“市内全域”は全国初…寝屋川市の「空き家税」条例案

 17日、大阪の寝屋川市議会に提出された「空き家流通促進税」の条例案。市内全域の居住実態のない空き家の所有者に対して、固定資産税以外に市独自の税金「空き家税」を課すという内容です。

 寝屋川市によると、市内には約1万5000戸の空き家があり、そのうち約4割(約6400戸)は居住実態がなく賃貸にも売却にも出ていない「空き家」だと言います。

 可決されれば全国初となる、市内全域を対象とする「空き家税」。なぜ寝屋川市は導入を目指しているのか?条例の内容や課題は?

 まちづくり政策に詳しい近畿大学建築学部の寺川政司准教授に聞きました。

過去最多の900万戸…日本で増える「空き家」

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 日本中で増えている空き家。総務省によると、全国の空き家は過去最多の900万戸、空き家率は13.8%を記録しています(2023年)。

 そのうち長期間使い道がなく放置されている空き家は385万戸で、空き家率は5.9%です。 

 空き家問題の例としては「景観の悪化」「倒壊・防犯・災害リスク」「コミュニティーの減退」などが挙げられます(近畿大学・寺川政司准教授)。

国の対策 倒壊リスクある空き家など「土地の固定資産税が6倍」に

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 空き家対策として国が手を入れたのが、固定資産税。

 放置した空き家が「管理不全空き家」(窓や壁が破損しているなど)や、「特定空き家」(倒壊のおそれがあるなど)として自治体に指定された場合、固定資産税が上がる仕組みになっています。

 通常、住宅用地は特例として固定資産税が6分の1に軽減されますが、「管理不全空き家」「特定空き家」の土地についてはこの特例が外れて税額が6倍になります(※200平方メートル以下の場合)。

<例>
 ▼特例適用の住宅用地
 建物に10万円+土地に10万円=固定資産税20万円
 ▼管理不全空き家・特定空き家
 建物に10万円+土地に60万円(特例解除)=固定資産税70万円

 しかし専門家によると、現状この方法だけでは効果があるとは言えないようです。

寝屋川市の「空き家税」 固定資産税に“上乗せ”される仕組み

 今回議論されている寝屋川市の「空き家税」は、通常の固定資産税に上乗せされるものです。

 「空き家」と判定された場合、建物の固定資産税額と「土地1平方メートルあたりの固定資産税額×延べ床面積」に対し、それぞれ35%の税が加算されるということです。

寝屋川市の空き家の「約4割」6410戸が対象

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 寝屋川市の「空き家税」の対象となるのは「人が住んでいない住宅」。市内の空き家1万5450戸(2023年)のうち、約4割にあたる6410戸(別荘含む)が課税対象となります。

 <寝屋川市「空き家税」の課税対象>
  ▼「特定空き家」  2戸(6月17日時点)
  ▼「管理不全空き家」2戸(6月17日時点)
  ▼「二次的住宅」「活用されていない空き家」
   →計6410戸

 そのほとんどが、別荘などの「二次的住宅」や「活用されていない空き家」です。以下の空き家は、課税対象外となります。

 <課税対象外>
 (1)売却や賃貸に出している(1年以内)
 (2)事業用に使われている
 (3)所有者死亡で空き家になった(一定期間)
 (4)市長が認めた物件

集めた「空き家税」子育て支援など市民に還元へ

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 寝屋川市の「空き家税」の推定税収は1億3000万円で、ここから必要経費などを引いた額は市民に還元するとしています。

 「空き家税」は使いみちを特定していない「普通税」として徴収され、空き家対策や子育て支援などに使われる予定だということです。

開発場所がない…寝屋川市が「空き家税」推進するワケ

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 寝屋川市の「空き家税」の対象エリアは、全国初の“市内全域”。広瀬市長は「空き家税」を推進する理由として「開発する場所がない」と話しています。

 (寝屋川市 広瀬慶輔市長)
 「今70代から80代に(人口の)ボリュームゾーンが上がってしまい入れ替わっていない。若い世代に来ていただき、年齢構成をリバランスしていかなければならないのですが、受け皿がない、開発する場所がない

 約22万人が住み全国屈指の人口密度を誇る寝屋川市。高度経済成長期に大阪都市圏のベッドタウンとして発展し、1960年に約5万人だった人口は1975年には約25万人に増えました。

 しかし広瀬市長によると、その後は開発場所がなくなり、人を呼び込めず、人口は頭打ちに。開発当時に現役世代だった人が高齢となっていく中、子育て世代などを呼び込むためにも、放置された空き家を動かし、新たな移住・定住への受け皿をつくりたいと考えているのです。

50年ぶりの転入超過…空き家を活用し若者流入を狙う

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 一方、市への転入超過も「空き家税」推進を後押ししています。

 長らく転出超過が続いていた寝屋川市ですが、去年50年ぶりに800人を超える転入超過となりました。

 「いじめゼロ」の取り組みや、ディベートを中心とした国際標準教育など、他市にはない特色ある教育環境(ソフト面)を打ち出したことが要因だと広瀬市長は分析しています。

 ピーク時の世帯が高齢化して増えてしまった空き家を活用し、若者を流入させたい狙いがあるようです。

「流通・相続・解体支援など合わせ技のサポートが必要」

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 寝屋川市の取り組みについて寺川准教授は「空き家の所有者に『資産を放置できない』と認知してもらい、流通や利活用に向けた行動を促す“政策的な課税”」だと評価しています。

 一方で「“アナウンス効果”を狙うだけでは不十分」で「流通・相続・解体支援など、合わせ技のサポートが必要」だと言います。

 寝屋川市では、実家処分の遠隔手続きサポートや、相続のアドバイスなどを提供しています。

「寝屋川市の今後を見守っている」他の自治体に広がるのか?

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 空き家問題について寺川准教授は「課題は全国どこでも同じ。寝屋川市の今後を見守っている」とした上で、対策の本質を次のように話しています。

 (近畿大学建築学部 寺川政司准教授)
 「空き家はただ直せば良いわけではない。まちを構成する“細胞”の一つとして地域社会の中でどう機能させるかが重要

 寝屋川市の「空き家税」は他の自治体に広がるのか? 条例案は7月9日に議決される予定で、市は2029年には課税を開始したいとしています。

(2026年6月17日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『まえはるプレゼン』より)

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