裏金問題だけではなく、統一教会との関係についても疑義が深まっている。
その萩生田氏、東京24区では立憲・有田芳生氏と「デッドヒート」を繰り広げているというが、毎日の情勢調査では萩生田氏が「ややリード」とし、・時事・朝日は萩生田氏の名前を先に記載。また、週刊誌では萩生田氏と創価学会幹部との関係悪化が報じられていたが、朝日の情勢分析によると、萩生田氏は〈自民支持層の8割、公明支持層の大半を固めた〉という。東京24区の公明票は4万票以上とも言われており、その影響は大きい。
裏金非公認の安倍派幹部が、またも国会に戻ってくるかもしれないという地獄──。いや、安倍派幹部でありながら公認を得た松野博一氏(千葉3区)も、日経の情勢調査では「やや優勢」と報道。離党勧告を受けたものの参院から鞍替え立候補した世耕弘成氏(和歌山2区)にいたっては、「リード」「安定」など優勢が伝えられている。
一部メディアは「自公過半数割れか」などと報じているが、裏金問題を理由に非公認としながらも、裏金非公認候補に公認候補と同様、国民の血税から2000万円も支給していた自民党、さらに裏金非公認候補に推薦を出す公明党に政権与党を任せられるはずがない。
安倍派を筆頭に、ひとりでも多くの裏金候補を落選させる。これこそが、裏金問題を反省しない自民党に突きつけるべき民意だろう。