未来館の「ジオ・コスモス」
TEXT:片岡義明
イベントでは、まず、ファシリテーターの慶應SDM准教授の神武直彦氏が、アイデアソンで創出されたアイデアの紹介を行ったあと、参加者それぞれが興味のあるテーマを選び、計5チームに分かれて作品の開発がスタートした。開発に際しては、フィールドワークとして館内や館外を見て歩くだけでなく、空間情報科学を活用した展示「アナグラのうた」のバックヤードや地球ディスプレイ「ジオ・コスモス」の制御室「ジオ・コックピット」を訪れたりと、普段では入れないエリアの見学も行われた。
慶應SDMの神武氏
同じテーマに興味を持つ人が集まってチームを作成
「アナグラのうた」のバックヤード
館内を見学
「ジオ・コスモス」の見学
開発中の様子
未来館の公式アプリ「Miraikanノート」に、自分が誕生してから今に至るまでの思い出の写真を投稿できる機能を追加し、その写真を「ジオ・コスモス」に映し出す。また、ユーザー1人1人の属性に合った展示を実現するため、データ収集のためのアプリ「ロケNAVI」も開発。同アプリでは、未来館の外にあるものをカメラで映し出すと、それに関連した詳しい情報が未来館の展示で学べることを案内するとともに、館内の展示の内容について、ユーザーの属性に応じた詳しい説明を行う。
「みんなでつくる未来感」
専用アプリを通じて、来館者のスマートフォンに、「10年後の車はどうなってる?」「10年後に人気の職業は?」など、未来に関する質問が送られてきて、来館者が質問に答えることで回答がデータベースに蓄積される。また、質問について議論する場所を未来館の中に設けて、同館の科学コミュニケーターが集合を呼びかけることで、実際に集まって話し合うこともできる。このような議論や、来館者から寄せられた回答をもとに、ジオ・コスモスが未来を映し出し、来訪者は“未来人”と会話できるほか、帰宅後に質問の結果発表をアプリで受信することもできる。
「未来earth」
アプリ上で興味のあるジャンル(船)を選択して、範囲(距離)を指定することで施設の候補が表示され、実際にそこに行くと、船に乗って仮想的に未来館を訪問するVRコンテンツを見ることができる。船に乗っている間、いつの間にかロボットになっているというストーリーになっていて、未来館の館内をロボットの視点で見て回り、遠くにいながら未来館の展示を楽しめる。
「未来館号GO」
未来館の展示を見るために並んでいるときに、待ち時間を楽しく過ごすためのサービス。スマートフォンやタブレットのアプリや、館内のデジタルボードなどに絵を描くと、たとえば動物なら走り回ったり、他に描かれた絵と連携したり、卵を描いて叩くと割れて成長したりと、さまざまな変化・進化が起こる。展示エリアの内容やユーザーの館内の行動によって動きが変化したり、話しかけることで成長が変わったり、動きだけでなく音や光が変化したりするほか、描いた絵をシェアしたり持ち帰ったり、その場に残しておいたりすることもできる。
「ホワ坊」
来館者1人1人に元素を割り当てて、それをもとにほかの来館者とのコミュニケーションを発生させるサービス。
「水兵リーベ 僕の船」
未来館・展示企画開発課の小澤氏は講評として、「設立当初から未来館は『ハコではない』とよく言っていて、もっと色んなところに出て行きたいという思いがあります。『未来館号GO』があれば日本だけでなく世界中に出て行けるということで、すばらしいアイデアだと思いました。未来館が外に散っていって、そこからまた結集する、そのような場に未来館がなっていければいいと思います」と語った。
日本科学未来館の小澤氏
同館と慶應SDMは今後もこのようなイベントの開催や共同研究を推進していく予定だ。「次の機会には、また違った未来館の側面を参加者に見てもらいたいと思います」(小澤氏)とのことで、次回はどのようなイベントになるか楽しみだ。
URL:http://www.miraikan.jst.go.jp/
「未来館の未来をつくる」参加募集サイト
URL:http://www.miraikan.jst.go.jp/event/1606161620116.html
2016/08/10