このタイミングを見計らって、Metaはテキストベースの新SNS「Threads」を前倒しでリリースし、注目を集めています。そこで本記事では、「Threads」の特徴やTwitterとの比較、基本的な使い方などを解説します。
目次
Threads(スレッズ)とは

「Threads(スレッズ)」は、言わずと知れた「Facebook」や「Instagram」といったSNSを擁するソーシャルメディア企業のMeta(旧Facebook社)が新規開発したSNSです。Twitterの機能・UIを強く意識したテキストベースのSNSで、App StoreやGoogle Playストアでのサービス名称が「Threads, an Instagram app」となっていることからも分かる通り、あくまでも「Instagram」の機能を強化する関連アプリケーションという位置づけになっています。現段階では、「Instagram」のアカウントを持っていないと「Threads」のアカウントを作成できないため、Instagramのユーザーでない場合は、新規に2つのSNSアカウントを作成しなければいけません。
名称の基になっている「Thread(スレッド)」とはもともと「糸、織り糸」といった意味で、IT用語では個々のプログラム処理の実行単位(の一つ)を指す言葉であり、転じてSNSやメーリングリストにおいて特定の話題についての投稿の集まりを意味しています。「Thread"s"」と複数形になっているので、中島みゆきの「糸」やキャロル・キングの「つづれ織り」のように、複数の糸が織り重なってるイメージといったところでしょうか。ロゴやアプリのデザインにも、そうしたイメージが反映されています。
Threadsを使うメリット・デメリット
Threadsを使うメリット1. Instagramのプロフィールやフォロー関係などのデータを引き継げる
「Threads」は「Instagram」のプロフィールやフォロー関係を引き継げるため、新たにアカウントを作成する必要がありません。そのため「Instagram」で既に友人や知人とつながっている人は、すぐに「Threads」でコミュニケーションを開始できます。「Instagram」から「Threads」に投稿をシェアすることも簡単です。
2. すでに多くのユーザー数が確保されている
新しいSNSが成功するか否かの重要なポイントは、ユーザー数の増加ペースです。せっかくアカウントを登録しても、共通の話題で盛り上がれる仲間が少なければ、すぐに飽きられてしまうからです。
こうした新SNSが最初に乗り越えなければいけない課題も「Threads」は軽々とクリアするポテンシャルを秘めています。
(※1)メタのThreads、登録者5日で1億人 ChatGPT抜くペース(日本経済新聞/2023年7月11日)
3. 高負荷にも耐えられるサーバー
ユーザー数を確保する次に重要なのが、大量のユーザーが快適にサービスを利用できるハード面での環境です。人が集まり盛り上がっていても、頻繁にサーバーダウンを引き起こすようでは、次第にユーザーは離れていってしまうでしょう。
世界最大のソーシャルネットワーク企業であるMetaが運営する「Threads」に関しては、その点の心配はありません。すでに「Facebook」や「Instagram」を運営できるサーバーを持っているため、「Threads」は多くのユーザーが同時に利用しても、画像や動画の投稿が遅延したり、アプリが落ちたりする問題が発生するリスクが低いと考えられます。多くのユーザーが同時に利用しても安定して動作できるSNSであるという点も、メリットの一つでしょう。
4. 人権やモラルに配慮されている
「Threads」は「Facebook」や「Instagram」と同様のレベルで人権やモラルに配慮された設計がなされています。例えば「Threads」では、人種、民族、性別、性的指向・性自認などのアイデンティティを攻撃するようなヘイトスピーチや、意図的に情報操作しようと試みるデマなどに関する投稿は厳しく制限されています。また、性的なコンテンツに関しても、厳しい制限が設けられています。
5. 著名人・インフルエンサーも多数参加
「Threads」は、著名人やインフルエンサーがすでに多数参加しているのもメリットです。
日本の著名人では、「Instagram」のフォロワー数国内トップクラスの渡辺直美、藤田ニコルらをはじめ、有吉弘行、HIKAKINなど様々なジャンルの芸能人やYouTuberなどがアカウントを登録し、投稿をはじめています。
また海外の著名人では、キム・カーダシアン、ウィル・スミス、ヒュー・ジャックマン、ジェニファー・ロペス、シャキーラ、エレン・デジェネレスといった大物芸能人、NFL選手のマイケル・ストレイハン、NBA選手のステフェン・カリー、レジェンドクラスのOBとして名高い元アメフト選手のトム・ブレイディなどのスポーツ選手らが参加。また、ビジネス分野からも、マーク・ザッカーバーグはもちろんのこと、ジェフ・ベソス、ビル・ゲイツ、マイケル・ブルームバーグといった大物実業家もアカウントを登録しており、セレブ達のフォロワー数も急速に増加しています。
さらに、個人だけでなく数多くの企業アカウントが登録されています。海外企業ではMicrosoftやGoogle、日本企業では、ソフトバンクやセガといった大手企業のアカウント開設も確認されています。
このように、著名人やインフルエンサー、企業アカウントのコンテンツを閲覧することで、新しいトレンドや情報を得られるというメリットもあります。情報収集に役立つ新SNSとして、多くのユーザーに利用されるいくと予測されます。
Threadsを使うデメリット
1. 提供しなければいけない個人情報の種類が多い
「Threads」を使用するためには、多くの個人情報の提供に同意する必要があります。「Threads」に限らずMetaが提供するSNSは、他のSNSと比較しても個人情報の収集項目が多く、それを不安視して利用を避けているという人もいます。以下が、個人情報の収集項目一覧になります。
個人情報の収集項目一覧
1.ヘルス&フィットネス 2.購入品 3.財務情報 4.位置 5.連絡先情報 6.連絡先 7.ユーザーコンテンツ 8.検索履歴 9.閲覧履歴 10.識別子 11.使用状況データ 12.機密情報 13.診断 14.その他のデータ 13の「診断」と14の「その他のデータ」は、Twitterでは収集されない個人情報です。特に「その他のデータ」は、どんなものであるか気になりますね。もし、上記の項目を見てプライバシーを侵害する可能性があると懸念する場合は、利用しないほうが無難と言えるでしょう。
ただし、すでに「Instagram」でアカウントを持っていることが前提となっているアプリなので、「Instagram」を使っていない人が「Threads」を利用する場合のみ、個人情報の提供について十分に検討する必要があるということになります。
2. 匿名性は低い
「Threads」は「Instagram」のアプリ内に組み込まれているため、「Instagram」のユーザーが簡単にアクセスできます。そのため、「Threads」で投稿した内容は、「Instagram」のユーザーに簡単に見られてしまう可能性があります。また、「Threads」はユーザーの個人情報を広告に使用しています。そのため、「Threads」で投稿した内容は、広告に使用される可能性があります。これらの理由から、「Threads」は匿名性が高いSNSとは言えません。また、複数のアカウントを運用する場合は、紐づけされている「Instagram」のアカウントと異なるアカウントに誤爆しないように、気をつける必要も出てきます。従って「Threads」を利用する場合は、自分の投稿内容や個人情報について十分に注意する必要があります。
3. 現在はまだ開発段階で機能が少ない
現在はまだ開発段階なので、機能が少ないことがデメリットです。例えば「Instagram」のストーリーやリール、Twitterのスペースなどに似た機能は提供されていません。また、PCからの利用に関しても、現段階では閲覧のみという制限があり、企業のアカウント運用などにおいては、まだ不便なサービスです。ただし、これから機能が数多く追加されていくと予想されます。
4. 人権・モラル・性的コンテンツに関する制限が強い
人権、モラル、性的コンテンツに関する制限が強いことはメリットでもありますが、一部のユーザーにとってはデメリットにもなります。ユーザーが正しいと思う主張であっても、それが国際的な倫理基準に照らし合わせて問題があれば、言論の自由・表現の自由といった主張は通りにくいと考えられます。また、日本のクリエイターが一番気になる点は、成人向けのコンテンツがどこまで許容されるのかといった部分ではないかと思いますが、この点についても制限が強いと考えられます。
Meta以前に、端末やOSを提供するAppleの方針なども、同様の傾向が見られます。従って「Threads」が特に厳しいということではなく、Twitterが例外的に制限が緩いと考えたほうが良いかもしれません。これらの制限を理解した上で「Threads」を使用するかどうかを判断する必要があります。
5. 広告が多く配信される可能性がある
「Threads」は、まだ広告機能は実装されていませんが、無料で利用できるアプリなので今後広告が表示される可能性が高いです。広告が表示されることに不快感を感じる人や、プライバシーを気にする人にとっては適したSNSではないかもしれません。
ThreadsとTwitterの比較
1.基本的な機能はかなり似ているTwitterの親会社であるXが「Threads」をリリースしたMetaに対し、Twitterの知的財産権を侵害しているとして訴訟を起こすと警告したというニュース(※2)が報道さてれいますが、機能面に関しては、ほぼTwitterと同様の使い方が可能となっているSNSです。ただし、正式にリリースされているとは言え、実質ベータ版のような開発段階であり、機能も限られています。下は現段階でのThreadsとTwitterの基本機能・スペックの比較一覧表になります。
基本的な機能・スペックの比較一覧表
機能 Threads Twitter文字数制限 500文字 140文字(Twitter Blueは10000文字)投稿できる画像の枚数 10枚/1投稿 4枚/1投稿投稿できる動画の時間 最長5分/1投稿 最長140秒/1投稿いいね 可能 可能リツイート 可能 可能メンション 可能 可能URLのリンク 可能 可能ハッシュタグ 現在は不可(今後搭載される予定あり) 可能利用可能端末 機能をすべて利用できるのは現在のところモバイル端末用のアプリのみ(Webブラウザで閲覧は可能) モバイル端末用のアプリの他に、WebブラウザでPC(クロスプラットフォーム)からの運用も可能複数アカウント 可能(現時点では、アカウントの切り替えに一旦ログアウトの必要あり) 可能訴訟の動向が今後どのように展開していくのか、アップデートにより、どのような機能が追加されていくのかは、まだ不確定ですが、Twitterの代替となるSNSとして最有力候補であることは間違いありません。
(※2)「企業秘密を盗んだ」ツイッターの運営会社が「Threads(スレッズ)」についてメタ社を非難 イーロン・マスク氏は「不正はよくない」と投稿(TBS NEWS DIG)
2. ユーザー層の違い
Instagramは「陽キャ」、Twitterは「陰キャ」といった棲み分けがあると考えている人も多いかと思います。
3. 発言・投稿内容の自由度
繰り返しになりますが、Metaが運営する「Facebook」や「Instagram」と同様に、Twitterに比べて、差別的・暴力的な発言などには厳しく制限がかかると予想されます。イーロン・マスクの考えるような「言論の自由」に共感を抱いている人にとっても、「Threads」は居心地が悪い環境かもしれません。
4. 匿名性とプライバシー
アカウントは実名ではなくペンネームや芸名、ニックネームなどでも作成可能なので、その意味で匿名性は確保できています。しかし、「Instagram」に紐づけされているアプリなので、「Instagram」で繋がっている知人・友人と繋がっている場合など、身元が分かってしまう可能性も高いSNSです。Twitterほどの匿名性はないと考えられるので、その点も注意が必要です。
Threadsの基本的な使い方
ここからは「Threads」の基本的な使い方を説明します。Twitterのユーザーであれば、すぐに操作できるUIですので、細かな機能については実際に使いながら試してみてください。インストールからアカウント作成まで
1.Threadsのアプリをインストールして起動


2.Instagramのアカウントでログイン


アカウント名の下には「アカウントを切り替える」という項目があります。この項目をクリックするとアカウントを切り替える画面に遷移します。Instagramを複数のアカウントで運用している場合は、こちらの画面で任意のアカウントを選択しログイン画面に進みます。
また「Threads」でも複数のアカウントを作成できます。ただし、今のところアカウントを切り替えるには、プロフィール画面右上にあるメニューアイコンから一旦ログアウトして、このログイン画面に戻り「アカウントを切り替える」から、切り替えたいアカウントを選択する必要があります。
アカウントを選択しログインする前に、プロフィールを作成します。プロフィール情報は「Instagram」のアカウントからインポート可能です。プロフィールが作成できたら画面下にある「次へ」をタップします。
3.各種設定を行いアカウント作成完了


次に「Instagram」と同じアカウントをフォローしますか?」と問われる画面に遷移しますので、表示されているアカウント一覧からフォローしたいアカウントをフォローします。「Instagram」と同じアカウントすべてをフォローしたい場合は「すべてフォロー」をタップします。
フォロー設定が完了すると「Threadsのしくみ」という説明画面が表示されます。内容を確認して問題がなかったら、画面下部の「Threadsに参加する」をタップすると、アカウント作成が完了します。
投稿・いいね・リプライ・リツイート・シェア
1.新規スレッド(投稿)の作成


他のユーザーのスレッドに反応する場合は、ホームのアイコンをタップしてタイムラインを表示させます。スレッド投稿の下部にある4つのアイコンが、リアクションに関する機能です。左から「いいね」「リプライ」「リツイート」「シェア」のアイコンが並んでいます。
2.いいね・リプライ・リツイート(再投稿)・シェア


リツイート(Threadsでは再投稿という名称)のアイコン(2つの矢印で四角になっているマーク)をタップすると、リツイートができます。引用リツイート(Threadsでは引用という名称)も可能です。シェアのアイコン(箱から矢印が出ているマーク)をタップすると、シェアする方法を選択する画面が表示されます。シェアは、Instagramの「ストーリーズに追加」「フィードに投稿」、Twitterにシェアする「ツイート」、「リンクをコピー」、その他の方法でシェアする「シェア」という項目があります。
PC版の使い方
最後に、利用に制限がありますがPC版の使い方も簡単に確認しておきましょう。
1.InstagramのPC版からThreadsのPC版へ


クリエイターとの相性
Threadsに向いてるクリエイターライター、ブロガー、エッセイスト、コラムニスト、小説家、編集者といったテキストベースで活動するクリエイターにとっては、表現活動を広げる場として大きな可能性を秘めていると言えます。
またTwitterと同様に、クリエイティブワークに関する情報発信や、クリエイティブツールのTips投稿などにも向いているSNSなので、セミナー活動や執筆業などでも活躍するビジュアルコンテンツのクリエイターにも使いやすいSNSです。
加えて、企業アカウントも多数登録されているので、販促・営業活動として利用したり、作品を発表したりする場としても十分に機能しそうです。
Threadsに向いていないクリエイター
「Threads」は「Instagram」のユーザー層を引き継いているSNSなので、インスタ映えといた行動様式など「Instagram」特有のキラキラしたイメージが苦手という方には向いていないかもしれません。ただし、Twitterから移動してきている層も多いので、どのようなSNS文化を醸成していくかは未知数です。とりあえずアカウントを作成しておいて様子見というスタンスもアリでしょう。
また、成人コンテンツをメインに活動しているクリエイターや、萌え絵といったジャンルの絵師には、あまり向いていない SNSかもしれません。ただし、肌の露出が多いイラスト・写真は「Instagram」でも見かけることはありますので、運用の方法次第で十分に活用できるSNSであることも確かです。中国製のSNSである「Weibo」などに移行するよりも、安全に利用できるので、移行先として候補の一つに入れておくことをおすすめします。
まとめ
Twitterは、政治・行政・学術といった硬い分野の投稿と、エンタメや他愛もないネタといった柔らかい投稿が共存できる稀有なSNSであり、まったく同じ環境を有するSNSは今後誕生することはないかもしれません。それだけに、Twitterが機能不全に陥っていることを残念に思うユーザーも多いのでしょうが、TwitterはTwitterとして今後も存在感のあるSNSのままだと思います。しかし、ある特定のクラスタが他のSNSに移動してしまうと言論のバランスが崩れ、Twitterが「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)」や、アメリカ版の5ちゃんねるである「4chan」のようにアンダーグランド化し、社会的な問題引き起こす可能性も大いにあり得ます。
「Threads」がTwitterの代替SNSとして成功するか否かは、単なるソーシャルメディアのヘゲモニー闘争ではなく、私たちの生活を大きく変えてしまうような影響力を持つ可能性もあります。そうした文脈においては「Threads」の利用がクリエイターとっても、ビジネスを展開する上で必須の知識になる日も近いかもしれません。まだ利用していないという方は、本記事を参考にして試しにアカウントを作ってみてください!
